現場に寄り添い過ぎる危険 データ分析講座(その234)

投稿日

データ分析

 

【この連載の前回:データ分析講座(その233)利益病とデータ活用へのリンク】

 

DX、AI、機械学習、データサイエンスなど。どんなにカッコいいワードで表現しようが、データを活用し成果を出すのは現場です。現場無視でデータ活用を企画し押し付けても上手くは活きません。一方で、現場を重視するあまり、大いに現場の意見を聞いて進めても、データ活用は上手くいきません。現場ファーストは当然なのですが、現場の意見を集約すると、現状維持にとても近い状態になるか、声の大きい人の「熱い思い」(というか思い込み)に引きずられてしまう危険性があります。場合によっては、「あの人いい人だから」という謎の理由で現場の間違った思いに応えようとします。今回は、「現場に寄り添い過ぎる危険」というお話しをします。

 

【目次】
1.現場の状況把握
2.ファクト(事実)
3.ファクトベースの願望
4.ヤバすぎる「ファクトベースでない願望」
5.現場の思いに振り回されるな!

 

1.現場の状況把握

現場の状況把握をするとき、例えば、現場の意見を集めるヒアリングをするケースも多いと思います。そのとき、それがファクト(事実)なのか、思い込みなのか、願望なのか、などを切り分けなければなりません。集めるべきは、「ファクト(事実)」と「ファクトベースの願望」です。

 

2.ファクト(事実)

「ファクト(事実)」は文字通り、客観的な事実です。実際起こったことです。「起こったであろうこと」ではありません。

 

例えば現状のヒアリングをしていると……

  • 「○○らしい」
  • 「○○のようだ」
  • 「○○と聞いた」

……という感じで、不明瞭な事実のようなものがポコポコ出てきます。よくよく聞いてみると、又聞きの情報や何となく感じていること、感想だったりします。これらは「ファクト(事実)」ではありません。

 

3.ファクトベースの願望

「ファクトベースの願望」とは、「ファクト(事実)」をベースにした未来に向けた願望です。現場の意見で一番重要なのが、この「ファクトベースの願望」です。「ファクト(事実)」から見えてくるのは現在おかれている状況(ベクトルの始点)です。願望は、その状況からの未来に向かったベクトルです。そして、ベクトルの終点が未来の姿です。

 

4.ヤバすぎる「ファクトベースでない願望」

「ファクトベースでない願望」とは、「○○らしい」「○○のようだ」「○○と聞いた」という不明瞭な事実にもとづいた願望です。

 

「ファクト(事実)」は過去もしくは現在、実際に起こっていたもしくは起こっていることです。その「ファクト(事実)」が間違っていたら、そこから未来に向けた願望の行きつく先も頓珍漢な可能性があります。例えば、イラク戦争は「ファクトベースでない願望」で開戦した戦争です。開戦の理由となった「ファクト(事実)」とされたものの多くが事実誤認や捏造された情報だったことが判明しています。当時の米国の国務長官だったコリン・パウエルが、このことは「人生最大の汚点」であったと自著の中で述べています。

 

5.現場の思いに振り回されるな!

「ファクトベースでない願望」という現場の思いに振り回されると、そのデータ活用は当然上手くいきません。「願望」にどんなに熱量があっても、「○○らしい」「○○のようだ」「○○と聞いた」という不明瞭な事実にも...

データ分析

 

【この連載の前回:データ分析講座(その233)利益病とデータ活用へのリンク】

 

DX、AI、機械学習、データサイエンスなど。どんなにカッコいいワードで表現しようが、データを活用し成果を出すのは現場です。現場無視でデータ活用を企画し押し付けても上手くは活きません。一方で、現場を重視するあまり、大いに現場の意見を聞いて進めても、データ活用は上手くいきません。現場ファーストは当然なのですが、現場の意見を集約すると、現状維持にとても近い状態になるか、声の大きい人の「熱い思い」(というか思い込み)に引きずられてしまう危険性があります。場合によっては、「あの人いい人だから」という謎の理由で現場の間違った思いに応えようとします。今回は、「現場に寄り添い過ぎる危険」というお話しをします。

 

【目次】
1.現場の状況把握
2.ファクト(事実)
3.ファクトベースの願望
4.ヤバすぎる「ファクトベースでない願望」
5.現場の思いに振り回されるな!

 

1.現場の状況把握

現場の状況把握をするとき、例えば、現場の意見を集めるヒアリングをするケースも多いと思います。そのとき、それがファクト(事実)なのか、思い込みなのか、願望なのか、などを切り分けなければなりません。集めるべきは、「ファクト(事実)」と「ファクトベースの願望」です。

 

2.ファクト(事実)

「ファクト(事実)」は文字通り、客観的な事実です。実際起こったことです。「起こったであろうこと」ではありません。

 

例えば現状のヒアリングをしていると……

  • 「○○らしい」
  • 「○○のようだ」
  • 「○○と聞いた」

……という感じで、不明瞭な事実のようなものがポコポコ出てきます。よくよく聞いてみると、又聞きの情報や何となく感じていること、感想だったりします。これらは「ファクト(事実)」ではありません。

