視覚 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その156)

更新日

投稿日

技術マネジメント

 

今回も前回に引き続き、視覚を活用して創造性を高め、イノベーションを起こす能力を強化する方法について考えてみたいと思います。

 

【この連載の前回:普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その155)へのリンク】

◆関連解説記事 行動を起こすことで得られるのは、情報や経験だけでなく、そのコンテキストや新たな感覚・感情や充実感

 

1.絵や図を創作する

ここまでの述べてきた活動、すなわち、イメージとしてポイントになる映像を切り取り、深く頭に焼き付ける。対象イメージを鑑賞し思考を発展させるには、インプットの活動が重要でした。さらにこれらインプットの活動に基づいたアウトプットの活動である新たな絵や図の創作を繰り返し行うことで、さらにイノベーション能力を高めることができます。具体的には次のような効果があります。

  • 頭の中にある抽象概念を絵や図にすることを繰り返すことで、それまで多くの場合本人が明確に意識していなかった抽象的な概念を明確にし、具体的な絵や図として表現する能力を得ることができる
  • そのような能力を持つことで、抽象的でわかりにくかった自分のアイデアを他人に明示することができる
  • 創作の過程で、過去に獲得した様々なイメージ情報を反芻することになり、それによりそれらイメージ情報をより強固な記憶として留め、それらを今後のさらなるイノベーションの原料にすることができる
  • 加えて、今回作成した新しい絵や図という新しい創作物のイメージ情報も、今後のさらなるイノベーションの原料になる
  • 絵や図を書く機会が多いと、普段から後に作成するかもしれない絵や図のことを考えて物事を注意深く観察するようになり、結果として観察力を強化することができる
  • 自分が描いた絵や図を見て、ここをこうしたらもっといい、問題はここにあるんだな、など、さらなるイノベーションの着想を得ることができる
  • 絵や図に表すことで、言語的表現よりもはるかに具体的にかつ高頻度で、他人からフィードバックが得られ、イノベーションを進展させることができる
  • 絵や図の作成プロセスでは、美的感覚、わかり易さなどのために空間上の適切な配置や色あい、表現法など工夫することになり、認知力が向上する

 

2.絵や図以外の創作物を作成する

上述のように、絵や図を作成する活動の効果を考えてみると、これら効果が得られるのは必ずしも絵や図の作成に限定されていないことに気が付きます。次の創作活動も、絵や図の作成と同様、もしくはそれ以上にイノベーション能力を高めてくれることに貢献しそうです。

  • 彫刻、陶芸
  • 料理
  • 日曜大工
  • 園芸
  • 俳句や短歌の創作
  • アニメ作成

 

これらの活動は、一般的には「趣味的」活動や「余暇」として、どちらかと言うと軽い位置付けで取り扱われることが多いのですが、イノベーション力の重要性とこれら活動のイノベーション創出能力強化への貢献度を考えてみると、これら活動をもっと積極的に活用する余地が大きいと思います。

 

特に、一番最後のアニメ作成は、過去に経験したイメージ情報をおおいに活用するので、日頃からイメージ情報...

技術マネジメント

 

今回も前回に引き続き、視覚を活用して創造性を高め、イノベーションを起こす能力を強化する方法について考えてみたいと思います。

 

【この連載の前回:普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その155)へのリンク】

◆関連解説記事 行動を起こすことで得られるのは、情報や経験だけでなく、そのコンテキストや新たな感覚・感情や充実感

 

1.絵や図を創作する

ここまでの述べてきた活動、すなわち、イメージとしてポイントになる映像を切り取り、深く頭に焼き付ける。対象イメージを鑑賞し思考を発展させるには、インプットの活動が重要でした。さらにこれらインプットの活動に基づいたアウトプットの活動である新たな絵や図の創作を繰り返し行うことで、さらにイノベーション能力を高めることができます。具体的には次のような効果があります。

  • 頭の中にある抽象概念を絵や図にすることを繰り返すことで、それまで多くの場合本人が明確に意識していなかった抽象的な概念を明確にし、具体的な絵や図として表現する能力を得ることができる
  • そのような能力を持つことで、抽象的でわかりにくかった自分のアイデアを他人に明示することができる
  • 創作の過程で、過去に獲得した様々なイメージ情報を反芻することになり、それによりそれらイメージ情報をより強固な記憶として留め、それらを今後のさらなるイノベーションの原料にすることができる
  • 加えて、今回作成した新しい絵や図という新しい創作物のイメージ情報も、今後のさらなるイノベーションの原料になる
  • 絵や図を書く機会が多いと、普段から後に作成するかもしれない絵や図のことを考えて物事を注意深く観察するようになり、結果として観察力を強化することができる
  • 自分が描いた絵や図を見て、ここをこうしたらもっといい、問題はここにあるんだな、など、さらなるイノベーションの着想を得ることができる
  • 絵や図に表すことで、言語的表現よりもはるかに具体的にかつ高頻度で、他人からフィードバックが得られ、イノベーションを進展させることができる
  • 絵や図の作成プロセスでは、美的感覚、わかり易さなどのために空間上の適切な配置や色あい、表現法など工夫することになり、認知力が向上する

