ブルーオーシャンな時期とは データ分析講座(その4)

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◆ レッドオーシャンに飛び込めとデータは言うけど

 「ブルーオーシャンをデータだけで発見したいんだけど……」よくこのような質問をされるかたがいます。ブルーオーシャンとは「青い海=利益率の高い競合相手のいない市場」のことです。一方、レッドオーシャンというのもあります。レッドオーシャンとは「赤い海=血で血を争う競合のたくさんいる市場」のことです。

 こんな夢なような市場をデータで創造するのは至難の業です。市場は無理でも、「ブルーオーシャンな時期」だったら見つかるかも。「ブルーオーシャンな時期」とは、競合が気付いていない利益率の高い時期のことです。これであればデータで見つかりそうです。販売データを分析すれば出てきそうです。粗利の高い商品がたくさん売れている時期を探せばよいのですから。

1. ブルーオーシャンな時期は、確かに見つかるけど

 小売店であれば、日単位で売上と粗利、広告宣伝費&販促費(CMやチラシなど)などの額を集計して利益率を計算。

  • 利益率=(粗利-広告宣伝費&販促費などのコスト)÷ 売上

 とりあえず、その粗利率を時系列で眺めれば見えてきます。この時期の粗利率が高いとか、この時期の粗利率が低いとかが見えてきます。小売店チェーンの場合は決まって、バーゲンの時期と初売りの時期の利益率が悪い。利益率が高いのは、バーゲンの時期と初売りの時期以外の時期にある。「これぞまさにブルーオーシャンな時期だ!」と喜べるでしょうか? 閑散期にブルーオーシャンです。つまり、儲からない時期です。

2. 儲かる「時期」はレッドオーシャンという嫌な真実

 小売店チェーンの場合、日別の売上の時系列で眺めれば、決まってバーゲンの時期と初売りの時期が売上が跳ねます。1週間単位で見れば、人が来やすい土日や祝日に売上が跳ねます。利益率とは逆の動きをします。なぜ小売店チェーンでは、売上と利益率は逆の動き方をするのか。

 それは、たくさん売る時期に、値引きをしたりチラシや広告などのコストをかけるからです。レッドオーシャンの時期にあえてコストをかけてまで、競合と血で血を洗う戦いをしているからです。 なぜなら、その時期は儲かるからです。つまり、儲かる時期は多くの場合レッドオーシャンなのです。

 その時期に、消費者の財布のひもが緩むから。緩まない時期に、1社だけで消費者の財布のひもをゆるませるのは大変です。例えば、1月に浪費した消費者は、2月に財布のひもは固くなります。2月の利益率が高いからと言って、そこにチラシや広告を投入しても、あまり売れないでしょう。1月の初売りに向けてチラシや広告を投入したほうが売上も利益も高いことでしょう。

3. 『ブルーオーシャン戦略』を読みなおしたら光明が差した

 儲かる時期はレッドオーシャンな時期。もしかしたら、儲かる市場もレッドオーシャンかもしれない。たぶん、それは間違いないです。なぜなら、そこの市場にはすでにお客さんがいるからです。間違いなく、お金が落ちてきます。

 レッドオーシャンの問題は、競合が沢山いて血で血を洗う戦いが繰り広げられていること。上手くいけば儲かるけど、儲けるには血で血を洗う戦いを覚悟しなければならない。でも、よく考えてみると、W・チャン・キムとレネ・モボルニュの著書『ブルーオーシャン戦略』に記載された事例は、まったく新しいというよりも、既存の市場の中に新しい市場を創造するようなもの。

 例えば、「シルク・ドゥ・ソレイユ」はサーカス市場、「QBハウス」は理髪店市場、「ドコモの iモード」は携帯電話市場などなど。つまり、今までに存在すらしていない真新しい市場を創造しているというよりも、既存市場をベースに新市場を創造したという感じではないでしょうか?これであればデータで何とかできるかもしれない。

