自社の存在価値 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その113)

更新日

投稿日

技術マネジメント

 

現在、知識や経験を整理するフレームワークとして、本質とそれ以外という区別があるという理解から「本質とは何か」を解説しています。また、企業活動の本質は「自社の存在価値」と密接に関係する事項であると考え、これまで「自社の存在価値」は「大きな顧客価値の創出」と「競争の回避」の2つから生まれる、ことを解説しました。

しかし良く考えてみると、この2つは外側から見た「自社の存在価値」の要件で、それを自社のものとして実現するには、それを実現できるようにする要件、すなわち内側から見た要件も必要となります。今回からはその解説をします。

 

1. 内側から見た「自社の存在価値」の要件

これまで議論してきた外側から見た「自社の存在価値」、すなわち「大きな顧客価値の創出」と「競争の回避」は、現状ではできていないことがほとんどで、これからまさにそれを構築していかなければならないものです。その構築に向けては、経営者や社員の組織力を総動員して、実現に向けて継続して大きなエネルギーを傾注していかなければならないでしょう。

そのためには、組織全体に大きなモチベーションを生み出すものでなければなりません。それでは何が組織にモチベーションを生み出すのでしょうか。私は以下の3つであると思います。

 

  • (1)努力を傾注・継続すれば実現できそうという予感が共有できる
  • (2)「自社の存在価値」が社会全般から見て正しく、価値がある
  • (3)「自社の存在価値」の目標には永続性がある

 

以下に、一つ一つを解説をしていきます。

(1)努力を傾注・継続すれば実現できそうという予感が共有できる

経営者がいくらそう思っても、組織は動かないものです。「社長はああいっているけど、そんなことは実現できないよ」と考えるのが社員の常というものです。したがって「自社の存在価値」は、社員に「がんばれば、できるかも」と思わせるものでなければなりません。

そのためには、「自社の存在価値」の意味を明確なイメージを持って理解できる。目標は高いが、高すぎないの2つが必要です。

そもそも、多くの企業の自社の存在価値(ミッション、パーパスなど)には、曖昧なものが非常に多いというのが現実です。一番多いのが社会に貢献するなどですが、社会に貢献する方法には様々な方法があり、極めて不明確です。

社内に貢献するというミッションやパーパスを聞いて、実際に社会に貢献するための活動をする社員は多くはないでしょう。

この点、自社の存在価値を極めて明確にしている企業に、自転車部品メーカーにシマノがあります。シマノは「安全に快適に走れる自転車部品を生み出すこと」を「自社の存在価値」に置いています。自転車に乗っている自分を想像してみれば、安全に快適に走るというイメージは極めて明確です。

社員ひとりひとりがこの点を明確に理...

技術マネジメント

 

現在、知識や経験を整理するフレームワークとして、本質とそれ以外という区別があるという理解から「本質とは何か」を解説しています。また、企業活動の本質は「自社の存在価値」と密接に関係する事項であると考え、これまで「自社の存在価値」は「大きな顧客価値の創出」と「競争の回避」の2つから生まれる、ことを解説しました。

しかし良く考えてみると、この2つは外側から見た「自社の存在価値」の要件で、それを自社のものとして実現するには、それを実現できるようにする要件、すなわち内側から見た要件も必要となります。今回からはその解説をします。

 

1. 内側から見た「自社の存在価値」の要件

これまで議論してきた外側から見た「自社の存在価値」、すなわち「大きな顧客価値の創出」と「競争の回避」は、現状ではできていないことがほとんどで、これからまさにそれを構築していかなければならないものです。その構築に向けては、経営者や社員の組織力を総動員して、実現に向けて継続して大きなエネルギーを傾注していかなければならないでしょう。

そのためには、組織全体に大きなモチベーションを生み出すものでなければなりません。それでは何が組織にモチベーションを生み出すのでしょうか。私は以下の3つであると思います。

 

  • (1)努力を傾注・継続すれば実現できそうという予感が共有できる
  • (2)「自社の存在価値」が社会全般から見て正しく、価値がある
  • (3)「自社の存在価値」の目標には永続性がある

