インポスター症候群とは 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その83)

更新日

投稿日

技術マネジメント


 前回エドワード・デシの4段階理論における第3段階を実現する活動として「(その1)有能感への貢献:目的達成が自分自身の成長につながることを理解する」について解説しました。今回は2つ目の「(その2) 有能感獲得に向けて積極的に活動する」について考えてみたいと思います。

1、有能感獲得に向けて積極的に活動する

 有能感を直接的に自分自身が高めることができれば良いのですが、現実には難しいものです。心理学の言葉に「インポスター症候群」があります。これは、優秀な人であっても「自分の成功や今ある地位は、自分の本当の実力ではなく、外的な理由で周囲が過大評価している」と思ってしまう人間が本来持っている傾向をいいます。

 世界中の多くの優秀なリーダーの間にもこのような考えが蔓延(まんえん)しているという事実は、驚きではありますが、このような個人が持つ無能感は人間の基本的な傾向でもあるという研究結果には納得感があります。

 それでは、難しいとはいいながら、この個人が持つ無能感を克服し、有能感を高めるにはどのような方法があるのでしょうか。

 このインポスター症候群への対処法として、自分自身にそのような感情があることを素直に受け止め、自分が無能であるというのは本当かを自問する余裕を持つというものがありますが、私自身はもう少し積極的な対応策があるのではないかと思います。

2、他人からフィードバックの機会を多く持つ

 それは、他人から自分自身が有能感を持てるようなフィードバックを引き出す機会を、多く持つということです。

 具体的には、他人からのフィードバックを求め、自分のそれまでの成果を外に向かって発信することを積極的に行うことです。もちろん他人からのすべてのフィードバックが、自身の有能感につながるものではありません。

 しかし多くの周りの人たちの傾向として、チャレンジしている人を見ると応援したくなるということがあると思います。自分とその人を重ね合わせで、その人のチャレンジを自分自身の問題としてとらえてくれるからではないかと思います。人がスポーツ選手を熱狂的に応援するのも、このような心理があるからではないでしょうか。

 しかしここで一点重要なことがあります。それは、発信者が謙虚で誠実でなければならないということです。そうでないと、受け手はチャレンジする人を自分と重ね合わせるどころか、ジキルがハイドになるように一瞬にして残酷になり、敵対視をするようになるからです。そうすると、発信者はむしろ辛辣なフィードバックを受けることになります。

3、ネガティブなフィードバックへの対処法:自分自身の耐性を培う機会と考える

 自分がどんなに謙虚で誠実であっても、数多くの場で発信すれば当然のごとくネガティブなフィードバックを受けることもあります。ソーシャルメディアといったインターネット上の匿名性のある媒体では尚更です。それではどうしたら良いでしょうか。

 それは、他人のネガティブなフィードバックに対して、耐性を持つように積極的に考えるとうことではないかと思います。

 人間はそもそも優秀であっても、上で議論した「インポスター症候群」を持つ傾向があるので、もちろんこのネガティブなフィードバックに対する耐性を...

技術マネジメント


 前回エドワード・デシの4段階理論における第3段階を実現する活動として「(その1)有能感への貢献:目的達成が自分自身の成長につながることを理解する」について解説しました。今回は2つ目の「(その2) 有能感獲得に向けて積極的に活動する」について考えてみたいと思います。

1、有能感獲得に向けて積極的に活動する

 有能感を直接的に自分自身が高めることができれば良いのですが、現実には難しいものです。心理学の言葉に「インポスター症候群」があります。これは、優秀な人であっても「自分の成功や今ある地位は、自分の本当の実力ではなく、外的な理由で周囲が過大評価している」と思ってしまう人間が本来持っている傾向をいいます。

 世界中の多くの優秀なリーダーの間にもこのような考えが蔓延(まんえん)しているという事実は、驚きではありますが、このような個人が持つ無能感は人間の基本的な傾向でもあるという研究結果には納得感があります。

 それでは、難しいとはいいながら、この個人が持つ無能感を克服し、有能感を高めるにはどのような方法があるのでしょうか。

 このインポスター症候群への対処法として、自分自身にそのような感情があることを素直に受け止め、自分が無能であるというのは本当かを自問する余裕を持つというものがありますが、私自身はもう少し積極的な対応策があるのではないかと思います。

2、他人からフィードバックの機会を多く持つ

 それは、他人から自分自身が有能感を持てるようなフィードバックを引き出す機会を、多く持つということです。

 具体的には、他人からのフィードバックを求め、自分のそれまでの成果を外に向かって発信することを積極的に行うことです。もちろん他人からのすべてのフィードバックが、自身の有能感につながるものではありません。

