ダイナミックプライシングとは データ分析講座(その181)

更新日

投稿日

 

 

◆ 新聞売り子問題とダイナミックプライシング

 データ活用が進む中、ダイナミックプライシングの動きが活発化しています。ダイナミックプライシングとは、需要と供給のバランスを考え、動的に価格を設定することです。航空機のチケットなどで有名ですが、実際は、最終的に手作業で実施していところが多いようです。今回は「新聞売り子問題とダイナミックプライシング」というお話しをします。

【目次】

1. 価格は一定のとき、仕入れ量が重要になる
 (1)予測値は分布する
 (2)利益を最大化する「最適な仕入れ量」
2. 価格が変動すると、さらに面白くなる
3. 利益を最大化するダイナミックな価格設定
4. 今回のまとめ

 

1. データ分析:価格は一定のとき、仕入れ量が重要になる

 

データ分析

 

 ダイナミックプライシングではなく、価格が一定のときに重要になるのは、仕入れ量です。仕入れが需要よりも多い場合、売れ残ります。仕入れが需要よりも少ない場合、売り切れ機会損失が発生します。理想は、売れ残りも機会損失も発生しない、仕入れ量です。そのためには、需要予測が必要になります。

(1) 予測値は分布する

 需要予測をするとき、「10万5千個売れそうです」とピンポイントで予測しても、実際はそうなることは稀です。ここで予測すべきは分布です。

 例えば……

  • 8万個未満売れる可能性が5%
  • 8万~9万個未満売れる可能性が10%
  • 9万~10万個未満売れる可能性が20%
  • 10万~11万個未満売れる可能性が30%
  • 11万~12万個未満売れる可能性が20%
  • 12万~13万個未満売れる可能性が10%
  • 13万個以上売れる可能性が5%

 ……といった感じです。一番簡単な、分布の予測の仕方は、過去データから集計し分布を求めることです。

(2) 利益を最大化する「最適な仕入れ量」

 

データ分析

 

 このような分布が求まれば、利益を最大化する「最適な仕入れ量」を計算することができます。このような問題を、「新聞売り子問題」と呼ばれている、古典的なデータ分析・活用の問題です。事前に、機会損失額と売れ残りコストの計算方法を決めておく必要があります。

 機会損失額は比較的簡単に計算できますが、売れ残りコストの計算方法は、どのような商材を扱うかで変わってきます。例えば、食品などの廃棄する必要がある場合には、単に原価だけを考えるのではなく廃棄コストも考慮するあります。耐久財の場合には、在庫の管理コストなどが発生することでしょう。

 

2. データ分析:価格が変動すると、さらに面白くなる

 このような新聞売り子問題の中、価格が変動すると、現場からすると「ややこしい」と思うことでしょう。データ分析・活用的には、価格が変動すると、さらに面白くなります。新聞売り子問題の出発点は、需要予測でした。予測した需要の分布をもとに、利益が最大化する仕入れ量を求めるのです。

 ダイナミックプライシングは、需要予想をするときに、設定した価格に対しどの程度の需要が見込めるのかを予測します。つまり、通常の需要予測と異なり「価格」要因が前面に押し出されてくる感じです。通常の需要予測も、値引きやキャンペーンなどの要因を加味するので、似たようなことを実施していたかもしれません。大きな違いは、値引きだけでなく値上がりもある、ということです。

 

3. データ分析:利益を最大化するダイナミックな価格設定

 

データ分析

 

 ダイナミックプライシングによって、利益を最大化する仕入れから、利益を最大化するダイナミックな価格設定へ変化します。ダイナミックプライシングというぐらいですから、機械的にほぼリアルタイムに価格設定ができないと、ダイナミックではないでしょう。従来の手作業ベースの価格設定だと、破綻をきたします。まさに、データをフル活用した価格設定です。とは言え、データだけに頼るのも危険なので、最終的には人的な介入があることでしょう。

 この辺りは、ダイナミックプライシングのロジックさえ検討し固めてしまえば、実現するのはそれほど難しくないと思います。

 

4. 今回のまとめ

 今回は「新聞売り子問題とダイナミックプライシング」というお話しをしました。「新聞売り子問題」とは、古典的なデータ分析・活用の問題で、機会損失と売れ残りのバランスを考え、仕入れ量を決める問題です。一言で言うと、「利益を最大化する仕入れ」の問題です。

 新聞売り子問題の出発点は、需要予測です。予測した需要の分布をもとに、利益が最大化する仕入れ量を求めるから...

