回帰分析とは データ分析講座(その157)

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回帰分析

 

 「回帰分析」とは

 回帰分析では、狙いとする特性(従属変数)に対して、複数の影響変数が組み合わされたサンプルデータから、各影響変数の効果を解析し、回帰式を導き出します。

◆ 実務でよく使われる様々な回帰分析

 回帰分析は非常にシンプルです。そのため、実務的にも非常に使い勝手がよく、人気の高い分析手段の一つです。回帰分析には2つの概念の変数が登場します。

  • 目的変数Y: 説明したい、もしくは、予測したい変数(例:受注金額、受注の件数、受注確率など)
  • 説明変数X: 目的変数Yを説明する、もしくは、Yの要因となる変数(例:時期、販促、顧客属性など)

 回帰分析のアウトプットの一つに、目的変数Yを説明変数でXで説明する数式があります。目的変数Yに何が影響しているのかといった要因分析にも使えますし、目的変数Yの将来予測にも使えます。今回は「実務でよく使われ、色々ある『回帰分析』」というお話しをします。

1. 様々な回帰分析

 回帰分析には色々なものがあるため、説明しきれません。しかも新しい回帰分析の手法は増え続けています。多くの場合、アルゴリズムのちょっとした改良だったりします。

 ここでは、実務でよく使われる次の回帰分析を、簡単にご紹介します。

・線形回帰(単回帰/重回帰)とポアソン回帰、ロジスティック回帰

単回帰分析とは
 相関分析では2変数の関係を対等とみなしているところが、大きな違いです。目的変数に対して説明変数が一つであるものが単回帰分析であり、説明変数が二つ以上のものを重回帰分析と呼びます。単回帰も重回帰も考え方は同じです。目的変数をY、説明変数をXとした場合、YとXの関係を説明する式を単回帰式と呼び、単回帰式はY=aX+bで与えられます。aは回帰式の傾きを示し、回帰係数と呼称します。bは切片です。

・主成分回帰 PCR と部分最小二乗回帰 PLS

・Ridge回帰とLasso回帰、Elastic Net回帰

 もちろん、数理的な説明を省略するだけでなく、数理統計学的な厳密性からも逸脱した簡易な説明にして、イメージ重視の説明になります。

(1) 線形回帰(単回帰/重回帰)とポアソン回帰、ロジスティック回帰

 多くの場合、線形回帰(単回帰/重回帰)とポアソン回帰、ロジスティック回帰で十分です。線形回帰(単回帰/重回帰)に関しては、Excelで簡単に実施できます。ポアソン回帰とロジスティック回帰をExcelで実施する場合、ちょっとした工夫が必要になります(ここでは説明致しません)。

 この3つの回帰分析は、目的変数Yの性質が異なります。つまり目的変数Yの性質に応じて、線形回帰(単回帰/重回帰)なのか、ポアソン回帰なのか、ロジスティック回帰なのかを選べばいいのです。

  • 線形回帰(単回帰/重回帰):目的変数Yが、受注金額のような量
  • ポアソン回帰        :目的変数Yが、受注件数のようなカウントデータ(1件、2件、3件…)
  • ロジスティック回帰         :目的変数Yが、受注・失注(1:受注,0:失注)などのような2値(0-1)データ

 この3つの回帰分析では手に負えなくなることがあります。

(2) マルチコ(マルチコリニアリティ、multicollinearity、多重共線性)

 説明変数X同士に強い相関関係がある場合など、上手く回帰分析できません。例えば、売上予測やキャンペーン効果のデータ分析を考えた時、説明変数X同士が強い相関をする場合が多いです。なぜならば、同じ時期に集中して販売促進の施策を打つからです。新聞の折り込みチラシの配布枚数と交通広告(電車の中づり広告など)の露出量、値引率などが強く相関したりします。

 このような場合、単純な線形回帰(単回帰/重回帰)で予測式を構築すると、おかしなことが起こります。予測式の係数のプラス・マイナスの符号が逆になったり、係数の値が極端に大きくなったりするのです。

