自社コア技術の強化のための技術 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その33)

更新日

投稿日

 
  技術マネジメント
 
 前回までは自社のコア技術を拠り所にして外部技術を活用する方法として、「その1:自社のコア技術の補完技術」について解説してきました。今回は、その外部技術を活用する方法の2つ目として、「その2:自社コア技術の強化のための技術」について、解説します。
 

1. 「自社のコア技術の強化のための技術」とは

 
 「自社コア技術の強化のための技術」と聞いて、「自社の技術の強化」のための技術とは何のことを言っているのかと思う方もいるかもしれません。ここでは自社のコア技術は複数の要素技術群から構成されているため、その要素技術群を更に増やすための新たな要素技術を外部に求めるということです。
 

2. 「自社のコア技術の強化のための技術」はコア技術の『内側』の技術を求めるもの

 
 前回まで議論してきた「その1:自社のコア技術の補完技術」は、コア技術の『外側』の技術、すなわちコア技術ではない技術を求めるものです。一方、今回、解説している「その2:自社のコア技術の強化のための技術」は、コア技術の『内側』の技術、すなわちコア技術を構成する要素技術を求めるもので、両者にはその点の違いがあります。
 

3. コア技術強化のための外部に求める技術をどう「認識」するか

 
 自社のコア技術強化のためには、どのような新たな要素技術で強化することができるのか、強化しなければならないか、という新たな対象要素技術の「認識」が重要となります。この点については、その「認識」を自社自らが行うのか、外部から提案してもらうのかに大きく分かれます。
 

(1) 自社自らが認識

 
 自社自らが認識するにしても、「市場のニーズからの発想」と「コア技術のシーズ要素技術」から発想する場合の2つが考えられます。
 

◆ 市場のニーズからの発想

 
 これは新たな顧客価値創出機会の探索活動の中から、ある魅力的な市場ニーズが発見されたが現状の自社のコア技術の要素技術群では対応できない場合に、新たな要素技術として追加が必要な技術として認識するものです。
 
 対象となる新たな顧客価値創出機会の探索活動にも、日々の対象市場の顧客との草の根のコンタクトの中から市場ニーズを見つける方法と、長期にわたる対象市場のマクロ環境分析を俯瞰的に行うことで、新たに生まれると想定される市場ニーズを認識するという方法があります。
 

◆ コア技術のシーズ要素技術から

 
 もう一つが、自社のコア技術の要素技術群にはないが、こんな要素技術があれば、様々な製品や事業に展開できるのではないかから考えるものです。このような気づきを得るためには、自社の中ではまずはコア技術が明確に定義され、組織の中で共有され、自社の技術者・研究者にコア技術をベースに考えるという姿勢や活動が必要です。そためにも、全社での組織横断的なコア技術強化活動が求められます。そのような活動に、3Mのテックフォーラム、日東電工のSTEPなどがあります。
 

(2) ...

 
  技術マネジメント
 
 前回までは自社のコア技術を拠り所にして外部技術を活用する方法として、「その1:自社のコア技術の補完技術」について解説してきました。今回は、その外部技術を活用する方法の2つ目として、「その2:自社コア技術の強化のための技術」について、解説します。
 

1. 「自社のコア技術の強化のための技術」とは

 
 「自社コア技術の強化のための技術」と聞いて、「自社の技術の強化」のための技術とは何のことを言っているのかと思う方もいるかもしれません。ここでは自社のコア技術は複数の要素技術群から構成されているため、その要素技術群を更に増やすための新たな要素技術を外部に求めるということです。
 

2. 「自社のコア技術の強化のための技術」はコア技術の『内側』の技術を求めるもの

 
 前回まで議論してきた「その1:自社のコア技術の補完技術」は、コア技術の『外側』の技術、すなわちコア技術ではない技術を求めるものです。一方、今回、解説している「その2:自社のコア技術の強化のための技術」は、コア技術の『内側』の技術、すなわちコア技術を構成する要素技術を求めるもので、両者にはその点の違いがあります。
 

3. コア技術強化のための外部に求める技術をどう「認識」するか

 
 自社のコア技術強化のためには、どのような新たな要素技術で強化することができるのか、強化しなければならないか、という新たな対象要素技術の「認識」が重要となります。この点については、その「認識」を自社自らが行うのか、外部から提案してもらうのかに大きく分かれます。
 

