設計部門の仕組み構築(その2)

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 繰り返しになりますが、事例としてあげている設計部門では、現状の課題を次のように整理できています。

(1)繰り返し実施する試作が同時作業となっており、設計の時期に直前の試作の評価を並行して実施している
(2)開発試作は4ヶ月間程度のかなり工数を使う作業であるが、試作(開発試作)製作や顧客対応など、設計部門が様々な作業を請け負っているため負担が大きい
(3)2Sという試作期間にもっとも多くの工数がかかっており、設計作業、評価作業ともに最大の工数が必要になっている(工数手当て・調整は容易ではない)
(4)開発期間を通じて、設計作業、試作関連作業、評価作業が同時に実際されており、開発の状況把握やマネジメントは容易ではない

 今回は課題の(2~4)について、根本原因分析を行い、登山マップを完成させます。まず、(2)の課題です。(2)の文章は少々わかりづらいので、図20を見ると良いと思います。
 
               R&D
図20.ある設計部門での製品開発プロジェクトにおける工数の使い方
 

 開発試作段階で大きな工数を使っていること、そして、開発初期であるにもかかわらず、構想、設計、施策関連、プロジェクト管理、顧客対応という様々な異なった作業を実施していることがわかります。開発試作というと簡易的に試作製作しているイメージがありますが、この設計部門では負担の大きな作業になっているわけです。調査・分析によって次のようなことがわかりました。
 
・開発試作は、顧客や社内に対して実物を使ってイメージを伝えるための試作で、そのために見た目を
 重視したプロトタイプを作成する必要がある。
 
・従来機種のフロントパネルだけを交換したり、新しいユニットを最低限動かすようにソフトウェアを修
 正したり、ラピッドプロトタイプで全体の形状と基板の構成を確認したり等々、技術者がその都度様々
 な工夫を行っている。
 
・リーダーは社内工場を使うことができず、社外の試作会社を使ったり、社内ソフトグループや社外ソフ
 ト会社と交渉したりと、管理業務に忙殺されている。
 
・リーダーは、仕様や計画の打ち合わせのために毎週1~2日は顧客を訪問する必要があり、さらに、顧
 客向けの説明資料作成などのバックオフィス作業もこなしている。
 
・従来機種の調査や新規デバイスの情報収集、エレキ、メカ、ソフトそれぞれの担当者への作業指示など
 で手一杯となり、本来の構想設計を行うことができない(そのため、後になって不具合が起きている)
 
 この開発試作の段階ではリーダーがボトルネックになっていることがわかります。これらの現状に対す る根本原因分析の結果、次のようなことがわかりました。

  ・顧客対応とプロジェクト管理を兼務するのは非効率
  ・従来の設計データや社内の技術情報の検索が不十分
  ・構想設計や再利用のための手法・環境が整備されていない

  次は、「(3)2Sという試作期間にもっとも多くの工数がかかっており、設計作業、評価作業ともに最大の工数が必要になっている(工数手当て・調整が容易ではない)」という課題について見てみます。上の図20(第7回)を見ると2S(第2試作)の期間が開発を通じて最大の工数がかかっていることがわかります。したがって、この期間の効率化は必須です。ここでの課題は今まで挙げてきた課題と重複することが多いため、重複しないものだけをリストアップしておきます。第2試作から自社工場の製造ラインを使うのですが、その準備に設計者が走り回っており、試作関連や評価としている作業の多くを占めています。第2試作におけるソフトウェアの完成度が低く、動く状態になっていないため、試作評価や顧客提供のための準備や対応に時間がかかっています。根本原因もこれまでと重複しないものだけを挙げておきます。

  ・設計データを使った製造性評価を十分に実施して...