 このような現象はマルチコ(マルチコリニアリティ、multicollinearity、多重共線性)と呼ばれ、回帰分析の古典的な問題で、説明変数と主成分同志に強い相関関係がある場合に起こります。

(3) 主成分回帰 PCR と部分最小二乗回帰 PLS

 マルチコの問題を解決する古典的な方法が「主成分回帰PCR」(Principal Component Regression)です。説明変数Xに対して主成分分析を実施し、新たな説明変数(主成分)を作ります。この新たな説明変数である主成分同志の相関は低く、マルチコの問題を回避できます。その主成分回帰 PCR の親戚に、部分最小二乗回帰 PLSという手法があります。

 

2. 主成分という新たな説明変数

 主成分回帰PCRでは説明変数Xを主成分分析し、新たな説明変数(主成分)を作り、この新たな説明変数(主成分)で回帰分析を実施し予測式を導き出します。主成分分析は、元の説明変数Xの情報量をできるだけ減らさないように、新たな説明変数(主成分)を作ります。そして多くの場合、元の説明変数Xよりも新たな説明変数である主成分の方が、変数の数が少なくなります。そのため説明変数Xの数を減らしたい場合にも、この主成分回帰PCRは使えます。

(1) 主成分分析の主成分は、目的変数Yとは無関係に決まる

 主成分分析で求めた主成分は、目的変数Yを上手く説明する主成分ではありません。あくまでも、元の説明変数Xの情報量をできるだけ減らさないように作ったものです。そのため、主成分回帰PCRの主成分も同様のことが当てはまります。しかし主成分回帰PCRの目指しているのは、目的変数Yを上手く説明する予測式です。

(2) 目的変数Yを考慮した主成分を作りたい

 「どうせなら、目的変数Yも考慮した主成分を作れないだろうか」と考えるのが自然でしょう。それを実現したのが「部分最小二乗回帰 PLS(partial least squares regression)」です。ここでは詳しく説明しませんが「主成分回帰PCR」の進化版と捉えて頂ければと思います。 

 

3. Ridge回帰とLasso回帰、Elastic Net回帰

(1) 正則化項でマルチコを緩和する

 マルチコの問題に対処する方法が、主成分回帰PCRや部分最小二乗回帰 PLSだけではありません。これらの主成分分析を絡ませた方法以外で、古典的な回帰分析として「Ridge回帰」というものがあります。Ridge回帰は、通常の回帰分析に「正則化項」という概念を加えたもので、ここでは詳しく説明しません。「正則化項」を加えることで、マルチコの影響を緩和します。この「正則化項」にも種類があり、どのような「正則化項」を考えるのかで、Ridge回帰と呼ばれたり、Lasso回帰と呼ばれたりします。

(2) Ridge回帰

 Ridge回帰分析を実施した場合、線形回帰(単回帰/重回帰)とポアソン回帰、ロジスティック回帰とほぼ似たようなもの(予測式の係数など)が出力されます。ちなみに、Ridge回帰と1ワードで表現していますが、それぞれ線形回帰(単回帰/重回帰)のRidge回帰、ポアソン回帰のRidge回帰、ロジスティック回帰のRidge回帰があります。

(3) Lasso回帰

 Lasso回帰の大きな特徴として、変数選択を実施してくることにあります。ここの変数選択とは「目的変数Yを説明し予測するのに必要な説明変数Xを、数理的に選択する」ということです。

 特徴量選択ともいいます。人為的な説明変数選択ではなく、数理的に説明変数選択されるのが特徴です。そのため、説明変数Xの数が多い場合に非常に有効です。Lasso回帰は変数選択も実施してくれ、非常に良さそうですが、一つ大きな問題があります。

(4) Lasso回帰の実務上のよくある問題点

 今、相関関係の高い「X1」(チラシ配布量)と「X2」(値引率)という説明変数があったとします。そのまま線形回帰(単回帰/重回帰)を実施すると、マルチコが起こり上手く予測式が求まりません。そこで、Lasso回帰分析を実施しました。するとどうなるでしょうか。この場合「X1」(チラシ配布量)と「X2」(値引率)の2つの説明変数の内、一つだけが選択されます。

