SOR理論とデータ分析の「XYZフレームワーク」 データ分析講座(その158)

更新日

投稿日

 

♦ レコメンド情報示し、確実なアクションを導く

 今回は「SOR理論とデータ分析の『XYZフレームワーク』」の解説です。

【目次】

1. SR理論から考えるデータ分析

2. SOR理論から考えるデータ分析

3. データ分析は「XYZフレームワーク」で整理

4. 調整変数とは

5. モニタリング情報とレコメンド情報

 

1. SR理論から考えるデータ分析

 行動心理学の世界では、SR理論(Stimulus-Response Theory)という考え方があります。行動を「刺激」(S:Stimulus)に対する「反応」(R:Response)としてとらえたものです。データ分析の枠組みで語ると「X(説明変数)」と「Y(目的変数)」の概念で捉えることができます。

  • 刺激(S:Stimulus)  :X(説明変数)
  • 反応(R:Response):Y(目的変数)

 

データ分析

図1. SR理論

 SR理論の概念はデータ活用を考える上で幅広く使えます。広告(X)を打てば売上(Y)が上がる。機器の稼働時間(X)が長くなると歩留まり(Y)が悪化する。など、色々と応用できそうです。しかし、ここで次のような問題が起こります。

 それは「同じ刺激(S:Stimulus)に対し、常に同じ反応(R:Response)が起こるわけではない」という問題です。例えば、広告打ったからといって、すべての人がその商品を購買するわけではありません。その人がどのような人なのかに依存します。例えば、稼働時間と歩留まりが悪化するタイミングの関係は、すべての工場で同じではありません。その日の気温や湿度、工員の熟練度などに依存します。

 

2. SOR理論から考えるデータ分析

 SR理論に「有機体(O:Organism)」という概念を付け加えたSOR理論(Stimulus-Organism-Response Theory)というものがあります。「有機体(O:Organism)」とは人間であったり動物であったりします。刺激(S:Stimulus)に対する反応(R:Response)だけでは説明できない現象を「有機体(O:Organism)」という概念を導入することで説明できるようにするものです。

 

3. データ分析は「XYZフレームワーク」で整理

 ビジネス系のデータ分析の世界であれば「有機体(O:Organism)」は生物個体だけでなく、AIであったり装置であったり工場のラインなど生物以外も付け加わります。つまり、同じX(説明変数)を与えても、個人の属性や工場の状況などにより、Y(目的変数)の値が変わる、ということです。

  • 刺激(S:Stimulus)     :X(説明変数)
  • 有機体(O:Organism):Z(調整変数 or 説明変数)
  • 反応(R:Response)    : Y(目的変数)

 

データ分析

図2. XYZフレームワーク

 

4. 調整変数とは

 ここでは「YとXの関係はZによって変化する」ということを表現するために調整変数という概念を使います。例えば「広告」(X)と「購買」(Y)の関係性は「個人属性」(Z)によって異なる「工場の稼働時間」(X)と「歩留まり悪化のタイミング」(Y)の関係性は「天候(気温や湿度など)」(Z)によって異なる、といったことです。

 調整変数は、説明変数と一緒に扱うこともありますが、意識的に区別しておいた方がよいでしょう。

 

5. モニタリング情報とレコメンド情報

 XYZの3種類(説明変数X・調整変数Z・目的変数Y)のデータを分析することで、例えば以下のような2種類の情報を得ることができます。

  • レコメンド情報
  • モニタリング情報

 

データ分析

図3. レコメンド情報とモニタリング情報


 レコメンド情報とは、どのような「刺激(S:Stimulus)」(アクションなど)をすべきか、という情報です。モニタリング情報とは「刺激(S:Stimulus)」を与えた結果、どうなったのかという「反応(R:Response)」に関する情報です。通常「見える化」といった場合、こちらのモニタリング情報を指すことが多いようです。

 問題なのは「反応(R:Response)」に関するデータだけを集めてしまい...

 

♦ レコメンド情報示し、確実なアクションを導く

 今回は「SOR理論とデータ分析の『XYZフレームワーク』」の解説です。

【目次】

1. SR理論から考えるデータ分析

2. SOR理論から考えるデータ分析

3. データ分析は「XYZフレームワーク」で整理

4. 調整変数とは

5. モニタリング情報とレコメンド情報

 

1. SR理論から考えるデータ分析

 行動心理学の世界では、SR理論(Stimulus-Response Theory)という考え方があります。行動を「刺激」(S:Stimulus)に対する「反応」(R:Response)としてとらえたものです。データ分析の枠組みで語ると「X(説明変数)」と「Y(目的変数)」の概念で捉えることができます。

  • 刺激(S:Stimulus)  :X(説明変数)
  • 反応(R:Response):Y(目的変数)

 

データ分析

図1. SR理論

 SR理論の概念はデータ活用を考える上で幅広く使えます。広告(X)を打てば売上(Y)が上がる。機器の稼働時間(X)が長くなると歩留まり(Y)が悪化する。など、色々と応用できそうです。しかし、ここで次のような問題が起こります。

 それは「同じ刺激(S:Stimulus)に対し、常に同じ反応(R:Response)が起こるわけではない」という問題です。例えば、広告打ったからといって、すべての人がその商品を購買するわけではありません。その人がどのような人なのかに依存します。例えば、稼働時間と歩留まりが悪化するタイミングの関係は、すべての工場で同じではありません。その日の気温や湿度、工員の熟練度などに依存します。

 

2. SOR理論から考えるデータ分析

 SR理論に「有機体(O:Organism)」という概念を付け加えたSOR理論(Stimulus-Organism-Response Theory)というものがあります。「有機体(O:Organism)」とは人間であったり動物であったりします。刺激(S:Stimulus)に対する反応(R:Response)だけでは説明できない現象を「有機体(O:Organism)」という概念を導入することで説明できるようにするものです。

