需要予測とは データ分析講座(その211)

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データ分析

 

コロナ禍で分かったのは、状況に対する適応力が必要ということです。変化する状況に対し、柔軟な在庫や人員配置などが求められることでしょう。とは言え、今日明日にいきなり在庫や人員を調整することは無理です。その中で求められるデータサイエンス技術の1つが需要予測です。

この状況でこの商材はどれくらい売れるのか、ということがスピーディに程度分かれば、在庫や人員を調整することができることでしょう。今回は、「需要予測をして何がうれしいの?」について簡単にお話しします。

【目次】

1.需要予測とは?
(1)ということは、需要予測は何の役立つのか?
2.需要予測でよく使われる指標
3.需要予測の切り口
4.需要予測のタイプ

 

1.需要予測とは?

過去の売上や在庫量、市場価格などのデータを用いて、将来の消費者の需要を予測するのが、需要予測です。

 

需要を予測することで……

  • 売上目標に到達できそうか?
  • 在庫量をどうすべきか?
  • どのくらい生産もしくは仕入れるべきか?
  • 価格は適切か?
  • 人員はどうか?
  • そして、需要と供給のギャップの要因は?

……などが分かります。

 

需要の目星がつかないと、例えば店舗で過剰に供給し商品が売れ残ったり、供給不足により潜在的な売上を逃したりします。モノを生産する側にも非常に重要です。必要な生産能力、材料の供給、機械の稼働率など、需要量を想定して考えられます。いい加減だと、作り過ぎや作らな過ぎが発生したりと何かと問題が起こります。

 

(1)ということは、需要予測は何の役立つのか?

例えば……

  • 出店や店舗開発、販売、マケプランなどの計画立案に役立つ
  • 在庫回転率の向上に役立つ
  • 廃棄ロスを減らすのに役立つ
  • スタッフの効率的な管理に役立つ
  • そして、店舗利益や事業貢献利益などの向上に役立つ

……などで役立つでしょう。

 

手探りでこんなもんだろうと言う感じで何となく需要量を予測したり、前年踏襲型の需要予測をしたりするよりも、データに基づいた需要予測をしたほうがいいでしょう。しかし、データで需要予測をしたとしても、最後は人が判断し決めます。

 

データは過去の一部を切り出したものに過ぎません。データに現れない過去の現象はたくさんあります。無論、データは未来の現象を捉えていません。要するに、データで捉えらえれないことはたくさんあります。データで捉えられていないことを補足するのは、人の定性的な洞察力です。需要予測は、データサイエンスと人のコラボレーションです。

 

需要予測は、ビジネスの今後の動きに対しより良いレールを設定するのに役立つものです。

 

2.需要予測でよく使われる指標

よく使われる財務的な指標は次の4つです。

  • 売上高
  • 売上原価
  • 粗利(=売上高‐売上原価)
  • EBITDA(≒営業利益+減価償却費、簡単に言うとキャッシュベースの利益)

 

よく使われる在庫管理上の指標は次の3つです。

  • 在庫保有コスト(在庫を持つことによりかかるコスト)
  • フィルレート(正納率=1-欠品率)
  • 在庫回転率(=総出庫数÷平均在庫数)

 

よく使われる生産計画上の指標は次の4つです。

  • 生産量
  • 設備稼働率
  • メンテナンスコスト
  • 生産設備ROA(=営業利益÷有形固定資産)


他にも色々な切り口や指標があるかと思います。需要予測の精度を上げることで、これらの指標の改善を狙います。

 

3.需要予測の切り口

需要予測を考えるときの切り口は、大きく2つあります。

  • 期間
  • レベル


「期間」は、ざっくり「短期」と「長期」に分かれます。

 

予測対象期間が四半期(3カ月)から1年先ぐらいを予測するのか、それとも3~5年と先の予測をしたいのか、ということです。もちろん、短期の方が予測精度が高く、日々の業務を実施する上で求められるのはこちらでしょう。長期は予測精度は低いですが、市場拡大や商品開発などを考える上で有効です。