 

以下に、一つ一つを解説をしていきます。

(1)努力を傾注・継続すれば実現できそうという予感が共有できる

経営者がいくらそう思っても、組織は動かないものです。「社長はああいっているけど、そんなことは実現できないよ」と考えるのが社員の常というものです。したがって「自社の存在価値」は、社員に「がんばれば、できるかも」と思わせるものでなければなりません。

そのためには、「自社の存在価値」の意味を明確なイメージを持って理解できる。目標は高いが、高すぎないの2つが必要です。

そもそも、多くの企業の自社の存在価値(ミッション、パーパスなど)には、曖昧なものが非常に多いというのが現実です。一番多いのが社会に貢献するなどですが、社会に貢献する方法には様々な方法があり、極めて不明確です。

社内に貢献するというミッションやパーパスを聞いて、実際に社会に貢献するための活動をする社員は多くはないでしょう。

この点、自社の存在価値を極めて明確にしている企業に、自転車部品メーカーにシマノがあります。シマノは「安全に快適に走れる自転車部品を生み出すこと」を「自社の存在価値」に置いています。自転車に乗っている自分を想像してみれば、安全に快適に走るというイメージは極めて明確です。

社員ひとりひとりがこの点を明確に理解し、自然と自分ひとりひとりの立場で、「安全に快適に走れる自転車部品を作るための工夫や活動をしよう」という気持ちになるように思えます。

また、低い目標ではチャレンジ精神を掻き立てません。頑張ればできるというレベルの、高いが高すぎない目標設定が重要です。そのような頑張りで目標を実現できた時に、人は大きな充実感を感じることができ、そこからモチベーションが生まれるからです。

シマノの例でいうと、安全に快適に走るという目標は、現実には高いものですが、自分自身で様々な工夫をすれば達成可能であると思わせるものです。

 

次回に続きます。

 

 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

浪江 一公

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。


「技術マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
開発生産性向上施策 開発生産性向上(その3)

【開発生産性向上 連載目次】 1. 生産性向上の必要性 2. ビジネスの質的変化への対応 3. 開発生産性向上施策 4. 改善活動のポイント ...

【開発生産性向上 連載目次】 1. 生産性向上の必要性 2. ビジネスの質的変化への対応 3. 開発生産性向上施策 4. 改善活動のポイント ...


開発中こそ気づきを記録する 新規事業・新商品を生み出す技術戦略(その32)

        今回は開発中にやっておくべき「気づきメモ」について解説します。    開発が始...

        今回は開発中にやっておくべき「気づきメモ」について解説します。    開発が始...


技術戦略  研究テーマの多様な情報源(その30)

   前回のその29に続いて解説します。「市場起点の思考と活動」、「オープン・イノベーションの徹底」および「コア技術戦略の追求」の3つの要素に...

   前回のその29に続いて解説します。「市場起点の思考と活動」、「オープン・イノベーションの徹底」および「コア技術戦略の追求」の3つの要素に...


「技術マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
製品開発部へのカンバン導入記(その2)

        前回からの続きです。前回は製品開発部がカンバンを導入するに至った簡単な経緯と、最初の問題点(...

        前回からの続きです。前回は製品開発部がカンバンを導入するに至った簡単な経緯と、最初の問題点(...


システム設計7 プロジェクト管理の仕組み (その39)

 前回のシステム設計6に続いて解説します。    検証作業の基本は、考えたサブシステム構成に対してシステム要件の一つひとつに対してどのような...

 前回のシステム設計6に続いて解説します。    検証作業の基本は、考えたサブシステム構成に対してシステム要件の一つひとつに対してどのような...


技術系リーダーとして身に付けておくべきスキルとは

        企業の成長のためには、従来の事業の延長線上に留まることなく、積極的に新製品や新規事業の創出、...

        企業の成長のためには、従来の事業の延長線上に留まることなく、積極的に新製品や新規事業の創出、...