(1) 自社自らが認識

 
 自社自らが認識するにしても、「市場のニーズからの発想」と「コア技術のシーズ要素技術」から発想する場合の2つが考えられます。
 

◆ 市場のニーズからの発想

 
 これは新たな顧客価値創出機会の探索活動の中から、ある魅力的な市場ニーズが発見されたが現状の自社のコア技術の要素技術群では対応できない場合に、新たな要素技術として追加が必要な技術として認識するものです。
 
 対象となる新たな顧客価値創出機会の探索活動にも、日々の対象市場の顧客との草の根のコンタクトの中から市場ニーズを見つける方法と、長期にわたる対象市場のマクロ環境分析を俯瞰的に行うことで、新たに生まれると想定される市場ニーズを認識するという方法があります。
 

◆ コア技術のシーズ要素技術から

 
 もう一つが、自社のコア技術の要素技術群にはないが、こんな要素技術があれば、様々な製品や事業に展開できるのではないかから考えるものです。このような気づきを得るためには、自社の中ではまずはコア技術が明確に定義され、組織の中で共有され、自社の技術者・研究者にコア技術をベースに考えるという姿勢や活動が必要です。そためにも、全社での組織横断的なコア技術強化活動が求められます。そのような活動に、3Mのテックフォーラム、日東電工のSTEPなどがあります。
 

(2) 外部から提案してもらう

 
 外部から新たにコア技術に追加すると良いと思われる要素技術を提案してもらうには、自社のコア技術を外部に公開し、コア技術を強化する新たな要素技術の提案を募ることです。外部にコア技術を公開する方法は、前回に議論した活動や設備になりますが、それに加えて、自社がコア技術を強化する外部技術を募っているというメッセージをウェブサイト上に掲載し、そして外部からの提案を受ける窓口体制を作る必要があります。
 
  

   続きを読むには・・・


この記事の著者

浪江 一公

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。


「技術マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
何はなくとも戦略を作る 新規事業・新商品を生み出す技術戦略(その1)

   「あなたの会社、あなたの組織には戦略がありますか?」と質問をすると十中八九「当然、あります。」と答えが返ってきます。   ...

   「あなたの会社、あなたの組織には戦略がありますか?」と質問をすると十中八九「当然、あります。」と答えが返ってきます。   ...


未来志向でコア技術を設定する 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その28)

 そろそろ自社の技術ではなく、社外の技術の収集の議論に移りたいのですが、私のところで起こったある出来事で、『未来志向でコア技術を設定する』ことを強調してお...

 そろそろ自社の技術ではなく、社外の技術の収集の議論に移りたいのですが、私のところで起こったある出来事で、『未来志向でコア技術を設定する』ことを強調してお...


夢商品開発七つ道具の総括 【快年童子の豆鉄砲】(その55)

  1.夢商品開発七つ道具の総括 「夢商品開発七つ道具(Y7)」の説明をしてきましたが、開発理念が共通することから「創造的魅力商品開発七...

  1.夢商品開発七つ道具の総括 「夢商品開発七つ道具(Y7)」の説明をしてきましたが、開発理念が共通することから「創造的魅力商品開発七...


「技術マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
CS-T法を起点とした技術開発プロセスとは、乗用車用エンジンの技術開発事例

▼さらに深く学ぶなら!「品質工学」に関するセミナーはこちら! 機能を起点に形を考案するというプロセスの成功例として,品質工学会でも多くの方々に大きな...

▼さらに深く学ぶなら!「品質工学」に関するセミナーはこちら! 機能を起点に形を考案するというプロセスの成功例として,品質工学会でも多くの方々に大きな...


設計部門の仕組み構築(その2)

 前回のその1に続いて解説します。  繰り返しになりますが、事例としてあげている設計部門では、現状の課題を次のように整理できています。 (1)繰り返し...

 前回のその1に続いて解説します。  繰り返しになりますが、事例としてあげている設計部門では、現状の課題を次のように整理できています。 (1)繰り返し...


システム設計7 プロジェクト管理の仕組み (その39)

 前回のシステム設計6に続いて解説します。    検証作業の基本は、考えたサブシステム構成に対してシステム要件の一つひとつに対してどのような...

 前回のシステム設計6に続いて解説します。    検証作業の基本は、考えたサブシステム構成に対してシステム要件の一つひとつに対してどのような...