新規顧客のターゲット選定 データ分析講座(その88)

更新日

投稿日

データ分析

◆ 受注履歴から探る新規顧客ターゲット選定のためのデータ分析

 受注に関するデータはどのような会社にもある価値のあるデータです。これがなければ売上が計上できません。このような受注履歴や売上データからだけでも何かしら分析ができます。

 例えば、法人相手にビジネスをしているBtoB企業の場合、購入者と販売した商材が直接紐づきます。一般消費者相手にビジネスしているBtoC企業であっても、購入者と販売した商材を結ぶデータを持つ企業もあります。通販やエステ、自動車販売、不動産、英会話スクールなどです。

 このような購入者と販売した商材が直接紐づいたデータ、いわゆる受注履歴データを使うことで、色々なデータ分析ができます。今回は「受注履歴から探る新規顧客ターゲット選定のためのデータ分析」というお話しをします。

1.セールスアナリティクス:3大テーマ

 マーケティンや営業生産性など販促効率を高めるデータ分析といわれているセールスアナリティクスには、次の3つの大きなテーマがあります。

  • (1) 新規顧客の獲得
  • (2) 既存顧客の離反阻止
  • (3) 既存顧客の取引拡大

 セールスアナリティクスのビジネス成果として、次の2つがあります。

  • 顧客数
  • LTV(顧客生涯価値=1人の顧客が生涯で払う金額の合計

 顧客数を増やすには(1)の「新規顧客の獲得」と(2)の「既存顧客の離反阻止」が必要です。単に新規顧客を増やしただけではだめで、いかに離反顧客を減らすのかも重要になってきます。

 LTVとは「年間取引額×取引年数」です。したがって(2)の「既存顧客の離反阻止」することで長いお付き合いを目指しつつ(3)の「既存顧客の取引拡大」を目指します。そう考えると、キーになるのは(2)の「既存顧客の離反阻止」になります。しかし、既存顧客の離反は、顧客がいなければ始まりません。その顧客を増やすのが(1)の「新規顧客の獲得」です。

2. データ分析:理想の新規顧客

 理想の新規顧客とはどのようなお客様でしょうか。人によって答えは変わってくるとは思いますが、LTVの視点から考えると、「長く取引を継続してもらえ、かつ、取引額も大きなお客様」つまり、LTVの大きくなりそうなお客様が、理想の新規顧客ということです。

データ分析

3. データ分析:いまどうなっているのか?

 受注履歴データから、各顧客ごとの取引開始日、取引期間、年間取引額、取引商材、担当営業のことなどが分かるかと思います。また各顧客ごとの業種/業態、企業規模、業績、取引部署のような情報も分かることでしょう。すぐ実行できるのは「今どうなっているのか?」の分析です。

4.  データ分析:正確なLTV

 例えば、現時点の累積取引額は「仮想LTV」として計算します。取引が停止している顧客であれば「仮想LTV」ではなく「正確なLTV」となることでしょう。取引が停止しなければ、正確なLTVは計算できませんが、現状どの程度の規模の取引になったのかは分かります。

 「取引停止中」と「取引中」の顧客に分け「取引年数(ヨコ軸)× 平均年間取引額(タテ軸)」のマップ(顧客をマップ上にプロット=置く)を作ることで、どの顧客のLTVが高くなりそうなのかが、何となく見えてくるのではないでしょうか。マップの右上にプロットされている顧客が理想です。

データ分析

 取引先のデータが十分にあれば、例えば「2000年に取引開始した企業」という形でデータを限定させ1年、5年、10年で取引が終了した企業、いまだ取引が継続している企業などを集計するといいでしょう。このような、集計だけでも見えてくることはたくさんあります。

5. データ分析:入口は何か?

 課題は「理想の新規顧客」の中から「LTVの大きくなりそうな顧客」を見つけることです。それには取引開始時の状況に注目することが重要で、まずどのような顧客と、どのような取引を行ってきたのかを調べます。例えば、先程挙げたLTVの大きい顧客の業種/業態、企業規模、業績、取引部署、取引商材、担当営業などです。記録として残っているもので十分です。

 新規取引が始まってからの売上記録を調べることで、今後どのような顧客と、どのような取引をするといいのかが分かってくるでしょう。ちなみに、LTVを見積もりたい場合は次の「LTV予測モデル」を構築すればいいでしょう。

6. データ分析:LTV予測モデル

 もし「LTV予測モデル」を構築してあるようでしたら、現在のターゲット企業の中で、最もLTVの予測値の高い企業を軸に営業・販促活動を展開することが考えられます。当然ながら、このLTVの予測値は単なる目安に過ぎません。未来に対し何の情報もなくターゲット企業を選択するぐらいであれば、何かしら情報があったほうがいい、といった感じです。このように、受注履歴データだけでも、新規顧客ターゲット選定のためのデータ分析を実施することができます。

 
 
 
 
 

7. 顧客生涯価値が高くなりそうな顧客との初取引時の状況

 今回は「受注履歴から探る新規顧客ターゲット選定のためのデータ分析」というお話しをしました。

 法人相手にビジネスを...