 

「レベル」は、ざっくり「経済全体(GDPなど)」と「市場全体」と「企業全体」と「販売チャネル(店舗ごとなど)」と「アイテム(商品カテゴリーやSKUなど)」などに分かれます。実務的には、比較的レベル感の小さい(企業全体や販売チャネル、アイテムなど)ところで短期的(3カ月~1年先ぐらい)な需要予測をすることでしょう。

 

4.需要予測のタイプ

需要予測には、大きく2タイプのアプローチがあります。

  • 定性的アプローチ
  • 定量的アプローチ

 

定性的アプローチとは、過去データが無い、もしくは十分に無い場合に利用するアプローチです。新商品などの需要予測をするときに、メインで使います。専門家にヒアリングしたり、消費者にインタビューしたり、それらを元にアンケートベースの市場調査をしたりします。

 

定量的アプローチとは、過去データをもとに、データ分析をしたり需要予測モデルを作ったりします。既存品などの需要予測をするときに、メインで使います。

 

近年、機械学習やAIなどの隆盛で、実務で使える状態の需要予測モデルが様々登場しました。必ずしも、目新しい需要予測モデルがいいというわけでもないのが、この分野の悩ましいところです。

 

大きく3種類の需要予測モデルのタイプあります。

  • プロダクトライフサイクル型
  • 回...

データ分析

 

コロナ禍で分かったのは、状況に対する適応力が必要ということです。変化する状況に対し、柔軟な在庫や人員配置などが求められることでしょう。とは言え、今日明日にいきなり在庫や人員を調整することは無理です。その中で求められるデータサイエンス技術の1つが需要予測です。

この状況でこの商材はどれくらい売れるのか、ということがスピーディに程度分かれば、在庫や人員を調整することができることでしょう。今回は、「需要予測をして何がうれしいの?」について簡単にお話しします。

【目次】

1.需要予測とは?
(1)ということは、需要予測は何の役立つのか?
2.需要予測でよく使われる指標
3.需要予測の切り口
4.需要予測のタイプ

 

1.需要予測とは?

過去の売上や在庫量、市場価格などのデータを用いて、将来の消費者の需要を予測するのが、需要予測です。

 

需要を予測することで……

  • 売上目標に到達できそうか?
  • 在庫量をどうすべきか?
  • どのくらい生産もしくは仕入れるべきか?
  • 価格は適切か?
  • 人員はどうか?
  • そして、需要と供給のギャップの要因は?

……などが分かります。

 

需要の目星がつかないと、例えば店舗で過剰に供給し商品が売れ残ったり、供給不足により潜在的な売上を逃したりします。モノを生産する側にも非常に重要です。必要な生産能力、材料の供給、機械の稼働率など、需要量を想定して考えられます。いい加減だと、作り過ぎや作らな過ぎが発生したりと何かと問題が起こります。

 

(1)ということは、需要予測は何の役立つのか?

例えば……

  • 出店や店舗開発、販売、マケプランなどの計画立案に役立つ
  • 在庫回転率の向上に役立つ
  • 廃棄ロスを減らすのに役立つ
  • スタッフの効率的な管理に役立つ
  • そして、店舗利益や事業貢献利益などの向上に役立つ

……などで役立つでしょう。

 

手探りでこんなもんだろうと言う感じで何となく需要量を予測したり、前年踏襲型の需要予測をしたりするよりも、データに基づいた需要予測をしたほうがいいでしょう。しかし、データで需要予測をしたとしても、最後は人が判断し決めます。

 

データは過去の一部を切り出したものに過ぎません。データに現れない過去の現象はたくさんあります。無論、データは未来の現象を捉えていません。要するに、データで捉えらえれないことはたくさんあります。データで捉えられていないことを補足するのは、人の定性的な洞察力です。需要予測は、データサイエンスと人のコラボレーションです。

