顧客特性を使いこなしデータ活用 データ分析講座(その237)

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データ分析

 

15年以上前の顧客データ分析は、性別や年代、居住地などの顧客のハードな特性を活用したものが多い印象があります。マーケティングの世界のペルソナ設定(架空のユーザー像)で登場するような特性です。実際、マーケティングの世界で比較的よく利用される因子分析やクラスター分析などは、顧客のハードな特性(性格・価値観・趣味嗜好・ライフスタイルなど)をもとにしたものが多い気がします。ここ10年ぐらいの間に、日々変化する顧客のソフトな特性を組み込むケースが増えてきました。今回は、「顧客のハードな特性とソフトな特性を使いこなしデータ活用」というお話しをします。

 

【目次】
1.顧客のソフトな特性とは?
2.クラスターが変わる
3.変化させたいのに、変化させたくない
4.例えば…… 商品レコメンド
5.評価や企画時と、データ活用時で粒度を変える

 

【この連載の前回:データ分析講座(その236)予測と事実と感想へのリンク】

1.顧客のソフトな特性とは?

顧客のソフトな特性とは何なの? と疑問に思われた方もいるかもしれません。

例えば……

  • 来店記録
  • 閲覧履歴
  • 問合履歴
  • 相談履歴
  • 見積履歴
  • 購入履歴
  • クレーム履歴
  • 下取履歴

……などの過去の行動や接点の履歴です。日々アップデートされます。

 

2.クラスターが変わる

顧客のハードな特性を使ったデータ分析への思い入れなのか、強烈な成功体験なのか、昔学んだことの記憶のせいかのか分かりませんが、たまに次にような方がいます。「データをアップデートしクラスター分析すると、クラスター分析結果が変化し困る」顧客のハードな特性を元にクラスター分析をしていれば、クラスター分析の元データである特性がそもそも大きく変化しないため、そうそう変わることはありません。

 

しかし、そこに顧客のソフトな特性を入れ込むと、クラスター分析するたびにクラスター分析結果が変わります。当たり前です。

 

3.変化させたいのに、変化させたくない

顧客との関係性をより良くしたいと目論見、何かしらの施策を実施したのに、顧客行動が変化しなかったら失敗です。上手くいけば、顧客行動は大きく変化するはずです。顧客行動が変化すれば、クラスター分析結果も当然ながら変化します。

 

クラスター分析結果の変化を望まないということは、顧客行動が大きく変化することを望まないということです。つまり、顧客との関係性をより良くしたいと目論んでいるのに、顧客行動が大きく変化することは望まない、という意味不明な状態に陥ります。

 

4.例えば…… 商品レコメンド

○○ユーザや○○クラスターなどのように、顧客を幾つかの塊にしデータ分析する時代が長すぎました。これはこれで、現状把握や思考整理、施策立案などをする場合には役立つことでしょう。ただ、顧客1人1人を相手にしたとき、どうでしょうか?ある顧客が次に購入し易そうな商品を予測し、顧客にレコメンドする、などです。

 

例えば、○○ユーザや○○クラスターなどのように顧客を幾つかの塊にし、次に購入しそうな商品を予測し、その予測結果を使い商品をレコメンドしたらどうでしょうか?似たような顧客(実はハードな特性が似ているだけ)であっても、よくよく見ると異なる(特にソフトな特性が異なる)ため、その予測はあまり当てになりません。であれば、顧客1人1人に対し、次に購入しそうな商品を予測し、その予測結果を使い商品をレコメンドした方がいいでしょう。

 

それを実現したのが、AmazonなどのECサイトの商品レコメンドです。

◆関連解説記事 データ分析講座(その187)ケーススタディ①「リード(見込み顧客)の選別」

 

5.評価や企画時と、データ活用時で粒度を変える

○○ユーザや○○クラスターなどのように、顧客を幾つかの塊にしたデータ分析は、先ほども言いましたが、現状把握や思考整理、施策立案などをする場合には役立つことでしょう。要するに、ビジネス活動のPDCAサイクルのC(評価)やP(企画)時です。

 

なぜでしょうか?例えば、顧客が100万人いるとします。顧...

