データ分析から垣間見られる人となり:データ分析講座(その173)

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データ分析

 

◆ データ分析の結果をどう扱うか

 同じ事実でも、そこから導き出されることは人によって異なります。同じデータ分析結果に対し、どのようにアクションにつなげるのかは、人による部分が非常に大きいのです。今回は「データ分析の結果をどう扱うか」のお話しをします。

【目次】

1. 裸足の国で靴を売るお話し
 (1)古株データ分析者(データサイエンティスト)は哲学的になる
 (2)データから分かるのは、世の中の一部だけ
 (3)缶ビールと紙おむつ
 (4)主な回答

 

1. 裸足の国で靴を売るお話

 マーケティングの世界でよく聞く寓話(ぐうわ)の一つに「裸足の国で靴を売る話」があります。あらすじは次のようです。

 靴のセールスマンのAさんとBさんが、靴を履いている人がいない国に行きました。そこでセールスマンのAさんは本社に「この国では靴は売れません。なぜならば、この国では靴を履いている人がいないからです」と報告しました。しかしセールスマンのBさんは本社に「靴を大至急送ってください。なぜならば、この国では靴を履いている人がいないからです」と報告しました。

 「靴を履いている人がいない」という事実は同じですが、そこから導き出されるアクションが人によって異なる、という例です。データ分析・活用の世界では、同じ事実でも、そこから導き出されることの違いはよく起こります。

(1)古株データ分析者は哲学的になる

 私が最初に配属された部署は、データ分析の専門部署です。上は50代、下は20代と世代はほぼ均等でした。歴史も古く、第2次世界大戦の終戦前からありました。その部署の50代のベテランの方が「分析結果の解釈や提言って、そのデータ分析者の人となり、哲学が垣間見られるなぁ~」ということをおっしゃっていました。

 それ以降私は「データ分析から垣間見られる人となり」を注意深く観察するようになりました。面白いもので、50代のベテランが話していた通りだったのです。そして、ベテランのデータ分析者ほど歴史書や哲学書をよく読んでいることに気が付きました。一方若手は、統計学やデータマイニング、分析ツール本などのようなものを、よく読んでいました。

(2)データから分かるのは、世の中の一部だけ

 当然のことですが、データは森羅万象(しんらばんしょう)を捉えたものではなく、世の中の極一部分を切り取ったものです。そういう意味では、俳句や詩と似ている部分もあるかもしれません。俳句は、読者の想像力を喚起させ、作者の気持ちや状況、つまり侘びしい状況を理解させる力を持っているかと思いますが、データも同じような側面を持っています。

 世の中の極一部分を切り取ったデータを分析結果という形で表現し、データを軸に起こった(これから起こる)状況を理解させる想像力を喚起させることが求められます。俳句と大きな違いは、データ分析の場合には作者は読者でもある、ということです。自分がアウトプットした分析結果から、そのようなことに考えを巡らせ、データ外のことを洞察し、どのようなアクションにつなげるのかを、想像しなければならないからです。

(3)缶ビールと紙おむつ

 ITバブルのころ、データマイニングブームというものがありました。そこでよく出てきた事例に「缶ビールと紙おむつの話」がありました。データを見たら「缶ビールと紙おむつが併買されている傾向がある」というものです。データから新たな知見が発見された! という感じです。

 新たな知見かどうかはさておき「缶ビールと紙おむつが併買されている傾向がある」といった現象を、データを使い世の中の極一部分を切り取った、ということです。このようなデータ分析は、アソシエーション分析というものを使うのが昔からのやり方です。

 分析手法の話はさておき、このような分析結果を見て何をすべきかを議論する場を設けたことがありました。「缶ビールと紙おむつが併買されている傾向がある」という分析結果をもとに、何をすべきかを考えよう! という場です。

(4)主な回答

 「缶ビールと紙おむつが併買されている傾向がある」という分析結果をもとに、何をすべきかを考えよう! に対する回答は、主に以下の3つでした。

  • 缶ビールと紙おむつを近くに置く
  • 缶ビールと紙おむつを遠くに置く
  • 何もしない(現状維持)

 「缶ビールと紙おむつを近くに置く」という回答の理由の多くは「缶ビールと紙おむつが併買されている傾向があるならば、2点を近くに置いたらもっと売れるし、顧客にとっても嬉(うれ)しい」という感じのものでした。

 「缶ビールと紙...