 なぜならばX1とX2は相関関係が高く、一方から他方を推測できるため一つで十分なのです。このように、Lasso回帰の場合、相関関係の高い説明変数同志は、どちらか一方を採用し他方を採用しません。相関関係の高い説明変数同志を、両方とも予測式に使いたい場合には、Ridge回帰を実施するといいでしょう。しかしRidge回帰の場合、目的変数Yを説明し予測するのに不必要な説明変数も考慮した予測式になります。

(5) Elastic Net回帰

 「相関関係の高い説明変数同士を、両方とも予測式に使いたいけど、変数選択も実施したい」。このようなニーズは当然起こります。そのニーズに答えるのがElastic Net回帰です。Group Lassoなどこのニーズに答えられそうな手法は他にもあります。詳しく説明しません。厳密性は欠きますが、Elastic Net回帰は、Ridge回帰とLasso回帰の中間に位置するものです。ちなみに、Lassoの分野はスパース推定というキーワードで近年研究が目覚ましく、多くの研究成果が報告されています。

 

4. 回帰型の統計モデル

 今回は「実務でよく使われる様々な『回帰分析』」というお話でした。今回簡単に紹介した回帰分析、難しいそうな名称のものもありますが、回帰分析として出力されるものの多くは共通しています。

 (1)回帰分析という売上分析手法

 回帰分析とは、回帰モデルという統計モデルと構築することで、どのようなことが起こっていたのかを分析したり、この売上の数値は問題ないレベルなのかどうかを見極めたり、これからどうなるのかといった将来予測で使います。簡単にいうと、以下の3つです。

 

  • 異常検知(この売上の数値は問題ないレベルなのかどうか)
  • 要因分析(どのようなことが起こっていたのか)
  • 将来予測(これからどうなるのか)


 個々の深い説明はしませんが、回帰モデルという統計モデルを構築する(機械学習的には学習する)ことで、分析し将来を見通すことのできる、非常に使い勝手のよい分析手法です。さらに、普段多くの人が実施している、多くの売上分析は、回帰分析という分析手法で説明が付きます。例えば、時系列に売上の変化を分析するとき、多くの人は折れ線グラフで眺めることでしょう。一歩進めて、それを回帰分析の枠組みで分析することができます。

 自己回帰モデルを使うことで、売上データのみで回帰モデルを作ることができるのです。自己回帰モデルを使うことで、この売上の数値は問題ないレベルなのかどうかを見極めることが、統計学的に可能です。つまり、何となくヤバそう! とか、何となく良さげ! とかという感覚的な判断以上のことができるようになります。例えば、売上を商品別やエリア別に集計する...

回帰分析

 

 「回帰分析」とは

 回帰分析では、狙いとする特性(従属変数)に対して、複数の影響変数が組み合わされたサンプルデータから、各影響変数の効果を解析し、回帰式を導き出します。

◆ 実務でよく使われる様々な回帰分析

 回帰分析は非常にシンプルです。そのため、実務的にも非常に使い勝手がよく、人気の高い分析手段の一つです。回帰分析には2つの概念の変数が登場します。

  • 目的変数Y: 説明したい、もしくは、予測したい変数(例:受注金額、受注の件数、受注確率など)
  • 説明変数X: 目的変数Yを説明する、もしくは、Yの要因となる変数(例:時期、販促、顧客属性など)

 回帰分析のアウトプットの一つに、目的変数Yを説明変数でXで説明する数式があります。目的変数Yに何が影響しているのかといった要因分析にも使えますし、目的変数Yの将来予測にも使えます。今回は「実務でよく使われ、色々ある『回帰分析』」というお話しをします。

