営業データ分析の目的 データ分析講座(その16)

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情報マネジメント

◆ 営業データ分析の目的は、結局のところ3つだけだった

 「データ分析って、目的が重要だと本で読んだのですが、その目的を考えるのが苦手で」先日、某アパレル系の大企業に新設されたビッグデータ活用推進室(仮称)の責任者から聞かされた、つぶやきです。確かに、データ分析の書籍を読むと、必ずと言っていいほど、データ分析の目的の重要性が説かれています。データ分析に限らず、ビジネス活動全般に言えることでしょう。
でも、このデータ分析の目的を考えるのが、多くの人が苦手と勘違いしています。

1.営業系のデータ分析は、収益を上げて何ぼ

 「あなたの企業で、営業のデータ分析に求められていることは何でしょうか」こう質問すると、答えに詰まる方も結構います。何かしら回答する方も、言い方が悪いかもしれませんが、小難しい回答をします。恐らく、「データ分析」という用語が入っているがために、答えにくくなっているようです。では、次のように質問するとどうでしょうか。

 「営業に、求められていることは何でしょうか」

 こう聞くと、多くの人がサクッと答えます。例えば、「受注」や「売上を上げる」、「他の商品を購入してもらう」、「契約を継続してもらう」などです。要するに、「収益を上げる」ということにまとめられそうです。ということは、「営業のデータ分析に、求められていることは何でしょうか」の回答も似たような感じでよいのだと思います。例えば、「データ分析で収益を上げる」ではいかがでしょうか。恐らく回答としては間違っていません。データ分析で収益をあげられなければ、営業データ分析としては失敗でしょう。データ分析に限らず、営業にとって収益を上げることは至上命題です。

2. ビジネス系のデータ分析も、収益に繋がらないと意味がない

 営業系のデータ分析だけではありません。ビジネス系のデータ分析全般に同じことが言えます。例えば、工場の品質管理系のデータ分析や職場のヘルスケア系のデータ分析など、ビジネス上のデータ分析は、結局のところ収益に繋がることを期待されています。工場の品質管理系のデータ分析は、欠陥品の廃棄コストや検査コストの削減や、製品そのものの品質を向上し商品価値を高めるのに役立ちます。コストが下がり品質が高ければ、上手くいけば利益率の高い製品になるかもしれませんし、価格競争力も高めることができます。

 職場のヘルスケア系のデータ分析は、社員の健康(とくに心の病)の悪化による休職を防いだり、離職者を減らしたりすることができます。社員の教育費は馬鹿になりませんし、社員が育つまでにそれなりの期間が必要になります。休職や離職者などが増えることで、教育コストと育てた期間をどぶに捨てることになります。さらに、育った社員によってもたらされるであろう収益が無くなります。

 他にも、セキュリティ系のデータ分析、今流行りのIoT系のデータ分析、業務改善系のデータ分析なども、直接的か間接的かの違いはありますが、最終的に収益によいインパクトをもたらされることが、期待されています。多くの場合、収益の拡大か効率化です。収益そのものが拡大するか、収益を効率よく獲得できるようにするか、このどちらかでしょう。

3. 3つの営業データ分析の目的

 結局のところ、ビジネス系のデータ分析は、収益につながらないと評価されないし、実際に意味がありません。でも、どのような分析かによって、そのデータ分析目的が異なります。例えば、ヘルスケア系のデータ分析であれば離職率を下げ継続勤続年数を伸ばす、業務改善系のデータ分析であれば業務プロセスを見直したり一部をIT化することで生産性を上げる、などです。では、営業データ分析の目的はどうなるでしょうか。

 営業データ分析の目的は、大雑把に分けると3つしかありません。

  • 新顧客の獲得
  • 既存顧客のLTV(顧客生涯価値)の拡大
  • 既存顧客の離反防止

 「新顧客の獲得」は、文字通り新しい顧客を開拓すること。「既存顧客のLTV(顧客生涯価値)の拡大」は、獲得した顧客の客単価を増やすためのクロスセルやアップセル、顧客と長い付き合いをするために良好な関係を築き継続していくこと。「既存顧客の離反防止」は、解約されたり顧客との付き合いが切れること。

 私の経験上、営業データ分析の目的は、この3つのうちのどれかでした。もちろん、実際はもっと具体的ですが、ざっくり言うと、この3つのうちのどれかに当てはまります。もっと極端に言うと、顧客増(減らさない)か客単価UPの2つです。顧客増(減らさない)が先ほどの「新顧客の獲得」と「既存顧客の離反防止」に該当し、客単価UPが先ほどの「既存顧客のLTV(顧客生涯価値)の拡大」に該当します。LTV(顧客生涯価値)なので長期間の客単価ですが、LTV(顧客生涯価値)を考える前に一年一年の客単価UPのための営業データ分析することも多いです。

4. 深く考え込まず、3つのデータ分析から選べばいい

 要するに、営業データ分析の目的で迷ったら、「新顧客の獲得」か「既存顧客のLTV(顧客生涯価値)の拡大」、「既存顧客の離反防止」の3つのうちのどれかを選べばよい、...

