データ活用の可能性を高めるたった1つのこと データ分析講座(その200)

更新日

投稿日

 

 

せっかく、データ集計したり分析したり、予測モデルを作って予測値をアウトプットしても、現場で活用されないことは多々あります。現場でのデータ活用の可能性の高め方は、色々なやり方があります。その中で、私が最重要だと感じている1つのやり方を説明します。今回は、「データ活用の可能性を高めるたった1つのこと」というお話しをします。

前回と前々回からの続きの話題になります。

【目次】

1.系統図法で問題を課題化し解決策を考える流れ
(1)何を見せればいいのか?
(2)どう動けばいいのか示さないと活用されない
2.「解決策」(アクション)とのつながりは最重要!
(1)ダメなケース
(2)良いケース

 

1.系統図法で問題を課題化し解決策を考える流れ

前回と前々回の復習です。前々回は、「データ分析上必須な2つのロジカルシンキング」というお話をさせて頂きました。この中で、系統図法で問題を課題化し解決策を考える流れを紹介しました。以下です。

 

【1】お困りごと(問題)の設定
【2】問題の要因(原因)の洗い出し
【3】原因(要因)の課題化
【4】課題の解決策の案出
【5】解決策のデータ活用の可能性検討

 

前回のお話しは【1】に関するものが中心で、【3】にも若干触れました。今回は【5】です。

 

この【5】の「解決策のデータ活用の可能性検討」は、非常に重要です。ここをクリアできないと、現場でデータ活用されることはありません。

 

(1)何を見せればいいのか?

先ほどお話ししましたが、データ集計したり分析したり、予測モデルを作って予測値をアウトプットしても、現場で活用されないことは多々あります。集計結果や分析結果、予測結果などのアウトプットを見せても、現場で見向きもされないの原因の1つは、見せているものとその手段が不適切なことです。

 

単なる集計結果を見せて大きな成果を上げることもあれば、ディープラーニングだの状態空間モデルだの小難しい数理モデルの結果を見せても全く成果のでないこともあります。データサイエンス技術の難易度と成果の大小は、必ずしも比例しません。それが現実です。

 

(2)どう動けばいいのか示さないと活用されない

結局のところ、現場が動けるようなアウトプットなのか、ということになります。集計結果や分析結果、予測結果などのアウトプットを見せたとき、次のような反応が返ってきたら、現場の動けるようなアウトプットではないということです。

「でっ?」

声に出てなくても、態度で示されたら終了です。相手の反応を見れば分かるので、活用されどうかどうかは瞬時に分かることでしょう。

 

2.「解決策」(アクション)とのつながりは最重要!

データから生成する「課題解決に役立つ情報」(予測値や集計値など)は、単に役立ちそうな情報を列挙すればいいというものではありません。その情報を使いどのようなアクションをとればいいのかまで考える必要があります。

 

新聞の折込チラシを配布しているある小売チェーンの例です。今までは例年通り昨年の同時期と同じ枚数だけチラシを配布しています。販促担当者は、チラシを増やすべきか減らすべきか、そして何枚にすべきか悩んでいました。そこでデータを活用し、チラシの枚数を決められないだろうかと考えました。

 

「解決策」(アクション)は「チラシのROIが最大になる枚数にする」です。

 

ここでは、チラシのROIは「チラシROI=(チラシによる増分売上―チラシ費用)÷チラシ費用」とします。

 

(1)ダメなケース

この企業では、社内の経営企画部門の中にデータサイエンス推進室が設立されたこともあり、データ分析の依頼をしました。出てきたのは、チラシと売上の時系列の推移を表したグラフや、平均値や分散といった統計的な指標、チラシと売上の関係性を見える化した散布図や相関係数という統計的な指標などでした。

 

データ

 

実際、これだけではアクションを起こせませんでした。「課題解決に役立つ情報」(予測値や集計値など)と「解決策」(アクション)のつながりが明確でないためです。アクションの起こせない情報は、そもそも「課題解決に役立つ情報」(予測値や集計値など)とは...

 

 

せっかく、データ集計したり分析したり、予測モデルを作って予測値をアウトプットしても、現場で活用されないことは多々あります。現場でのデータ活用の可能性の高め方は、色々なやり方があります。その中で、私が最重要だと感じている1つのやり方を説明します。今回は、「データ活用の可能性を高めるたった1つのこと」というお話しをします。

前回と前々回からの続きの話題になります。

【目次】

1.系統図法で問題を課題化し解決策を考える流れ
(1)何を見せればいいのか?
(2)どう動けばいいのか示さないと活用されない
2.「解決策」(アクション)とのつながりは最重要!
(1)ダメなケース
(2)良いケース

 

1.系統図法で問題を課題化し解決策を考える流れ

前回と前々回の復習です。前々回は、「データ分析上必須な2つのロジカルシンキング」というお話をさせて頂きました。この中で、系統図法で問題を課題化し解決策を考える流れを紹介しました。以下です。

 

【1】お困りごと(問題)の設定
【2】問題の要因(原因)の洗い出し
【3】原因(要因)の課題化
【4】課題の解決策の案出
【5】解決策のデータ活用の可能性検討

 

前回のお話しは【1】に関するものが中心で、【3】にも若干触れました。今回は【5】です。

 

この【5】の「解決策のデータ活用の可能性検討」は、非常に重要です。ここをクリアできないと、現場でデータ活用されることはありません。

 

(1)何を見せればいいのか?

