時系列データの3つの見方とは データ分析講座(その46)

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情報マネジメント

◆ 売上分析指標(KPIなど)の3つの見方

 売上分析をするデータの多くは、時系列データと呼ばれるものです。時系列データとは、時系列に推移したデータです。例えば、売上そのものは典型的な時系列データです。そう考えると、時系列でないデータの方が、売上や受注件数、訪問回数などの売上分析指標(KPIなど)の中には少ないくらいです。昔から、時系列解析という統計学の分野があるぐらい、社会的ニーズがあり、そして奥の深い分野です。奥の深いというのは、「ややこしい」ということです。定常性だの単位根だの、一般社会からかけ離れた概念がたくさんでてきます。

 ここでは、時系列解析の「ややこしい議論」はいたしません。このような概念は非常に有用なものですが、こだわり過ぎると、にっちもさっちもいかなくなります。そういうものは、実務上はいったんわきに置いた方がよいでしょう。こだわったからと言って、ものすごいビジネス成果を得るわけではありません。そもそもスピード感がなくなります。タイミングを逃してしまったら、元も子もありません。そのあたりは、データの見方や解釈でカバーした方がよいでしょう。その解釈をするときに、気を付けた方がよいポイントがあります。

 今回は、時系列解析の視点から、売上をはじめとした時系列データの3つの見方について説明します。

 この3つの見方は重要で、時系列データをどの視点で見ているのかを議論するとき、この見方がズレていると議論がかみ合わなくなり、混乱してきます。売上や受注件数、訪問回数などの売上分析指標(KPIなど)をはじめとした時系列データを見るときとの、ちょっとし見方に過ぎませんが、知っていると売上分析が少しプロっぽくなり、売上分析のビジネス活用がちょっと前進することでしょう。

1. 3つの見方

 いきなり3つの見方について紹介します。

  • 予測(forecasting)
  • フィルタリング(filtering)
  • 平滑化(smoothing)

 「予測(forecasting)」以外は、ピンとこない方もいるかもしれません。時系列解析という統計学の分野では、結局のところこの3つの問題(いかに推定するか)うぃ扱っていると、私は感じています。この3つがそのまま、売上や受注件数、訪問回数などの売上分析指標(KPIなど)をはじめとした時系列データを「どのように見るのか」、さらにその先の「どのように活用するのか」につながっていきます。

 厳密ではありませんが、意味合いを外さない程度に超簡単に説明します。

  • 「予測(forecasting)」は文字通り、手元にある時系列データを使って、今後どうなりそうなのかを考えます。未来を見ます。
  • 「フィルタリング(filtering)」では、手元にある時系列データの中で最も新しいデータが、どうなのかを考えます。現在を見ます。
  • 「平滑化(smoothing)」では、手元にある時系列データ全体が、どうなのかを考えます。過去を見ます。

 要するに、未来を見るための「予測(forecasting)」、現在を見るための「フィルタリング(filtering)」、過去を見るための「平滑化(smoothing)」です。

2. 平滑化(smoothing)

 「平滑化(smoothing)」と聞くと、移動平均などを思い浮かべる人も多いと思います。簡単にいうと、「平滑化(smoothing)」とは、各時点のノイズを除去し、過去の真の値を知ろう! というものです。もう少し、簡単に言うと、売上データなどの手元のある時系列データが、過去どうだったのかを知ることです。

 過去を知らなければ、現在がどうなのかを定めることも、未来を考えることも、ままなりません。非常に重要なことです。

 このとき、過去の時系列データの中に、変な動きをする時期を発見したり、売上が突然跳ねたり下がったりする時期を発見したり、上昇傾向や下降傾向といったトレンドを発見したり、季節性(例:夏に売上が上がるなど)を発見したりすることでしょう。ここで発見した、売上データなどの時系列データの「クセ」を、「フィルタリング(filtering)」や「予測(forecasting)」のときに活用したりします。要するに、売上データなどの手元のある時系列データを、折れ線グラフ化し「あーだ、こーだ」と議論するのは、「平滑化(smoothing)」という観点で売上分析していることになります。

3. フィルタリング(filtering)

 もっとも聞きなれないのが「フィルタリング(filtering)」ではないでしょうか。

 先ほども説明しましたが、「フィルタリング(filtering)」とは、手元にある時系列データの中で最も新しいデータが、どうなのかを考えることです。最新ということで、リアルタイムに近いほど、ほぼ現在(いま)を見ることになります。例えば、今現在、売上がどうなったいるのかや、店舗の来店客数はどうなっているのか、注文がどのなっているのか、ホームページのPV(ページビュー)数がどうなっているのか、など今を知ることです。

 なぜ今を知りたいのでしょうか。例えば、異常検知。異常検知なども「フィルタリング(filtering)」の問題となります。

 今現在、売上に問題はないか(正常か異常か)、来店客数に問題はないか(正常か異常か)、注文数に問題はないか(正常か異常か)、PV(ページビュー)数に問題はないか(正常か異常か)、ということです。異常だったら、過去の情報から説明つかない何かが起こっていることになります。そのために、何かしら対策を打とうと、考えたりします。

