販路開拓に関する問題点、次に示す4点について、
第1回として、1と2項を解説しました。
今回は、第2回として、3と4項を解説します。
1.直販と代理店の得失
2.狙いにした客層に適した販売地域の開拓
3.通信販売を主体にした販路開拓
4.知的財産権に関する販売面の問題通信販売を主体にした販路開拓
3.通信販売を主体にした販路開拓
電子機器を独自に開発し、自主販売している従業員約25名の企業の事例です。営業の人員不足を補うため、通信販売を主体にした営業を行っています。専門の月刊誌に製品の性能に関する小論文を掲載し、広告と併設する事でPR効果を高めています。さらに、製品を採用する可能性のある業界に所属する企業の技術部当てにカタログを送付しています。送付した企業の1~2%から問い合わせがあります。問い合わせの段階では商談に至らないが、電話で問い合わせのあった企業には直ちに訪問する事にしています。訪問に際して、製品を持参して説明を行い、製品の特徴、開発品の狙いどころ、開発に要した苦心の内容などについて誠意のある説明を心がけています。
その時には、商談に至らなくても暫くすると特注品の生産の可能性について問い合わせが入ったり、カタログ掲載の製品についても注文が得られる場合があります。特注で得られた製品は、一定期間ごとに類似品別に分類して、共通性のある部分を抽出して規格品にまとめ上げて、カタログ掲載品目を増やします。
前述した専門誌に小論文を掲載する事の効果は大きく、掲載したあとでは、必ず数件以上の問い合わせが寄せられます。これらは受注や製品開発のヒントに貢献しています。また、展示会への出展も効果が大きく、反応のあった相手については、日をおかずに訪問しています。
通信販売が売上高の大部分を占めていても、それに依存したままでは開発テ-マが途切れてしまいます。そのような危機感から取引先を定期的に訪問して購入された製品に関して苦情、問題点等の情報収集を行っています。訪問先で得られた情報は直ちに社内で回覧され、分類整理し、例月の開発会議に提出され、開発候補テ-マを絞り込みます。開発候補になったテ-マに関しては、更に、掘り下げた情報収集を行い、製品開発の可否判断資料に提供されています。規模が小さくても、企業規模に適した販売方法を独自に開発している事例です。
4.知的財産権に関する販売面の問題
多額の資金と労力を費やして開発した知的財産をどのように活用して販路開拓に結びつけるのか、大変重要な問題ですが、販売方法に関する経験が乏しく泣き寝入りに陥っている例が多いので、事例を中心に留意点を記述します。
事例:ノウハウ全てを騙し取られた例
繊維品に関する電子技術を応用した機械の新製品を開発し、展示会に出展し大変な好評を博した直後に、某大手企業の技術者が来訪され「当社に一切の販売を任せてほしい。約束した数量の製品は責任を持って引き取る。帰社して報告するのに必要だから、製品の詳細な構造について説明して欲しい」と言われました。どのような方法で販売すべきか迷っていた経営者は、この申し出に大変喜び数日間に渡り詳細な説明をしました。「良く判ったから、社内で準備する期間が欲しい」と告げられ、その後、6ヶ月を過ぎても何の回答ももたらされませんでした。不安に思っていると遠く離れた地域で当該製品に非常に似た製品が売り出されている。との噂が入ってきました。調べてみると詳細な説明を求めた大手の会社が、製品化して販売を始めたのでした。特許の申請をしていなかった事、口約束だけで打ち合わせ議事録がなかった事から、泣き寝入りに終わっています。
特許の申請をしていなかった事、契約書を取り交わしていなかった事、などが泣き寝入りになった原因です。展示会に出展する前に特許の申請をしておく必要があった事、また、販売に関して相手企業の責任ある立場の人と契約書を交わしておく事、それが出来なければ責任ある立場の人との打合せ議事録を残しておく事がです。相手の確認サインを取るようにします。
この事例は例外敵な事ではありません。中小企業の弱点である販売面の面倒を見ると言う、甘い言葉で迫り、知的財産を巧みに取り上げてしまう大手の企業が存在しています。これに類似した問題は珍しいことではないことを強調しておきます。
事例:基本特許のみでは価値が減退した例
画期的な素材の開発に成功し...