自社の存在価値 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その115)

更新日

投稿日

サプライチェーンマネジメント

 

現在、知識や経験を整理するフレームワークについて複数創出する目的で、その中の一つの整理の視点として本質とそれ以外という区別があるという理解から、「本質とは何か」を解説しています。また、企業活動の「本質は何か」を考える上で、本質は「自社の存在価値」と密接に関係する事項であると考え、それを「外側から見た自社の存在価値」と「内側から見た自社の存在価値」に分けました。

 

今回は後者の「内側から見た自社の存在価値」の要件の3つ目、自社の存在価値の目標には永続性があるについて解説します。

 

1.自社の存在価値の目標には永続性がある

自社の存在価値の目標に永続性を持たせるには、次の4つの点を満たす必要があると考えます。

 

(1)いつまでたっても完璧な達成はできない目標であること

将来のいつかの時点で、その目標が達成できてしまうようなものでは、その後の永続性を実現することはできません。したがって、目標は到達点ではなく、常に満たすことのできない、まだまだ努力や活動の余地のある方向性を示す目標である必要があります。

 

しかし一方で、日々その目標に向かっているという小さな達成感の実感がないと、努力や活動の継続性(すなわち永続性)が生まれません。

 

この点に関しては、以前に提示したシマノは自社の存在価値を「安全に快適に走れる自転車部品を生み出すこと」としており、「安全に快適に走れる」という目標は、常に努力と活動の余地があります。またこの目標は、一方で毎回の商品企画では「前のモデルよりこれだけ安全度を増した」といった、達成感も生み出すものです。

 

(2)いずれのステークホルダーに対しても無害であること

自社の存在価値は、あるステークホルダーにとっては有益であるが、その他のあるステークホルダーには有害であるという状況では、自社の存在価値に永続性を持たせることはできません。すべてのステークホルダーにとって有益である必要はありませんが、少なくとも考えられうるすべてのステークホルダーに対して無害である必要があります。

 

(3)いつの時代にも通用するもの

現在の経済状況や社会情勢は将来に向かって、必ず変化をします。しかし、将来を明確に読むことは不可能という事実もあります。そこで「自社の存在価値」はいつの時代にも通用する、すなわち価値があり正しいものでなければなりません。

 

たとえば、上であげたシマノの自社の存在価値目標の「安全に快適に走れる」の例は、1000年たっても有効であり続けるものと思います。

 

(4)(自社の活動対象領域では)場所に関わらず通用するもの

「いつの時代に」があれば、「どこにおいても」があってしかるべきできです。したがって、自社の存在価値目標は、場所にかかわらず通用する...

サプライチェーンマネジメント

 

現在、知識や経験を整理するフレームワークについて複数創出する目的で、その中の一つの整理の視点として本質とそれ以外という区別があるという理解から、「本質とは何か」を解説しています。また、企業活動の「本質は何か」を考える上で、本質は「自社の存在価値」と密接に関係する事項であると考え、それを「外側から見た自社の存在価値」と「内側から見た自社の存在価値」に分けました。

 

今回は後者の「内側から見た自社の存在価値」の要件の3つ目、自社の存在価値の目標には永続性があるについて解説します。

 

1.自社の存在価値の目標には永続性がある

自社の存在価値の目標に永続性を持たせるには、次の4つの点を満たす必要があると考えます。

 

(1)いつまでたっても完璧な達成はできない目標であること

将来のいつかの時点で、その目標が達成できてしまうようなものでは、その後の永続性を実現することはできません。したがって、目標は到達点ではなく、常に満たすことのできない、まだまだ努力や活動の余地のある方向性を示す目標である必要があります。

 

しかし一方で、日々その目標に向かっているという小さな達成感の実感がないと、努力や活動の継続性(すなわち永続性)が生まれません。

 

