分析より、いかに活用するか データ分析講座(その38)

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データ分析

◆ なぜ、データ分析で成果がでないのか? KPIの共有の仕方で解決する「簡単なコツ」

 なぜ、データ分析しても施策につながらず、具体的な成果がでないのでしょうか。営業や販促活動のデータ活用(セールスアナリティクス)のケースでも、次のような声をよく聞きます。

  • 自社の分析力が貧弱(専任の担当者がいない)
  • 自社のデータ分析基盤が貧弱(まともな分析ツールすらない)
  • データサイエンティスト(データ分析の専門家)が足りない
  • データ分析担当者が出してきた分析結果が非現実
  • 分析結果を見ても、具体的に何をすればよいのか分からない

 この中で、大きなボトルネックになっているのが、最後の2つです。データ分析担当者が出してきた分析結果が非現実、分析結果を見ても、具体的に何をすればよいのか分からない。

 私は20年近くデータ分析の業界に身を置いています。その経験値から言いますと、いかにデータを分析するのかに注目されがちですが、データ活用の上手くいっていないケースの多くは、いかに活用するのかの検討が不十分です。

 実際に、多額のIT投資で分析基盤を整えたり、データ分析のできるデータサイエンティストを採用しても、データ分析で成果がでないという問題が解決されないケースが多いのです。一方で、でてくる分析結果が現実的で分析結果を見て具体的に何をすればよいのか分かるようなデータ分析の結果を出せれば、どんなに「分析基盤が貧弱」で「データ分析経験が浅く」とも成果につながります。

 要するに、いかにデータを分析するのかよりもいかに活用するのかが重要だ、ということです。

 すぐ成果の出やすい対処療法があります。それは、KPI(指標)の共有です。明確にKPIとして設計されていなければ、受注件数や離反率などの簡単なKPIを、とりあえず作ります。そのとき、単にKPIを共有してもダメです。簡単なコツがあります。ぜひ、営業・販促のデータ活用(セールスアナリティクス)が上手くいっていないと思われている方は、参考にして頂ければと思います。

1. KPI(指標)がデータ活用の「キモ」である

 KPI(指標)は、「データを分析する側」(データ分析担当者)と「施策を実施する側」(営業パーソンやマーケター)をつなぐ重要な共通言語です。同一人物がデータを分析し活用する場合(例:マーケターが自らデータ分析するケース)でも、頭の中で「データを分析する自分」と「施策を実施する自分」の橋渡し役になるのが、KPI(指標)です。ちなみに、KPI(Key Performance Indicator、重要業績評価指標)とKGI(Key Goal Indicator、重要目標達成指標)を、明確に分ける場合もありますが、ここでは一緒くたに「指標」として扱います。KGIは目標KPIとも呼ばれます。

 では、分かりやすい例で説明します。例えば、「受注件数」という目標KPI(もしくはKGI)で考えてみます。

 施策を実施する営業パーソンが、受注件数という指標で評価され、常に気にして営業活動をしているとします。よくある光景だと思います。営業パーソンは、受注件数が増やすために何をすればよいのか、が分かると嬉しいことでしょう。このとき、「データを分析する側」(データ分析担当者)が出した分析結果が、営業パーソンからみて「自分でもできそう、かつ、効果も大きい施策」であれば、営業パーソンが動いてくれる可能性が高くなります。このとき、データ分析者は分析結果として「実現可能性」と「効果の大きさ」も併せて出す必要があります。要するに、「受注件数」という営業パーソンが動けるKPIがお互いに共有されているため、そこが軸にデータ分析結果を出すことで施策がダイレクトにつながってくるのです。

2. KPI(指標)が共有化されない悲劇

 逆に、「KPIが共有されていない、もしくは、KPIがあいまい」だと結構悲惨です。実際あった例です。

 明確にKPIとして設定されていたわけではありませんでしたが、営業パソーンは受注件数と受注金額という指標を非常に気にしていました。営業パーソンとしては、当たり前のことだと思います。しかし、情報システム部のデータ分析担当者から出てきた分析結果は、「受注し易い顧客属性のプロファイリング結果(例:大手建設業・売上横ばい・技術重視など)」でした。確かに、「受注し易い顧客属性のプロファイル」を知ることは、これからどのような見込顧客をアプローチするのかを決める際には重要です。しかし、このケースの営業パーソンの知りたかったのは、現在アプローチ中の見込み顧客に対し、明日何をすればよいかです。

 現在アプローチしている見込み顧客の対し「受注件数や受注金額を高めることのできる施策」を知りたい営業パーソンに、「受注し易い顧客属性のプロファイル」を手渡しても、当たり前ですが具体的なアクションが起こることは難しいでしょう。例えば、「受注し易い顧客属性のプロファイル」を使おうとすれば、現在アプローチしている見込み顧客の選定に活用できるかもしれません。しかし、選定後にどのような施策を実施すればよいのかまではわかりません。

3. たった一つの、馴染み深いKPIの共有から始めよう!