1. 様々な回帰分析

 回帰分析には色々なものがあるため、説明しきれません。しかも新しい回帰分析の手法は増え続けています。多くの場合、アルゴリズムのちょっとした改良だったりします。

 ここでは、実務でよく使われる次の回帰分析を、簡単にご紹介します。

・線形回帰(単回帰/重回帰)とポアソン回帰、ロジスティック回帰

単回帰分析とは
 相関分析では2変数の関係を対等とみなしているところが、大きな違いです。目的変数に対して説明変数が一つであるものが単回帰分析であり、説明変数が二つ以上のものを重回帰分析と呼びます。単回帰も重回帰も考え方は同じです。目的変数をY、説明変数をXとした場合、YとXの関係を説明する式を単回帰式と呼び、単回帰式はY=aX+bで与えられます。aは回帰式の傾きを示し、回帰係数と呼称します。bは切片です。

・主成分回帰 PCR と部分最小二乗回帰 PLS

・Ridge回帰とLasso回帰、Elastic Net回帰

 もちろん、数理的な説明を省略するだけでなく、数理統計学的な厳密性からも逸脱した簡易な説明にして、イメージ重視の説明になります。

(1) 線形回帰(単回帰/重回帰)とポアソン回帰、ロジスティック回帰

 多くの場合、線形回帰(単回帰/重回帰)とポアソン回帰、ロジスティック回帰で十分です。線形回帰(単回帰/重回帰)に関しては、Excelで簡単に実施できます。ポアソン回帰とロジスティック回帰をExcelで実施する場合、ちょっとした工夫が必要になります(ここでは説明致しません)。

 この3つの回帰分析は、目的変数Yの性質が異なります。つまり目的変数Yの性質に応じて、線形回帰(単回帰/重回帰)なのか、ポアソン回帰なのか、ロジスティック回帰なのかを選べばいいのです。

  • 線形回帰(単回帰/重回帰):目的変数Yが、受注金額のような量
  • ポアソン回帰        :目的変数Yが、受注件数のようなカウントデータ(1件、2件、3件…)
  • ロジスティック回帰         :目的変数Yが、受注・失注(1:受注,0:失注)などのような2値(0-1)データ

 この3つの回帰分析では手に負えなくなることがあります。

(2) マルチコ(マルチコリニアリティ、multicollinearity、多重共線性)

 説明変数X同士に強い相関関係がある場合など、上手く回帰分析できません。例えば、売上予測やキャンペーン効果のデータ分析を考えた時、説明変数X同士が強い相関をする場合が多いです。なぜならば、同じ時期に集中して販売促進の施策を打つからです。新聞の折り込みチラシの配布枚数と交通広告(電車の中づり広告など)の露出量、値引率などが強く相関したりします。

 このような場合、単純な線形回帰(単回帰/重回帰)で予測式を構築すると、おかしなことが起こります。予測式の係数のプラス・マイナスの符号が逆になったり、係数の値が極端に大きくなったりするのです。

 このような現象はマルチコ(マルチコリニアリティ、multicollinearity、多重共線性)と呼ばれ、回帰分析の古典的な問題で、説明変数と主成分同志に強い相関関係がある場合に起こります。

(3) 主成分回帰 PCR と部分最小二乗回帰 PLS

 マルチコの問題を解決する古典的な方法が「主成分回帰PCR」(Principal Component Regression)です。説明変数Xに対して主成分分析を実施し、新たな説明変数(主成分)を作ります。この新たな説明変数である主成分同志の相関は低く、マルチコの問題を回避できます。その主成分回帰 PCR の親戚に、部分最小二乗回帰 PLSという手法があります。

 

2. 主成分という新たな説明変数

 主成分回帰PCRでは説明変数Xを主成分分析し、新たな説明変数(主成分)を作り、この新たな説明変数(主成分)で回帰分析を実施し予測式を導き出します。主成分分析は、元の説明変数Xの情報量をできるだけ減らさないように、新たな説明変数(主成分)を作ります。そして多くの場合、元の説明変数Xよりも新たな説明変数である主成分の方が、変数の数が少なくなります。そのため説明変数Xの数を減らしたい場合にも、この主成分回帰PCRは使えます。