 

2.絵や図以外の創作物を作成する

上述のように、絵や図を作成する活動の効果を考えてみると、これら効果が得られるのは必ずしも絵や図の作成に限定されていないことに気が付きます。次の創作活動も、絵や図の作成と同様、もしくはそれ以上にイノベーション能力を高めてくれることに貢献しそうです。

  • 彫刻、陶芸
  • 料理
  • 日曜大工
  • 園芸
  • 俳句や短歌の創作
  • アニメ作成

 

これらの活動は、一般的には「趣味的」活動や「余暇」として、どちらかと言うと軽い位置付けで取り扱われることが多いのですが、イノベーション力の重要性とこれら活動のイノベーション創出能力強化への貢献度を考えてみると、これら活動をもっと積極的に活用する余地が大きいと思います。

 

特に、一番最後のアニメ作成は、過去に経験したイメージ情報をおおいに活用するので、日頃からイメージ情報を広く収集することに関心を持つようになる、イメージ情報を使ってストーリーを作る、それを効果的に伝えるイメージを創出するなど、様々なイノベーションを強化する活動が伴います。

 

また一片のイメージだけではなく、複数のイメージを関連付けて作成するという意味で、イノベーション力強化にはおおいに貢献するように思えます。近年日本の経済成長や文化的プレゼンス向上に向けて、アニメを活用しようという動きが活発化していますが、日本人のイノベーション力強化の視点からも、学校の教育カリキュラムに組込むなど、一歩も二歩も踏み込んだ施策が有効であるように思えます。

 

次回に続きます。

 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

浪江 一公

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。


「技術マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
開発リーダーが気をつけるべき口ぐせとは 新規事業・新商品を生み出す技術戦略(その25)

        今回は「開発リーダーが気をつけるべき口ぐせ」をテーマにしました。この記事では、口ぐせが及ぼす...

        今回は「開発リーダーが気をつけるべき口ぐせ」をテーマにしました。この記事では、口ぐせが及ぼす...


類似-4 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その103)

   現在、KETICモデルの中の「知識・経験を関係性で整理する」を解説しています。今回は、引き続き「類似」について考えてみたいと思います...

   現在、KETICモデルの中の「知識・経験を関係性で整理する」を解説しています。今回は、引き続き「類似」について考えてみたいと思います...


設計部門の仕組み改革 【連載記事紹介】おすすめセミナーのご紹介  

  設計部門の仕組み改革の連載記事が無料でお読みいただけます!   ◆設計部門と製造部門 製造部門における設備投資は、設備...

  設計部門の仕組み改革の連載記事が無料でお読みいただけます!   ◆設計部門と製造部門 製造部門における設備投資は、設備...


「技術マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
設計部門の仕組み改革(その3)

【設計部門の仕組み改革 連載目次】 1. システムやツールの導入を伴う設計部門の仕組み改革の進め方 2. 設計部門の仕組み改革、事例解説 3. ...

【設計部門の仕組み改革 連載目次】 1. システムやツールの導入を伴う設計部門の仕組み改革の進め方 2. 設計部門の仕組み改革、事例解説 3. ...


R&Dマネジメントの基本

【ものづくり企業のR&Dと経営機能 記事目次】 管理力より技術力を磨け 技術プラットフォームの重要性 手段としてのオープンイノベーション...

【ものづくり企業のR&Dと経営機能 記事目次】 管理力より技術力を磨け 技術プラットフォームの重要性 手段としてのオープンイノベーション...


システム設計4 プロジェクト管理の仕組み (その36)

 前回はシステム設計を、開発工程上はシステムエンジニアリングと、ハードやソフトなどのサブシステムのエンジニアリングの両方と定義しました。ここで、システムエ...

 前回はシステム設計を、開発工程上はシステムエンジニアリングと、ハードやソフトなどのサブシステムのエンジニアリングの両方と定義しました。ここで、システムエ...