普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その22)

更新日

投稿日

 前回は形式知の問題点の解説しましたが、今回はイノベーションを起こす上で必要となる5つの要素についてです。
 

1. 形式知はその創出者のアタマという細いストローを通して創出されたものに過ぎない

 
 形式知の問題点として、形式知はその創出者自身のアタマという細いストローを通して創出されたものに過ぎないと言うことです。そのため、そもそもその形式知が正しい保証はないし、またその創出者が経験したことから得られる知識の極一部である点を指摘しました。加えて、形式知だけでは、イノベーションを起こすには限定的です。
 
 なぜなら形式知は既に言葉や文章に表現されたものであり、広く流布していて他の人たちも同様の知識(形式知)を持っている可能性は高く、その結果創出されたアイデアはもはや新しくない可能性は高いからです。
 
 それでは、イノベーションを起こすには、どのような要素が求められるのでしょうか?
 
 
 

2. イノベーションに必要な5つの要素:知識、経験、思考、好奇心、意思

 
 イノベーションを起こすには、次の5つの要素が必要ではないかと思います。
 

(1) 知識

 
 前回も解説したように、一方で先人の創出した形式知は、極めて重要です。なにしろ、過去に存在した人間も含め、先人の創出した形式知は膨大であり、それらを学ぶことは多いに価値があるからです。
 
 それから暗黙知もあります。暗黙知は、形式知のように言葉や文章には転化されてはいませんが、人間のアタマの中の知識として存在する知です。まだ明示はされていませんが、既に『知識』としては、存在しています。これら形式知や暗黙知の様に既に形成されている知識は、極めて重要であることには、論を待ちません。
 

(2) 経験

 
 2つ目の要素が、イノベーションを起こそうとしている人が、独自の経験を数多くすることです。ここで言っている経験とは、暗黙知とは違います。暗黙知は明示はされていないけれども既に知識として人間のアタマの中に形成されている知識です。
 
 一方で、ここで言う経験とは、知識(形式知や暗黙知)に転化される前の、人間が五感で獲得するそのままの経験です。この経験の一部が暗黙知として知識に転化されていくわけですが、個人のアタマの中には、転化されていな経験が多数蓄積されています。「あの時はあんな状態だったな」といったレベルです。
 

(3) 思考

 
 3つ目の要素が思考です。思考の役割は、知識(形式知や暗黙知)の間でのスパーク(化学変化)を起こして新たな知識を創出することや、経験を知識に変換(暗黙知に、更には形式知に)する活動です。
 

(4) 好奇心

 
 4つの目が好奇心です。人間が持つ、知らないことに対する欲求です。強い好奇心がなければ、新たな知識を吸収し、新しい経験...
 前回は形式知の問題点の解説しましたが、今回はイノベーションを起こす上で必要となる5つの要素についてです。
 

1. 形式知はその創出者のアタマという細いストローを通して創出されたものに過ぎない

 
 形式知の問題点として、形式知はその創出者自身のアタマという細いストローを通して創出されたものに過ぎないと言うことです。そのため、そもそもその形式知が正しい保証はないし、またその創出者が経験したことから得られる知識の極一部である点を指摘しました。加えて、形式知だけでは、イノベーションを起こすには限定的です。
 
 なぜなら形式知は既に言葉や文章に表現されたものであり、広く流布していて他の人たちも同様の知識(形式知)を持っている可能性は高く、その結果創出されたアイデアはもはや新しくない可能性は高いからです。
 
 それでは、イノベーションを起こすには、どのような要素が求められるのでしょうか?
 
