振返り分析と予測分析の運用上の違い:データ分析講座(その318)

投稿日

振返り分析と予測分析の運用上の違い:データ分析講座(その318)

 

今回は「振返り分析と予測分析の運用上の違い」というお話しをします。

【記事要約】

振返り分析と予測分析の運用上の違いについてですが「予測分析」(Predictive Analytics)を実務で活用するとき、今までをファクト(事実)ベースで振り返り次に活かす「振返り分析」と「やり方」がちょっと異なります。「今まで」をベースに次を考えるのか「これから」をベースに次を考えるのか、の違いです。この考え方の転換が意外と難しいようです。特に、PDCAサイクルによる振返り分析がそれなりに上手くいった組織ほど、難しいような気がします。どうしても、今までどうだったのか、という思考の呪縛から抜け出せないようです。

【目次】

    1. 振返り分析とは?

    そもそも「振返り分析」とは何なのか、というところからお話しします。簡単に言うと「何をしたのか、そして、その結果どうなったのか」を都度振返りながら、実務運用していきます。例えば、販促活動の効果測定などの、計画した施策の効果があ...

    振返り分析と予測分析の運用上の違い:データ分析講座(その318)

     

    今回は「振返り分析と予測分析の運用上の違い」というお話しをします。

    【記事要約】

    振返り分析と予測分析の運用上の違いについてですが「予測分析」(Predictive Analytics)を実務で活用するとき、今までをファクト(事実)ベースで振り返り次に活かす「振返り分析」と「やり方」がちょっと異なります。「今まで」をベースに次を考えるのか「これから」をベースに次を考えるのか、の違いです。この考え方の転換が意外と難しいようです。特に、PDCAサイクルによる振返り分析がそれなりに上手くいった組織ほど、難しいような気がします。どうしても、今までどうだったのか、という思考の呪縛から抜け出せないようです。

    【目次】

      1. 振返り分析とは?

      そもそも「振返り分析」とは何なのか、というところからお話しします。簡単に言うと「何をしたのか、そして、その結果どうなったのか」を都度振返りながら、実務運用していきます。例えば、販促活動の効果測定などの、計画した施策の効果があったのかなかったのか、効果があったならばどのくらいあったのか、といったものです。そこでよく用いられるマネジメントサイクルが、PDCAサイクル系のものです。

      • P:Plan、計画
      • D:Do、実行
      • C:Check、実行結果の評価
      • A:Act、改善検討

       

      2. 振返り分析のメインは「C(Check)」と「A(Act)」

      振返り分析は「C(Check、実行結果の評価)」と「A(Act、改善検討)」で実施します。

      振返り分析と予測分析の運用上の違い:データ分析講座(その318)

       

      「C(Check、実行結果の評価)」でデータなどを使い「D(Do、実行)」の実行結果を評価し、問題があれば「A(Act、改善検討)」でどうすべきかを検討します。「C(Check、実行結果の評価)」は、あくまでも「今まで」のお話しです。「A(Act、改善検討)」は、これからどうすべきかを検討するため、予測モデルなどを使いシミュレーションを実施することもあります。

       

      3. 予測分析とは

      予測分析は「事前に予測モデルを構築し、どうなりそうかと予測モデルを活用しながら次のアクションを考え実行する」というものです。そのため「今までどうだったのか」を振返りながら運用する「振返り分析」とは大きく違います。正確な表現ではないですが「過去を振り返る」というよりも「未来を振り返る」という感覚です。そこでよく用いられるオペレーションサイクルが、OODAループ系のものです。

      • O:Observe、観測
      • O:Orient、方向性検討
      • D:Decide、何をするのかを決定
      • A:Act、実行

       

      4. 予測分析は「A(Act)」のためにある

      予測分析は「A(Act、実行)」のためにあります。要は「O(Observe、観測)」「O(Orient、方向性検討)」「D(Decide、何をするのかを決定)」でデータを活用します。

      振返り分析と予測分析の運用上の違い:データ分析講座(その318)

       

      「O(Observe)」で現状を理解するためのデータ活用が実施されます。この「O(Observe)」は、振返り分析の「C(Check)」と非常に似ていますが「C(Check)」よりも簡易的です。「O(Orient)」で今後の方向性をデータを活用し検討し「D(Decide)」でネクストアクションを決定します。

       

      この「O(Orient)」は、振返り分析の「A(Act)」の中で予測モデルを活用した場合、ほぼ同じことをするかもしれません。そう考えると、PDCAサイクルとOODAループは、サイクル(もしくはループ)の出発点と用語が異なるだけで、実質的に同じようなものなのかもしれません。

       

      5. 「OODA×データ活用」とは「現場の動き×データ活用」

      私が初めてOODAループを知ったのは、20年以上前、国の機関で安全保障系の仕事をしていたとき(米国国防総省と絡みがあったとき)です。

       

      うる覚えですが…… 現場の兵隊さんの動きを観察したら、OODAループのような動きを自然にしている人が非常に多いことに気づいたそうです。この現場の兵隊さんに適切にデータなどでサポートするなら「この現場の人の自然な動きであるOODAループに沿った形で、サポートするのがいいだろう」ということのようです(私見)。

       

      「OODA×データ活用」とは「現場の動き×データ活用」です。

       

