聴覚 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その157)

投稿日

技術マネジメント

 

前回までの4回で、視覚を活用して創造性を高めイノベーションを起こす能力を強化する方法について、考えてきました。今回からは、聴覚ついて考えてみます。

 

【この連載の前回:普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その156)へのリンク】

◆【特集】 連載記事紹介:連載記事のタイトルをまとめて紹介、各タイトルから詳細解説に直リンク!!

 

1. 聴覚は最も活用されていない感覚

日頃我々は、人と会話をする、人から話を聞く、音楽を聴く、テレビで画像と一緒に音声を聞くなど、聴覚を使った活動を数多くしています。しかし、聴覚の利用は受け身のことが多く、五感の他の感覚に比べても、積極的に聴覚活用することがないように思えます。古代の人間が猛獣の声を聞いて危険を察知し、鳥の声を聞いて食物のありかを見つけるという、サバイバルのために聴覚をおおいに活用する生活をしていたのに比べ、現代人の聴覚の利用状況は大きく異なるようです。

 

2. 聴覚は他の感覚に比べて再現性がない場合が多い

なぜ聴覚が積極的に現代社会で活用されないかというと、再現性が他の感覚に比べて低いからではないかと思います。目の前の映像や匂い、触感、味覚はもう一度確かめようと思えば、多くの場合まだそこにありますので、確かめることができます。しかし、その場で聞いた音は、一瞬にして消えてしまいます。

 

3. 聴覚の有用性

聴覚は他の五感に比べても優れた点があります。むしろ優れた点があるからこそ、人間を含む動物はこの機能を五感の1つとして発展させてきたとも言えます。聴覚の優れた点として、以下があると思います。

 

(1)対象範囲が極めて広い

聴覚のカバーの対象は、目の前のものから相当離れたものまでおおきな広がりがあります。視覚も対象領域は同じように広いのですが、情報を得るためには目の焦点を対象物に合わせなければなりませんので、見逃しが当然発生します。しかし、聴覚は上下左右360度全方位また遮蔽物を超えて暗闇の中でも、すべての情報が向こうから耳に飛び込んできます。したがって、周囲の状況を網羅的に把握することができます。

 

(2)情報の解像度が高い

何か動けば、必ずその活動をあらわす様々な独特の音を発生しますので、それらの複合的な音により、どのような活動が起こっているかを、過去の経験に照らし合わせて、かなり詳細に想定することができます。

 

(3)情報の信頼性が高い

加えて、それら得られる情報は、映像情報のように、錯覚はあまりありませんので、他の五感で得る情報に比べても信頼性が高いと言えるのではないかと思います。

 

(4)人間の感情に深く訴えかける

人間は原始の時代から、音を機能的な面だけでなく、感情面でも利用してきました。ものを叩いて音を出す、声を出すなどにより、喜びを感じたり、悲しみを癒したり、気持ちを高揚させたり、皆で...

技術マネジメント

 

前回までの4回で、視覚を活用して創造性を高めイノベーションを起こす能力を強化する方法について、考えてきました。今回からは、聴覚ついて考えてみます。

 

【この連載の前回:普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その156)へのリンク】

◆【特集】 連載記事紹介:連載記事のタイトルをまとめて紹介、各タイトルから詳細解説に直リンク!!

 

1. 聴覚は最も活用されていない感覚

日頃我々は、人と会話をする、人から話を聞く、音楽を聴く、テレビで画像と一緒に音声を聞くなど、聴覚を使った活動を数多くしています。しかし、聴覚の利用は受け身のことが多く、五感の他の感覚に比べても、積極的に聴覚活用することがないように思えます。古代の人間が猛獣の声を聞いて危険を察知し、鳥の声を聞いて食物のありかを見つけるという、サバイバルのために聴覚をおおいに活用する生活をしていたのに比べ、現代人の聴覚の利用状況は大きく異なるようです。

 

2. 聴覚は他の感覚に比べて再現性がない場合が多い

なぜ聴覚が積極的に現代社会で活用されないかというと、再現性が他の感覚に比べて低いからではないかと思います。目の前の映像や匂い、触感、味覚はもう一度確かめようと思えば、多くの場合まだそこにありますので、確かめることができます。しかし、その場で聞いた音は、一瞬にして消えてしまいます。

 