 しかし多くの周りの人たちの傾向として、チャレンジしている人を見ると応援したくなるということがあると思います。自分とその人を重ね合わせで、その人のチャレンジを自分自身の問題としてとらえてくれるからではないかと思います。人がスポーツ選手を熱狂的に応援するのも、このような心理があるからではないでしょうか。

 しかしここで一点重要なことがあります。それは、発信者が謙虚で誠実でなければならないということです。そうでないと、受け手はチャレンジする人を自分と重ね合わせるどころか、ジキルがハイドになるように一瞬にして残酷になり、敵対視をするようになるからです。そうすると、発信者はむしろ辛辣なフィードバックを受けることになります。

3、ネガティブなフィードバックへの対処法:自分自身の耐性を培う機会と考える

 自分がどんなに謙虚で誠実であっても、数多くの場で発信すれば当然のごとくネガティブなフィードバックを受けることもあります。ソーシャルメディアといったインターネット上の匿名性のある媒体では尚更です。それではどうしたら良いでしょうか。

 それは、他人のネガティブなフィードバックに対して、耐性を持つように積極的に考えるとうことではないかと思います。

 人間はそもそも優秀であっても、上で議論した「インポスター症候群」を持つ傾向があるので、もちろんこのネガティブなフィードバックに対する耐性を持つことは簡単ではありません。

 それには、次のような方策があります。

(1) 自身の批判への耐性を鍛える良き機会

 ネガティブなフィードバックは、自身のそのような自分への批判への耐性を鍛えるものであると、日々考えるようにすることです。そうすると、徐々に批判を前向きに受け入れることができるようになり、最終的には自分の耐性を高めることができるようになります。

(2) 得られる自己の有能感は批判というコストに比べてはるかに大きいと考える

 そのような他人からの批判は、有能感を高めるためには避けられないコストであり、そのようなコストを甘受すれば、コストに比べてはるかに自分自身にとって価値のある自己の有能感を高めることができるという事実に、目を向けることです。

 次回もこの解説を続けます。

   続きを読むには・・・


この記事の著者

浪江 一公

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。


「技術マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
MVPの活用 新規事業・新商品を生み出す技術戦略(その82)

  ◆ 研究開発にMVPを活用する  今回は「研究開発にMVPを活用する」をテーマに解説します。  MVPとは、Minimum Via...

  ◆ 研究開発にMVPを活用する  今回は「研究開発にMVPを活用する」をテーマに解説します。  MVPとは、Minimum Via...


技術開発者の離職理由から考える本質的な解決策、新規事業・新商品を生み出す技術戦略(その100)

【この連載の前回、潜在ニーズをとらえる仮説検証の3ステップ、新規事業・新商品を生み出す技術戦略(その99)へのリンク】 【目次】 ...

【この連載の前回、潜在ニーズをとらえる仮説検証の3ステップ、新規事業・新商品を生み出す技術戦略(その99)へのリンク】 【目次】 ...


続 Painのインパクト 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その89)

   今回も引き続き、エドワード・デシが内発的動機付けに必要と主張している2つの要素、「自律性」と「有能感」の内、後者の実現手段として「有...

   今回も引き続き、エドワード・デシが内発的動機付けに必要と主張している2つの要素、「自律性」と「有能感」の内、後者の実現手段として「有...


「技術マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
イノベーション戦略のキーツールとは

  1. 現代のワークショップ    ワークショップは元々、職人が集まって共同で何かを作るための「工房」「作業場」といった意味の...

  1. 現代のワークショップ    ワークショップは元々、職人が集まって共同で何かを作るための「工房」「作業場」といった意味の...


‐企業内に発生している問題点を徹底的に追求 ‐  製品・技術開発力強化策の事例(その3)

 前回の事例その2に続いて解説します。企業内では解決が容易でない様々な問題が生じています。しかし、これらの問題解決に取り組まない限り、競争に勝つことが出来...

 前回の事例その2に続いて解説します。企業内では解決が容易でない様々な問題が生じています。しかし、これらの問題解決に取り組まない限り、競争に勝つことが出来...


羽のない扇風機が創られた時の目標設定、横並び競争と何が違うのか?

【目次】 1. 福原流QFDは技術者の創造性を引き出す技法 私も含めて我々技術者の思考は知らず知らずにうちに技術手段のHOWを考え...

【目次】 1. 福原流QFDは技術者の創造性を引き出す技法 私も含めて我々技術者の思考は知らず知らずにうちに技術手段のHOWを考え...