 

3.ファクトベースの願望

「ファクトベースの願望」とは、「ファクト(事実)」をベースにした未来に向けた願望です。現場の意見で一番重要なのが、この「ファクトベースの願望」です。「ファクト(事実)」から見えてくるのは現在おかれている状況(ベクトルの始点)です。願望は、その状況からの未来に向かったベクトルです。そして、ベクトルの終点が未来の姿です。

 

4.ヤバすぎる「ファクトベースでない願望」

「ファクトベースでない願望」とは、「○○らしい」「○○のようだ」「○○と聞いた」という不明瞭な事実にもとづいた願望です。

 

「ファクト(事実)」は過去もしくは現在、実際に起こっていたもしくは起こっていることです。その「ファクト(事実)」が間違っていたら、そこから未来に向けた願望の行きつく先も頓珍漢な可能性があります。例えば、イラク戦争は「ファクトベースでない願望」で開戦した戦争です。開戦の理由となった「ファクト(事実)」とされたものの多くが事実誤認や捏造された情報だったことが判明しています。当時の米国の国務長官だったコリン・パウエルが、このことは「人生最大の汚点」であったと自著の中で述べています。

 

5.現場の思いに振り回されるな!

「ファクトベースでない願望」という現場の思いに振り回されると、そのデータ活用は当然上手くいきません。「願望」にどんなに熱量があっても、「○○らしい」「○○のようだ」「○○と聞いた」という不明瞭な事実にもとづいた願望ならば、非常に気を付けた方がいいです。

 

どんなに熱量があっても、「ファクト(事実)」を変えることはできません。どんなにいい人が言ったとしても、思い込みは思い込みのままです。「ファクト(事実)」を捻じ曲げても、起こった事実は何も変わりません。思い込みを事実と見なしても、起こっていない事実何も変わりません。事実誤認のまま、不思議な方向に突き進むだけです。と言うことは、熱量のある「ファクトベースの願望」は最高だ! となりますが、最高かどうかは分かりませんが、データ活用上非常に望ましいのは事実です。

 

次回に続きます。

 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

高橋 威知郎

データネクロマンサー/データ分析・活用コンサルタント (埋もれたデータに花を咲かせる、データ分析界の花咲じじい。それほど年齢は重ねてないけど)

データネクロマンサー/データ分析・活用コンサルタント (埋もれたデータに花を咲かせる、データ分析界の花咲じじい。それほど年齢は重ねてないけど)


「情報マネジメント一般」の他のキーワード解説記事

もっと見る
統計的機械学習で使用する混同行列と評価指標 データ分析講座(その296)

  統計的機械学習の世界に、2 値分類問題というものがあります。例えば、受注 or 失注、継続 or 離反、異常 or 正常、死亡 or ...

  統計的機械学習の世界に、2 値分類問題というものがあります。例えば、受注 or 失注、継続 or 離反、異常 or 正常、死亡 or ...


不確実性の霧を晴らす、ビジネスデータ活用とは:データ分析講座(その336)

  【目次】 19世紀の軍事理論家、カール・フォン・クラウゼビッツは、戦争に関する多くの深い洞察を提供しました。彼の著作「戦...

  【目次】 19世紀の軍事理論家、カール・フォン・クラウゼビッツは、戦争に関する多くの深い洞察を提供しました。彼の著作「戦...


ABテストからExcelでも出来る差の差推定へ データ分析講座(その301)

  ABテストとは、例えばユーザをA群(処置群)とB群(統制群)に分け、どちらのほうが好成績を納めるのかをデータで確かめたりするアプローチ...

  ABテストとは、例えばユーザをA群(処置群)とB群(統制群)に分け、どちらのほうが好成績を納めるのかをデータで確かめたりするアプローチ...


「情報マネジメント一般」の活用事例

もっと見る
現場情報の自動収集に道具だてを

 一日の作業指示の出し方で、次のどちらの組織の管理レベルの改善がより進むでしょうか?        ・A社 ➡「x製品を◯個」     ・B...

 一日の作業指示の出し方で、次のどちらの組織の管理レベルの改善がより進むでしょうか?        ・A社 ➡「x製品を◯個」     ・B...


‐クレ-ム情報を開発に活用‐  製品・技術開発力強化策の事例(その13)

 前回の事例その12に続いて解説します。顧客から出されたクレ-ムは、技術開発や、関連製品の開発の可能性を潜在させている場合が多いようです。その視点からクレ...

 前回の事例その12に続いて解説します。顧客から出されたクレ-ムは、技術開発や、関連製品の開発の可能性を潜在させている場合が多いようです。その視点からクレ...


‐販路開拓に関する問題事例‐ 製品・技術開発力強化策の事例(その19)

 前回の事例その18に続いて解説します。多額の資金と労力を費やして開発した知的財産をどのように活用して販路開拓に結びつけるのか、大変重要な問題ですが、販売...

 前回の事例その18に続いて解説します。多額の資金と労力を費やして開発した知的財産をどのように活用して販路開拓に結びつけるのか、大変重要な問題ですが、販売...