 企業によっては、KPIを山のように設計しているケースもあります。ある企業では、KPIが数百ありました。KPIの共有だ! といっても、数百も共有されたらわけが分かりません。最初は、データ活用で成果が出ていないのであれば、データ活用のためにたった一つのKPIの共有から始めましょう。お勧めなのは、例えば「受注件数」や「受注金額」、「離反率」(もしくは「継続率」)、「取引額拡大率」などのベタなものです。

 データ活用を成功裏に収めたければ、どのKPIで行くかは、データ分析者や会社のエライ人の意見ではなく、現場の営業パーソンやマーケターの意見を重視します。彼ら・彼女らが普段見て...

データ分析

◆ なぜ、データ分析で成果がでないのか? KPIの共有の仕方で解決する「簡単なコツ」

 なぜ、データ分析しても施策につながらず、具体的な成果がでないのでしょうか。営業や販促活動のデータ活用(セールスアナリティクス)のケースでも、次のような声をよく聞きます。

  • 自社の分析力が貧弱(専任の担当者がいない)
  • 自社のデータ分析基盤が貧弱(まともな分析ツールすらない)
  • データサイエンティスト(データ分析の専門家)が足りない
  • データ分析担当者が出してきた分析結果が非現実
  • 分析結果を見ても、具体的に何をすればよいのか分からない

 この中で、大きなボトルネックになっているのが、最後の2つです。データ分析担当者が出してきた分析結果が非現実、分析結果を見ても、具体的に何をすればよいのか分からない。

 私は20年近くデータ分析の業界に身を置いています。その経験値から言いますと、いかにデータを分析するのかに注目されがちですが、データ活用の上手くいっていないケースの多くは、いかに活用するのかの検討が不十分です。

 実際に、多額のIT投資で分析基盤を整えたり、データ分析のできるデータサイエンティストを採用しても、データ分析で成果がでないという問題が解決されないケースが多いのです。一方で、でてくる分析結果が現実的で分析結果を見て具体的に何をすればよいのか分かるようなデータ分析の結果を出せれば、どんなに「分析基盤が貧弱」で「データ分析経験が浅く」とも成果につながります。

 要するに、いかにデータを分析するのかよりもいかに活用するのかが重要だ、ということです。

 すぐ成果の出やすい対処療法があります。それは、KPI(指標)の共有です。明確にKPIとして設計されていなければ、受注件数や離反率などの簡単なKPIを、とりあえず作ります。そのとき、単にKPIを共有してもダメです。簡単なコツがあります。ぜひ、営業・販促のデータ活用(セールスアナリティクス)が上手くいっていないと思われている方は、参考にして頂ければと思います。

1. KPI(指標)がデータ活用の「キモ」である

 KPI(指標)は、「データを分析する側」(データ分析担当者)と「施策を実施する側」(営業パーソンやマーケター)をつなぐ重要な共通言語です。同一人物がデータを分析し活用する場合(例:マーケターが自らデータ分析するケース)でも、頭の中で「データを分析する自分」と「施策を実施する自分」の橋渡し役になるのが、KPI(指標)です。ちなみに、KPI(Key Performance Indicator、重要業績評価指標)とKGI(Key Goal Indicator、重要目標達成指標)を、明確に分ける場合もありますが、ここでは一緒くたに「指標」として扱います。KGIは目標KPIとも呼ばれます。

