普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その175) 妄想とイノベーション創出

更新日

投稿日

普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その175) 妄想とイノベーション創出

 

前回まで自分が生物、物、さらには抽象概念になったと想像して、世の中を観察しようという話をしてきました。これは言うなれば、まさに妄想の世界です。妄想はネガティブに捉えられがちですが、私は妄想はイノベーション創出において、極めて重要な役割を果たすものであると考えています。今回も、この「妄想」というキーワードに着目して、解説します。

【目次】

    1. 妄想は、実行に移す前にきちんと評価をすればよいだけ

    妄想などにもとづき行動をして、失敗したり、他人に迷惑をかけたりしたらどうするんだ、という妄想に対する否定的意見があるかもしれません。もちろん妄想にもとづく活動には、リスクやコストが伴います。しかし、その場合には、きちんとそれらリスクやコストを評価すれば良いだけです。リスクやコストを掛けてもやる価値があると判断すれ...

    普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その175) 妄想とイノベーション創出

     

    前回まで自分が生物、物、さらには抽象概念になったと想像して、世の中を観察しようという話をしてきました。これは言うなれば、まさに妄想の世界です。妄想はネガティブに捉えられがちですが、私は妄想はイノベーション創出において、極めて重要な役割を果たすものであると考えています。今回も、この「妄想」というキーワードに着目して、解説します。

    【目次】

      1. 妄想は、実行に移す前にきちんと評価をすればよいだけ

      妄想などにもとづき行動をして、失敗したり、他人に迷惑をかけたりしたらどうするんだ、という妄想に対する否定的意見があるかもしれません。もちろん妄想にもとづく活動には、リスクやコストが伴います。しかし、その場合には、きちんとそれらリスクやコストを評価すれば良いだけです。リスクやコストを掛けてもやる価値があると判断すれば、それを行動に移せば良いのです。

       

      また、道徳観が強い人の中には、妄想で邪悪な発想、不道徳な発想をすること自体が悪いことと思う人もいます。しかし、人間はそもそも頭の中では、常にそのような「邪悪」や「不道徳」なことを考える生き物です。きちんと評価・判断をして、そのような発想にもとづいた行動を起こさなければ良いのです。

       

      2. 妄想は良いことだらけ

      この点さえきちんと押さえておけば、妄想には何も悪い点はありません。良いことだけです。それではどのような良い点があるのでしょうか。

       

      (1)妄想が妄想を生む:隣接可能性の効果

      これまでもこの連載の中で、隣接可能性という言葉を紹介し、議論してきました。隣接可能性とは、なんらかのある程度の形になったものや知識があれば、そこから、その隣接する周辺に(そのため「隣接」可能性という言葉となっています)それをさらに良いものや概念に発展させたり、その他のものや概念を連想によって創出したりできるということです。

       

      まさに妄想もそのような対象となります。この隣接可能性には、その妄想をより良い妄想に発展させたり、その妄想から他の妄想を生み出したりという効果があります。「そういう考えがあれば、こういう考えもあるな」といったことです。それにより、スパークの原料となる妄想が、どんどん増えていきます。

       

      (2)新たな深い経験や知識が得られる

      その妄想に基づき、実際に活動をしてみれば、仮に期待した本来の結果が得られなくても、様々な経験や知識を生みだすことができます。また、その経験や知識は単なる妄想ではなく、実体験としてのより深い経験、知識です。まさに失敗の効果です。

       

      したがって、上で「実行に移す前にきちんと評価をすればよいだけ」を議論しましたが、評価においては失敗から得られる経験や知識の価値も重要な要素として、評価の対象とする必要があります。それにより、妄想の実行の頻度が高まります。

       

      (3)妄想力が高まる

      日々妄想をすることを心掛けることで、妄想力が多いに高まります。つまり、隣接可能性に基づく思考する力が高まるのです。妄想力が高まる理由には、2つあります。

       

      ① スパークの原料が増える

      妄想した結果の妄想は、頭の中に記憶され、蓄積されていきます。その結果、妄想の頻度が高まります。

       

      ② スパーク力が高まる

      実は新な妄想それ自体が、既存の妄想や知識のスパークで生まれます。すなわち、日々妄想を心掛けることで、スパーク力がおおいに鍛えられます。

       

      (4)イノベーションが起こる可能性がおおいに高まる

      以上の結果、まさにイノベーションが起きる可能性が多いに高まります。

       

      (5)妄想は楽しい

      そして、妄想は楽しいのです。現実には起こらないこと、起こらないと考えられてきた新しいことを自由に考えることは、それだけで楽しいということがあります。

       

      次回に続きます。

       

      【 この記事をお読みの方へ、セミナーの紹介 】

      セミナーテーマは「創造性とイノベーション」です。イノベーションを促進し、新しいアイデアを生み出すための考え方やアプローチについて学びたい方に各社のセミナーから、お選びいただけます。

      【ものづくり セミナーサーチ】 セミナー紹介:国内最大級のセミナー掲載数 〈ものづくりセミナーサーチ〉 はこちら!

       

         続きを読むには・・・


      この記事の著者

      浪江 一公

      プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。

      プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。


      「技術マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

      もっと見る
      体感で思考する 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その161)

               これまで五感を一つ一つとりあげ、それぞれの感覚のイノベーション創出における意義...

               これまで五感を一つ一つとりあげ、それぞれの感覚のイノベーション創出における意義...


      イノベーションの創造 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その134)

        【この連載の前回:普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その133)へのリンク】 前回までの2回にわたり、失敗の金銭的コストを低...

        【この連載の前回:普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その133)へのリンク】 前回までの2回にわたり、失敗の金銭的コストを低...


      拠点が異なるメンバー同士で開発するポイント     新規事業・新商品を生み出す技術戦略(その29)

                社内における拠点が異なるメンバーとの共同開発や在宅勤務の拡大、また産学連携をは...

                社内における拠点が異なるメンバーとの共同開発や在宅勤務の拡大、また産学連携をは...


      「技術マネジメント総合」の活用事例

      もっと見る
      プリウスの開発事例から学ぶ画期的挑戦

       トヨタ・プリウスが1997年に世界初の量産ハイブリッド車として市場に出た時は大きな衝撃を社会にもたらしました。2009年に20万8876台を売り上げ...

       トヨタ・プリウスが1997年に世界初の量産ハイブリッド車として市場に出た時は大きな衝撃を社会にもたらしました。2009年に20万8876台を売り上げ...


      トレーサビリティの保証 プロジェクト管理の仕組み (その45)

       前回のその44に続いて解説します。    ハードウェア設計の場合も、要件と回路ブロックの仕様(スペック)、回路ブロックのスペックと部品のス...

       前回のその44に続いて解説します。    ハードウェア設計の場合も、要件と回路ブロックの仕様(スペック)、回路ブロックのスペックと部品のス...


      プロジェクトの計画策定 プロジェクト管理の仕組み (その3)

       前回のその2:CMMIの要件管理に続いて、プロジェクトの計画策定について解説します。CMMIでは次のことができている必要があります。   ...

       前回のその2:CMMIの要件管理に続いて、プロジェクトの計画策定について解説します。CMMIでは次のことができている必要があります。   ...