データで騙す預言者になる データ分析講座(その280)

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データ分析

 

データは非常に強力です。わかりやすく、有無を言わさない破壊力があります。ただ、おかしな使い方や見せ方で、人を騙すこともできます。恐ろしいことです。たびたび目にするのが、0か1かのベルヌイ試行的なものです。株価が上がる下がる、試合に勝つ負ける、売上が上がる下がる、離反するしない、故障するしない、受注するしない、などです。今回は、「データで騙す預言者になる」というお話しをします。

 

【目次】
1. 株価は上がるか下がるか
2. この商品やサービスはヒットしないと預言する
3. 預言タコ「パウル」
4. 志望校合格率90%

 

【この連載の前回:(その279)一人歩きする数字へのリンク】

◆【特集】 連載記事紹介:連載記事のタイトルをまとめて紹介、各タイトルから詳細解説に直リンク!!

◆データ分析講座の注目記事紹介

 

1. 株価は上がるか下がるか

5日連続で株価が上がるか下がるか予言できたら、スゴイと感じるでしょう。実際、バイナリーオプションという金融取引があります。簡単にいうと、バイナリーオプションとは、為替相場や株価指数などを対象に、ある値よりも高いか低いかなど、二者択一で選ぶ取引です。

 

予測確率100%という触れ込みで、3200人の人を集め、毎日メールなどで配信することを考えます。

 

・1日目
メールの対象者3200人を半分にし以下のようなメールを送ります。

 

1600人に「上がる」と予測したメールを送る。残りの1600人に「下がる」と予測したメールを送る。どちらか一方が真実になります。ここでは、「上がる」が真実になったとしましょう。

 

・2日目
前日に「上がる」と予測したメールの対象者1600人を半分にし以下のようなメールを送ります。

 

800人に「上がる」と予測したメールを送る。残りの800人に「下がる」と予測したメールを送る。どちらか一方が真実になります。ここでは、「上がる」が真実になったとしましょう。

 

・3日目
前日に「上がる」と予測したメールの対象者800人を半分にし以下のようなメールを送ります。

 

400人に「上がる」と予測したメールを送る。残りの400人に「下がる」と予測したメールを送る。どちらか一方が真実になります。ここでは、「上がる」が真実になったとしましょう。 

 

・4日目
前日に「上がる」と予測したメールの対象者400人を半分にし以下のようなメールを送ります。

 

200人に「上がる」と予測したメールを送る。残りの200人に「下がる」と予測したメールを送る。どちらか一方が真実になります。ここでは、「上がる」が真実になったとしましょう。 

 

・5日目
前日に「上がる」と予測したメールの対象者200人を半分にし以下のようなメールを送ります。

 

100人に「上がる」と予測したメールを送る。残りの100人に「下がる」と予測したメールを送る。どちらか一方が真実になります。ここでは、「上がる」が真実になったとしましょう。

 

この時点で、100人の方は、予測確率100%のメールを毎日受け取っています。5日連続で予測が的中したと感じるのではないでしょうか。そうして、預言者は作られます。その預言をするのがツールであれば、そのバイナリーオプション予測ツールが欲しくなるのではないでしょうか。もともとこのメールに登録するぐらいですから、興味は高いため、コンバージョンレート(購入確率)は非常に高いものになると予想が付きます。

 

2. この商品やサービスはヒットしないと預言する

ヒット商品やサービスは、なかなか生まれません。そのため、商品やサービスを出す前に「ヒットしないよ」と預言するとだいたい当たります。売れ難い大型商材で「このリードには売れない」と予測したり、離反され難いサービスで「この顧客は継続する」と予測したりするのは、だいたい当たります。

 

そんなの預言者ではない、その程度の預言者であれば信じない、と思われる方もいるかもしれませんが、注意深く世の中見ているとそうでもないことが分かります。ワールドカップの預言タコ「パウル」が思い出されます。

 

3. 預言タコ「パウル」

ドイツの水族館在住のタコのパウルが、サッカーの試合の勝敗を当てるというお話しです。サッカーのUEFA欧州選手権とワールドカップの試合を高確度で当てたのです。14試合中12試合も的中です。スゴイことです。ただ、的中したのは、ほぼドイツの試合で、13試合中11試合を的中しています。どういうことでしょうか。

 

次のことが分かっています。

  • タコは横長模様を好む
  • ドイツの国旗は横長模様
  • ドイツはサッカーが強い

 

勝利率の高いドイツを「勝つ」と予測すれば、それなりの予測精度を持つ預言者に...

データ分析

 

データは非常に強力です。わかりやすく、有無を言わさない破壊力があります。ただ、おかしな使い方や見せ方で、人を騙すこともできます。恐ろしいことです。たびたび目にするのが、0か1かのベルヌイ試行的なものです。株価が上がる下がる、試合に勝つ負ける、売上が上がる下がる、離反するしない、故障するしない、受注するしない、などです。今回は、「データで騙す預言者になる」というお話しをします。

 

【目次】
1. 株価は上がるか下がるか
2. この商品やサービスはヒットしないと預言する
3. 預言タコ「パウル」
4. 志望校合格率90%

 

【この連載の前回:(その279)一人歩きする数字へのリンク】

◆【特集】 連載記事紹介:連載記事のタイトルをまとめて紹介、各タイトルから詳細解説に直リンク!!