先ほどお話ししましたが、データ集計したり分析したり、予測モデルを作って予測値をアウトプットしても、現場で活用されないことは多々あります。集計結果や分析結果、予測結果などのアウトプットを見せても、現場で見向きもされないの原因の1つは、見せているものとその手段が不適切なことです。

 

単なる集計結果を見せて大きな成果を上げることもあれば、ディープラーニングだの状態空間モデルだの小難しい数理モデルの結果を見せても全く成果のでないこともあります。データサイエンス技術の難易度と成果の大小は、必ずしも比例しません。それが現実です。

 

(2)どう動けばいいのか示さないと活用されない

結局のところ、現場が動けるようなアウトプットなのか、ということになります。集計結果や分析結果、予測結果などのアウトプットを見せたとき、次のような反応が返ってきたら、現場の動けるようなアウトプットではないということです。

「でっ?」

声に出てなくても、態度で示されたら終了です。相手の反応を見れば分かるので、活用されどうかどうかは瞬時に分かることでしょう。

 

2.「解決策」(アクション)とのつながりは最重要!

データから生成する「課題解決に役立つ情報」(予測値や集計値など)は、単に役立ちそうな情報を列挙すればいいというものではありません。その情報を使いどのようなアクションをとればいいのかまで考える必要があります。

 

新聞の折込チラシを配布しているある小売チェーンの例です。今までは例年通り昨年の同時期と同じ枚数だけチラシを配布しています。販促担当者は、チラシを増やすべきか減らすべきか、そして何枚にすべきか悩んでいました。そこでデータを活用し、チラシの枚数を決められないだろうかと考えました。

 

「解決策」(アクション)は「チラシのROIが最大になる枚数にする」です。

 

ここでは、チラシのROIは「チラシROI=(チラシによる増分売上―チラシ費用)÷チラシ費用」とします。

 

(1)ダメなケース

この企業では、社内の経営企画部門の中にデータサイエンス推進室が設立されたこともあり、データ分析の依頼をしました。出てきたのは、チラシと売上の時系列の推移を表したグラフや、平均値や分散といった統計的な指標、チラシと売上の関係性を見える化した散布図や相関係数という統計的な指標などでした。

 

データ

 

実際、これだけではアクションを起こせませんでした。「課題解決に役立つ情報」(予測値や集計値など)と「解決策」(アクション)のつながりが明確でないためです。アクションの起こせない情報は、そもそも「課題解決に役立つ情報」(予測値や集計値など)とは言えないかもしれません。

 

(2)良いケース

そこで、次の情報を提供することになりました。

 

チラシROIが最大になる最適チラシ枚数、さらに、「例年通りの枚数」と「最適チラシ枚数」の2つのケースごとに……

 

  • 売上の予測値
  • チラシROI

 

データ

 

例年のチラシ枚数が「最適チラシ枚数」より多ければ減らし少なければ増やす、というアクションを起こせます。「最適チラシ枚数」そのものが、何枚にすべきかというレコメンド情報にもなります。「最適チラシ枚数」を基準に、現実的なチラシ枚数に決定します。実際は、チラシ枚数には配布可能な枚数という意味での上限があるため、際限なく増やすことはできません。

 

 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

高橋 威知郎

データネクロマンサー/データ分析・活用コンサルタント (埋もれたデータに花を咲かせる、データ分析界の花咲じじい。それほど年齢は重ねてないけど)

データネクロマンサー/データ分析・活用コンサルタント (埋もれたデータに花を咲かせる、データ分析界の花咲じじい。それほど年齢は重ねてないけど)


「情報マネジメント一般」の他のキーワード解説記事

もっと見る
やったことのないデータ活用を率先してやる データ分析講座(その229)

  【この連載の前回:データ分析講座(その228)上手くいかないと思ったらデータで裏付けへのリンク】 ◆関連解説『情報マネジメントとは』...

  【この連載の前回:データ分析講座(その228)上手くいかないと思ったらデータで裏付けへのリンク】 ◆関連解説『情報マネジメントとは』...


合成データとは、そのメリットや注意点:データ分析講座(その327)

  AI活用の前に立ちはだかる壁の1つが、AIを構成する機械学習モデル(数理モデル)を作るためのデータ不足です。データの量や質が不十分だと...

  AI活用の前に立ちはだかる壁の1つが、AIを構成する機械学習モデル(数理モデル)を作るためのデータ不足です。データの量や質が不十分だと...


既存コア技術強化のためのオープン・イノベーション  研究テーマの多様な情報源(その21)

 1.コア技術(オープン・イノベーションの対象) ◆関連解説『情報マネジメントとは』    コア技術(ある領域を対象に設定し、1...

 1.コア技術(オープン・イノベーションの対象) ◆関連解説『情報マネジメントとは』    コア技術(ある領域を対象に設定し、1...


「情報マネジメント一般」の活用事例

もっと見る
守秘義務は情報社会の命綱

  1. 顧客データの管理  O社は、技術志向のエンジニアリング会社です。 扱う製品の設計図には、さまざまな情報が含まれています。クライアントから...

  1. 顧客データの管理  O社は、技術志向のエンジニアリング会社です。 扱う製品の設計図には、さまざまな情報が含まれています。クライアントから...


情報、常識の検証を考える

1、勝ち組と負け組を支配する情報  皆さんがご存じの大手予備校有名講師である林先生が、かつてテレビで「情報」に関して興味深いことをおっしゃっており、...

1、勝ち組と負け組を支配する情報  皆さんがご存じの大手予備校有名講師である林先生が、かつてテレビで「情報」に関して興味深いことをおっしゃっており、...


現場情報の自動収集に道具だてを

 一日の作業指示の出し方で、次のどちらの組織の管理レベルの改善がより進むでしょうか?        ・A社 ➡「x製品を◯個」     ・B...

 一日の作業指示の出し方で、次のどちらの組織の管理レベルの改善がより進むでしょうか?        ・A社 ➡「x製品を◯個」     ・B...