イノベーションの創出 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その132)

投稿日

技術マネジメント

 

【この連載の前回:普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その131)へのリンク】

現在「切り取った知識の重要部分を発想するフレームワークを使って、イノベーションを発想する」にむけて、日々の活動の中でどうイノベーションを創出するかについて、解説しています。今回からは、失敗のコストのマネジメントについて、議論をしていきたいと思います。

 

●「踏み出すこと・踏み出そうとすることで発生する直接的コスト」×「金銭的コスト」

何か新しいことにチャレンジしようとすると、そこには金銭的コストが掛かります。その金銭的コストの問題を解決しないと、そもそもチャレンジは始まりません。そこへの対処の方法を解説します。

 

●チャレンジに少額の資金を提供する:アドビのキックボックスの例

文書のPDF化のマネジメントソフトを提供する米国のアドビでは、誰でも新規開発をしようとする者は、キックボックスという、ペンやノート、スターバックスのギフトカード、チョコレート、そして1000ドル分のプリペイド式クレジットカードが入っている箱をもらうことができます。

 

この1000ドルを使って、その開発に関わるなんでも使えるというものです。また、その結果の報告もする必要もありません。

 

小さなことでも、何かをしようとすれば、お金が掛かります。その最初の小さな一歩が始まらないと、後に大きなイノベーションを起こすような製品やサービスは「絶対」に生まれません。このような最初の小さな一歩を踏み出すことを促す仕組みが、このキックボックスです。

 

またこのキックボックスは、会社側のイノベーションに向けての最初の一歩から支援するという重要なメッセージでもあります。

 

アドビのように報告不要とすると、不正利用への懸念も発生します。しかし、その点に関しては、一件ごとの管理ではなく、年間を通してこのような活動からどのような成果が生まれたかを、個人レベルで振り返るということで対処する、ということで良いように思えます。

 

●チャレンジの資金を予算化する

このような少額の支援により、イノベーションプロジェクトへの第一歩の取り組みを奨励する仕組みは、大変有効に思えます。そのためにも、年間のこのような活動への資金を予算化し、計画予算の使用の達成を促すことも重要と思われます。

 

官公庁の予算のように、予算の消化が目的になるというのは、仕組みが形骸化してしまうと思われるかもしれませんが、初期のイノベーション活動促進の手段として、そのための一つの目標指標としてマネジメントの対象とするのは、意義あることに思われます。

 

●チャレンジに少額の...

技術マネジメント

 

【この連載の前回:普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その131)へのリンク】

現在「切り取った知識の重要部分を発想するフレームワークを使って、イノベーションを発想する」にむけて、日々の活動の中でどうイノベーションを創出するかについて、解説しています。今回からは、失敗のコストのマネジメントについて、議論をしていきたいと思います。

 

●「踏み出すこと・踏み出そうとすることで発生する直接的コスト」×「金銭的コスト」

何か新しいことにチャレンジしようとすると、そこには金銭的コストが掛かります。その金銭的コストの問題を解決しないと、そもそもチャレンジは始まりません。そこへの対処の方法を解説します。

 

●チャレンジに少額の資金を提供する:アドビのキックボックスの例

文書のPDF化のマネジメントソフトを提供する米国のアドビでは、誰でも新規開発をしようとする者は、キックボックスという、ペンやノート、スターバックスのギフトカード、チョコレート、そして1000ドル分のプリペイド式クレジットカードが入っている箱をもらうことができます。

 

この1000ドルを使って、その開発に関わるなんでも使えるというものです。また、その結果の報告もする必要もありません。

 

小さなことでも、何かをしようとすれば、お金が掛かります。その最初の小さな一歩が始まらないと、後に大きなイノベーションを起こすような製品やサービスは「絶対」に生まれません。このような最初の小さな一歩を踏み出すことを促す仕組みが、このキックボックスです。

 

またこのキックボックスは、会社側のイノベーションに向けての最初の一歩から支援するという重要なメッセージでもあります。

 

アドビのように報告不要とすると、不正利用への懸念も発生します。しかし、その点に関しては、一件ごとの管理ではなく、年間を通してこのような活動からどのような成果が生まれたかを、個人レベルで振り返るということで対処する、ということで良いように思えます。

 

●チャレンジの資金を予算化する

このような少額の支援により、イノベーションプロジェクトへの第一歩の取り組みを奨励する仕組みは、大変有効に思えます。そのためにも、年間のこのような活動への資金を予算化し、計画予算の使用の達成を促すことも重要と思われます。

 

官公庁の予算のように、予算の消化が目的になるというのは、仕組みが形骸化してしまうと思われるかもしれませんが、初期のイノベーション活動促進の手段として、そのための一つの目標指標としてマネジメントの対象とするのは、意義あることに思われます。

 

●チャレンジに少額の資金を提供するは「ナッジ」

近年、行動経済学が注目を浴びていますが、その中に「ナッジ理論」があります。

 

ナッジ(nudge)とは、「注意を引くために・合図するために肘で人を軽く突く」(出所:英辞郎)という意味です。ナッジ理論とは、強引な強い力ではなく、軽い力、仕組みで、ある行動を促すことができるという理論です。まさに、チャレンジへの少額の資金提供は、イノベーションの第一歩を促す「ナッジ」と言えます。

 

次回に続きます。

 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

浪江 一公

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。


「技術マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
リーンスタートアップとは 新規事業・新商品を生み出す技術戦略(その86)

   今回は、研究開発においてリーンスタートアップを適用する際は、徹底的に仮説検証サイクルを短く設定することがポイントであることについて解...

   今回は、研究開発においてリーンスタートアップを適用する際は、徹底的に仮説検証サイクルを短く設定することがポイントであることについて解...


ムーンショット目標4とは 新規事業・新商品を生み出す技術戦略(その64)

 「ムーンショット型研究開発事業」※の関連で、今回はムーンショット目標4の解説です。※(ムーンショットとは)  同目標4では「2050年までに、地球...

 「ムーンショット型研究開発事業」※の関連で、今回はムーンショット目標4の解説です。※(ムーンショットとは)  同目標4では「2050年までに、地球...


普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その164) 体感での思考とアナロジーとの関係

  これまで五感を一つ一つとりあげ、それぞれの感覚のイノベーション創出における意義と、そこに向けての強化の方法について解説してきましたが、...

  これまで五感を一つ一つとりあげ、それぞれの感覚のイノベーション創出における意義と、そこに向けての強化の方法について解説してきましたが、...


「技術マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
技術資源の有効活用: 事例紹介 (その1)

 今回から2回に分けて、TRMによる活動の事例紹介をいたします。TRM(Technical Resource Management)は自社が保有する潜在的...

 今回から2回に分けて、TRMによる活動の事例紹介をいたします。TRM(Technical Resource Management)は自社が保有する潜在的...


イノベーションに取り組む第1歩はR&D

【ものづくり企業のR&Dと経営機能 記事目次】 管理力より技術力を磨け 技術プラットフォームの重要性 手段としてのオープンイノベーション...

【ものづくり企業のR&Dと経営機能 記事目次】 管理力より技術力を磨け 技術プラットフォームの重要性 手段としてのオープンイノベーション...


設計部門と組織政治の影響(その3)

 前回のその2に続いて解説します。   ◆政治的要因の検討で決まるスケジュールの確度・精度    日程を決めるときには、仕組み...

 前回のその2に続いて解説します。   ◆政治的要因の検討で決まるスケジュールの確度・精度    日程を決めるときには、仕組み...