イノベーション 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その144)

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技術マネジメント

 

イノベーションの活動を行うことを妨げる「失敗のコストのマネジメント」の解説をしていますが、今回もこの解説を続けたいと思います。

 

具体的には、ここまで考えてきた「踏み出すこと・踏み出そうとすることで発生する直接的コスト」×「心理的コスト」の内、心理的コスト(その2):エネルギーをセーブしたいと思う人間の基本心理が存在にどう対処するのが良いのかを考えていきたいと思います。

 

【この連載の前回:普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その143)へのリンク】

1.イノベーションのための最初の一歩を踏み出すことを妨げる「めんどくささ」

人間はめんどくさがりです。人間のこのような特徴を善意に捉えると、そもそも太古から人間は、常に危険な環境に身を置き、危機に直面した時にその状況に即時に対応できるように、常に備えておかなければならない、ということがあるように思えます。そのため、危機のない状況にあるときには、エネルギーを温存し、危機に備えるということがあり、それが「めんどくさがる」ということとも理解できます。

 

2.「めんどくささ」を払拭する方法

人間が本来持つめんどくささを払拭し、行動を起こすにはどうしたら良いのでしょうか?それには、私は次の5つがあると思います。

  • (1)仕事を細かく分割する
  • (2)隣接可能性の効果を信じる
  • (3)第一歩を踏み出したことを自分自身でほめる
  • (4)時間を掛けても良いと考える
  • (5)行動を重視する習慣・カルチャーを作る

では、前回、(1)(2)(3)(4)まで解説しましたので、今回は最後の「行動を重視する習慣・カルチャーを作る」を解説します。

 

(5)行動を重視する習慣・カルチャーを作る

「行動を重視する習慣・カルチャーを作る」ことは、これだけを単独で考えると、まさに「言うに易し、行う(行動)は難し」に聞こえるかもしれません。しかし、これまで解説をしてきた「めんどくささを払拭する方法」の4つを日々実行することで、そのような習慣・カルチャーが醸成されていくということです。つまり「(4つの日々実行による)行動」→「刺激」→「新な行動をしたいという欲求」→「(次の)行動」→・・・という定常的なサイクルをまわし、徐々に個人では習慣、組織ではカルチャーとして、「行動を重視する習慣・カルチャーを作る」ことができます。

 

●ネガティブな「刺激」にどう対処するか?

しかし、次の新な行動をしたいという欲求に結び付くのですが、現実には次の行動を躊躇させるネガティブな「刺激」も現実には多くあります。このネガティブな刺激は、このサイクルを停滞させます。

 

そのため、このようネガティブな刺激をポジティブなものに転化する、もしくは少なくとも中立化させる方法が必要となります。

 

●失敗(ネガティブな刺激と認識すること)から学ぶことは極めて重要ではあるが...

ネガティブな刺激とは、行った行動を「失敗」と認識してしまうことと言えます。

 

そこで、失敗をポジティブなものと認識するようにすること、すなわち失敗から有益な学びを得ることが必要となってきます。失敗から学ぶ重要性は、トーマス・エジソンを初め古今東西の様々な賢人も謳っているところです。

 

しかし、失敗から学ぶ姿勢としてよく言われることとして、失敗の原因を突き詰め、分析を行い二度と同じ失敗を繰り返さないようにするということがありますが、そのような姿勢をとるには、時間とエネルギーが必要です。日々ある意味大小様々な失敗を経験している中で、現実にはその全てに対し原因の特定と対処は難しいもので、他人から「何度同じ失敗を繰り返すのか?」と叱責・非難されても、うっかり同じ失敗を何度もしてしまうということは、時にはあることではないかと思います。

 

●同じ失敗を繰り返しても良いと考え、むしろ同じ失敗を数多く繰り返してしまうことを受け入れる

同じ失敗を繰り返すのは、自分にとってその失敗の強度が低く、気持ちの上で失敗の原因を探しその原因を払拭するための活動のスイッチが入っていないからです。そのため、むしろスイッチが入っていなければ、そのスイッチを入れるために、奇妙に聞こえるかもしれませんが、積極的に何度もその失敗を繰り返し(もちろん同じ失敗は繰り返さない方が良いのは言うまでもありませ...

