データに基づくポリティクスと意思決定 データ分析講座(その171)

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データ分析

 

◆ データに基づくポリティクスと意思決定

 前回もお話しましたが、変化が激しく先々の状況が読めないときほど情報を集め、適切な状況判断のもと意思決定を行い、状況の変化に合わせた対応が求められることでしょう。思惑や願望ではどうにもならないことも多いのです。新型コロナ騒動などその最たる例かと思います。自然を相手に、政治的な思惑や人々の願望は届きません。今回は「データにもとづくポリティクス(政治)と意思決定」というお話しをします。

【目次】

1. 衆愚政治
 (1)人相手のポリティクスの限界
 (2)自然災害相手のポリティクス
 (3)ファクトを正しく捉え洞察し意思決定するしかない
2. データに基づいたデータドリブンなビジネス
3. 今回のまとめ

 

1. 衆愚政治

 衆愚(しゅうぐ)政治と聞くと、古代ギリシアの末期が思い浮かびます。民主主義を揶揄(やゆ)して用いられる言葉です。

 衆愚政治は、Wikipediaによると次のようです。

 有権者の大半が知的訓練を仮に受けていても、適切なリーダーシップが欠如(けつじょ)していたり、判断力が不十分な人間に参政権が付与されている状況。その愚(おろ)かさゆえに互いに譲り合い(互譲)や合意形成ができず、政策が停滞してしまったり、愚かな政策が実行される状況を指す。また有権者がおのおののエゴイズムを追求して意思決定する政治状況を指す。エゴイズムは自己の積極的利益の追求とは限らず、恐怖からの逃避、困難や不快さの回避や意図的な無視、他人まかせの機会主義、課題の先延ばしなどを含む(引用:Wikipediaから、https://ja.wikipedia.org/、最終更新 2020年12月30日)。

 なかなか耳の痛い話ですが、英国の首相チャーチルは「民主主義は最悪の政治といえる。これまで試みられてきた民主主義以外の全ての政治体制を除けばだが」と述べました。今のところ、民主主義が最良であるとも解釈できます。

(1)人相手のポリティクスの限界

 国民が投票して政治家を選ぶというシステムでは、自(おの)ずと人相手のポリティクスになってしまいます。ビジネスもそうです。人が物やサービスを購入するのですから、自ずと人相手になります。ポリティクスで考えると「票になるかどうか」、ビジネスで考えると「お金になるかどうか」が重要視されるでしょう。そう考えると「自然災害相手のポリティクスは成り立つのか」という命題が登場してきます。

(2)自然災害相手のポリティクス

 紀元前の古代中国・春秋時代の大国である斉の有名な国家方針の一つに「水を治めるものは国を治める」というものがあります。このような自然災害は社会秩序や経済に打撃を与え、人々の生活を不安に陥れるからです。この場合は、水害や干ばつなどを指していますが、もう少し拡大し自然災害とすれば「自然災害を治めるものは国を治める」となるかもしれません。

 「自然災害を治める」とは、自然災害の災禍をできるだけ小さくすることです。そう考えると「自然災害相手のポリティクスは成り立つ」となるかと思います。成り立つどころか、それがポリティクスの本分ではないかとさえ感じます。

(3)ファクトを正しく捉え洞察し意思決定するしかない

 ここで、天下国家を論ずるつもりもありませんし、日本や諸外国の政府や政策にどうこう言うつもりもありません。自然災害相手に、人相手にしたような対処をしたところで、政治的な思惑は通じません。非常に単純なことですが、意外と難しいことでもあります。

 人を相手にするとき、ファクト(事実)を捻(ね)じ曲げ納得させてしまおうというケースが多々見受けられます。しかし自然災害相手に同様の対応を行うと大変です。自然災害は、人がファクトを捻じ曲げようがお構いなしです。もはや、データにもとづくポリティクスと意思決定が求められているのではないかと思います。

 

2. データに基づいたデータドリブンなビジネス

 これは、ポリティクスの世界だけの話ではありません。ビジネスの世界も同様です。治水であれば土木関係、疫病(えきびょう)であれば、医療関係など直接的な災禍に関わるビジネスでない限り50年に1度、100年に1度など、たまにしか来ない災禍に備え、ビジネスの世界でできることは限られてきます。

 例えば、ビジネスの世界でできることは、災禍の影響をできるだけ小さくする努力をし、方針を立てる(もしくは立てておく)ことでしょう。その場合、ファクトを正しく捉え洞察し意思決定するべきでしょう。経験や勘などではなく、データに基づいたデータドリブンなビジネスです。

 

3. 今回のまとめ

 今回は「データに基づくポリティクスと意思決定」というお話しをしました。国民が投票し政治家を選ぶというシステムでは、自(おの)ずと人相手のポリティクスになります。ポリティクスで考えると「票になるかどうか」、ビジネスで考えると「お金になるかどうか」が、重要視されることでしょう。しかし自然災害相手に、人を相手にしたような対処をしたところで政治的な思惑は通じません。人を相手にするとき、ファクトを捻じ曲げ納得させてしまおうというケースが多々見受けられますが、自然災害相手にファクトを捻じ曲げようが自然はお構いなしです。もはや、データに基づくポリティクスと意思決定が求められているのではないかと思います。これは、ポリティクスの世界だけの話しではありません。ビジネスの世界も同様です。ビジネスの世界でできるのは、災禍の影響をできるだけ小さくする努力をし、方針を立てることでしょう。その場合、ファクトを正しく捉え洞察し意思決定するべきです。

 

 次回に続きます。


この記事の著者

高橋 威知郎

データネクロマンサー/データ分析・活用コンサルタント (埋もれたデータに花を咲かせる、データ分析界の花咲じじい。それほど年齢は重ねてないけど)

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