普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その174)イノベーション創出

更新日

投稿日

 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その174)イノベーション創出

前回まで自分が生物、物、さらには抽象概念になったと想像して、世の中を観察しようという話をしてきました。これは言うなれば、まさに妄想の世界です。妄想はネガティブに捉えられがちですが、私は妄想はイノベーション創出において、極めて重要な役割を果たすものであると考えています。今回から、この「妄想」というキーワードに着目して、解説します。

 

1. イノベーションは「無」から生まれるものではない:シュンペーターの「新結合」

これまでの連載でも何度か触れてきたように、イノベーションは天から降ってくるものではなく、既存の知識の新しい組合せ、すなわち新結合によって生まれることは、イノベーションの研究者であるシュンペーターが述べているところです。つまり、イノベーションは「無」から生まれるものではなく「有」から生まれるというものです。

 

そのため、イノベーションを起こすためには「有」である、何等かの知識が必要となり、その知識が多ければ多い程、イノベーションがそれら知識のスパークにより起こる可能性が増えていくと考えることができます。

 

2. 確認されたファクトは極めて限定的・制約的

スパ...

 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その174)イノベーション創出

前回まで自分が生物、物、さらには抽象概念になったと想像して、世の中を観察しようという話をしてきました。これは言うなれば、まさに妄想の世界です。妄想はネガティブに捉えられがちですが、私は妄想はイノベーション創出において、極めて重要な役割を果たすものであると考えています。今回から、この「妄想」というキーワードに着目して、解説します。

 

1. イノベーションは「無」から生まれるものではない:シュンペーターの「新結合」

これまでの連載でも何度か触れてきたように、イノベーションは天から降ってくるものではなく、既存の知識の新しい組合せ、すなわち新結合によって生まれることは、イノベーションの研究者であるシュンペーターが述べているところです。つまり、イノベーションは「無」から生まれるものではなく「有」から生まれるというものです。

 

そのため、イノベーションを起こすためには「有」である、何等かの知識が必要となり、その知識が多ければ多い程、イノベーションがそれら知識のスパークにより起こる可能性が増えていくと考えることができます。

 

2. 確認されたファクトは極めて限定的・制約的

スパークに使われる知識として、ファクトや現実は極めて限定的で制約的です。なぜかと言うと以下の2点があるように思えます。

(1)場所・時を選ぶ

ファクトは、ファクトのある場所にしかファクトはありません。実際にファクトのある場所、またファクトを伝える場所に、自ら身を置かなければそれを得ることはできません。

 

(2)コスト(手間・時間)が掛かる

今、目の前にないファクトを集めようとすれば、手間と時間が掛かります。

 

3. 日本人は確実なものを重視する傾向が強い

我々日本人は、ファクトなど確実な現実を重視することを、勤務先の企業や組織、そして教育機関などでずっと教えられてきたように思えます。その結果、日本人には諸外国の人達と比べても、確実なものをより重視するという傾向が強いように感じます。

 

その背景には、これは私見ですが、日本人は稲作という皆の堅実な活動に支えられ一致協力して事にあたる生活を、長い間送ってきたからではないかと思います。つまり大量のアウトプットを確実に創出しなければならない、それに失敗すると集団が餓死してしまうという環境の中で、組織の構成員それぞれが、確実性を重んじるという傾向が生まれたということではないでしょうか。

 

4. 妄想には制約がない

ここで議論している妄想には知識を生み出すにあたって、上で挙げたファクトの制約はありません。

 

(1)場所・時を選ばない

場所・時を選ばず、場所・時に制約されずあらゆる場や時間に知識を、自由に勝手に生み出すことができます。

 

(2)コスト(手間・時間)が掛からない

妄想する手間や時間は基本的に必要ではありません。頭さえあれば、その場・その時に瞬時に新しい知識を生み出すことができます。

 

次回に続きます。

 

【 この記事をお読みの方へ、セミナーの紹介 】

セミナーテーマは「イノベーションと創造性」です。イノベーションを促進し、新しいアイデアを生み出すための考え方やアプローチについて学びたい方に各社のセミナーから、お選びいただけます。

【ものづくり セミナーサーチ】 セミナー紹介:国内最大級のセミナー掲載数 〈ものづくりセミナーサーチ〉 はこちら!

 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

浪江 一公

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。


「技術マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
製品設計における納入仕様書の役割(その1)

1.製品の納入側から受入側へ提出する「文書」とは  製品設計では、顧客や協力会社、自社内の部署間において、様々な「文書」を取り交わす必要があります。...

1.製品の納入側から受入側へ提出する「文書」とは  製品設計では、顧客や協力会社、自社内の部署間において、様々な「文書」を取り交わす必要があります。...


普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その176) 妄想とイノベーション創出

前回まで自分が生物、物、さらには抽象概念になったと想像して、世の中を観察しようという話をしてきました。これは言うなれば、まさに妄想の世界です。妄想はネ...

前回まで自分が生物、物、さらには抽象概念になったと想像して、世の中を観察しようという話をしてきました。これは言うなれば、まさに妄想の世界です。妄想はネ...


ロードマップの表現 新規事業・新商品を生み出す技術戦略(その84)

  1. ロードマップは羅針盤  今回は「ロードマップはマクロとミクロで表現する」について解説します。  ロードマップを一言で表すなら...

  1. ロードマップは羅針盤  今回は「ロードマップはマクロとミクロで表現する」について解説します。  ロードマップを一言で表すなら...


「技術マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
価値創造の鍵を握るアナログ知

1.アナログ知を高めるとは    最近公文式教室のCMをテレビで見かけます。公文式教室は50年以上の歴史があり、現在は日本にとどまらず48の...

1.アナログ知を高めるとは    最近公文式教室のCMをテレビで見かけます。公文式教室は50年以上の歴史があり、現在は日本にとどまらず48の...


研究開発部門にスパークを起こすとは

◆市場を継続的に長く、広く、深く知る  企業の研究開発部門は、「金ばかり使って、良い技術が全然出てこない」と非難されることが多いようです。企業にとっての...

◆市場を継続的に長く、広く、深く知る  企業の研究開発部門は、「金ばかり使って、良い技術が全然出てこない」と非難されることが多いようです。企業にとっての...


設計改善研究会の成果 伸びる金型メーカーの秘訣 (その39)

        今回、紹介する機械装置メーカーは、株式会社 K製作所です。同社は、自動車メーカーや工作機械メ...

        今回、紹介する機械装置メーカーは、株式会社 K製作所です。同社は、自動車メーカーや工作機械メ...