 要するに、今すぐ対策を打つために、何かしら行動を起こした方がよさそうかが、見えてきます。ちなみに、「問題」や「異常」という用語を使うとネガティブな感じがしますが、時系列解析では「イノベーション」というポジティブな用語で表現することもあります。先ほどの例ですと、今現在、売上にイノベーションは起こっていないか、来店客数にイノベーションは起こっていないか、注文数にイノベーションは起こっていないか、PV(ページビュー)数にイノベーションは起こっていないか、というこ感じになります。過去の時系列データから分からない、新しい何か(イノベーション)が起こっているということです。

4. 予測(forecasting)

 多くの人が、もっとも聞き慣れているのがこの「予測(forecasting)」だと思います。特別説明が必要な分かり難い概念でないと思いますので、「予測(forecasting)」はさらりと説明します。「予測(forecasting)」とは、意味も文字通りの意味で、手元にある時系列データを使って未来を考えます。例えば、計画通りことを進めたらどうなるのか、チラシの配布枚数を倍に増やしたらどうなるのか、DMを打たなかったらどうなるのか、などを予測します。要するに、未来のシミュレーションです。現実は、シミュレーション通りにはなりませんが、それでも何も無いよりもましです。先の見えない未来に、ちょっとした明かりを灯してくれます。

5. 時系列データの3つの見方

 今回は、時系列解析の視点から、売上をはじめとした時系列デ...

情報マネジメント

◆ 売上分析指標(KPIなど)の3つの見方

 売上分析をするデータの多くは、時系列データと呼ばれるものです。時系列データとは、時系列に推移したデータです。例えば、売上そのものは典型的な時系列データです。そう考えると、時系列でないデータの方が、売上や受注件数、訪問回数などの売上分析指標(KPIなど)の中には少ないくらいです。昔から、時系列解析という統計学の分野があるぐらい、社会的ニーズがあり、そして奥の深い分野です。奥の深いというのは、「ややこしい」ということです。定常性だの単位根だの、一般社会からかけ離れた概念がたくさんでてきます。

 ここでは、時系列解析の「ややこしい議論」はいたしません。このような概念は非常に有用なものですが、こだわり過ぎると、にっちもさっちもいかなくなります。そういうものは、実務上はいったんわきに置いた方がよいでしょう。こだわったからと言って、ものすごいビジネス成果を得るわけではありません。そもそもスピード感がなくなります。タイミングを逃してしまったら、元も子もありません。そのあたりは、データの見方や解釈でカバーした方がよいでしょう。その解釈をするときに、気を付けた方がよいポイントがあります。

 今回は、時系列解析の視点から、売上をはじめとした時系列データの3つの見方について説明します。

 この3つの見方は重要で、時系列データをどの視点で見ているのかを議論するとき、この見方がズレていると議論がかみ合わなくなり、混乱してきます。売上や受注件数、訪問回数などの売上分析指標(KPIなど)をはじめとした時系列データを見るときとの、ちょっとし見方に過ぎませんが、知っていると売上分析が少しプロっぽくなり、売上分析のビジネス活用がちょっと前進することでしょう。

1. 3つの見方

 いきなり3つの見方について紹介します。

  • 予測(forecasting)
  • フィルタリング(filtering)
  • 平滑化(smoothing)

 「予測(forecasting)」以外は、ピンとこない方もいるかもしれません。時系列解析という統計学の分野では、結局のところこの3つの問題(いかに推定するか)うぃ扱っていると、私は感じています。この3つがそのまま、売上や受注件数、訪問回数などの売上分析指標(KPIなど)をはじめとした時系列データを「どのように見るのか」、さらにその先の「どのように活用するのか」につながっていきます。

 厳密ではありませんが、意味合いを外さない程度に超簡単に説明します。

  • 「予測(forecasting)」は文字通り、手元にある時系列データを使って、今後どうなりそうなのかを考えます。未来を見ます。
  • 「フィルタリング(filtering)」では、手元にある時系列データの中で最も新しいデータが、どうなのかを考えます。現在を見ます。
  • 「平滑化(smoothing)」では、手元にある時系列データ全体が、どうなのかを考えます。過去を見ます。

 要するに、未来を見るための「予測(forecasting)」、現在を見るための「フィルタリング(filtering)」、過去を見るための「平滑化(smoothing)」です。

2. 平滑化(smoothing)

 「平滑化(smoothing)」と聞くと、移動平均などを思い浮かべる人も多いと思います。簡単にいうと、「平滑化(smoothing)」とは、各時点のノイズを除去し、過去の真の値を知ろう! というものです。もう少し、簡単に言うと、売上データなどの手元のある時系列データが、過去どうだったのかを知ることです。