◆データ分析講座の注目記事紹介

 

1. 株価は上がるか下がるか

5日連続で株価が上がるか下がるか予言できたら、スゴイと感じるでしょう。実際、バイナリーオプションという金融取引があります。簡単にいうと、バイナリーオプションとは、為替相場や株価指数などを対象に、ある値よりも高いか低いかなど、二者択一で選ぶ取引です。

 

予測確率100%という触れ込みで、3200人の人を集め、毎日メールなどで配信することを考えます。

 

・1日目
メールの対象者3200人を半分にし以下のようなメールを送ります。

 

1600人に「上がる」と予測したメールを送る。残りの1600人に「下がる」と予測したメールを送る。どちらか一方が真実になります。ここでは、「上がる」が真実になったとしましょう。

 

・2日目
前日に「上がる」と予測したメールの対象者1600人を半分にし以下のようなメールを送ります。

 

800人に「上がる」と予測したメールを送る。残りの800人に「下がる」と予測したメールを送る。どちらか一方が真実になります。ここでは、「上がる」が真実になったとしましょう。

 

・3日目
前日に「上がる」と予測したメールの対象者800人を半分にし以下のようなメールを送ります。

 

400人に「上がる」と予測したメールを送る。残りの400人に「下がる」と予測したメールを送る。どちらか一方が真実になります。ここでは、「上がる」が真実になったとしましょう。 

 

・4日目
前日に「上がる」と予測したメールの対象者400人を半分にし以下のようなメールを送ります。

 

200人に「上がる」と予測したメールを送る。残りの200人に「下がる」と予測したメールを送る。どちらか一方が真実になります。ここでは、「上がる」が真実になったとしましょう。 

 

・5日目
前日に「上がる」と予測したメールの対象者200人を半分にし以下のようなメールを送ります。

 

100人に「上がる」と予測したメールを送る。残りの100人に「下がる」と予測したメールを送る。どちらか一方が真実になります。ここでは、「上がる」が真実になったとしましょう。

 

この時点で、100人の方は、予測確率100%のメールを毎日受け取っています。5日連続で予測が的中したと感じるのではないでしょうか。そうして、預言者は作られます。その預言をするのがツールであれば、そのバイナリーオプション予測ツールが欲しくなるのではないでしょうか。もともとこのメールに登録するぐらいですから、興味は高いため、コンバージョンレート(購入確率)は非常に高いものになると予想が付きます。

 

2. この商品やサービスはヒットしないと預言する

ヒット商品やサービスは、なかなか生まれません。そのため、商品やサービスを出す前に「ヒットしないよ」と預言するとだいたい当たります。売れ難い大型商材で「このリードには売れない」と予測したり、離反され難いサービスで「この顧客は継続する」と予測したりするのは、だいたい当たります。

 

そんなの預言者ではない、その程度の預言者であれば信じない、と思われる方もいるかもしれませんが、注意深く世の中見ているとそうでもないことが分かります。ワールドカップの預言タコ「パウル」が思い出されます。

 

3. 預言タコ「パウル」

ドイツの水族館在住のタコのパウルが、サッカーの試合の勝敗を当てるというお話しです。サッカーのUEFA欧州選手権とワールドカップの試合を高確度で当てたのです。14試合中12試合も的中です。スゴイことです。ただ、的中したのは、ほぼドイツの試合で、13試合中11試合を的中しています。どういうことでしょうか。

 

次のことが分かっています。

  • タコは横長模様を好む
  • ドイツの国旗は横長模様
  • ドイツはサッカーが強い

 

勝利率の高いドイツを「勝つ」と予測すれば、それなりの予測精度を持つ預言者に誰でもなれます。

 

4. 志望校合格率90%

高校受験や大学受験の塾や予備校などの中には、志望校合格率を掲げて生徒を集めるところがあります。高校受験に限れば、志望校合格率はほぼ100%です。塾に行っても行かなくても、志望校合格率はほぼ100%です。どの塾に行っても、志望校合格率はほぼ100%です。なぜならば、高校受験した多くの人は高校に進学するひとが、ほぼ100%だからです。

 

志望校はコロコロ変わります。入試直前にも変わります。そして、受験した高校の多くは志望校です。本命も滑り止めも、志望したので志望校です。気になるのは、最初の志望校に対する合格率でしょう。高校受験であれば、中学2年か3年生の春に志望していた高校です。〇〇率(=分子÷分母)は、分母と分子の定義しだいで大きく変わります。

 

次回に続きます。

 

 

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この記事の著者

高橋 威知郎

データネクロマンサー/データ分析・活用コンサルタント (埋もれたデータに花を咲かせる、データ分析界の花咲じじい。それほど年齢は重ねてないけど)

データネクロマンサー/データ分析・活用コンサルタント (埋もれたデータに花を咲かせる、データ分析界の花咲じじい。それほど年齢は重ねてないけど)


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