 では、分かりやすい例で説明します。例えば、「受注件数」という目標KPI(もしくはKGI)で考えてみます。

 施策を実施する営業パーソンが、受注件数という指標で評価され、常に気にして営業活動をしているとします。よくある光景だと思います。営業パーソンは、受注件数が増やすために何をすればよいのか、が分かると嬉しいことでしょう。このとき、「データを分析する側」(データ分析担当者)が出した分析結果が、営業パーソンからみて「自分でもできそう、かつ、効果も大きい施策」であれば、営業パーソンが動いてくれる可能性が高くなります。このとき、データ分析者は分析結果として「実現可能性」と「効果の大きさ」も併せて出す必要があります。要するに、「受注件数」という営業パーソンが動けるKPIがお互いに共有されているため、そこが軸にデータ分析結果を出すことで施策がダイレクトにつながってくるのです。

2. KPI(指標)が共有化されない悲劇

 逆に、「KPIが共有されていない、もしくは、KPIがあいまい」だと結構悲惨です。実際あった例です。

 明確にKPIとして設定されていたわけではありませんでしたが、営業パソーンは受注件数と受注金額という指標を非常に気にしていました。営業パーソンとしては、当たり前のことだと思います。しかし、情報システム部のデータ分析担当者から出てきた分析結果は、「受注し易い顧客属性のプロファイリング結果(例:大手建設業・売上横ばい・技術重視など)」でした。確かに、「受注し易い顧客属性のプロファイル」を知ることは、これからどのような見込顧客をアプローチするのかを決める際には重要です。しかし、このケースの営業パーソンの知りたかったのは、現在アプローチ中の見込み顧客に対し、明日何をすればよいかです。

 現在アプローチしている見込み顧客の対し「受注件数や受注金額を高めることのできる施策」を知りたい営業パーソンに、「受注し易い顧客属性のプロファイル」を手渡しても、当たり前ですが具体的なアクションが起こることは難しいでしょう。例えば、「受注し易い顧客属性のプロファイル」を使おうとすれば、現在アプローチしている見込み顧客の選定に活用できるかもしれません。しかし、選定後にどのような施策を実施すればよいのかまではわかりません。

3. たった一つの、馴染み深いKPIの共有から始めよう!

 企業によっては、KPIを山のように設計しているケースもあります。ある企業では、KPIが数百ありました。KPIの共有だ! といっても、数百も共有されたらわけが分かりません。最初は、データ活用で成果が出ていないのであれば、データ活用のためにたった一つのKPIの共有から始めましょう。お勧めなのは、例えば「受注件数」や「受注金額」、「離反率」(もしくは「継続率」)、「取引額拡大率」などのベタなものです。

 データ活用を成功裏に収めたければ、どのKPIで行くかは、データ分析者や会社のエライ人の意見ではなく、現場の営業パーソンやマーケターの意見を重視します。彼ら・彼女らが普段見ている数字をヒアリングし設定しましょう。例えば、営業やマーケティングの現場で「受注件数」を重視しているとします。会社としては「貢献利益」を重視する! と言ったとしても、最初は「受注件数」というKPIを軸にデータ分析をし、成果を出していきます。その後、「貢献利益」というKPIを軸にデータ分析をし、成果を出せばよいのです。

 データ活用に懐疑的な(もしくは、面倒だ)と思っている、営業やマーケティングの現場に対し、なじみの薄いKPIを押し付けても、なかなかデータ活用が進みません。できれば、馴染み深いKPIから始めるのがよいでしょう。この例では、「受注件数」です。データ分析結果を使い、目に見えて受注件数が増えれば、現場の営業パーソンやマーケッターは非常に嬉しいでしょう。

4. 馴染み深いKPIの共有から一歩前進

 データ分析しても施策につながらず成果がでないという問題を解決するための、簡単なコツについて説明しました。もちろん、これだけで解決するわけではありません。しかし、データもそこそこ蓄積され、データも分析し共有しているのに成果がでない! という営業やマーケティングの現場では、KPIの共有を適切に進めるだけで上手くいく場合があります。先ずは、たった一つの現場の営業パーソンやマーケターにとって馴染み深いKPIの共有から始めてみましょう。営業・販促のデータ活用(セールスアナリティクス)が上手くいっていない場合、一歩前進することでしょう。

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この記事の著者

高橋 威知郎

データネクロマンサー/データ分析・活用コンサルタント (埋もれたデータに花を咲かせる、データ分析界の花咲じじい。それほど年齢は重ねてないけど)

データネクロマンサー/データ分析・活用コンサルタント (埋もれたデータに花を咲かせる、データ分析界の花咲じじい。それほど年齢は重ねてないけど)


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