 過去を知らなければ、現在がどうなのかを定めることも、未来を考えることも、ままなりません。非常に重要なことです。

 このとき、過去の時系列データの中に、変な動きをする時期を発見したり、売上が突然跳ねたり下がったりする時期を発見したり、上昇傾向や下降傾向といったトレンドを発見したり、季節性(例:夏に売上が上がるなど)を発見したりすることでしょう。ここで発見した、売上データなどの時系列データの「クセ」を、「フィルタリング(filtering)」や「予測(forecasting)」のときに活用したりします。要するに、売上データなどの手元のある時系列データを、折れ線グラフ化し「あーだ、こーだ」と議論するのは、「平滑化(smoothing)」という観点で売上分析していることになります。

3. フィルタリング(filtering)

 もっとも聞きなれないのが「フィルタリング(filtering)」ではないでしょうか。

 先ほども説明しましたが、「フィルタリング(filtering)」とは、手元にある時系列データの中で最も新しいデータが、どうなのかを考えることです。最新ということで、リアルタイムに近いほど、ほぼ現在(いま)を見ることになります。例えば、今現在、売上がどうなったいるのかや、店舗の来店客数はどうなっているのか、注文がどのなっているのか、ホームページのPV(ページビュー)数がどうなっているのか、など今を知ることです。

 なぜ今を知りたいのでしょうか。例えば、異常検知。異常検知なども「フィルタリング(filtering)」の問題となります。

 今現在、売上に問題はないか(正常か異常か)、来店客数に問題はないか(正常か異常か)、注文数に問題はないか(正常か異常か)、PV(ページビュー)数に問題はないか(正常か異常か)、ということです。異常だったら、過去の情報から説明つかない何かが起こっていることになります。そのために、何かしら対策を打とうと、考えたりします。

 要するに、今すぐ対策を打つために、何かしら行動を起こした方がよさそうかが、見えてきます。ちなみに、「問題」や「異常」という用語を使うとネガティブな感じがしますが、時系列解析では「イノベーション」というポジティブな用語で表現することもあります。先ほどの例ですと、今現在、売上にイノベーションは起こっていないか、来店客数にイノベーションは起こっていないか、注文数にイノベーションは起こっていないか、PV(ページビュー)数にイノベーションは起こっていないか、というこ感じになります。過去の時系列データから分からない、新しい何か(イノベーション)が起こっているということです。

4. 予測(forecasting)

 多くの人が、もっとも聞き慣れているのがこの「予測(forecasting)」だと思います。特別説明が必要な分かり難い概念でないと思いますので、「予測(forecasting)」はさらりと説明します。「予測(forecasting)」とは、意味も文字通りの意味で、手元にある時系列データを使って未来を考えます。例えば、計画通りことを進めたらどうなるのか、チラシの配布枚数を倍に増やしたらどうなるのか、DMを打たなかったらどうなるのか、などを予測します。要するに、未来のシミュレーションです。現実は、シミュレーション通りにはなりませんが、それでも何も無いよりもましです。先の見えない未来に、ちょっとした明かりを灯してくれます。

5. 時系列データの3つの見方

 今回は、時系列解析の視点から、売上をはじめとした時系列データの3つの見方について説明しました。

  • 予測(forecasting) → 未来
  • フィルタリング(filtering) → 現在
  • 平滑化(smoothing) → 過去

 の3つの見方はちょっと重要でして、どの視点で売上などの時系列データを見ているのかを認識していないと、議論などをしているときかみ合わなくなり、お互い混乱してきます。

 例えば、売上の予測値を見せながら

 「このままでいくと売上は……(未来)」と説明しているときに、「あのときはどうだったんだ!(過去)」と遮られ、「来月やばいよね……(未来)」とぼやかれ、「そういえば今月はどうなんだ(現在)」とブツブツ言われるかもしれない。

 議論の時制が過去・現在・未来を行ったり来たりし始め、「空中戦」を超えた「時空中戦」に突入したりします。

 売上や受注件数、訪問回数などの売上分析指標(KPIなど)を解釈したり議論したり説明するとき、どの見方をしているのかを意識すると、不本意な「時空中戦」に巻き込まれにくくなります。頭の中では、基本は「過去→現在→未来」の流れ。説明するとき、最初に「未来」から語ったり、「現在」を軸に語ることがあっても、頭の中では常に「過去→現在→未来」の流れを保つことが重要になってきます。売上や受注件数、訪問回数などの売上分析指標(KPIなど)をはじめとした時系列データを見るとき、このちょっとした見方を知っていると、売上分析が少し整理され前進すると思います。ぜひ意識して、売上分析のビジネス活用がちょっと前進し、あなたの会社の収益がよくなればと思います。

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この記事の著者

高橋 威知郎

データネクロマンサー/データ分析・活用コンサルタント (埋もれたデータに花を咲かせる、データ分析界の花咲じじい。それほど年齢は重ねてないけど)

データネクロマンサー/データ分析・活用コンサルタント (埋もれたデータに花を咲かせる、データ分析界の花咲じじい。それほど年齢は重ねてないけど)


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