自社の存在価値 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その112)

更新日

投稿日

技術マネジメント

 

知識や経験を整理するフレームワークとして、本質とそれ以外という区別があるという理解から、「本質とは何か」を解説しています。また、企業活動の本質は「自社の存在価値」と密接に関係する事項であると考え、「自社の存在価値」について考えています。

前回は「自社の存在価値」は「大きな顧客価値の創出」と「競争の回避」の2つから生まれ、また「大きな顧客価値」は3つの要件、すなわち「提供する顧客価値自体が大きいこと」「顧客価値の適用範囲が広いこと、そして「長期にわたって通用すること」を満たすものであることを解説しました。

今回は「競争の回避」について、なぜ「自社の存在価値」には「競争の回避」が必要なのか、またその「競争の回避」はどのように実現できるかについて解説をします。

 

1.「競争の回避」:自社の独自の能力が発揮できること

自社が「大きな顧客価値の創出」ができても、それが多くの他の企業が同様の顧客価値を創出することができるのでは「自社の存在価値」にはなり難いということがあります。そのため、世界中で自社しかそのような「大きな顧客価値の創出」ができないというのが、極めて強力な「自社の存在価値」です。つまり、自社の独自性が発揮できるということです。

 

2. 独自性(独自の能力)は未来志向で考える

独自性を考える上で重要なことに、未来志向で考えるということがあります。「自社の存在価値」の前提となる自社の独自性を考えてみると、そのような独自性を発揮できる能力はないという現実に直面する会社は多いと思います。その場合どうするか、それは自社の独自性を未来志向で考えることです。すなわち、今はそのような能力はなくても、将来、例えば5年後にはそのような能力を持ち、強みとすることを強く思い、そのための策を着実に実行するということです。

 

3. 独自の能力を広く考える

つまり、仮に現在そのような能力を持っていなくても、どのような能力でも自社の独自能力として設定しても良いということです。そこには2つの意味があります。

一つは、「自社」の既存の能力とは関係なくても良いこと。もう一つは「世の中で認識されている持つべき能力」でなくても良いことです。「世の中で認識されている持つべき能力」は、他社がすでにそのような能力や強みを持っている可能性があるということで、そのような強みを将来持てたとしても、独自性は発揮できません。むしろ世の中では知られていないような能力・強みを持つことが、本来の「独自の能力」を持つことになるのです。

 

4. 他の業界、できればかけ離れた業界の企業に目を向ける

しかし「まったく」世の中で考えられていないような能力を見つけることは、現実には相当難しいものです。そのため、他...

技術マネジメント

 

知識や経験を整理するフレームワークとして、本質とそれ以外という区別があるという理解から、「本質とは何か」を解説しています。また、企業活動の本質は「自社の存在価値」と密接に関係する事項であると考え、「自社の存在価値」について考えています。

前回は「自社の存在価値」は「大きな顧客価値の創出」と「競争の回避」の2つから生まれ、また「大きな顧客価値」は3つの要件、すなわち「提供する顧客価値自体が大きいこと」「顧客価値の適用範囲が広いこと、そして「長期にわたって通用すること」を満たすものであることを解説しました。

今回は「競争の回避」について、なぜ「自社の存在価値」には「競争の回避」が必要なのか、またその「競争の回避」はどのように実現できるかについて解説をします。

 

1.「競争の回避」:自社の独自の能力が発揮できること

自社が「大きな顧客価値の創出」ができても、それが多くの他の企業が同様の顧客価値を創出することができるのでは「自社の存在価値」にはなり難いということがあります。そのため、世界中で自社しかそのような「大きな顧客価値の創出」ができないというのが、極めて強力な「自社の存在価値」です。つまり、自社の独自性が発揮できるということです。

 