(1) 主成分分析の主成分は、目的変数Yとは無関係に決まる

 主成分分析で求めた主成分は、目的変数Yを上手く説明する主成分ではありません。あくまでも、元の説明変数Xの情報量をできるだけ減らさないように作ったものです。そのため、主成分回帰PCRの主成分も同様のことが当てはまります。しかし主成分回帰PCRの目指しているのは、目的変数Yを上手く説明する予測式です。

(2) 目的変数Yを考慮した主成分を作りたい

 「どうせなら、目的変数Yも考慮した主成分を作れないだろうか」と考えるのが自然でしょう。それを実現したのが「部分最小二乗回帰 PLS(partial least squares regression)」です。ここでは詳しく説明しませんが「主成分回帰PCR」の進化版と捉えて頂ければと思います。 

 

3. Ridge回帰とLasso回帰、Elastic Net回帰

(1) 正則化項でマルチコを緩和する

 マルチコの問題に対処する方法が、主成分回帰PCRや部分最小二乗回帰 PLSだけではありません。これらの主成分分析を絡ませた方法以外で、古典的な回帰分析として「Ridge回帰」というものがあります。Ridge回帰は、通常の回帰分析に「正則化項」という概念を加えたもので、ここでは詳しく説明しません。「正則化項」を加えることで、マルチコの影響を緩和します。この「正則化項」にも種類があり、どのような「正則化項」を考えるのかで、Ridge回帰と呼ばれたり、Lasso回帰と呼ばれたりします。

(2) Ridge回帰

 Ridge回帰分析を実施した場合、線形回帰(単回帰/重回帰)とポアソン回帰、ロジスティック回帰とほぼ似たようなもの(予測式の係数など)が出力されます。ちなみに、Ridge回帰と1ワードで表現していますが、それぞれ線形回帰(単回帰/重回帰)のRidge回帰、ポアソン回帰のRidge回帰、ロジスティック回帰のRidge回帰があります。

(3) Lasso回帰

 Lasso回帰の大きな特徴として、変数選択を実施してくることにあります。ここの変数選択とは「目的変数Yを説明し予測するのに必要な説明変数Xを、数理的に選択する」ということです。

 特徴量選択ともいいます。人為的な説明変数選択ではなく、数理的に説明変数選択されるのが特徴です。そのため、説明変数Xの数が多い場合に非常に有効です。Lasso回帰は変数選択も実施してくれ、非常に良さそうですが、一つ大きな問題があります。

(4) Lasso回帰の実務上のよくある問題点

 今、相関関係の高い「X1」(チラシ配布量)と「X2」(値引率)という説明変数があったとします。そのまま線形回帰(単回帰/重回帰)を実施すると、マルチコが起こり上手く予測式が求まりません。そこで、Lasso回帰分析を実施しました。するとどうなるでしょうか。この場合「X1」(チラシ配布量)と「X2」(値引率)の2つの説明変数の内、一つだけが選択されます。

 なぜならばX1とX2は相関関係が高く、一方から他方を推測できるため一つで十分なのです。このように、Lasso回帰の場合、相関関係の高い説明変数同志は、どちらか一方を採用し他方を採用しません。相関関係の高い説明変数同志を、両方とも予測式に使いたい場合には、Ridge回帰を実施するといいでしょう。しかしRidge回帰の場合、目的変数Yを説明し予測するのに不必要な説明変数も考慮した予測式になります。

(5) Elastic Net回帰

 「相関関係の高い説明変数同士を、両方とも予測式に使いたいけど、変数選択も実施したい」。このようなニーズは当然起こります。そのニーズに答えるのがElastic Net回帰です。Group Lassoなどこのニーズに答えられそうな手法は他にもあります。詳しく説明しません。厳密性は欠きますが、Elastic Net回帰は、Ridge回帰とLasso回帰の中間に位置するものです。ちなみに、Lassoの分野はスパース推定というキーワードで近年研究が目覚ましく、多くの研究成果が報告されています。

 

4. 回帰型の統計モデル

 今回は「実務でよく使われる様々な『回帰分析』」というお話でした。今回簡単に紹介した回帰分析、難しいそうな名称のものもありますが、回帰分析として出力されるものの多くは共通しています。

