上手くいくかどうかはテーマ設定次第 データ分析講座(その290)

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データ分析

 

ビッグデータやDX、AIなどの掛け声とともに、データ活用に取り組む機会も増えてきたのではないでしょうか。しかし、データ活用のテーマには、筋の良いものと悪いものがあります。知らず知らずのうちに筋の悪いテーマを選び、そのテーマに挑むと苦労も絶えません。どうせなら、筋の良いテーマを選び取り組みたいものです。今回は「上手くいくかどうかはテーマ設定次第」というお話しをします。

【目次】
1. 2つの軸
2.「容易性」とは?
3.「インパクト」とは?
4. テーマ設定の流れ
  Step 1:ビジネス課題の洗い出し
  Step 2:データ活用の候補の抽出
  Step 3:テーマ候補の評価と選定

【この連載の前回:(その289)比較というキーワードでチャレンジしよう へのリンク】

◆データ分析講座の注目記事紹介

 

1. 2つの軸

ここでは、テーマの筋の良し悪しを次の2つの軸で考えていきます。

  • 容易性
  • インパクト

情報マネジメント

 

2. 「容易性」とは?

「容易性」とは、どれだけ簡単に実現できるのか、ということです。もう少し具体的に言うと、テーマとしてあげられたビジネス課題の解決が、データを使ってどれだけ容易に実現できるのか、ということです。容易性の観点には、次の3つがあります。

  • 取得に関する容易性
  • 分析に関する容易性
  • 活用に関する容易性

情報マネジメント

 

3. 「インパクト」とは?

「インパクト」とは、データ活用したときに得られる「成果の大きさ」です。可能であればすべて「金額(円)」で表現するようにしましょう。

情報マネジメント

 

4. テーマ設定の流れ

テーマ設定の流れは、次にようになります。

  • Step 1:ビジネス課題の洗い出し
  • Step 2:データ活用の候補の抽出
  • Step 3:テーマ候補の評価と選定

 

Step 1:ビジネス課題の洗い出し

Step1の「ビジネス課題の洗い出し」のポイントは「先ず、データの存在を忘れて、解決すべきビジネス課題を考える」というところです。データ活用のテーマと聞くと「データで出来ること」を軸にテーマを探し始める人も少なくありません。「データで出来ること」を軸にテーマを探し始めると視野が狭くなり、場合によっては「データの可能性」を殺してしまうことがあります。データの可能性を殺すとは、データで課題解決できたテーマを見つけられず、データで解決する機会を奪い去ることを意味します。

 

そのため、ビジネスの「お困りごと」である「ビジネス課題」を、データを活用するかどうかに関係なく洗い出します。データを使うという制約が外されることで、色々なビジネス課題(仕事の「お困りごと」)が洗い出されることでしょう。

 

Step 2:データ活用の候補の抽出

では次に、Step2の「データ活用のテーマ候補の抽出」です。ビジネスの「お困りごと」である「ビジネス課題」の中から、どのようにして「データを使った方がよさそうなテーマ」を抽出するのでしょうか。例えば、次のような逆算アプローチで探していきます。

 

情報マネジメント

 

肝となるのが「Step 2-3」です。「Step 2-3」でデータ分析の内容だけでなく、そもそもデータ分析が必要かどうかの判断もします。もし、データ分析が必要であれば、その課題は「データ活用したほうがよさそうなテーマ」となります。そうでなければ、データ分析をしなくても解決できる課題、もしくはデータ分析の力を活用しても解決できない課題ということになります。

 

「Step 2-4」でどのようなデータが必要なのかを考え「Step 2-5」でそのようなデータが存在するのかを検討していきます。したがって「Step 2-3」で「データ活用したほうがよさそうなテーマ」とされても「Step 2-5」でデータが手元にないことが分かり「データ分析できない」となることがあります。もちろん、データが手元になくてもすぐに入手可能であるならば、その限りではありません。この場合、テーマ候補から外れます。これで、データ活用のテーマ候補が抽出されます。

