最も未来に近い最先端を経験 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その54)

更新日

投稿日

 
  技術マネジメント
 
 現在イノベーションに必要な要素を表したKETICモデルの2つ目、Experience(経験)の解説しています。今回は前回に引き続き、市場を知るための3つの軸:TADの内「時間軸(Time)」、更にその中の「未来を経験・体験する」ための3つの方法の内の1つ、「現状での最も未来に近い最先端を経験する」解説します。
 

1. 「現状での最も未来に近い最先端を経験する」

 

(1) ライトハウスカスターとリバースイノベーションからの普遍的意味

 
 前回は、ライトハウスカスタマー(灯台顧客)の現場を経験することと、リバースイノベーションというむしろ開発途上国での活動からヒントを得るという話をしました。
 
この2つのことから言えることはなんでしょうか?つまり、最も現状で進んでいるものと、最も遅れているものの両者を経験するということです。
 
 前者については、解説は不要と思います。まさにここで言っている「現状での最も未来に近い最先端を経験する」そのものです。
 
 後者について言うと、最も遅れている状況には理由、すなわち制約がありますが、一方でその場にいる人達の中には先進国がそうであるように、イノベーション溢れる人がいるわけで、開発途上国のそういったイノベーション溢れる人達は、その制約の中でなんとか問題を解決しようとしています。
 
 そしてそのような前提となる制約は、先進国でも途上国程は大きくなくても、現状でも存在しています。その制約を経験したり、その工夫を知ることには大きな意味があります。
 

(2) 両極端の環境下での人の営みを経験・観察する

 
 したがって、そのような両極端の世界で活動・存在する人達、企業、機関、組織の営みを経験・観察そして知ることで、未来への洞察が得られるのではないかと思います。両極端の視点には以下のようなものがあると思います。
 

【顧客の価値感】

 
 既に先端の顧客は、前回ライトハウスカスタマーで議論していますが、その逆の顧客がいます。そのような顧客をマーケティングでは、ラガードと呼びます。ラガードは、ライトハウスカスタマーとは逆に、極めて保守性の高い顧客です。
 
 また、その他大勢のフォロアー(追随者)とは異なり、自分達の価値感をかなり明確に認識している人、企業です。
 
 しかし、もちろん思い込みもその理由にはあるかもしれませんが、何らかの彼らが置かれた環境においては、保守的にならざるを得ない環境、すなわち制約がある筈です。
 
 また、そのような制約に対して、ライトハウスカスタマーとは全く異なるアプローチで対処しているかもしれません。
 

【政治形態】

 
 北欧のような民主主義の進んだ先進的な国においても、既に民主主義の弊害が現れていて、その対処のために様々な工夫を行っているということがあるでしょう。一方で、北朝鮮などをはじめとして、世界中には民主主義とは両極端にある政治形態の国が存在しています。
 
 そのような国にいるイノベーター達は、様々な制約に対し日々、文字通り生き抜くための工夫をしている筈です。
 
 これらの国の制約や工夫は、両者の間にいる国に生活していては、なかなか認識することは難しいものです。
 

【気候】

 
 シリコンバレーがこれまで...
 
  技術マネジメント
 
 現在イノベーションに必要な要素を表したKETICモデルの2つ目、Experience(経験)の解説しています。今回は前回に引き続き、市場を知るための3つの軸:TADの内「時間軸(Time)」、更にその中の「未来を経験・体験する」ための3つの方法の内の1つ、「現状での最も未来に近い最先端を経験する」解説します。
 

1. 「現状での最も未来に近い最先端を経験する」

 

(1) ライトハウスカスターとリバースイノベーションからの普遍的意味

 
 前回は、ライトハウスカスタマー(灯台顧客)の現場を経験することと、リバースイノベーションというむしろ開発途上国での活動からヒントを得るという話をしました。
 
この2つのことから言えることはなんでしょうか?つまり、最も現状で進んでいるものと、最も遅れているものの両者を経験するということです。
 
 前者については、解説は不要と思います。まさにここで言っている「現状での最も未来に近い最先端を経験する」そのものです。
 
 後者について言うと、最も遅れている状況には理由、すなわち制約がありますが、一方でその場にいる人達の中には先進国がそうであるように、イノベーション溢れる人がいるわけで、開発途上国のそういったイノベーション溢れる人達は、その制約の中でなんとか問題を解決しようとしています。
 