データ分析

◆ 受注履歴から探る新規顧客ターゲット選定のためのデータ分析

 受注に関するデータはどのような会社にもある価値のあるデータです。これがなければ売上が計上できません。このような受注履歴や売上データからだけでも何かしら分析ができます。

 例えば、法人相手にビジネスをしているBtoB企業の場合、購入者と販売した商材が直接紐づきます。一般消費者相手にビジネスしているBtoC企業であっても、購入者と販売した商材を結ぶデータを持つ企業もあります。通販やエステ、自動車販売、不動産、英会話スクールなどです。

 このような購入者と販売した商材が直接紐づいたデータ、いわゆる受注履歴データを使うことで、色々なデータ分析ができます。今回は「受注履歴から探る新規顧客ターゲット選定のためのデータ分析」というお話しをします。

1.セールスアナリティクス:3大テーマ

 マーケティンや営業生産性など販促効率を高めるデータ分析といわれているセールスアナリティクスには、次の3つの大きなテーマがあります。

  • (1) 新規顧客の獲得
  • (2) 既存顧客の離反阻止
  • (3) 既存顧客の取引拡大

 セールスアナリティクスのビジネス成果として、次の2つがあります。

  • 顧客数
  • LTV(顧客生涯価値=1人の顧客が生涯で払う金額の合計

 顧客数を増やすには(1)の「新規顧客の獲得」と(2)の「既存顧客の離反阻止」が必要です。単に新規顧客を増やしただけではだめで、いかに離反顧客を減らすのかも重要になってきます。

 LTVとは「年間取引額×取引年数」です。したがって(2)の「既存顧客の離反阻止」することで長いお付き合いを目指しつつ(3)の「既存顧客の取引拡大」を目指します。そう考えると、キーになるのは(2)の「既存顧客の離反阻止」になります。しかし、既存顧客の離反は、顧客がいなければ始まりません。その顧客を増やすのが(1)の「新規顧客の獲得」です。

2. データ分析:理想の新規顧客

 理想の新規顧客とはどのようなお客様でしょうか。人によって答えは変わってくるとは思いますが、LTVの視点から考えると、「長く取引を継続してもらえ、かつ、取引額も大きなお客様」つまり、LTVの大きくなりそうなお客様が、理想の新規顧客ということです。

データ分析

3. データ分析:いまどうなっているのか?

 受注履歴データから、各顧客ごとの取引開始日、取引期間、年間取引額、取引商材、担当営業のことなどが分かるかと思います。また各顧客ごとの業種/業態、企業規模、業績、取引部署のような情報も分かることでしょう。すぐ実行できるのは「今どうなっているのか?」の分析です。

4.  データ分析:正確なLTV

 例えば、現時点の累積取引額は「仮想LTV」として計算します。取引が停止している顧客であれば「仮想LTV」ではなく「正確なLTV」となることでしょう。取引が停止しなければ、正確なLTVは計算できませんが、現状どの程度の規模の取引になったのかは分かります。

 「取引停止中」と「取引中」の顧客に分け「取引年数(ヨコ軸)× 平均年間取引額(タテ軸)」のマップ(顧客をマップ上にプロット=置く)を作ることで、どの顧客のLTVが高くなりそうなのかが、何となく見えてくるのではないでしょうか。マップの右上にプロットされている顧客が理想です。

データ分析

 取引先のデータが十分にあれば、例えば「2000年に取引開始した企業」という形でデータを限定させ1年、5年、10年で取引が終了した企業、いまだ取引が継続している企業などを集計するといいでしょう。このような、集計だけでも見えてくることはたくさんあります。

5. データ分析:入口は何か?