 

需要予測は、ビジネスの今後の動きに対しより良いレールを設定するのに役立つものです。

 

2.需要予測でよく使われる指標

よく使われる財務的な指標は次の4つです。

  • 売上高
  • 売上原価
  • 粗利(=売上高‐売上原価)
  • EBITDA(≒営業利益+減価償却費、簡単に言うとキャッシュベースの利益)

 

よく使われる在庫管理上の指標は次の3つです。

  • 在庫保有コスト(在庫を持つことによりかかるコスト)
  • フィルレート(正納率=1-欠品率)
  • 在庫回転率(=総出庫数÷平均在庫数)

 

よく使われる生産計画上の指標は次の4つです。

  • 生産量
  • 設備稼働率
  • メンテナンスコスト
  • 生産設備ROA(=営業利益÷有形固定資産)


他にも色々な切り口や指標があるかと思います。需要予測の精度を上げることで、これらの指標の改善を狙います。

 

3.需要予測の切り口

需要予測を考えるときの切り口は、大きく2つあります。

  • 期間
  • レベル


「期間」は、ざっくり「短期」と「長期」に分かれます。

 

予測対象期間が四半期(3カ月)から1年先ぐらいを予測するのか、それとも3~5年と先の予測をしたいのか、ということです。もちろん、短期の方が予測精度が高く、日々の業務を実施する上で求められるのはこちらでしょう。長期は予測精度は低いですが、市場拡大や商品開発などを考える上で有効です。

 

「レベル」は、ざっくり「経済全体(GDPなど)」と「市場全体」と「企業全体」と「販売チャネル(店舗ごとなど)」と「アイテム(商品カテゴリーやSKUなど)」などに分かれます。実務的には、比較的レベル感の小さい(企業全体や販売チャネル、アイテムなど)ところで短期的(3カ月~1年先ぐらい)な需要予測をすることでしょう。

 

4.需要予測のタイプ

需要予測には、大きく2タイプのアプローチがあります。

  • 定性的アプローチ
  • 定量的アプローチ

 

定性的アプローチとは、過去データが無い、もしくは十分に無い場合に利用するアプローチです。新商品などの需要予測をするときに、メインで使います。専門家にヒアリングしたり、消費者にインタビューしたり、それらを元にアンケートベースの市場調査をしたりします。

 

定量的アプローチとは、過去データをもとに、データ分析をしたり需要予測モデルを作ったりします。既存品などの需要予測をするときに、メインで使います。

 

近年、機械学習やAIなどの隆盛で、実務で使える状態の需要予測モデルが様々登場しました。必ずしも、目新しい需要予測モデルがいいというわけでもないのが、この分野の悩ましいところです。

 

大きく3種類の需要予測モデルのタイプあります。

  • プロダクトライフサイクル型
  • 回帰モデル型
  • 時系列解析モデル型

 

プロダクトサイクル型とは、予測対象がプロダクトライフのステージ(導入・成長・成熟。衰退・など)がどの段階にあるのか、各ステージの長さはどれくらいなのかを予測するものです。

回帰モデル型とは、需要予測対象を目的変数Yとし、その目的変数に影響を与えるであろう説明変数X(販促やキャンペーン、時期など)を使い予測するものです。

時系列解析モデル型とは、需要予測対象(回帰モデル型の目的変数Y)のトレンドや季節性などを推定し、それを使い予測するものです。

 

需要予測対象(回帰モデル型の目的変数Y)のデータしかないときは時系列解析モデル型で、目的変数に影響を与えるであろう説明変数X(販促やキャンペーン、時期など)のデータもあるならば、時系列解析モデル型と回帰モデル型のハイブリッド型の需要予測モデルを作るケースが多いです。

 

 

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この記事の著者

高橋 威知郎

データネクロマンサー/データ分析・活用コンサルタント (埋もれたデータに花を咲かせる、データ分析界の花咲じじい。それほど年齢は重ねてないけど)

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