この点に関しては、以前に提示したシマノは自社の存在価値を「安全に快適に走れる自転車部品を生み出すこと」としており、「安全に快適に走れる」という目標は、常に努力と活動の余地があります。またこの目標は、一方で毎回の商品企画では「前のモデルよりこれだけ安全度を増した」といった、達成感も生み出すものです。

 

(2)いずれのステークホルダーに対しても無害であること

自社の存在価値は、あるステークホルダーにとっては有益であるが、その他のあるステークホルダーには有害であるという状況では、自社の存在価値に永続性を持たせることはできません。すべてのステークホルダーにとって有益である必要はありませんが、少なくとも考えられうるすべてのステークホルダーに対して無害である必要があります。

 

(3)いつの時代にも通用するもの

現在の経済状況や社会情勢は将来に向かって、必ず変化をします。しかし、将来を明確に読むことは不可能という事実もあります。そこで「自社の存在価値」はいつの時代にも通用する、すなわち価値があり正しいものでなければなりません。

 

たとえば、上であげたシマノの自社の存在価値目標の「安全に快適に走れる」の例は、1000年たっても有効であり続けるものと思います。

 

(4)(自社の活動対象領域では)場所に関わらず通用するもの

「いつの時代に」があれば、「どこにおいても」があってしかるべきできです。したがって、自社の存在価値目標は、場所にかかわらず通用するものである必要があります。

 

ただ一点、世界を広く見渡せば、実は我々とはずいぶんかけ離れた価値観を持っている人たちや地域も存在することも事実です。例えば、急進的なイスラム教徒が住む地域や中国や北朝鮮といった専制国家も、現実に存在します。

 

そのため、「自社の活動対象領域では」という条件付けは必要でしょう。またそうであれば、自社の存在価値目標の設定のためにも、自社の活動対象領域を選ぶということも重要になります。

 

 

次回に続きます。

 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

浪江 一公

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。


「技術マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
研究開発の人間関係 新規事業・新商品を生み出す技術戦略(その65)

1. 研究開発組織における多様性の受容  コンサルティングやセミナーでお会いする方々から次のような声を多くいただきます。 「結局、どんなアイデ...

1. 研究開発組織における多様性の受容  コンサルティングやセミナーでお会いする方々から次のような声を多くいただきます。 「結局、どんなアイデ...


イノベーションの創造 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その136)

  【この連載の前回:普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その135)へのリンク】 失敗の金銭的コストを低減する方法について解説し...

  【この連載の前回:普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その135)へのリンク】 失敗の金銭的コストを低減する方法について解説し...


メカトロ設計の3要素 【連載記事紹介】

  ◆メカトロ設計 高度化するとは、メカトロ化することに等しいのです。メカトロニクスは物質(メカ)、エネルギー(エレキ)、情報(ソフト)...

  ◆メカトロ設計 高度化するとは、メカトロ化することに等しいのです。メカトロニクスは物質(メカ)、エネルギー(エレキ)、情報(ソフト)...


「技術マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
チーム力を活かす設計ルームのレイアウトとは

   今回は、金型メーカーに限らず、機械設備メーカーなども含め、設計室(設計ルーム)でチーム力を活かすレイアウトについて解説します。 &nb...

   今回は、金型メーカーに限らず、機械設備メーカーなども含め、設計室(設計ルーム)でチーム力を活かすレイアウトについて解説します。 &nb...


設計部門と組織政治の影響(その2)

 前回のその1に続いて解説します。   1. 政治的要因のリストアップ    設計部門と組織政治の影響を考察する際に、最初にや...

 前回のその1に続いて解説します。   1. 政治的要因のリストアップ    設計部門と組織政治の影響を考察する際に、最初にや...


戦略的RPA導入のための業務分析手法

1. RPA~パソコン作業を自動化  RPA(Robotic Process Automation)とは、様々なデータソースを参照しながら行う定型的...

1. RPA~パソコン作業を自動化  RPA(Robotic Process Automation)とは、様々なデータソースを参照しながら行う定型的...