 繰り返しになりますが、事例としてあげている設計部門では、現状の課題を次のように整理できています。

(1)繰り返し実施する試作が同時作業となっており、設計の時期に直前の試作の評価を並行して実施している
(2)開発試作は4ヶ月間程度のかなり工数を使う作業であるが、試作(開発試作)製作や顧客対応など、設計部門が様々な作業を請け負っているため負担が大きい
(3)2Sという試作期間にもっとも多くの工数がかかっており、設計作業、評価作業ともに最大の工数が必要になっている(工数手当て・調整は容易ではない)
(4)開発期間を通じて、設計作業、試作関連作業、評価作業が同時に実際されており、開発の状況把握やマネジメントは容易ではない

 今回は課題の(2~4)について、根本原因分析を行い、登山マップを完成させます。まず、(2)の課題です。(2)の文章は少々わかりづらいので、図20を見ると良いと思います。
 
               R&D
図20.ある設計部門での製品開発プロジェクトにおける工数の使い方
 

 開発試作段階で大きな工数を使っていること、そして、開発初期であるにもかかわらず、構想、設計、施策関連、プロジェクト管理、顧客対応という様々な異なった作業を実施していることがわかります。開発試作というと簡易的に試作製作しているイメージがありますが、この設計部門では負担の大きな作業になっているわけです。調査・分析によって次のようなことがわかりました。
 
・開発試作は、顧客や社内に対して実物を使ってイメージを伝えるための試作で、そのために見た目を
 重視したプロトタイプを作成する必要がある。
 
・従来機種のフロントパネルだけを交換したり、新しいユニットを最低限動かすようにソフトウェアを修
 正したり、ラピッドプロトタイプで全体の形状と基板の構成を確認したり等々、技術者がその都度様々
 な工夫を行っている。
 
・リーダーは社内工場を使うことができず、社外の試作会社を使ったり、社内ソフトグループや社外ソフ
 ト会社と交渉したりと、管理業務に忙殺されている。
 
・リーダーは、仕様や計画の打ち合わせのために毎週1~2日は顧客を訪問する必要があり、さらに、顧
 客向けの説明資料作成などのバックオフィス作業もこなしている。
 
・従来機種の調査や新規デバイスの情報収集、エレキ、メカ、ソフトそれぞれの担当者への作業指示など
 で手一杯となり、本来の構想設計を行うことができない(そのため、後になって不具合が起きている)
 
 この開発試作の段階ではリーダーがボトルネックになっていることがわかります。これらの現状に対す る根本原因分析の結果、次のようなことがわかりました。

  ・顧客対応とプロジェクト管理を兼務するのは非効率
  ・従来の設計データや社内の技術情報の検索が不十分
  ・構想設計や再利用のための手法・環境が整備されていない

  次は、「(3)2Sという試作期間にもっとも多くの工数がかかっており、設計作業、評価作業ともに最大の工数が必要になっている(工数手当て・調整が容易ではない)」という課題について見てみます。上の図20(第7回)を見ると2S(第2試作)の期間が開発を通じて最大の工数がかかっていることがわかります。したがって、この期間の効率化は必須です。ここでの課題は今まで挙げてきた課題と重複することが多いため、重複しないものだけをリストアップしておきます。第2試作から自社工場の製造ラインを使うのですが、その準備に設計者が走り回っており、試作関連や評価としている作業の多くを占めています。第2試作におけるソフトウェアの完成度が低く、動く状態になっていないため、試作評価や顧客提供のための準備や対応に時間がかかっています。根本原因もこれまでと重複しないものだけを挙げておきます。

  ・設計データを使った製造性評価を十分に実施していない
  ・ソフトウェア開発に適したプロジェクト管理になっていない

 最後に「(4)開発期間を通じて、設計作業、試作関連作業、評価作業が同時に実際されており、開発の状況把握やマネジメントは容易ではない」という課題です。これは根本原因だけを挙げておきます。
 
  ・開発状況をマクロ的、定量的に把握する手段がない
  ・リーダーにとってメンバーのマネジメントが後回しになる
 
 これで解決すべき根本原因の全容が明らかになりました。次回は、これらの根本原因を解消することができる具体的な対策を選び、実際の効果を推定します。
 
 

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この記事の著者

石橋 良造

組織のしくみと個人の意識を同時に改革・改善することで、パフォーマンス・エクセレンスを追求し、実現する開発組織に変えます!

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