 
 

2. イノベーションに必要な5つの要素:知識、経験、思考、好奇心、意思

 
 イノベーションを起こすには、次の5つの要素が必要ではないかと思います。
 

(1) 知識

 
 前回も解説したように、一方で先人の創出した形式知は、極めて重要です。なにしろ、過去に存在した人間も含め、先人の創出した形式知は膨大であり、それらを学ぶことは多いに価値があるからです。
 
 それから暗黙知もあります。暗黙知は、形式知のように言葉や文章には転化されてはいませんが、人間のアタマの中の知識として存在する知です。まだ明示はされていませんが、既に『知識』としては、存在しています。これら形式知や暗黙知の様に既に形成されている知識は、極めて重要であることには、論を待ちません。
 

(2) 経験

 
 2つ目の要素が、イノベーションを起こそうとしている人が、独自の経験を数多くすることです。ここで言っている経験とは、暗黙知とは違います。暗黙知は明示はされていないけれども既に知識として人間のアタマの中に形成されている知識です。
 
 一方で、ここで言う経験とは、知識(形式知や暗黙知)に転化される前の、人間が五感で獲得するそのままの経験です。この経験の一部が暗黙知として知識に転化されていくわけですが、個人のアタマの中には、転化されていな経験が多数蓄積されています。「あの時はあんな状態だったな」といったレベルです。
 

(3) 思考

 
 3つ目の要素が思考です。思考の役割は、知識(形式知や暗黙知)の間でのスパーク(化学変化)を起こして新たな知識を創出することや、経験を知識に変換(暗黙知に、更には形式知に)する活動です。
 

(4) 好奇心

 
 4つの目が好奇心です。人間が持つ、知らないことに対する欲求です。強い好奇心がなければ、新たな知識を吸収し、新しい経験を求め、なぜかを考えるということをしません。
 

(5) 意思

 
 最後の意思は、イノベーションを起こそうとする強い意思のことを言います。好奇心だけで、新しい知識や経験を求めるだけで、スパークは起きません。イノベーションに至らしめるには、知識や経験を広く求め、深い思考を継続して行う強い意思が必要です。
 
  次回も、イノベーティブにする処方箋の解説を続けます。
  

   続きを読むには・・・


この記事の著者

浪江 一公

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。


「技術マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
仕事のプロセスを改善ストーリー(SRストーリー)で可視化

 仕事のプロセス(やり方)は、各個人や企業によって多種多様です。そのためチームや組織で課題を共有化するためには、工夫が必要です。たとえば、チームや組織内で...

 仕事のプロセス(やり方)は、各個人や企業によって多種多様です。そのためチームや組織で課題を共有化するためには、工夫が必要です。たとえば、チームや組織内で...


開発効率向上活動の考え方 開発効率を上げるには(その3)

【開発効率向上の重要性 連載目次】 製造業の生産性 開発効率向上の重要性 開発効率向上活動の考え方 開発効率向上、活動計画 1  ...

【開発効率向上の重要性 連載目次】 製造業の生産性 開発効率向上の重要性 開発効率向上活動の考え方 開発効率向上、活動計画 1  ...


いずれの企業にも達成がむずかしい 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その50)

        「強みを未来志向で設定する」の解説、今回は第4要件の「いずれの企業にも達成がむずかしい」を解...

        「強みを未来志向で設定する」の解説、今回は第4要件の「いずれの企業にも達成がむずかしい」を解...


「技術マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
進捗管理の精度を上げる:第3回 プロジェクト管理の仕組み (その15)

 回路図や実装図からは、端子数以外にも標準部品、後付部品、自動実装機部品などをカウントすることも可能です。図45 は、これらについて見積もり(計画)を作成...

 回路図や実装図からは、端子数以外にも標準部品、後付部品、自動実装機部品などをカウントすることも可能です。図45 は、これらについて見積もり(計画)を作成...


手段としてのオープンイノベーション

【ものづくり企業のR&Dと経営機能 記事目次】 管理力より技術力を磨け 技術プラットフォームの重要性 手段としてのオープンイノベーション...

【ものづくり企業のR&Dと経営機能 記事目次】 管理力より技術力を磨け 技術プラットフォームの重要性 手段としてのオープンイノベーション...


システム設計6 プロジェクト管理の仕組み (その38)

◆システム設計は仮説と検証の繰り返し     前回は、システム(ここでは製品も含めてシステムと呼ぶことにします)に必要とされる要件を漏れなく...

◆システム設計は仮説と検証の繰り返し     前回は、システム(ここでは製品も含めてシステムと呼ぶことにします)に必要とされる要件を漏れなく...