 

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◆ 営業データ分析の目的は、結局のところ3つだけだった

 「データ分析って、目的が重要だと本で読んだのですが、その目的を考えるのが苦手で」先日、某アパレル系の大企業に新設されたビッグデータ活用推進室(仮称)の責任者から聞かされた、つぶやきです。確かに、データ分析の書籍を読むと、必ずと言っていいほど、データ分析の目的の重要性が説かれています。データ分析に限らず、ビジネス活動全般に言えることでしょう。
でも、このデータ分析の目的を考えるのが、多くの人が苦手と勘違いしています。

1.営業系のデータ分析は、収益を上げて何ぼ

 「あなたの企業で、営業のデータ分析に求められていることは何でしょうか」こう質問すると、答えに詰まる方も結構います。何かしら回答する方も、言い方が悪いかもしれませんが、小難しい回答をします。恐らく、「データ分析」という用語が入っているがために、答えにくくなっているようです。では、次のように質問するとどうでしょうか。

 「営業に、求められていることは何でしょうか」

 こう聞くと、多くの人がサクッと答えます。例えば、「受注」や「売上を上げる」、「他の商品を購入してもらう」、「契約を継続してもらう」などです。要するに、「収益を上げる」ということにまとめられそうです。ということは、「営業のデータ分析に、求められていることは何でしょうか」の回答も似たような感じでよいのだと思います。例えば、「データ分析で収益を上げる」ではいかがでしょうか。恐らく回答としては間違っていません。データ分析で収益をあげられなければ、営業データ分析としては失敗でしょう。データ分析に限らず、営業にとって収益を上げることは至上命題です。

2. ビジネス系のデータ分析も、収益に繋がらないと意味がない

 営業系のデータ分析だけではありません。ビジネス系のデータ分析全般に同じことが言えます。例えば、工場の品質管理系のデータ分析や職場のヘルスケア系のデータ分析など、ビジネス上のデータ分析は、結局のところ収益に繋がることを期待されています。工場の品質管理系のデータ分析は、欠陥品の廃棄コストや検査コストの削減や、製品そのものの品質を向上し商品価値を高めるのに役立ちます。コストが下がり品質が高ければ、上手くいけば利益率の高い製品になるかもしれませんし、価格競争力も高めることができます。

 職場のヘルスケア系のデータ分析は、社員の健康(とくに心の病)の悪化による休職を防いだり、離職者を減らしたりすることができます。社員の教育費は馬鹿になりませんし、社員が育つまでにそれなりの期間が必要になります。休職や離職者などが増えることで、教育コストと育てた期間をどぶに捨てることになります。さらに、育った社員によってもたらされるであろう収益が無くなります。

 他にも、セキュリティ系のデータ分析、今流行りのIoT系のデータ分析、業務改善系のデータ分析なども、直接的か間接的かの違いはありますが、最終的に収益によいインパクトをもたらされることが、期待されています。多くの場合、収益の拡大か効率化です。収益そのものが拡大するか、収益を効率よく獲得できるようにするか、このどちらかでしょう。

3. 3つの営業データ分析の目的

 結局のところ、ビジネス系のデータ分析は、収益につながらないと評価されないし、実際に意味がありません。でも、どのような分析かによって、そのデータ分析目的が異なります。例えば、ヘルスケア系のデータ分析であれば離職率を下げ継続勤続年数を伸ばす、業務改善系のデータ分析であれば業務プロセスを見直したり一部をIT化することで生産性を上げる、などです。では、営業データ分析の目的はどうなるでしょうか。

 営業データ分析の目的は、大雑把に分けると3つしかありません。

  • 新顧客の獲得
  • 既存顧客のLTV(顧客生涯価値)の拡大
  • 既存顧客の離反防止

 「新顧客の獲得」は、文字通り新しい顧客を開拓すること。「既存顧客のLTV(顧客生涯価値)の拡大」は、獲得した顧客の客単価を増やすためのクロスセルやアップセル、顧客と長い付き合いをするために良好な関係を築き継続していくこと。「既存顧客の離反防止」は、解約されたり顧客との付き合いが切れること。

 私の経験上、営業データ分析の目的は、この3つのうちのどれかでした。もちろん、実際はもっと具体的ですが、ざっくり言うと、この3つのうちのどれかに当てはまります。もっと極端に言うと、顧客増(減らさない)か客単価UPの2つです。顧客増(減らさない)が先ほどの「新顧客の獲得」と「既存顧客の離反防止」に該当し、客単価UPが先ほどの「既存顧客のLTV(顧客生涯価値)の拡大」に該当します。LTV(顧客生涯価値)なので長期間の客単価ですが、LTV(顧客生涯価値)を考える前に一年一年の客単価UPのための営業データ分析することも多いです。

4. 深く考え込まず、3つのデータ分析から選べばいい

 要するに、営業データ分析の目的で迷ったら、「新顧客の獲得」か「既存顧客のLTV(顧客生涯価値)の拡大」、「既存顧客の離反防止」の3つのうちのどれかを選べばよい、ということです。大概の場合、この3つのどれかに該当しますし、この3つであれば、どのような営業データ分析をすればよいのかが、ほぼ見えています。

 どのような営業データ分析をすればよいのかが見えているといっても、もちろんどのようなデータが蓄積されているのかで、できるデータ分析が変わってきますが……

 それでも、営業データ分析の場合、まったくデータが蓄積されていない、というケースは非常に稀なので、非常にデータ分析しやすい分野です。なぜならば、どのような企業にも財務データはありますし、もっと言うと受注データや取引履歴データなどの売上に関するデータは、必ずあります。これが無いと、BLやPLなどの財務諸表が作れません。

 まとめると、「データ分析の目的は何ですか?」と聞くと、多くの場合考え込む人が多いですが、営業データ分析に限れば、幸いにもデータ分析目的は決まっています。そして、営業データ分析方法もある程度決まったものがあり、さらにデータも必要最低限のものがあります。この連載で提唱しているのは、DELTA法という営業データ分析の仕組みであり営業データ分析の方法論であり、具体的な営業データ分析のやり方です。

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この記事の著者

高橋 威知郎

データネクロマンサー/データ分析・活用コンサルタント (埋もれたデータに花を咲かせる、データ分析界の花咲じじい。それほど年齢は重ねてないけど)

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