普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その1)

更新日

投稿日

 

イノベーション

 

1. 曖昧なイノベーションの定義

 近年において、イノベーションという言葉ほど頻繁に利用される言葉はないように思えます。しかし、この言葉は曖昧で、例えば、日本経済新聞の記事の中では、イノベーションという言葉が使われると必ずカッコつきで「技術革新」という注釈が付け加えられています。既にイノベーションは技術の革新だけではないということが広く理解されるようになっている現在も、この注釈が付け加え続けられているということは、まさに未だイノベーションの定義があいまいである証拠のように思えます。
 

2. 民間企業における「イノベーション」の定義:2つの要素

 
 私は少なくとも収益の創出を主要な目的としている民間企業においては、イノベーションは、「従来の製品やサービスでは実現できていない大きな顧客価値を実現すること」と定義するのが良いと思っています。この定義は、大きくは2つのキーワードから構成されています。
 

(1) 「大きな顧客価値」の実現

 
 民間企業は収益を挙げることを主要な目的としていますが、さらに大きな収益を挙げるにはどうしたらよいでしょうか。その答えは、大きな顧客価値を実現する製品やサービスを顧客に継続的に提供することです。顧客は自分達が享受する価値に見合った対価を払う用意があります。したがって、企業が大きな価値を提供すれば、大きな対価を払ってくれるのです。
 

(2)「従来の製品やサービスでは実現できていない(大きな顧客価値)」

 
 もう一つの要素が、「従来の製品やサービスでは実現できていない」です。同じようなレベルの(大きな)価値が既に既存製品で実現されているのでは、自社がそれと同じような二番煎じの製品を出しても、大きな収益を獲得することはできません。なぜなら、価格というものは、競争があると必ず下がるからです。既に同じレベルの価値を実現する製品が市場に出ていて、それが10万円で売られているとします。二番煎じの自社の製品は、残念ながら10万円では売れません。そこで9万円という値段を付けます。そうすると、先行企業は自社製品を売るために8万円という値段をつけ。。。というように価格競争が起き、値段はどんどん下るというのが、経済原理です。したがって、「大きな顧客価値」を実現するだけでは不十分で、従来の製品やサービスで実現できないような「大きな顧客価値」実現できなければなりません。
...

 

イノベーション

 

1. 曖昧なイノベーションの定義

 近年において、イノベーションという言葉ほど頻繁に利用される言葉はないように思えます。しかし、この言葉は曖昧で、例えば、日本経済新聞の記事の中では、イノベーションという言葉が使われると必ずカッコつきで「技術革新」という注釈が付け加えられています。既にイノベーションは技術の革新だけではないということが広く理解されるようになっている現在も、この注釈が付け加え続けられているということは、まさに未だイノベーションの定義があいまいである証拠のように思えます。
 

2. 民間企業における「イノベーション」の定義:2つの要素

 
 私は少なくとも収益の創出を主要な目的としている民間企業においては、イノベーションは、「従来の製品やサービスでは実現できていない大きな顧客価値を実現すること」と定義するのが良いと思っています。この定義は、大きくは2つのキーワードから構成されています。
 

(1) 「大きな顧客価値」の実現

 
 民間企業は収益を挙げることを主要な目的としていますが、さらに大きな収益を挙げるにはどうしたらよいでしょうか。その答えは、大きな顧客価値を実現する製品やサービスを顧客に継続的に提供することです。顧客は自分達が享受する価値に見合った対価を払う用意があります。したがって、企業が大きな価値を提供すれば、大きな対価を払ってくれるのです。
 

(2)「従来の製品やサービスでは実現できていない(大きな顧客価値)」

 
 もう一つの要素が、「従来の製品やサービスでは実現できていない」です。同じようなレベルの(大きな)価値が既に既存製品で実現されているのでは、自社がそれと同じような二番煎じの製品を出しても、大きな収益を獲得することはできません。なぜなら、価格というものは、競争があると必ず下がるからです。既に同じレベルの価値を実現する製品が市場に出ていて、それが10万円で売られているとします。二番煎じの自社の製品は、残念ながら10万円では売れません。そこで9万円という値段を付けます。そうすると、先行企業は自社製品を売るために8万円という値段をつけ。。。というように価格競争が起き、値段はどんどん下るというのが、経済原理です。したがって、「大きな顧客価値」を実現するだけでは不十分で、従来の製品やサービスで実現できないような「大きな顧客価値」実現できなければなりません。
 

3. イノベーティブな組織とは

 
 以上のイノベーションの定義に基づくと、イノベーティブな組織とは、「従来の製品やサービスでは実現できない、大きな顧客価値を継続的に創出できる組織」と定義することができます。
 
 次回からはこの「イノベーティブな組織」の定義に基づき、普通の組織をイノベーティブにする方法について解説します。
 
 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

浪江 一公

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。


「事業戦略」の他のキーワード解説記事

もっと見る
SECIモデルとは?知識創造のフレームワークをわかりやすく解説

   【目次】 SECIモデルは、知識創造のプロセスを理解するための重要なフレームワークとして、経営マネジメントの...

   【目次】 SECIモデルは、知識創造のプロセスを理解するための重要なフレームワークとして、経営マネジメントの...


第一章 国内産業の状況 ものづくり白書を5分で読む。(その1)

【この連載の次回へのリンク】 全274ページにわたる「ものづくり白書:2022年度版」の各章を5分の内容に要約して解説します。   本...

【この連載の次回へのリンク】 全274ページにわたる「ものづくり白書:2022年度版」の各章を5分の内容に要約して解説します。   本...


中小製造業のあるべき姿とは

   中小製造業のあるべき姿とは、いったいどのようなものでしょうか。多品種少量生産を強いられる中、生産性向上、費用削減、不良品を出さないなど限...

   中小製造業のあるべき姿とは、いったいどのようなものでしょうか。多品種少量生産を強いられる中、生産性向上、費用削減、不良品を出さないなど限...


「事業戦略」の活用事例

もっと見る
感性工学・感性価値 :新環境経営 (その35) 

 新環境経営への取組みについての話題を提供するに当たり、経済成長に邁進してきた中で発生した公害の歴史、CSRの取組の変遷、環境マネジメントシステム、有...

 新環境経営への取組みについての話題を提供するに当たり、経済成長に邁進してきた中で発生した公害の歴史、CSRの取組の変遷、環境マネジメントシステム、有...


中国食品工場の問題はサイレントチェンジと根は同じ 中国企業の壁(その4)

1. 中国食品工場の問題はサイレントチェンジと根は同じ  2017年の9月24日にNHKのクローズアップ現代で、中国企業が勝手に部品や材料を変えてし...

1. 中国食品工場の問題はサイレントチェンジと根は同じ  2017年の9月24日にNHKのクローズアップ現代で、中国企業が勝手に部品や材料を変えてし...


経営と現場をつなぐ視点とは

 経営と現場をつなぐ視点と言う観点から、技術経営の要件「長期的視点にたって企業が経営されていること」について解説します。   1.長期視点に...

 経営と現場をつなぐ視点と言う観点から、技術経営の要件「長期的視点にたって企業が経営されていること」について解説します。   1.長期視点に...