 

 

◆ 新聞売り子問題とダイナミックプライシング

 データ活用が進む中、ダイナミックプライシングの動きが活発化しています。ダイナミックプライシングとは、需要と供給のバランスを考え、動的に価格を設定することです。航空機のチケットなどで有名ですが、実際は、最終的に手作業で実施していところが多いようです。今回は「新聞売り子問題とダイナミックプライシング」というお話しをします。

【目次】

1. 価格は一定のとき、仕入れ量が重要になる
 (1)予測値は分布する
 (2)利益を最大化する「最適な仕入れ量」
2. 価格が変動すると、さらに面白くなる
3. 利益を最大化するダイナミックな価格設定
4. 今回のまとめ

 

1. データ分析:価格は一定のとき、仕入れ量が重要になる

 

データ分析

 

 ダイナミックプライシングではなく、価格が一定のときに重要になるのは、仕入れ量です。仕入れが需要よりも多い場合、売れ残ります。仕入れが需要よりも少ない場合、売り切れ機会損失が発生します。理想は、売れ残りも機会損失も発生しない、仕入れ量です。そのためには、需要予測が必要になります。

(1) 予測値は分布する

 需要予測をするとき、「10万5千個売れそうです」とピンポイントで予測しても、実際はそうなることは稀です。ここで予測すべきは分布です。

 例えば……

  • 8万個未満売れる可能性が5%
  • 8万~9万個未満売れる可能性が10%
  • 9万~10万個未満売れる可能性が20%
  • 10万~11万個未満売れる可能性が30%
  • 11万~12万個未満売れる可能性が20%
  • 12万~13万個未満売れる可能性が10%
  • 13万個以上売れる可能性が5%

 ……といった感じです。一番簡単な、分布の予測の仕方は、過去データから集計し分布を求めることです。

(2) 利益を最大化する「最適な仕入れ量」

 

データ分析

 

 このような分布が求まれば、利益を最大化する「最適な仕入れ量」を計算することができます。このような問題を、「新聞売り子問題」と呼ばれている、古典的なデータ分析・活用の問題です。事前に、機会損失額と売れ残りコストの計算方法を決めておく必要があります。

 機会損失額は比較的簡単に計算できますが、売れ残りコストの計算方法は、どのような商材を扱うかで変わってきます。例えば、食品などの廃棄する必要がある場合には、単に原価だけを考えるのではなく廃棄コストも考慮するあります。耐久財の場合には、在庫の管理コストなどが発生することでしょう。

 

2. データ分析:価格が変動すると、さらに面白くなる

 このような新聞売り子問題の中、価格が変動すると、現場からすると「ややこしい」と思うことでしょう。データ分析・活用的には、価格が変動すると、さらに面白くなります。新聞売り子問題の出発点は、需要予測でした。予測した需要の分布をもとに、利益が最大化する仕入れ量を求めるのです。

 ダイナミックプライシングは、需要予想をするときに、設定した価格に対しどの程度の需要が見込めるのかを予測します。つまり、通常の需要予測と異なり「価格」要因が前面に押し出されてくる感じです。通常の需要予測も、値引きやキャンペーンなどの要因を加味するので、似たようなことを実施していたかもしれません。大きな違いは、値引きだけでなく値上がりもある、ということです。

 

3. データ分析:利益を最大化するダイナミックな価格設定

 

データ分析

 

 ダイナミックプライシングによって、利益を最大化する仕入れから、利益を最大化するダイナミックな価格設定へ変化します。ダイナミックプライシングというぐらいですから、機械的にほぼリアルタイムに価格設定ができないと、ダイナミックではないでしょう。従来の手作業ベースの価格設定だと、破綻をきたします。まさに、データをフル活用した価格設定です。とは言え、データだけに頼るのも危険なので、最終的には人的な介入があることでしょう。

 この辺りは、ダイナミックプライシングのロジックさえ検討し固めてしまえば、実現するのはそれほど難しくないと思います。

 