4. データ × インスピレーションで「ブルーオーシャン」が発見できる

 繰り返し述べますが、『ブルーオーシャン戦略』の書籍によると、「戦略キャンパス」を使って機能を「減らす」「取り除く」「増やす」「付け加える」で「バリューイノベーション」を起こせ、となっているので、やっぱり既存市場をベースに考えているのでしょう。誰も想像すらできない市場を一から創造するのではなく、既存の市場をベースにブルーオーシャンな市場を創造する。これであれば、データを使って何とかできそうです。

 例えば、アンケートというデータを使えばある程度は見えてきそうです。でも、ある程度は見えてきただけではダメで、人の発想力というかインスピレーションがものを言うことでしょう。とは言え、本当にデータとインスピレーションだけでブルーオーシャンな市場を創造できるかというと、そうではないでしょう。大きな問題が立ちはだかります。

 その問題とは、「本当に儲かるかはやってみなければ分からない」という問題です。この問題は、既存市場に新製品やリニューアル品を出すときと同じです。やってみなければ分からない。じゃぁ、既存市場に新製品やリニューアル品を出すときと同じ感じでやればよいのか、というとそうでもない。

 既存市場に新製品やリニューアル品を出すときは、ある程度は売上の予測が立ちます。ブルーオーシャ...

 

情報マネジメント

◆ レッドオーシャンに飛び込めとデータは言うけど

 「ブルーオーシャンをデータだけで発見したいんだけど……」よくこのような質問をされるかたがいます。ブルーオーシャンとは「青い海=利益率の高い競合相手のいない市場」のことです。一方、レッドオーシャンというのもあります。レッドオーシャンとは「赤い海=血で血を争う競合のたくさんいる市場」のことです。

 こんな夢なような市場をデータで創造するのは至難の業です。市場は無理でも、「ブルーオーシャンな時期」だったら見つかるかも。「ブルーオーシャンな時期」とは、競合が気付いていない利益率の高い時期のことです。これであればデータで見つかりそうです。販売データを分析すれば出てきそうです。粗利の高い商品がたくさん売れている時期を探せばよいのですから。

1. ブルーオーシャンな時期は、確かに見つかるけど

 小売店であれば、日単位で売上と粗利、広告宣伝費&販促費(CMやチラシなど)などの額を集計して利益率を計算。

  • 利益率=(粗利-広告宣伝費&販促費などのコスト)÷ 売上

 とりあえず、その粗利率を時系列で眺めれば見えてきます。この時期の粗利率が高いとか、この時期の粗利率が低いとかが見えてきます。小売店チェーンの場合は決まって、バーゲンの時期と初売りの時期の利益率が悪い。利益率が高いのは、バーゲンの時期と初売りの時期以外の時期にある。「これぞまさにブルーオーシャンな時期だ!」と喜べるでしょうか? 閑散期にブルーオーシャンです。つまり、儲からない時期です。

2. 儲かる「時期」はレッドオーシャンという嫌な真実

 小売店チェーンの場合、日別の売上の時系列で眺めれば、決まってバーゲンの時期と初売りの時期が売上が跳ねます。1週間単位で見れば、人が来やすい土日や祝日に売上が跳ねます。利益率とは逆の動きをします。なぜ小売店チェーンでは、売上と利益率は逆の動き方をするのか。

 それは、たくさん売る時期に、値引きをしたりチラシや広告などのコストをかけるからです。レッドオーシャンの時期にあえてコストをかけてまで、競合と血で血を洗う戦いをしているからです。 なぜなら、その時期は儲かるからです。つまり、儲かる時期は多くの場合レッドオーシャンなのです。

 その時期に、消費者の財布のひもが緩むから。緩まない時期に、1社だけで消費者の財布のひもをゆるませるのは大変です。例えば、1月に浪費した消費者は、2月に財布のひもは固くなります。2月の利益率が高いからと言って、そこにチラシや広告を投入しても、あまり売れないでしょう。1月の初売りに向けてチラシや広告を投入したほうが売上も利益も高いことでしょう。