 課題は「理想の新規顧客」の中から「LTVの大きくなりそうな顧客」を見つけることです。それには取引開始時の状況に注目することが重要で、まずどのような顧客と、どのような取引を行ってきたのかを調べます。例えば、先程挙げたLTVの大きい顧客の業種/業態、企業規模、業績、取引部署、取引商材、担当営業などです。記録として残っているもので十分です。

 新規取引が始まってからの売上記録を調べることで、今後どのような顧客と、どのような取引をするといいのかが分かってくるでしょう。ちなみに、LTVを見積もりたい場合は次の「LTV予測モデル」を構築すればいいでしょう。

6. データ分析:LTV予測モデル

 もし「LTV予測モデル」を構築してあるようでしたら、現在のターゲット企業の中で、最もLTVの予測値の高い企業を軸に営業・販促活動を展開することが考えられます。当然ながら、このLTVの予測値は単なる目安に過ぎません。未来に対し何の情報もなくターゲット企業を選択するぐらいであれば、何かしら情報があったほうがいい、といった感じです。このように、受注履歴データだけでも、新規顧客ターゲット選定のためのデータ分析を実施することができます。

 
 
 
 
 

7. 顧客生涯価値が高くなりそうな顧客との初取引時の状況

 今回は「受注履歴から探る新規顧客ターゲット選定のためのデータ分析」というお話しをしました。

 法人相手にビジネスをしているBtoB企業であれば、必ず持っているデータの活用です。このデータを使うことで、新規顧客のターゲット選定ができます。この時できれば理想の新規顧客を選びたいものです。では理想の新規顧客とは、どのようなお客様でしょうか。

 LTVの視点から考えると「長く取引を継続してもらえ、金額も大きなお客様」です。例えば今までの累積取引額と取引年数から「仮想LTV」を計算します。取引が停止している顧客であれば「仮想LTV」ではなく「正確なLTV」になります。あとは「取引年数(ヨコ軸)× 平均年間取引額(タテ軸)」のマップ(顧客をマップ上にプロット)を作り、マップの右上にプロットされている顧客から、どのような顧客がLTVが高くなりそうなのか予測していきます。

 この時「LTVが高くなりそうな顧客の、初取引時の状況」を分析します。入口の分析です。どのような顧客と、どのような取引を行ってきたのかを調べ、新規顧客のターゲット選定に役立てます。若干のデータ整備が必要になるかもしれませんが、興味ある方は一度チャレンジしてみてください。何かしら見えてくることがあると思います。

   続きを読むには・・・


この記事の著者

高橋 威知郎

データネクロマンサー/データ分析・活用コンサルタント (埋もれたデータに花を咲かせる、データ分析界の花咲じじい。それほど年齢は重ねてないけど)

データネクロマンサー/データ分析・活用コンサルタント (埋もれたデータに花を咲かせる、データ分析界の花咲じじい。それほど年齢は重ねてないけど)


「情報マネジメント一般」の他のキーワード解説記事

もっと見る
顧客のチャーン予測(離反予測) データ分析講座(その250)

  よくあるデータ活用のテーマの1つに、顧客のチャーン予測(離反予測)というものがあり、離反率をはじき出すことができます。離反率は、顧客満...

  よくあるデータ活用のテーマの1つに、顧客のチャーン予測(離反予測)というものがあり、離反率をはじき出すことができます。離反率は、顧客満...


時系列データ データ分析講座(その33)

◆ 異常検知とデータ分析は、切っても切り離せない  モニタリングする指標の多くは、時系列データといわれるものです。時系列データとは、一定間隔(例:1...

◆ 異常検知とデータ分析は、切っても切り離せない  モニタリングする指標の多くは、時系列データといわれるものです。時系列データとは、一定間隔(例:1...


最近多いケーススタディ⑥「モニタリング指標の異常検知」 データ分析講座(その193)

    データを使い販売力を効率的に高めるセールスアナリティクスには、3つの典型的なテーマがあります。 新規顧客の獲得 既...

    データを使い販売力を効率的に高めるセールスアナリティクスには、3つの典型的なテーマがあります。 新規顧客の獲得 既...


「情報マネジメント一般」の活用事例

もっと見る
電子メール、簡潔過ぎると逆効果

◆電子メール:多忙な人に確実な返信をもらうテクニック  皆様は仕事で電子メールを一日に何通受信しますか、企業の従業員数、所属部署、職務、職位などでも...

◆電子メール:多忙な人に確実な返信をもらうテクニック  皆様は仕事で電子メールを一日に何通受信しますか、企業の従業員数、所属部署、職務、職位などでも...


生産スピード向上と品質管理

 電子メールやインターネットの普及により、ビジネスのグローバル化が大きく進みましたが、IT技術の進歩は、品質管理の方法も進歩させました。20数年前は製造条...

 電子メールやインターネットの普及により、ビジネスのグローバル化が大きく進みましたが、IT技術の進歩は、品質管理の方法も進歩させました。20数年前は製造条...


ソーシャルメディアデータの解析事例:異分野研究から得られる共通した目的とは

 2020年、コロナウィルス感染の問題が大きくなり始めた頃、少人数の開催ということで、ソーシャルメディアデータ解析を専門にされている先生の講演会を聞く...

 2020年、コロナウィルス感染の問題が大きくなり始めた頃、少人数の開催ということで、ソーシャルメディアデータ解析を専門にされている先生の講演会を聞く...