 そしてそのような前提となる制約は、先進国でも途上国程は大きくなくても、現状でも存在しています。その制約を経験したり、その工夫を知ることには大きな意味があります。
 

(2) 両極端の環境下での人の営みを経験・観察する

 
 したがって、そのような両極端の世界で活動・存在する人達、企業、機関、組織の営みを経験・観察そして知ることで、未来への洞察が得られるのではないかと思います。両極端の視点には以下のようなものがあると思います。
 

【顧客の価値感】

 
 既に先端の顧客は、前回ライトハウスカスタマーで議論していますが、その逆の顧客がいます。そのような顧客をマーケティングでは、ラガードと呼びます。ラガードは、ライトハウスカスタマーとは逆に、極めて保守性の高い顧客です。
 
 また、その他大勢のフォロアー(追随者)とは異なり、自分達の価値感をかなり明確に認識している人、企業です。
 
 しかし、もちろん思い込みもその理由にはあるかもしれませんが、何らかの彼らが置かれた環境においては、保守的にならざるを得ない環境、すなわち制約がある筈です。
 
 また、そのような制約に対して、ライトハウスカスタマーとは全く異なるアプローチで対処しているかもしれません。
 

【政治形態】

 
 北欧のような民主主義の進んだ先進的な国においても、既に民主主義の弊害が現れていて、その対処のために様々な工夫を行っているということがあるでしょう。一方で、北朝鮮などをはじめとして、世界中には民主主義とは両極端にある政治形態の国が存在しています。
 
 そのような国にいるイノベーター達は、様々な制約に対し日々、文字通り生き抜くための工夫をしている筈です。
 
 これらの国の制約や工夫は、両者の間にいる国に生活していては、なかなか認識することは難しいものです。
 

【気候】

 
 シリコンバレーがこれまで数多くのイノベーションの創出してきた背景には、その快適な気候があるように思えます。その様な気候に身を置いて将来を考えることは有効なことでしょう。
 
 また一方で、中近東の苛烈な気候もまた、人々に様々な工夫をさせているということがあるのではないでしょうか。
 
 後者に関しては、地球温暖化や砂漠化が進むなか、そのような地で生活や仕事を経験することは、将来を想定することに多いに役立つのではないでしょうか?
 
 次回に続きます。
 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

浪江 一公

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。


「技術マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
影響を当える関係とは 普通の組織をイノベーティブにする処方箋(その93)

   現在、KETICモデルの中の「知識・経験を関係性で整理する」を解説しています。今回は、下記の「関係性の種類」の中の「(3)包含」につ...

   現在、KETICモデルの中の「知識・経験を関係性で整理する」を解説しています。今回は、下記の「関係性の種類」の中の「(3)包含」につ...


イノベーションの創出 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その132)

  【この連載の前回:普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その131)へのリンク】 現在「切り取った知識の重要部分を発想するフレー...

  【この連載の前回:普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その131)へのリンク】 現在「切り取った知識の重要部分を発想するフレー...


製品設計におけるトレードオフのコントロール(その2)

 製品設計におけるトレードオフのコントロールを、前回に続いて解説します。   1.トレードオフ対応フロー  図1はトレードオフへの対応フローの一...

 製品設計におけるトレードオフのコントロールを、前回に続いて解説します。   1.トレードオフ対応フロー  図1はトレードオフへの対応フローの一...


「技術マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
スーパーマンではなくプロフェッショナルな技術者に(その3)

【プロフェッショナルな技術者 連載目次】 1. 製品開発現場が抱えている問題 2. プロフェッショナルによる製品開発 3. 設計組織がねらい通り...

【プロフェッショナルな技術者 連載目次】 1. 製品開発現場が抱えている問題 2. プロフェッショナルによる製品開発 3. 設計組織がねらい通り...


研究開発の進め方とは

     1. 研究・開発の流れ  私の行っている技術分野では以下のような流れで商品化されます。 材料研究 ...

     1. 研究・開発の流れ  私の行っている技術分野では以下のような流れで商品化されます。 材料研究 ...


‐操作性改善‐ ‐修理情報活用‐  製品・技術開発力強化策の事例(その1)

1.機械の操作性の改善  自社の機械を購入してくれた顧客を訪問し、操作性について苦情を聞くことを中心に営業活動をしている機械メ-カがあります。多品種...

1.機械の操作性の改善  自社の機械を購入してくれた顧客を訪問し、操作性について苦情を聞くことを中心に営業活動をしている機械メ-カがあります。多品種...