      現場がPDCAサイクルで動いて問題がないのなら「PDCA×データ活用」≒「現場の動き×データ活用」となります。何を言いたいのかというと、現場の動きがOODAループな動きをしていないところに、OODAループ的な動きを押し付けるのは、本末転倒になりかねません。OODAループを押し付けるのなら、本当にOODAループが現場にとって正しいのかを、よくよく考えた方がいいのかもしれません。

       

      6. PDCAとOODAは似ていてるが大きく違うところもある

      PDCAサイクルを、C(Check)から始めると、OODAループ的なものになります。ただ、PDCAサイクルにあって、OODAループにないものがあります。それは、P(Plan)です。OODAループは計画ではなくミッション(到達目標)があるだけです。軍事オペレーションで考えると分かりやすいかもしれません。

       

      むかしむかし、日露戦争のときのお話しです。203高地を占領したことで旅順要塞は陥落しました。その203高地占領にとって、重砲部隊の陣地変換が重要な役割を演じました。以下は、そのとき総参謀長(児玉源太郎)から第三軍に出された命令です。

      • 「命令。二十四時間以内に重砲陣地転換を完了せよ」
      • 「その後、二十八サンチ榴弾砲をもって、一昼夜十五分間隔でぶっとおしに二百三高地に援護射撃を加えよ」

       

      果たすべきミッション(到達目標)が明確に提示されるだけです。

       

      要は、大きな計画を知って行動するというよりも、今果たすべきミッション(到達目標)だけで知って行動する、という感じです。その手段は、適時自ら判断し決め行動しろ、ということです。今に集中しろ、という感覚に似ています。OODAループに必ず必要だが、PDCAサイクルでは必ずしも必要でないものがあります。

       

      それはO(Orient)で実施する予測的なアプローチです。単に過去の振返りのみで検討するなら、予測的なアプローチは必ずしも必要ではありません。そのため、予測分析では、主に機械学習アルゴリズム(数理モデル)を使用し、将来のイベント(例:受注、離反、故障、異常などが起こる)と傾向(例:売上や問い合わせ件数などが上がる・下がる・横ばい)を予測するための、数理モデルを構築しておく必要があります。

       

      【ものづくり セミナーサーチ】 セミナー紹介:国内最大級のセミナー掲載数 〈ものづくりセミナーサーチ〉 はこちら!

       

         続きを読むには・・・


      この記事の著者

      高橋 威知郎

      データネクロマンサー/データ分析・活用コンサルタント (埋もれたデータに花を咲かせる、データ分析界の花咲じじい。それほど年齢は重ねてないけど)

      データネクロマンサー/データ分析・活用コンサルタント (埋もれたデータに花を咲かせる、データ分析界の花咲じじい。それほど年齢は重ねてないけど)


      「情報マネジメント一般」の他のキーワード解説記事

      もっと見る
      中小製造業のDXへの取り組み(その1)

      【中小製造業のDXへの取り組み 連載へのリンク】 1、中小製造業の2つの事業パターン 2、受託製造サービス業へ脱皮する 3、経済産業省DX Se...

      【中小製造業のDXへの取り組み 連載へのリンク】 1、中小製造業の2つの事業パターン 2、受託製造サービス業へ脱皮する 3、経済産業省DX Se...


      販売力を高めるデータ分析の技術 データ分析講座(その185)

        ◆ 販売力を高めるデータ分析の技術 多くの企業にあるデータの1つが、販売系のデータだと思います。売上を計上する上で、必ず必要になるた...

        ◆ 販売力を高めるデータ分析の技術 多くの企業にあるデータの1つが、販売系のデータだと思います。売上を計上する上で、必ず必要になるた...


      取り組むテーマを経験・勘・度胸で決定 データ分析講座(その161)

        ◆ KKDををめぐる摩訶不思議な現象  KKD(経験・勘・度胸)を悪の根源とみなし、データ分析・活用で排除すると意気込む風景を何度か...

        ◆ KKDををめぐる摩訶不思議な現象  KKD(経験・勘・度胸)を悪の根源とみなし、データ分析・活用で排除すると意気込む風景を何度か...


      「情報マネジメント一般」の活用事例

      もっと見る
      中小製造業とIoTの波

       「IoT(アイオーティー)」の波が、中小製造業にどのような影響をおよぼすのか、具体的にどのような変化がこの業界に訪れるのかについて、解説します。   ...

       「IoT(アイオーティー)」の波が、中小製造業にどのような影響をおよぼすのか、具体的にどのような変化がこの業界に訪れるのかについて、解説します。   ...


      Excelの帳票を見直そう

       オフィス業務においては、マイクロソフトOfficeがデファクトスタンダードになっています。とりわけ活用されているのはExcelでしょう。Excelを使う...

       オフィス業務においては、マイクロソフトOfficeがデファクトスタンダードになっています。とりわけ活用されているのはExcelでしょう。Excelを使う...


      情報、常識の検証を考える

      1、勝ち組と負け組を支配する情報  皆さんがご存じの大手予備校有名講師である林先生が、かつてテレビで「情報」に関して興味深いことをおっしゃっており、...

      1、勝ち組と負け組を支配する情報  皆さんがご存じの大手予備校有名講師である林先生が、かつてテレビで「情報」に関して興味深いことをおっしゃっており、...