 

Step 3:テーマ候補の評価と選定

テーマ候補が出そろったら、次にテーマ候補を先ほど説明した次の2つの軸で評価します。Step3の「テーマ候補と評価と選定」です。

・容易性
・インパクト

テーマを選定するとき「容易性×インパクト」の掛け算で考えていきます。

情報マネジメント

 

このとき「筋の良いテーマ」とは「簡単でインパクトが大きい」テーマです。複数のテーマ候補があるのなら、簡単でインパクトが大きい「筋の良いテーマ」を選びましょう、となります。しかし「簡単でインパクトが大きいテーマ」が、いつもあるわけではありません。多くのデータ活用のテーマ候補は「インパクトが大きいが難しいテーマ」(腰を据えて挑むテーマ)もしくは「簡単だけどインパクトの小さなテーマ」(積小為大なテーマ)になります。 

 

データ活用の経験値が少なく、まだデータ活用の成果があまり出ていないのなら「簡単だけどインパクトの小さなテーマ」(積小為大なテーマ)を優先すべきです。

情報マネジメント

 

理由は「簡単だけどインパクトの小さなテーマ」の場合、簡単に成果が出るため、成功体験をどんどん積めて、関わった人のデータ活用の能力を高めるからです。インパクトの小さなテ...

データ分析

 

ビッグデータやDX、AIなどの掛け声とともに、データ活用に取り組む機会も増えてきたのではないでしょうか。しかし、データ活用のテーマには、筋の良いものと悪いものがあります。知らず知らずのうちに筋の悪いテーマを選び、そのテーマに挑むと苦労も絶えません。どうせなら、筋の良いテーマを選び取り組みたいものです。今回は「上手くいくかどうかはテーマ設定次第」というお話しをします。

【目次】
1. 2つの軸
2.「容易性」とは?
3.「インパクト」とは?
4. テーマ設定の流れ
  Step 1:ビジネス課題の洗い出し
  Step 2:データ活用の候補の抽出
  Step 3:テーマ候補の評価と選定

【この連載の前回:(その289)比較というキーワードでチャレンジしよう へのリンク】

◆データ分析講座の注目記事紹介

 

1. 2つの軸

ここでは、テーマの筋の良し悪しを次の2つの軸で考えていきます。

  • 容易性
  • インパクト

情報マネジメント

 

2. 「容易性」とは?

「容易性」とは、どれだけ簡単に実現できるのか、ということです。もう少し具体的に言うと、テーマとしてあげられたビジネス課題の解決が、データを使ってどれだけ容易に実現できるのか、ということです。容易性の観点には、次の3つがあります。

  • 取得に関する容易性
  • 分析に関する容易性
  • 活用に関する容易性

情報マネジメント

 

3. 「インパクト」とは?

「インパクト」とは、データ活用したときに得られる「成果の大きさ」です。可能であればすべて「金額(円)」で表現するようにしましょう。

情報マネジメント

 

4. テーマ設定の流れ

テーマ設定の流れは、次にようになります。

  • Step 1:ビジネス課題の洗い出し
  • Step 2:データ活用の候補の抽出
  • Step 3:テーマ候補の評価と選定

 

Step 1:ビジネス課題の洗い出し

Step1の「ビジネス課題の洗い出し」のポイントは「先ず、データの存在を忘れて、解決すべきビジネス課題を考える」というところです。データ活用のテーマと聞くと「データで出来ること」を軸にテーマを探し始める人も少なくありません。「データで出来ること」を軸にテーマを探し始めると視野が狭くなり、場合によっては「データの可能性」を殺してしまうことがあります。データの可能性を殺すとは、データで課題解決できたテーマを見つけられず、データで解決する機会を奪い去ることを意味します。

 