4. 今回のまとめ

 今回は「新聞売り子問題とダイナミックプライシング」というお話しをしました。「新聞売り子問題」とは、古典的なデータ分析・活用の問題で、機会損失と売れ残りのバランスを考え、仕入れ量を決める問題です。一言で言うと、「利益を最大化する仕入れ」の問題です。

 新聞売り子問題の出発点は、需要予測です。予測した需要の分布をもとに、利益が最大化する仕入れ量を求めるからです。新聞売り子問題の場合、基本的に価格は一定です。もちろん、値引きやキャンペーンなどは考慮します。値引きはあっても値上がりという概念は、基本登場してきません。

 ダイナミックプライシングとは、需要と供給のバランスを考え、動的に価格を設定することです。値引きだけでなく値上がりもあります。航空機のチケットなどが有名です。基本的に価格が一定である新聞売り子問題に、価格がダイナミックに変わるようにした感じです。

 ダイナミックプライシングによって、利益を最大化する仕入れから、利益を最大化するダイナミックな価格設定へ変化します。ダイナミックプライシングは、ロジックさえ検討し固めてしまえば、実現するのはそれほど難しくないと思います。

 最初は、手作業ベースでデータ分析し、ダイナミックに価格を検討し運用することにはなるとは思います。興味のある方は、チャレンジしてみても面白いと思います。

 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

高橋 威知郎

データネクロマンサー/データ分析・活用コンサルタント (埋もれたデータに花を咲かせる、データ分析界の花咲じじい。それほど年齢は重ねてないけど)

データネクロマンサー/データ分析・活用コンサルタント (埋もれたデータに花を咲かせる、データ分析界の花咲じじい。それほど年齢は重ねてないけど)


「情報マネジメント一般」の他のキーワード解説記事

もっと見る
実例で学ぶMCAR、MAR、MNARの全貌:データ分析講座(その346)

【目次】 データサイエンスの世界では、欠損データは避けて通れない問題です。データが完全でないことは、分析の正確性や結果の信頼性に大き...

【目次】 データサイエンスの世界では、欠損データは避けて通れない問題です。データが完全でないことは、分析の正確性や結果の信頼性に大き...


データに基づくポリティクスと意思決定 データ分析講座(その171)

  ◆ データに基づくポリティクスと意思決定  前回もお話しましたが、変化が激しく先々の状況が読めないときほど情報を集め、適切な状況判断...

  ◆ データに基づくポリティクスと意思決定  前回もお話しましたが、変化が激しく先々の状況が読めないときほど情報を集め、適切な状況判断...


裁判で解決できないシステム開発トラブルとは

 桃尾・松尾・難波法律事務所の皆様が、過去のシステム紛争案件にかかわる150の判例を調査して「裁判例から考えるシステム紛争の法律実務」という本を出版されま...

 桃尾・松尾・難波法律事務所の皆様が、過去のシステム紛争案件にかかわる150の判例を調査して「裁判例から考えるシステム紛争の法律実務」という本を出版されま...


「情報マネジメント一般」の活用事例

もっと見る
情報、常識の検証を考える

1、勝ち組と負け組を支配する情報  皆さんがご存じの大手予備校有名講師である林先生が、かつてテレビで「情報」に関して興味深いことをおっしゃっており、...

1、勝ち組と負け組を支配する情報  皆さんがご存じの大手予備校有名講師である林先生が、かつてテレビで「情報」に関して興味深いことをおっしゃっており、...


‐時代の流れを意識した開発テ-マの設定‐  製品・技術開発力強化策の事例(その5)

 前回の事例その4に続いて解説します。時代の流れに沿う開発テ-マとして、最近では、高齢者介護機器、環境関連機器、省エネ機器、情報技術(IT)等に関心が注が...

 前回の事例その4に続いて解説します。時代の流れに沿う開発テ-マとして、最近では、高齢者介護機器、環境関連機器、省エネ機器、情報技術(IT)等に関心が注が...


現場のExcel依存に注意しよう

 マイクロソフトの「Excel」は企業の業務遂行にとって欠かせないツールになりました。数字の集計、グラフの作成にとどまらず、作業伝票の発行、作業の管理、資...

 マイクロソフトの「Excel」は企業の業務遂行にとって欠かせないツールになりました。数字の集計、グラフの作成にとどまらず、作業伝票の発行、作業の管理、資...