イノベーション 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その140)

投稿日

技術マネジメント

 

イノベーションの活動を行うことを妨げる「失敗のコストのマネジメント」の解説をしていますが、今回もこの解説を続けたいと思います。具体的には、ここまで考えてきた「踏み出すこと・踏み出そうとすることで発生する直接的コスト」×「心理的コスト」の内、心理的コスト(その2):エネルギーをセーブしたいと思う人間の基本心理が存在にどう対処するのが良いのかを考えていきたいと思います。

 

【この連載の前回:普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その139)へのリンク】

1.イノベーションのための最初の一歩を踏み出すことを妨げる「めんどくささ」

人間はめんどくさがりです。人間のこのような特徴を善意に捉えると、そもそも太古から人間は、常に危険な環境に身を置き、危機に直面した時にその状況に即時に対応できるように、常に備えておかなければならない、ということがあるように思えます。そのため、危機のない状況にあるときには、エネルギーを温存し、危機に備えるということがあり、それが「めんどくさがる」ということとも理解できます。

 

2.「めんどくささ」を払拭する方法

人間が本来持つめんどくささを払拭し、行動を起こすにはどうしたら良いのでしょうか?それには、私は次の5つがあると思います。

  • (1)仕事を細かく分割する
  • (2)隣接可能性の効果を信じる
  • (3)第一歩を踏み出したことを自分自身でほめる
  • (4)時間を掛けても良いと考える
  • (5)行動を重視する習慣・カルチャーを作る

では順番に解説をします。

 

(1)仕事を細かく分割する

日本電産の永守会長が、常に言っている言葉があります。問題は、解決できる単位まで分割するというものです。

 

強烈な発言で敬遠されがちな永守さんの言葉ですが、この考えは難しい問題の解決法の本質をついていていると思います。また「千里の道も一歩から」ということわざもあります。イノベーションも似たような面があり、大きなイノベーションを最初から起こそうと思うと、誰しもそんなことはできないと考えてしまうものでが、後のことは後に考えるとして、とりあえず最初の一歩を踏み出してみるという考えを持てるようになれば、めんどくささを相当低減することができます。

 

人間は「脳科学的に、やる気は報酬系と呼ばれる仕組みが刺激を受けたときに出てくると考えられている(日本経済新聞、こころの健康学、認知行動療法研修開発センター大野裕)」そうです。そのため、とにかく第一歩を踏み出せば、そこから小さくても、たとえば、めんどくささを乗り越えとりあえず取り組んだという満足感などの報酬が得られ、そのような活動が続けられるというものです。この点について、私の子供の頃の勉強を思い出します。勉強を始めるまでは、勉強をしたくないとぐずぐずしていても、いざ取り組みを始めると意外と興味が湧いてきて、勉強がはかどるという経験です。

 

(2)隣接可能性の効果を信じる

ここまで何度か、隣接可能性という概念を紹介してきました。隣接可能性は、一度稚拙であっても、間違っていても何か概念をまとめると、もし...

技術マネジメント

 

イノベーションの活動を行うことを妨げる「失敗のコストのマネジメント」の解説をしていますが、今回もこの解説を続けたいと思います。具体的には、ここまで考えてきた「踏み出すこと・踏み出そうとすることで発生する直接的コスト」×「心理的コスト」の内、心理的コスト(その2):エネルギーをセーブしたいと思う人間の基本心理が存在にどう対処するのが良いのかを考えていきたいと思います。

 

【この連載の前回:普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その139)へのリンク】

1.イノベーションのための最初の一歩を踏み出すことを妨げる「めんどくささ」

人間はめんどくさがりです。人間のこのような特徴を善意に捉えると、そもそも太古から人間は、常に危険な環境に身を置き、危機に直面した時にその状況に即時に対応できるように、常に備えておかなければならない、ということがあるように思えます。そのため、危機のない状況にあるときには、エネルギーを温存し、危機に備えるということがあり、それが「めんどくさがる」ということとも理解できます。

 

2.「めんどくささ」を払拭する方法

人間が本来持つめんどくささを払拭し、行動を起こすにはどうしたら良いのでしょうか?それには、私は次の5つがあると思います。

  • (1)仕事を細かく分割する
  • (2)隣接可能性の効果を信じる
  • (3)第一歩を踏み出したことを自分自身でほめる
  • (4)時間を掛けても良いと考える
  • (5)行動を重視する習慣・カルチャーを作る

では順番に解説をします。

 