2. 独自性(独自の能力)は未来志向で考える

独自性を考える上で重要なことに、未来志向で考えるということがあります。「自社の存在価値」の前提となる自社の独自性を考えてみると、そのような独自性を発揮できる能力はないという現実に直面する会社は多いと思います。その場合どうするか、それは自社の独自性を未来志向で考えることです。すなわち、今はそのような能力はなくても、将来、例えば5年後にはそのような能力を持ち、強みとすることを強く思い、そのための策を着実に実行するということです。

 

3. 独自の能力を広く考える

つまり、仮に現在そのような能力を持っていなくても、どのような能力でも自社の独自能力として設定しても良いということです。そこには2つの意味があります。

一つは、「自社」の既存の能力とは関係なくても良いこと。もう一つは「世の中で認識されている持つべき能力」でなくても良いことです。「世の中で認識されている持つべき能力」は、他社がすでにそのような能力や強みを持っている可能性があるということで、そのような強みを将来持てたとしても、独自性は発揮できません。むしろ世の中では知られていないような能力・強みを持つことが、本来の「独自の能力」を持つことになるのです。

 

4. 他の業界、できればかけ離れた業界の企業に目を向ける

しかし「まったく」世の中で考えられていないような能力を見つけることは、現実には相当難しいものです。そのため、他の業界、できればかけ離れた業界の企業に目を向け、それら企業が持っている能力に目を向け、自社の業界に適用することで大きな顧客価値を創出できる能力は何かを考えてみることは有効です。

普通の組織をイノベーティブにする処方箋(その100)類似-1 の中で、ニット編み機メーカーの島精機の島正博会長が、他業界である印刷機の三原色のマネジメント法に着想を得て、ニット革命をもたらす編み機を開発したという話を紹介しました。まさに業界(編み機業界)の外に目を向けて、自社の将来の独自能力を実現した例と言えます。

 

 次回に続きます。

 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

浪江 一公

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。


「技術マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
イノベーションの創出 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その127)

  【この連載の前回へのリンク】 「切り取った知識の重要部分を発想するフレームワークを使って、イノベーションを発想する」にもとづき、日々...

  【この連載の前回へのリンク】 「切り取った知識の重要部分を発想するフレームワークを使って、イノベーションを発想する」にもとづき、日々...


聴覚その有用性 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その159)

    前回から、五感の最後の感覚である聴覚について解説しています。今回も引き続きこの聴覚について考えてみたいと思います。 &n...

    前回から、五感の最後の感覚である聴覚について解説しています。今回も引き続きこの聴覚について考えてみたいと思います。 &n...


「ゾンビテーマを引き受けていないか?」~技術企業の高収益化:実践的な技術戦略の立て方(その38)

【目次】 ▼さらに深く学ぶなら!「技術マネジメント」に関するセミナーはこちら! ▼さらに幅広く学ぶなら!「分野別のカリキュラム」に...

【目次】 ▼さらに深く学ぶなら!「技術マネジメント」に関するセミナーはこちら! ▼さらに幅広く学ぶなら!「分野別のカリキュラム」に...


「技術マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
技術系リーダーとして身に付けておくべきスキルとは

        企業の成長のためには、従来の事業の延長線上に留まることなく、積極的に新製品や新規事業の創出、...

        企業の成長のためには、従来の事業の延長線上に留まることなく、積極的に新製品や新規事業の創出、...


サブシステムの開発目標 プロジェクト管理の仕組み (その41)

 前回までで、化粧品の自販機についてシステムの内部構造を決めました。システム内部構造は、システムを独立したサブシステムにブレークダウンしたもので、ブロック...

 前回までで、化粧品の自販機についてシステムの内部構造を決めました。システム内部構造は、システムを独立したサブシステムにブレークダウンしたもので、ブロック...


研究開発部門にスパークを起こすとは

◆市場を継続的に長く、広く、深く知る  企業の研究開発部門は、「金ばかり使って、良い技術が全然出てこない」と非難されることが多いようです。企業にとっての...

◆市場を継続的に長く、広く、深く知る  企業の研究開発部門は、「金ばかり使って、良い技術が全然出てこない」と非難されることが多いようです。企業にとっての...