4つの分析手法 データ分析講座(その18)

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情報マネジメント

◆ ビジネスデータ分析の実践で使う「4つ」の分析手法

 「データ分析の分析手法を概念的に知りたいのだけど」ビッグデータやAI(人工知能)などの流行の煽りで、新設されたビッグデータ系の部門長に就任してしまった方の口から出た愚痴です。将来を見越して新設された部署の部門長ですから、社内からの期待も非常に大きい。しかし、データ活用などやったことがない。その方は、その企業のIT部門の本部長という重職についていました。ITのことなら分かるが、データ分析となるとド素人です。しかし、その会社の上層部から見ると、ITもビッグデータもAI(人工知能)も同じようなものと見なされているようです。
その方は、一から具体的なデータ分析の手法を学びたいのではなく、概念的にざっと知りたいのです。このような要望は、部門長となられたこのような方だけでなく、これからデータ分析の世界でキャリアを積みたいと考えている若手の方も、同じような要望を持っているようです。

1. チートシート

 昔から、データ分析手法を概念的にざっくい知りたいという要望はあるらしく、データ分析の世界にはチートシートというものが存在します。他にも色々ありますが、どのようなときに、どのデータ分析手法を選択すればよいのかを示したものです。しかし、多くの場合、一般的過ぎて、これだけでビジネスでデータ活用できるほど、データ分析は甘くはありません。つまり、チートシートは一般的なありものを使うより、各企業の各部署ごとに作ったものを使った方がよいです。そのようなチートシートは、その部署のデータ分析のナレッジです。なぜならば、そのチートシートそのものがデータ分析の考え方と手順を示しているからです。

 しかし、チートシートはすでにデータ活用をしている部署の過去のナレッジがないと作れません。要するに、これから本格的にデータ活用をしようとか、周囲にデータ分析をしている人があまりいない環境では、作りたくても作れません。では、どうすればよいのでしょうか。どうすれば、データ分析手法を概念的にざっくい知りたいという要望を満たせるのでしょうか。営業や販促などのマーケティング系のデータ分析であるセールスアナリティクスや、財務分析まで広げたビジネスデータ分析で使う分析手法は、大きく4つに分類されます。この4つで、ほぼビジネスデータ分析手法は網羅していると思います。

2. 4つの分析手法

 4つの分析手法の分類とは、以下です。

  • (1)異常検知
  • (2)要因分析
  • (3)将来予測
  • (4)評価決定

 クラスター分析とか因子分析とか回帰分析とかのような「分析手法視点の分類」ではなく、「何のために分析するのかという視点の分類」になります。(1)の「異常検知」と(2)の「要因分析」は、過去のデータを分析することで、現在置かれている状況を明確にします。(3)の「将来予測」と(4)の「評価決定」は、現在置かれている状況から未来の方向性を見据え、どの方向に進むべきかを分析します。要するに、過去と未来の分析に大別されます。セールスアナリティクスや財務分析などのビジネスデータ分析は、この4つだけでなんとなります。例えば、財務指標に異常は見られないのかを分析するのが(1)の「異常検知」、その異常の要因を分析するのが(2)の「要因分析」です。

 セールスアナリティクスの場合は、もう少し実業務よりになります。KPIなどの指標に異常がないかを日々モニタリングし、異常が見られたらアラームを出すのが(1)の「異常検知」です。異常検知されたKPIなどの指標が問題となる異常かどうかを人が判断し、問題と考えればその要因を探る分析が(2)の「要因分析」です。ここまでは、あくまでも過去を分析し、現在置かれている状況を明確にしているにすぎません。

 セールスアナリティクスの場合は、次に何をすべきかを明確にする必要があります。そのため、さらに(3)の「将来予測」で、今後どのようになりそうかを予測します。将来予測は、単に予測するのではなく、次のアクションとセットで考えます。つまり、どのようなアクションをすると、どのような将来になるのかを考えていきます。それが、(4)の「評価決定」です。複数のアクション案を評価し、どのアクションを実施するのかを決定します。

3. 高度なITツールや分析手法に頼るな

 最近、ビッグデータ活用を名目としたIT投資を積極的にしている企業が見られます。競合ややっているから、グループ企業がやっているから、世の中がそうだから、という理由で、無意味なIT投資をしている企業があります。システムのクラウド化、MA(マーケティング・オートメーション)ツールの導入、DMP(データマネジメントプラットフォーム)システムの構築、BI(ビジネスインテリジェンス)システムの導入などです。一昔前だと、CRM(顧客管理システム)や基幹システムを導入するのが流行っていました。分析ツールだと、SPSSやSASなどです。どれもこれも安くはありません。

 データ活用とITシステムは切っても切り離せない関係にありますが、必ずしも高度なITシステムがよいわけではありません。少なくとも、Excelレベルのリトルデータ活用のできない人や部署や企業が、高度なITシステムを使ったビッグデータ活用など夢のまた夢です。先ほどの4つの分析手法(異常検知・要因分析・将来予測・評価決定)も、Excelだけで十分できるものです...