 

3. データ分析は「XYZフレームワーク」で整理

 ビジネス系のデータ分析の世界であれば「有機体(O:Organism)」は生物個体だけでなく、AIであったり装置であったり工場のラインなど生物以外も付け加わります。つまり、同じX(説明変数)を与えても、個人の属性や工場の状況などにより、Y(目的変数)の値が変わる、ということです。

  • 刺激(S:Stimulus)     :X(説明変数)
  • 有機体(O:Organism):Z(調整変数 or 説明変数)
  • 反応(R:Response)    : Y(目的変数)

 

データ分析

図2. XYZフレームワーク

 

4. 調整変数とは

 ここでは「YとXの関係はZによって変化する」ということを表現するために調整変数という概念を使います。例えば「広告」(X)と「購買」(Y)の関係性は「個人属性」(Z)によって異なる「工場の稼働時間」(X)と「歩留まり悪化のタイミング」(Y)の関係性は「天候(気温や湿度など)」(Z)によって異なる、といったことです。

 調整変数は、説明変数と一緒に扱うこともありますが、意識的に区別しておいた方がよいでしょう。

 

5. モニタリング情報とレコメンド情報

 XYZの3種類(説明変数X・調整変数Z・目的変数Y)のデータを分析することで、例えば以下のような2種類の情報を得ることができます。

  • レコメンド情報
  • モニタリング情報

 

データ分析

図3. レコメンド情報とモニタリング情報


 レコメンド情報とは、どのような「刺激(S:Stimulus)」(アクションなど)をすべきか、という情報です。モニタリング情報とは「刺激(S:Stimulus)」を与えた結果、どうなったのかという「反応(R:Response)」に関する情報です。通常「見える化」といった場合、こちらのモニタリング情報を指すことが多いようです。

 問題なのは「反応(R:Response)」に関するデータだけを集めてしまい、そのデータを集計しモニタリング情報として現場に提供するケースです。

 例えば「売り上げが悪化した」とか「生産の歩留まり(良品の割合)が悪化した」という結果だけみせられても、具体的に何をするのがいいのかは、ベテランか相当センスの良い方でないとみえこないことでしょう。

 そのため、アクション結果である「モニタリング情報」を現場に提供するとともに、何をすべきかという「レコメンド情報」も併せて現場に提供するのです。この2種類の情報(レコメンド情報とモニタリング情報)を「見える化」するためには、この2種類の情報(レコメンド情報とモニタリング情報)を生み出す必要があります。それが、データ分析です。

 

データ分析

図4. データ分析とアクション

 この2種類の情報にデータ分析を実施して現場に提供することでより良いアクションに繋げます。

 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

高橋 威知郎

データネクロマンサー/データ分析・活用コンサルタント (埋もれたデータに花を咲かせる、データ分析界の花咲じじい。それほど年齢は重ねてないけど)

データネクロマンサー/データ分析・活用コンサルタント (埋もれたデータに花を咲かせる、データ分析界の花咲じじい。それほど年齢は重ねてないけど)


「情報マネジメント一般」の他のキーワード解説記事

もっと見る
データ分析文化を組織内で広めたいなら、Excelで データ分析講座(その72)

◆ 表計算ソフトととしての Excel  多くの企業が使っている表計算ソフトがあります。Excelです。Excelは無料ではなく、有料のソフトウェア...

◆ 表計算ソフトととしての Excel  多くの企業が使っている表計算ソフトがあります。Excelです。Excelは無料ではなく、有料のソフトウェア...


即時的データ分析・活用 データ分析講座(その170)

  ◆ 先行き不透明な時代に求められる”即時的”データ分析・活用  データ分析なり予測モデル構築をする際「これま...

  ◆ 先行き不透明な時代に求められる”即時的”データ分析・活用  データ分析なり予測モデル構築をする際「これま...


データから根本原因を考えるフレームワーク データ分析講座(その246)

  多くの人は、普段から何かしらの数値を眺めているかと思います。成績表やTOEICの点数、体重、売上、受注件数、リード件数、PV(ページビ...

  多くの人は、普段から何かしらの数値を眺めているかと思います。成績表やTOEICの点数、体重、売上、受注件数、リード件数、PV(ページビ...


「情報マネジメント一般」の活用事例

もっと見る
守秘義務は情報社会の命綱

  1. 顧客データの管理  O社は、技術志向のエンジニアリング会社です。 扱う製品の設計図には、さまざまな情報が含まれています。クライアントから...

  1. 顧客データの管理  O社は、技術志向のエンジニアリング会社です。 扱う製品の設計図には、さまざまな情報が含まれています。クライアントから...


‐情報収集と開発活動、営業の役割‐  製品・技術開発力強化策の事例(その12)

   前回の事例その11に続いて解説します。製品開発は完了したがどのように売れば良いのか、ベンチャ-ビジネスの相談や異業種交流の会合では特に売り方に関する...

   前回の事例その11に続いて解説します。製品開発は完了したがどのように売れば良いのか、ベンチャ-ビジネスの相談や異業種交流の会合では特に売り方に関する...


‐時代の流れを意識した開発テ-マの設定‐  製品・技術開発力強化策の事例(その5)

 前回の事例その4に続いて解説します。時代の流れに沿う開発テ-マとして、最近では、高齢者介護機器、環境関連機器、省エネ機器、情報技術(IT)等に関心が注が...

 前回の事例その4に続いて解説します。時代の流れに沿う開発テ-マとして、最近では、高齢者介護機器、環境関連機器、省エネ機器、情報技術(IT)等に関心が注が...