3. 『ブルーオーシャン戦略』を読みなおしたら光明が差した

 儲かる時期はレッドオーシャンな時期。もしかしたら、儲かる市場もレッドオーシャンかもしれない。たぶん、それは間違いないです。なぜなら、そこの市場にはすでにお客さんがいるからです。間違いなく、お金が落ちてきます。

 レッドオーシャンの問題は、競合が沢山いて血で血を洗う戦いが繰り広げられていること。上手くいけば儲かるけど、儲けるには血で血を洗う戦いを覚悟しなければならない。でも、よく考えてみると、W・チャン・キムとレネ・モボルニュの著書『ブルーオーシャン戦略』に記載された事例は、まったく新しいというよりも、既存の市場の中に新しい市場を創造するようなもの。

 例えば、「シルク・ドゥ・ソレイユ」はサーカス市場、「QBハウス」は理髪店市場、「ドコモの iモード」は携帯電話市場などなど。つまり、今までに存在すらしていない真新しい市場を創造しているというよりも、既存市場をベースに新市場を創造したという感じではないでしょうか?これであればデータで何とかできるかもしれない。

4. データ × インスピレーションで「ブルーオーシャン」が発見できる

 繰り返し述べますが、『ブルーオーシャン戦略』の書籍によると、「戦略キャンパス」を使って機能を「減らす」「取り除く」「増やす」「付け加える」で「バリューイノベーション」を起こせ、となっているので、やっぱり既存市場をベースに考えているのでしょう。誰も想像すらできない市場を一から創造するのではなく、既存の市場をベースにブルーオーシャンな市場を創造する。これであれば、データを使って何とかできそうです。

 例えば、アンケートというデータを使えばある程度は見えてきそうです。でも、ある程度は見えてきただけではダメで、人の発想力というかインスピレーションがものを言うことでしょう。とは言え、本当にデータとインスピレーションだけでブルーオーシャンな市場を創造できるかというと、そうではないでしょう。大きな問題が立ちはだかります。

 その問題とは、「本当に儲かるかはやってみなければ分からない」という問題です。この問題は、既存市場に新製品やリニューアル品を出すときと同じです。やってみなければ分からない。じゃぁ、既存市場に新製品やリニューアル品を出すときと同じ感じでやればよいのか、というとそうでもない。

 既存市場に新製品やリニューアル品を出すときは、ある程度は売上の予測が立ちます。ブルーオーシャン市場だと、そのような予測はおそらく皮算用。つまり、既存市場に新製品やリニューアル品だと目途が立つが、ブルーオーシャン市場だと目途すら立たない。本当にやってみなければ何も分からない。やってみたら、市場は無いかもしれないし、市場があっても元のレッドオーシャンに陥るかもしれない。トライ&エラーで頑張り続けるしかない。

5. レッドオーシャンに飛び込めと、データは言ってくる

 そもそも、かなりドラスティックに機能を「減らす」「取り除く」「増やす」「付け加える」しないとブルーオーシャンにならないでしょう。ブルーオーシャンと言っても、レッドオーシャンの中のブルーオーシャン。結局、データが最初に言うのは「レッドオーシャンに飛び込め」ということ。そこで、レッドオーシャンの中を「泳ぎながらブルーオーシャンを探せ」ということ。要するに、レッドオーシャンで戦い続けるにしても、ブルーオーシャンを探すにしても、結局のところレッドオーシャンに飛び込まなくては始まらない。レッドオーシャンで効率的に戦うのにデータは役立つし、レッドオーシャンの中で泳ぎながらブルーオーシャンを探すにもデータは非常に役に立つのです。

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この記事の著者

高橋 威知郎

データネクロマンサー/データ分析・活用コンサルタント (埋もれたデータに花を咲かせる、データ分析界の花咲じじい。それほど年齢は重ねてないけど)

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