(1)仕事を細かく分割する

日本電産の永守会長が、常に言っている言葉があります。問題は、解決できる単位まで分割するというものです。

 

強烈な発言で敬遠されがちな永守さんの言葉ですが、この考えは難しい問題の解決法の本質をついていていると思います。また「千里の道も一歩から」ということわざもあります。イノベーションも似たような面があり、大きなイノベーションを最初から起こそうと思うと、誰しもそんなことはできないと考えてしまうものでが、後のことは後に考えるとして、とりあえず最初の一歩を踏み出してみるという考えを持てるようになれば、めんどくささを相当低減することができます。

 

人間は「脳科学的に、やる気は報酬系と呼ばれる仕組みが刺激を受けたときに出てくると考えられている(日本経済新聞、こころの健康学、認知行動療法研修開発センター大野裕)」そうです。そのため、とにかく第一歩を踏み出せば、そこから小さくても、たとえば、めんどくささを乗り越えとりあえず取り組んだという満足感などの報酬が得られ、そのような活動が続けられるというものです。この点について、私の子供の頃の勉強を思い出します。勉強を始めるまでは、勉強をしたくないとぐずぐずしていても、いざ取り組みを始めると意外と興味が湧いてきて、勉強がはかどるという経験です。

 

(2)隣接可能性の効果を信じる

ここまで何度か、隣接可能性という概念を紹介してきました。隣接可能性は、一度稚拙であっても、間違っていても何か概念をまとめると、もしくは経験を得て明確な認識を得ると、そこからその概念や認識が進化していくというものです。たとえば「今回このような経験をしたけれど、こういうことだな。次回はその点に注意して活動しよう。」といったことです。大げさに隣接可能性というキーワードを出して説明するまでもなく、当たり前と言えば、当たり前のことなのですが、実際にやってみることで、そこから想定していなかった知恵や英知を得ることができるということです。ですので、行動すると必ずと言って良いほど、得るものがある。なので、行動を起こそうということです。

 

次回に続きます。

 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

浪江 一公

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。


「技術マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
思考パターンの拡大 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その76)

   前回から3つの方向性の中で、最初の方向性である「思考パターンの固定化という問題を意識し、思考パターンを拡大する強い意志を持つ」につい...

   前回から3つの方向性の中で、最初の方向性である「思考パターンの固定化という問題を意識し、思考パターンを拡大する強い意志を持つ」につい...


クレーム率シングルppmをゼロに(3) 【快年童子の豆鉄砲】(その58)

  1.「連関図」からの結論の引き出し方 1)結論引き出しのタイミング テーマへの結線を考えず、ただひたすらにカード相互の因果関係の徹...

  1.「連関図」からの結論の引き出し方 1)結論引き出しのタイミング テーマへの結線を考えず、ただひたすらにカード相互の因果関係の徹...


講演「ものづくりプロセス革新のススメ」要旨

1.社会変化とものづくりの現状、革新の必要性  国内の製造業事業所数は平成5年には約70万件を数えましたが、15年後の平成20年には44万件余りと37%...

1.社会変化とものづくりの現状、革新の必要性  国内の製造業事業所数は平成5年には約70万件を数えましたが、15年後の平成20年には44万件余りと37%...


「技術マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
進捗管理の精度を上げる:第3回 プロジェクト管理の仕組み (その15)

 回路図や実装図からは、端子数以外にも標準部品、後付部品、自動実装機部品などをカウントすることも可能です。図45 は、これらについて見積もり(計画)を作成...

 回路図や実装図からは、端子数以外にも標準部品、後付部品、自動実装機部品などをカウントすることも可能です。図45 は、これらについて見積もり(計画)を作成...


‐企業内に発生している問題点を徹底的に追求 ‐  製品・技術開発力強化策の事例(その3)

 前回の事例その2に続いて解説します。企業内では解決が容易でない様々な問題が生じています。しかし、これらの問題解決に取り組まない限り、競争に勝つことが出来...

 前回の事例その2に続いて解説します。企業内では解決が容易でない様々な問題が生じています。しかし、これらの問題解決に取り組まない限り、競争に勝つことが出来...


進捗の見える化:第3回 プロジェクト管理の仕組み (その12)

 前回の進捗の見える化:第2回に続いて解説します。    最後は、プロジェクトの入力である開発工数です。これで、基本メトリクスセットすべてに...

 前回の進捗の見える化:第2回に続いて解説します。    最後は、プロジェクトの入力である開発工数です。これで、基本メトリクスセットすべてに...