データ分析

 

◆ データ分析の結果をどう扱うか

 同じ事実でも、そこから導き出されることは人によって異なります。同じデータ分析結果に対し、どのようにアクションにつなげるのかは、人による部分が非常に大きいのです。今回は「データ分析の結果をどう扱うか」のお話しをします。

【目次】

1. 裸足の国で靴を売るお話し
 (1)古株データ分析者(データサイエンティスト)は哲学的になる
 (2)データから分かるのは、世の中の一部だけ
 (3)缶ビールと紙おむつ
 (4)主な回答

 

1. 裸足の国で靴を売るお話

 マーケティングの世界でよく聞く寓話(ぐうわ)の一つに「裸足の国で靴を売る話」があります。あらすじは次のようです。

 靴のセールスマンのAさんとBさんが、靴を履いている人がいない国に行きました。そこでセールスマンのAさんは本社に「この国では靴は売れません。なぜならば、この国では靴を履いている人がいないからです」と報告しました。しかしセールスマンのBさんは本社に「靴を大至急送ってください。なぜならば、この国では靴を履いている人がいないからです」と報告しました。

 「靴を履いている人がいない」という事実は同じですが、そこから導き出されるアクションが人によって異なる、という例です。データ分析・活用の世界では、同じ事実でも、そこから導き出されることの違いはよく起こります。

(1)古株データ分析者は哲学的になる

 私が最初に配属された部署は、データ分析の専門部署です。上は50代、下は20代と世代はほぼ均等でした。歴史も古く、第2次世界大戦の終戦前からありました。その部署の50代のベテランの方が「分析結果の解釈や提言って、そのデータ分析者の人となり、哲学が垣間見られるなぁ~」ということをおっしゃっていました。

 それ以降私は「データ分析から垣間見られる人となり」を注意深く観察するようになりました。面白いもので、50代のベテランが話していた通りだったのです。そして、ベテランのデータ分析者ほど歴史書や哲学書をよく読んでいることに気が付きました。一方若手は、統計学やデータマイニング、分析ツール本などのようなものを、よく読んでいました。

(2)データから分かるのは、世の中の一部だけ

 当然のことですが、データは森羅万象(しんらばんしょう)を捉えたものではなく、世の中の極一部分を切り取ったものです。そういう意味では、俳句や詩と似ている部分もあるかもしれません。俳句は、読者の想像力を喚起させ、作者の気持ちや状況、つまり侘びしい状況を理解させる力を持っているかと思いますが、データも同じような側面を持っています。

 世の中の極一部分を切り取ったデータを分析結果という形で表現し、データを軸に起こった(これから起こる)状況を理解させる想像力を喚起させることが求められます。俳句と大きな違いは、データ分析の場合には作者は読者でもある、ということです。自分がアウトプットした分析結果から、そのようなことに考えを巡らせ、データ外のことを洞察し、どのようなアクションにつなげるのかを、想像しなければならないからです。

(3)缶ビールと紙おむつ

 ITバブルのころ、データマイニングブームというものがありました。そこでよく出てきた事例に「缶ビールと紙おむつの話」がありました。データを見たら「缶ビールと紙おむつが併買されている傾向がある」というものです。データから新たな知見が発見された! という感じです。

 新たな知見かどうかはさておき「缶ビールと紙おむつが併買されている傾向がある」といった現象を、データを使い世の中の極一部分を切り取った、ということです。このようなデータ分析は、アソシエーション分析というものを使うのが昔からのやり方です。

 分析手法の話はさておき、このような分析結果を見て何をすべきかを議論する場を設けたことがありました。「缶ビールと紙おむつが併買されている傾向がある」という分析結果をもとに、何をすべきかを考えよう! という場です。

(4)主な回答

 「缶ビールと紙おむつが併買されている傾向がある」という分析結果をもとに、何をすべきかを考えよう! に対する回答は、主に以下の3つでした。

  • 缶ビールと紙おむつを近くに置く
  • 缶ビールと紙おむつを遠くに置く
  • 何もしない(現状維持)

 「缶ビールと紙おむつを近くに置く」という回答の理由の多くは「缶ビールと紙おむつが併買されている傾向があるならば、2点を近くに置いたらもっと売れるし、顧客にとっても嬉(うれ)しい」という感じのものでした。

 「缶ビールと紙おむつを遠くに置く」という回答の理由の多くは「缶ビールと紙おむつが併買されている傾向があるならば、双方を遠くに置いたら店舗内の移動距離が増えることで、他の商品が目に付くようになるため、他の商品も買う可能性が高まり客単価が増える」というものです。

 「何もしない(現状維持)」という回答の理由の多くは「せっかく缶ビールと紙おむつが併買されているのに、商品の位置を変えたら併買されなくなるかもしれない。リスクを冒す必要はない」という理由からでした。

 何が正解かは、実施してみなければ分かりません。ここで言いたいのは、同じデータ分析結果をどのように調理し味付けしアクションにつなげるのかは、人による部分が非常に大きいということです。しかも、その人による部分というものが、人となり、その人の哲学に、大きく依存することも少なくありません。

 そのため、データ分析・活用には、単に数理的なナレッジやプログラミングスキル、ドメイン知識(データ分析・活用する現場の知識)などだけでなく、人文科学的なものやリベラルアーツ的なものも意外と重要になるのではないかと考えています。

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この記事の著者

高橋 威知郎

データネクロマンサー/データ分析・活用コンサルタント (埋もれたデータに花を咲かせる、データ分析界の花咲じじい。それほど年齢は重ねてないけど)

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