 

情報マネジメント

◆ ビジネスデータ分析の実践で使う「4つ」の分析手法

 「データ分析の分析手法を概念的に知りたいのだけど」ビッグデータやAI(人工知能)などの流行の煽りで、新設されたビッグデータ系の部門長に就任してしまった方の口から出た愚痴です。将来を見越して新設された部署の部門長ですから、社内からの期待も非常に大きい。しかし、データ活用などやったことがない。その方は、その企業のIT部門の本部長という重職についていました。ITのことなら分かるが、データ分析となるとド素人です。しかし、その会社の上層部から見ると、ITもビッグデータもAI(人工知能)も同じようなものと見なされているようです。
その方は、一から具体的なデータ分析の手法を学びたいのではなく、概念的にざっと知りたいのです。このような要望は、部門長となられたこのような方だけでなく、これからデータ分析の世界でキャリアを積みたいと考えている若手の方も、同じような要望を持っているようです。

1. チートシート

 昔から、データ分析手法を概念的にざっくい知りたいという要望はあるらしく、データ分析の世界にはチートシートというものが存在します。他にも色々ありますが、どのようなときに、どのデータ分析手法を選択すればよいのかを示したものです。しかし、多くの場合、一般的過ぎて、これだけでビジネスでデータ活用できるほど、データ分析は甘くはありません。つまり、チートシートは一般的なありものを使うより、各企業の各部署ごとに作ったものを使った方がよいです。そのようなチートシートは、その部署のデータ分析のナレッジです。なぜならば、そのチートシートそのものがデータ分析の考え方と手順を示しているからです。

 しかし、チートシートはすでにデータ活用をしている部署の過去のナレッジがないと作れません。要するに、これから本格的にデータ活用をしようとか、周囲にデータ分析をしている人があまりいない環境では、作りたくても作れません。では、どうすればよいのでしょうか。どうすれば、データ分析手法を概念的にざっくい知りたいという要望を満たせるのでしょうか。営業や販促などのマーケティング系のデータ分析であるセールスアナリティクスや、財務分析まで広げたビジネスデータ分析で使う分析手法は、大きく4つに分類されます。この4つで、ほぼビジネスデータ分析手法は網羅していると思います。

2. 4つの分析手法

 4つの分析手法の分類とは、以下です。

  • (1)異常検知
  • (2)要因分析
  • (3)将来予測
  • (4)評価決定

 クラスター分析とか因子分析とか回帰分析とかのような「分析手法視点の分類」ではなく、「何のために分析するのかという視点の分類」になります。(1)の「異常検知」と(2)の「要因分析」は、過去のデータを分析することで、現在置かれている状況を明確にします。(3)の「将来予測」と(4)の「評価決定」は、現在置かれている状況から未来の方向性を見据え、どの方向に進むべきかを分析します。要するに、過去と未来の分析に大別されます。セールスアナリティクスや財務分析などのビジネスデータ分析は、この4つだけでなんとなります。例えば、財務指標に異常は見られないのかを分析するのが(1)の「異常検知」、その異常の要因を分析するのが(2)の「要因分析」です。

 セールスアナリティクスの場合は、もう少し実業務よりになります。KPIなどの指標に異常がないかを日々モニタリングし、異常が見られたらアラームを出すのが(1)の「異常検知」です。異常検知されたKPIなどの指標が問題となる異常かどうかを人が判断し、問題と考えればその要因を探る分析が(2)の「要因分析」です。ここまでは、あくまでも過去を分析し、現在置かれている状況を明確にしているにすぎません。

 セールスアナリティクスの場合は、次に何をすべきかを明確にする必要があります。そのため、さらに(3)の「将来予測」で、今後どのようになりそうかを予測します。将来予測は、単に予測するのではなく、次のアクションとセットで考えます。つまり、どのようなアクションをすると、どのような将来になるのかを考えていきます。それが、(4)の「評価決定」です。複数のアクション案を評価し、どのアクションを実施するのかを決定します。

3. 高度なITツールや分析手法に頼るな

 最近、ビッグデータ活用を名目としたIT投資を積極的にしている企業が見られます。競合ややっているから、グループ企業がやっているから、世の中がそうだから、という理由で、無意味なIT投資をしている企業があります。システムのクラウド化、MA(マーケティング・オートメーション)ツールの導入、DMP(データマネジメントプラットフォーム)システムの構築、BI(ビジネスインテリジェンス)システムの導入などです。一昔前だと、CRM(顧客管理システム)や基幹システムを導入するのが流行っていました。分析ツールだと、SPSSやSASなどです。どれもこれも安くはありません。

 データ活用とITシステムは切っても切り離せない関係にありますが、必ずしも高度なITシステムがよいわけではありません。少なくとも、Excelレベルのリトルデータ活用のできない人や部署や企業が、高度なITシステムを使ったビッグデータ活用など夢のまた夢です。先ほどの4つの分析手法(異常検知・要因分析・将来予測・評価決定)も、Excelだけで十分できるものです。もちろん、高度なITシステムを使うことで、予測精度が高まるといったことはあるかもしれません。しかし、データ活用の勘所は、高度なITシステムがあろうがなかろうが関係ありません。そう考えると、投資すべきは、データ活用の勘所のある人財の育成でしょう。

 ITシステムと同様に、高度な分析手法に頼る必要もありません。分析手法が高度だろうがなかろうが、データ活用の勘所とは関係ありません。高度な分析手法はややこしく、その結果の解釈に多くの人が苦しみます。データ分析の専門家と言われているデータサイエンティストでさえ、間違って解釈してしまう人もいるぐらいです。今流行のディープラーニングやトピック分析(潜在意味解析)などを無理に使い、ビジネス現場の人に混乱をもたらすと、その分析結果は誰も使わない無駄なものになります。データ収集や整備、分析、レポートなどのデータ活用コストが膨大になるだけです。

 高度なITツールや分析手法に頼らず、現状のIT環境とExcelレベルでできるデータ分析だけで、とりあえず4つの分析(異常検知・要因分析・将来予測・評価決定)をするだけで、それなりのビジネス成果を得ることができます。4つの分析(異常検知・要因分析・将来予測・評価決定)の具体的な進め方は、別の機会にお話しします。

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この記事の著者

高橋 威知郎

データネクロマンサー/データ分析・活用コンサルタント (埋もれたデータに花を咲かせる、データ分析界の花咲じじい。それほど年齢は重ねてないけど)

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