そのため、ビジネスの「お困りごと」である「ビジネス課題」を、データを活用するかどうかに関係なく洗い出します。データを使うという制約が外されることで、色々なビジネス課題(仕事の「お困りごと」)が洗い出されることでしょう。

 

Step 2:データ活用の候補の抽出

では次に、Step2の「データ活用のテーマ候補の抽出」です。ビジネスの「お困りごと」である「ビジネス課題」の中から、どのようにして「データを使った方がよさそうなテーマ」を抽出するのでしょうか。例えば、次のような逆算アプローチで探していきます。

 

情報マネジメント

 

肝となるのが「Step 2-3」です。「Step 2-3」でデータ分析の内容だけでなく、そもそもデータ分析が必要かどうかの判断もします。もし、データ分析が必要であれば、その課題は「データ活用したほうがよさそうなテーマ」となります。そうでなければ、データ分析をしなくても解決できる課題、もしくはデータ分析の力を活用しても解決できない課題ということになります。

 

「Step 2-4」でどのようなデータが必要なのかを考え「Step 2-5」でそのようなデータが存在するのかを検討していきます。したがって「Step 2-3」で「データ活用したほうがよさそうなテーマ」とされても「Step 2-5」でデータが手元にないことが分かり「データ分析できない」となることがあります。もちろん、データが手元になくてもすぐに入手可能であるならば、その限りではありません。この場合、テーマ候補から外れます。これで、データ活用のテーマ候補が抽出されます。

 

Step 3:テーマ候補の評価と選定

テーマ候補が出そろったら、次にテーマ候補を先ほど説明した次の2つの軸で評価します。Step3の「テーマ候補と評価と選定」です。

・容易性
・インパクト

テーマを選定するとき「容易性×インパクト」の掛け算で考えていきます。

情報マネジメント

 

このとき「筋の良いテーマ」とは「簡単でインパクトが大きい」テーマです。複数のテーマ候補があるのなら、簡単でインパクトが大きい「筋の良いテーマ」を選びましょう、となります。しかし「簡単でインパクトが大きいテーマ」が、いつもあるわけではありません。多くのデータ活用のテーマ候補は「インパクトが大きいが難しいテーマ」(腰を据えて挑むテーマ)もしくは「簡単だけどインパクトの小さなテーマ」(積小為大なテーマ)になります。 

 

データ活用の経験値が少なく、まだデータ活用の成果があまり出ていないのなら「簡単だけどインパクトの小さなテーマ」(積小為大なテーマ)を優先すべきです。

情報マネジメント

 

理由は「簡単だけどインパクトの小さなテーマ」の場合、簡単に成果が出るため、成功体験をどんどん積めて、関わった人のデータ活用の能力を高めるからです。インパクトの小さなテーマであっても、その成果はりっぱな成果です。

 

「インパクトが大きいが難しいテーマ」(腰を据えて挑むテーマ)には年月が必要で、労の大きさを考えると、パフォーマンス効率は良いとは言えません。実現すれば「おぉー」という感嘆の声が聞こえるかもしれませんが、非常に大きな忍耐力が必要となります。

 

ですので、会社の生死を左右するとか、部署や製品にとって避けて通れないとか、挑むことが宿命付けられているとかでなければ「簡単でインパクトが大きいテーマ」(腰を据えて挑むテーマ)を選び、ガンガン成果を生み出し続けたほうがいいでしょう。

 

「ちりも積もれば山のとなる」ということで「簡単だけどインパクトの小さなテーマ」(積小為大なテーマ)に挑み小さなビジネス成果を積み上げることで、それなりの大きなビジネス成果へとなります。まさに、二宮尊徳の「積小為大」(小を積んで大を致す)です。

 

 

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この記事の著者

高橋 威知郎

データネクロマンサー/データ分析・活用コンサルタント (埋もれたデータに花を咲かせる、データ分析界の花咲じじい。それほど年齢は重ねてないけど)

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