データ分析

 

15年以上前の顧客データ分析は、性別や年代、居住地などの顧客のハードな特性を活用したものが多い印象があります。マーケティングの世界のペルソナ設定(架空のユーザー像)で登場するような特性です。実際、マーケティングの世界で比較的よく利用される因子分析やクラスター分析などは、顧客のハードな特性(性格・価値観・趣味嗜好・ライフスタイルなど)をもとにしたものが多い気がします。ここ10年ぐらいの間に、日々変化する顧客のソフトな特性を組み込むケースが増えてきました。今回は、「顧客のハードな特性とソフトな特性を使いこなしデータ活用」というお話しをします。

 

【目次】
1.顧客のソフトな特性とは?
2.クラスターが変わる
3.変化させたいのに、変化させたくない
4.例えば…… 商品レコメンド
5.評価や企画時と、データ活用時で粒度を変える

 

【この連載の前回:データ分析講座(その236)予測と事実と感想へのリンク】

1.顧客のソフトな特性とは?

顧客のソフトな特性とは何なの? と疑問に思われた方もいるかもしれません。

例えば……

  • 来店記録
  • 閲覧履歴
  • 問合履歴
  • 相談履歴
  • 見積履歴
  • 購入履歴
  • クレーム履歴
  • 下取履歴

……などの過去の行動や接点の履歴です。日々アップデートされます。

 

2.クラスターが変わる

顧客のハードな特性を使ったデータ分析への思い入れなのか、強烈な成功体験なのか、昔学んだことの記憶のせいかのか分かりませんが、たまに次にような方がいます。「データをアップデートしクラスター分析すると、クラスター分析結果が変化し困る」顧客のハードな特性を元にクラスター分析をしていれば、クラスター分析の元データである特性がそもそも大きく変化しないため、そうそう変わることはありません。

 

しかし、そこに顧客のソフトな特性を入れ込むと、クラスター分析するたびにクラスター分析結果が変わります。当たり前です。

 

3.変化させたいのに、変化させたくない

顧客との関係性をより良くしたいと目論見、何かしらの施策を実施したのに、顧客行動が変化しなかったら失敗です。上手くいけば、顧客行動は大きく変化するはずです。顧客行動が変化すれば、クラスター分析結果も当然ながら変化します。

 

クラスター分析結果の変化を望まないということは、顧客行動が大きく変化することを望まないということです。つまり、顧客との関係性をより良くしたいと目論んでいるのに、顧客行動が大きく変化することは望まない、という意味不明な状態に陥ります。

 

4.例えば…… 商品レコメンド

○○ユーザや○○クラスターなどのように、顧客を幾つかの塊にしデータ分析する時代が長すぎました。これはこれで、現状把握や思考整理、施策立案などをする場合には役立つことでしょう。ただ、顧客1人1人を相手にしたとき、どうでしょうか?ある顧客が次に購入し易そうな商品を予測し、顧客にレコメンドする、などです。

 

例えば、○○ユーザや○○クラスターなどのように顧客を幾つかの塊にし、次に購入しそうな商品を予測し、その予測結果を使い商品をレコメンドしたらどうでしょうか?似たような顧客(実はハードな特性が似ているだけ)であっても、よくよく見ると異なる(特にソフトな特性が異なる)ため、その予測はあまり当てになりません。であれば、顧客1人1人に対し、次に購入しそうな商品を予測し、その予測結果を使い商品をレコメンドした方がいいでしょう。

 

それを実現したのが、AmazonなどのECサイトの商品レコメンドです。

◆関連解説記事 データ分析講座(その187)ケーススタディ①「リード(見込み顧客)の選別」

 

5.評価や企画時と、データ活用時で粒度を変える

○○ユーザや○○クラスターなどのように、顧客を幾つかの塊にしたデータ分析は、先ほども言いましたが、現状把握や思考整理、施策立案などをする場合には役立つことでしょう。要するに、ビジネス活動のPDCAサイクルのC(評価)やP(企画)時です。

 

なぜでしょうか?例えば、顧客が100万人いるとします。顧客1人1人に対する評価や企画などを人間が実施するとなると、非常に大変です。

 

○○ユーザや○○クラスターなどのように、顧客を幾つかの塊にし、C(評価)やP(企画)などを実施した方がいいでしょう。一方、ビジネス活動のPDCAサイクルのD(実行)では、顧客1人1人に対した方がいいでしょう。

 

似たような顧客(実はハードな特性が似ているだけ)であっても、よくよく見ると違います(特にソフトな特性が異なる)。要するに、顧客のハードな特性とソフトな特性を適切に識別し、上手く使いこなすことで、より良いデータ活用が実現できると思います。

 

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この記事の著者

高橋 威知郎

データネクロマンサー/データ分析・活用コンサルタント (埋もれたデータに花を咲かせる、データ分析界の花咲じじい。それほど年齢は重ねてないけど)

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