 (1)回帰分析という売上分析手法

 回帰分析とは、回帰モデルという統計モデルと構築することで、どのようなことが起こっていたのかを分析したり、この売上の数値は問題ないレベルなのかどうかを見極めたり、これからどうなるのかといった将来予測で使います。簡単にいうと、以下の3つです。

 

  • 異常検知(この売上の数値は問題ないレベルなのかどうか)
  • 要因分析(どのようなことが起こっていたのか)
  • 将来予測(これからどうなるのか)


 個々の深い説明はしませんが、回帰モデルという統計モデルを構築する(機械学習的には学習する)ことで、分析し将来を見通すことのできる、非常に使い勝手のよい分析手法です。さらに、普段多くの人が実施している、多くの売上分析は、回帰分析という分析手法で説明が付きます。例えば、時系列に売上の変化を分析するとき、多くの人は折れ線グラフで眺めることでしょう。一歩進めて、それを回帰分析の枠組みで分析することができます。

 自己回帰モデルを使うことで、売上データのみで回帰モデルを作ることができるのです。自己回帰モデルを使うことで、この売上の数値は問題ないレベルなのかどうかを見極めることが、統計学的に可能です。つまり、何となくヤバそう! とか、何となく良さげ! とかという感覚的な判断以上のことができるようになります。例えば、売上を商品別やエリア別に集計する人も、多いことでしょう。

 回帰分析では、目的変数と説明変数というものを設定する必要があります。売上分析の場合、目的変数は売上です。説明変数には、目的変数である売上に影響を与えるであろう変数を指定します。この説明変数に、「商品」や「エリア」を指定することで、売上の商品別やエリア別の集計を統計モデル化(回帰モデル化)することができます。統計モデル化(回帰モデル化)することで、ある商品の売上はエリアによって大きく異なる、といったことが、何となくではなく、統計学的に知ることができます。しかし、ここで1つ問題が起こります。

 目的変数として指定する「売上データの種類」によって、利用する回帰モデルが異なるのです。

① 量データ ⇒ 線形回帰モデル(単回帰・重回帰モデル)
② カウントデータ ⇒ ポアソン回帰モデル
③ 2値データ ⇒ ロジスティック回帰モデル

 

 次に小売店の「日販」をmodelに回帰型の統計モデルのことです。「日販の結果」の悪化要因が、「客数」にあることが分かっていた場合では、その「客数」の悪化の要因はどこにあるのであろうか。もしかしたら、実施した「施策」がよくなかったのかもしれない、「天候」の影響かもしれない、「競合」の動きによるものかもしれない。「施策」といっても、テレビCMかもしれないし、交通広告かもしれないのです。

 「客数」と「施策」、「天候」、「競合」の関係は、「日販=客数×客単価」のように関係性が明確ではありません。そのため、「客数」と「施策」、「天候」、「競合」の不明確な関係性を明確するために、統計モデルを構築します。具体的には、「内部要因」(例:実施した施策、組織変更)や「外部要因」(例:競合の動き、天候)などを説明変数とした「統計モデル」(例:重回帰モデル、ポアソン回帰モデル、ロジスティック回帰モデル)を構築します。多くの場合、重回帰モデルという昔からある統計モデルで十分です。この構築した回帰型の統計モデルを使い要因を探っていくのです。

 

 蛇足ですが…… 回帰分析系は、結局のところ「残差」と呼ばれるものを、コツコツと深掘りすることが多いです。詳しくは説明しませんが、回帰分析したら「残差(Regiduals)」をグラフ化などで確認しましょう。「残差」に何か法則性のようなものを見出したら、それを説明する説明変数Xがないかどうかを検討し、回帰分析の中に組み込む必要が出てきます。

 

 

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この記事の著者

高橋 威知郎

データネクロマンサー/データ分析・活用コンサルタント (埋もれたデータに花を咲かせる、データ分析界の花咲じじい。それほど年齢は重ねてないけど)

データネクロマンサー/データ分析・活用コンサルタント (埋もれたデータに花を咲かせる、データ分析界の花咲じじい。それほど年齢は重ねてないけど)


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