3. 聴覚の有用性

聴覚は他の五感に比べても優れた点があります。むしろ優れた点があるからこそ、人間を含む動物はこの機能を五感の1つとして発展させてきたとも言えます。聴覚の優れた点として、以下があると思います。

 

(1)対象範囲が極めて広い

聴覚のカバーの対象は、目の前のものから相当離れたものまでおおきな広がりがあります。視覚も対象領域は同じように広いのですが、情報を得るためには目の焦点を対象物に合わせなければなりませんので、見逃しが当然発生します。しかし、聴覚は上下左右360度全方位また遮蔽物を超えて暗闇の中でも、すべての情報が向こうから耳に飛び込んできます。したがって、周囲の状況を網羅的に把握することができます。

 

(2)情報の解像度が高い

何か動けば、必ずその活動をあらわす様々な独特の音を発生しますので、それらの複合的な音により、どのような活動が起こっているかを、過去の経験に照らし合わせて、かなり詳細に想定することができます。

 

(3)情報の信頼性が高い

加えて、それら得られる情報は、映像情報のように、錯覚はあまりありませんので、他の五感で得る情報に比べても信頼性が高いと言えるのではないかと思います。

 

(4)人間の感情に深く訴えかける

人間は原始の時代から、音を機能的な面だけでなく、感情面でも利用してきました。ものを叩いて音を出す、声を出すなどにより、喜びを感じたり、悲しみを癒したり、気持ちを高揚させたり、皆で一体感を持たせたり、といったことが可能です。視覚を利用した映像でもこのようなことは可能ですが、舞台装置をはじめ大がかりな仕組みが必要となります。一方で、歌をうたう(声をだす)やものをリズムに合わせて叩くなどは、きわめて簡単に行うことができます。

 

4. イノベーションに向けての活用の余地は大きい

このように、イノベーションに向けては、あまり積極的に利用されていない聴覚ですが、上のような有用性からも、もっと活用の余地があるのではないかと思います。

 

次回に続きます。

 

 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

浪江 一公

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。


「技術マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
商品開発はGive・Give・Give 新規事業・新商品を生み出す技術戦略(その68)

1、返報性の原理  今回は返報性の原理についてです。返報性の原理とは、人間の持つ心理の一つです。  人は他人から何らかの施しを受けた場合に、お返し...

1、返報性の原理  今回は返報性の原理についてです。返報性の原理とは、人間の持つ心理の一つです。  人は他人から何らかの施しを受けた場合に、お返し...


製品設計における納入仕様書の役割(その1)

1.製品の納入側から受入側へ提出する「文書」とは  製品設計では、顧客や協力会社、自社内の部署間において、様々な「文書」を取り交わす必要があります。...

1.製品の納入側から受入側へ提出する「文書」とは  製品設計では、顧客や協力会社、自社内の部署間において、様々な「文書」を取り交わす必要があります。...


計画と実施1 技術人材育成の進め方(その1)

  人口減少による人手不足、既存製品のコモディティ化、新技術の導入などに対応していくために、企業は自社の開発力を迅速に強化する必要がありま...

  人口減少による人手不足、既存製品のコモディティ化、新技術の導入などに対応していくために、企業は自社の開発力を迅速に強化する必要がありま...


「技術マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
技術力向上の鍵を握る価値創造力とは

 技術力を高める鍵は、価値創造力にあると考えています。すなわち、技術力を高めるためには、価値創造力を磨かなければならない、という考え方です。しかし、多くの...

 技術力を高める鍵は、価値創造力にあると考えています。すなわち、技術力を高めるためには、価値創造力を磨かなければならない、という考え方です。しかし、多くの...


仕組みの見直しに成功する組織1 プロジェクト管理の仕組み (その25)

 この連載では、仕組みの見直しをテーマに様々な考え方や事例を紹介しているわけですが、実際にコンサルタントして仕組みの見直しに取り組んだ組織の中には成功して...

 この連載では、仕組みの見直しをテーマに様々な考え方や事例を紹介しているわけですが、実際にコンサルタントして仕組みの見直しに取り組んだ組織の中には成功して...


技術経営を考える

【ものづくり企業のR&Dと経営機能 記事目次】 管理力より技術力を磨け 技術プラットフォームの重要性 手段としてのオープンイノベーション...

【ものづくり企業のR&Dと経営機能 記事目次】 管理力より技術力を磨け 技術プラットフォームの重要性 手段としてのオープンイノベーション...