技術マネジメント

 

イノベーションの活動を行うことを妨げる「失敗のコストのマネジメント」の解説をしていますが、今回もこの解説を続けたいと思います。

 

具体的には、ここまで考えてきた「踏み出すこと・踏み出そうとすることで発生する直接的コスト」×「心理的コスト」の内、心理的コスト(その2):エネルギーをセーブしたいと思う人間の基本心理が存在にどう対処するのが良いのかを考えていきたいと思います。

 

【この連載の前回:普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その143)へのリンク】

1.イノベーションのための最初の一歩を踏み出すことを妨げる「めんどくささ」

人間はめんどくさがりです。人間のこのような特徴を善意に捉えると、そもそも太古から人間は、常に危険な環境に身を置き、危機に直面した時にその状況に即時に対応できるように、常に備えておかなければならない、ということがあるように思えます。そのため、危機のない状況にあるときには、エネルギーを温存し、危機に備えるということがあり、それが「めんどくさがる」ということとも理解できます。

 

2.「めんどくささ」を払拭する方法

人間が本来持つめんどくささを払拭し、行動を起こすにはどうしたら良いのでしょうか?それには、私は次の5つがあると思います。

  • (1)仕事を細かく分割する
  • (2)隣接可能性の効果を信じる
  • (3)第一歩を踏み出したことを自分自身でほめる
  • (4)時間を掛けても良いと考える
  • (5)行動を重視する習慣・カルチャーを作る

では、前回、(1)(2)(3)(4)まで解説しましたので、今回は最後の「行動を重視する習慣・カルチャーを作る」を解説します。

 

(5)行動を重視する習慣・カルチャーを作る

「行動を重視する習慣・カルチャーを作る」ことは、これだけを単独で考えると、まさに「言うに易し、行う(行動)は難し」に聞こえるかもしれません。しかし、これまで解説をしてきた「めんどくささを払拭する方法」の4つを日々実行することで、そのような習慣・カルチャーが醸成されていくということです。つまり「(4つの日々実行による)行動」→「刺激」→「新な行動をしたいという欲求」→「(次の)行動」→・・・という定常的なサイクルをまわし、徐々に個人では習慣、組織ではカルチャーとして、「行動を重視する習慣・カルチャーを作る」ことができます。

 

●ネガティブな「刺激」にどう対処するか?

しかし、次の新な行動をしたいという欲求に結び付くのですが、現実には次の行動を躊躇させるネガティブな「刺激」も現実には多くあります。このネガティブな刺激は、このサイクルを停滞させます。

 

そのため、このようネガティブな刺激をポジティブなものに転化する、もしくは少なくとも中立化させる方法が必要となります。

 

●失敗(ネガティブな刺激と認識すること)から学ぶことは極めて重要ではあるが...

ネガティブな刺激とは、行った行動を「失敗」と認識してしまうことと言えます。

 

そこで、失敗をポジティブなものと認識するようにすること、すなわち失敗から有益な学びを得ることが必要となってきます。失敗から学ぶ重要性は、トーマス・エジソンを初め古今東西の様々な賢人も謳っているところです。

 

しかし、失敗から学ぶ姿勢としてよく言われることとして、失敗の原因を突き詰め、分析を行い二度と同じ失敗を繰り返さないようにするということがありますが、そのような姿勢をとるには、時間とエネルギーが必要です。日々ある意味大小様々な失敗を経験している中で、現実にはその全てに対し原因の特定と対処は難しいもので、他人から「何度同じ失敗を繰り返すのか?」と叱責・非難されても、うっかり同じ失敗を何度もしてしまうということは、時にはあることではないかと思います。

 

●同じ失敗を繰り返しても良いと考え、むしろ同じ失敗を数多く繰り返してしまうことを受け入れる

同じ失敗を繰り返すのは、自分にとってその失敗の強度が低く、気持ちの上で失敗の原因を探しその原因を払拭するための活動のスイッチが入っていないからです。そのため、むしろスイッチが入っていなければ、そのスイッチを入れるために、奇妙に聞こえるかもしれませんが、積極的に何度もその失敗を繰り返し(もちろん同じ失敗は繰り返さない方が良いのは言うまでもありませんが)、矯正すべき重要な失敗であると認識するプロセス自体も大事であると思います。つまり、積極的に「失敗」をすることを許容するだけでなく、積極的に「同じ失敗を繰り返す」ことも許容するということです。

 

●同じ失敗を繰り返してしまったことに意気消沈せず、前に進む「活動」を重視する

そのため、同じ失敗を繰り返してしまったことに意気消沈せず、「同じ失敗をしてしまった」というネガティブな刺激を、ネガティブなものと捉えないということです。その失敗が重大でなければ、他人からなんと言われようとも大したことはありません。前に進む「活動」を続けましょう。

次回に続きます。

 

◆【特集】 連載記事紹介:連載記事のタイトルをまとめて紹介、各タイトルから詳細解説に直リンク!!

 
 

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この記事の著者

浪江 一公

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。


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