普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その40) マクロ環境分析:社会

 
  
技術マネジメント
 
 現在、この連載ではマクロ環境分析の議論をしていますが、今回は、PESTEL(Political:政治、Economical:経済、Societal:社会、Technological:技術、Environmental:環境、Legal:法律)のうち、3つ目の社会についての解説をします。以下に、社会を分析する上での4つの構成要素について、順番に解説します。
 

1. 社会環境

 人間は日々の社会環境の中で生活をしています。社会環境と一言で言っても、我々の生活を10年、20年という長期の時間スパンや、365日という1年のスパンで、また1日24時間という短いメッシュで考えても、いろいろな側面があります。それらは、住環境、食生活、労働環境、健康・福祉環境、教育環境、余暇・趣味環境、消費環境、治安・社会秩序、宗教・信条、天変地異などです。
 
 また、これらの社会環境の様々な側面は、それぞれ原因と結果の関係にあります。例えば、住環境、食生活、教育環境、余暇・趣味環境が健康・福祉環境に影響を与えるということや、食生活や余暇・趣味環境が消費環境に影響を与えたり、また日本ではさほど大きな問題とはなっていませんが、海外では治安・社会秩序は住環境や健康・福祉環境に大きな影響を与えるというような関係があります。
 

2. 社会環境へ影響を与える因子

 社会環境も、それ単独で生まれるわけではありません。他のPESTELの要素、すなわち政治、経済、技術、環境、法律の影響を受けて形成されます。例えば、技術で言えば、スマートフォーンや自動運転の普及により、社会環境は大きく影響を受けます。また法律は住環境、食生活、教育などに大きな影響を与えますし、地球環境は、台風や地球温暖化を通して、社会環境に極めて大きな影響を与えるようになってきています。
 

3. 価値感・ライフスタイル

 社会環境は最終的に、人々の価値観やライフスタイルを生みだします。価値観やライフスタイルは、多くの場合個人毎ではなく、グループで共有されるものとなります。たとえば、ミレニアム世代は1980年代から2000年代初頭に生まれ、インターネットやスマートフォーンを当然のものとして成長し、日々の生活の中でもそれらを多用してきた世代で、デジタルネイティブなどとも呼ばれ、それまでの世代とは大きく異なる価値感やライフスタイルを持つ世代です。
 
  まさにこれらグループは、同じような社会環境下で生活し成長してきたという共通点があり、そのようなあるグループで共有される特徴を持つグループが形成されます。当然、この価値感やライフスタイルは地域や国ごとで、当然のごとく大きく異なります。例えば、イスラム教の国と無信教の国の日本では、価値感・ライフスタイルは大きく異なります。一方で、情報のグローバル化が進む中で、国や地域を超えての文化や価値感の影響もあります。
 
  たとえば、イスラム教の国で、日本のアニメが流行するなどということもありますし、日本の明治時代にそれまでのちょんまげを結っていた人達が、当時の西洋の文化・風習を多く導入し、生活・風習が大きく変化したなどということがあります。
 
 価値感やライフスタイルは、消費と直結しているため、それにより経済の方向性は大きな影響を受けます。マクロ環境分析は、自社の事業機会や脅威を見出すのが目的ですので、この具体的な影響まで分析する必要があります。
 

4. 人口動態

 社会環境や価値感・ライフスタイル、またその他のPESTELの要素の結果、人口、人口構成、各家庭の収入分布などの人口動態も長期では大きく変化をします。また、人口動態は、上で議論をした社会環境のインプットにもなります。
 
 次回に続きます。
 

この記事の著者

浪江 一公

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