オープン・イノベーションを社内で実現する方法 研究テーマの多様な情報源(その28)

更新日

投稿日

 

synai1

 

1.自らオープンにならなければ、オープン・イノベーションは成功しない

 
 前回のその27に続いて解説しますオープン・イノベーションは、外部の技術、知識、能力を積極的に活用し、社内の技術、知識、能力と組み合わせ、新たな顧客価値、すなわちイノベーションを実現しようとする活動です。つまりイノベーション実現のために、そのプロセスを社内に閉じる(クローズ)ことなく、外部にも『オープン』にしようという考え方です。しかし、『オープン』の意味はそこにとどまりません。自社も自ら外部に対して、その基本姿勢として『オープン』になる必要があります。
 
 インテカー社長 斉藤ウィリアム浩幸氏はこんなことを言っています。『オープンであることは、楽ではありません。望まない議論に疲弊したり、技術やノウハウが流出したりする危険もあります。しかし、閉ざされた密室の中で発想できる未来には限界があるのも事実です。もめたくはないけれど、もまれないと成長できない。』(インテカー社長 斉藤ウィリアム浩幸氏、日経産業新聞(2015年2月20日)
 

2.自らがオープンであるとは:外部から「探される」状況を作る

 
 多くの企業で良くある活動は、オープン・イノベーション部門を設置し、外部の技術や情報を積極的に見つける行動を主体的に行おうとするものです。もちろん、このような活動は重要であり、必要ですが、まさに探索先が国内に閉じることなく、世界中に広がっている現在の状況の中、世界中に存在する技術や有用情報を集めようとすると、社内の活動では限界があります。
 
 もちろんこのような社内活動の弱点を外部のナインシグマ等の仲介業者を利用するという手段もあるのですが、すべてをそのような企業に頼ることは、費用の面から、そして更に自社内に自らオープン・イノベーションに関わる能力を構築する必要性があるという視点からは、望ましくはありません。
 
 重要な活動が外部に積極的に「探される」状況を作ることです。そのためには、社内の情報を外部にオープンに開示することです。もちろん、なんでもかんでも自社の情報を開示することを意味するわけではありません。イノベーションを実現することが目的ですので、最終的にイノベーションに至るために必要な自社の情報を開示することです。
 

3.「探される」ためには、何をオープンにするか

 
 それでは自社の何をオープンにすれば、良いのでし...

 

synai1

 

1.自らオープンにならなければ、オープン・イノベーションは成功しない

 
 前回のその27に続いて解説しますオープン・イノベーションは、外部の技術、知識、能力を積極的に活用し、社内の技術、知識、能力と組み合わせ、新たな顧客価値、すなわちイノベーションを実現しようとする活動です。つまりイノベーション実現のために、そのプロセスを社内に閉じる(クローズ)ことなく、外部にも『オープン』にしようという考え方です。しかし、『オープン』の意味はそこにとどまりません。自社も自ら外部に対して、その基本姿勢として『オープン』になる必要があります。
 
 インテカー社長 斉藤ウィリアム浩幸氏はこんなことを言っています。『オープンであることは、楽ではありません。望まない議論に疲弊したり、技術やノウハウが流出したりする危険もあります。しかし、閉ざされた密室の中で発想できる未来には限界があるのも事実です。もめたくはないけれど、もまれないと成長できない。』(インテカー社長 斉藤ウィリアム浩幸氏、日経産業新聞(2015年2月20日)
 

2.自らがオープンであるとは:外部から「探される」状況を作る

 
 多くの企業で良くある活動は、オープン・イノベーション部門を設置し、外部の技術や情報を積極的に見つける行動を主体的に行おうとするものです。もちろん、このような活動は重要であり、必要ですが、まさに探索先が国内に閉じることなく、世界中に広がっている現在の状況の中、世界中に存在する技術や有用情報を集めようとすると、社内の活動では限界があります。
 
 もちろんこのような社内活動の弱点を外部のナインシグマ等の仲介業者を利用するという手段もあるのですが、すべてをそのような企業に頼ることは、費用の面から、そして更に自社内に自らオープン・イノベーションに関わる能力を構築する必要性があるという視点からは、望ましくはありません。
 
 重要な活動が外部に積極的に「探される」状況を作ることです。そのためには、社内の情報を外部にオープンに開示することです。もちろん、なんでもかんでも自社の情報を開示することを意味するわけではありません。イノベーションを実現することが目的ですので、最終的にイノベーションに至るために必要な自社の情報を開示することです。
 

3.「探される」ためには、何をオープンにするか

 
 それでは自社の何をオープンにすれば、良いのでしょうか?私は、最低限以下の2つを世の中に広く、かつ継続的に開示するということだと思います。
 

・自社のコア技術

 
 自社が既存事業の継続的強化や新規事業構築のために、戦略的に強化していこうとするコアとなる技術
 

・自社の求める技術・能力

 
 今、自社が強化や入手を期待している具体的な技術や能力
 
 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

浪江 一公

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。


「技術マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
明暗が分かれる開発ステップ 新規事業・新商品を生み出す技術戦略(その37)

        新商品事業化までのステップは、主に次の3ステップに区分されて考えられます。   ...

        新商品事業化までのステップは、主に次の3ステップに区分されて考えられます。   ...


普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その21)

 知識は、形式知と暗黙知に分けることが知られています。今回は形式知の問題点を指摘し、その問題点にいかに対処するかを解説します。 ◆関連解説『技術マネジメ...

 知識は、形式知と暗黙知に分けることが知られています。今回は形式知の問題点を指摘し、その問題点にいかに対処するかを解説します。 ◆関連解説『技術マネジメ...


技術の棚卸し 技術企業の高収益化:実践的な技術戦略の立て方(その2)

   2020年、ビジネスの現場ではWEB会議が当然のようになり、ハンコもなくなろうとするなど、従来の価値観が大きく変わろうとしています。...

   2020年、ビジネスの現場ではWEB会議が当然のようになり、ハンコもなくなろうとするなど、従来の価値観が大きく変わろうとしています。...


「技術マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
擦り合わせ能力を活かすマネジメントとは(その1)

  前回は、「擦り合わせ型開発」と「組み合わせ型開発」のモデルを使って、開発体制について考察しました。擦り合わせ型開発と組み合わせ型開発それぞれ...

  前回は、「擦り合わせ型開発」と「組み合わせ型開発」のモデルを使って、開発体制について考察しました。擦り合わせ型開発と組み合わせ型開発それぞれ...


イノベーションのための「チーム体制」

 「最後の砦、技術力がアブナイ」では、技術者は自律性、創意工夫、挑戦意欲、変化対応力などを期待されているにもかかわらず、開発現場はそのような技術者に育てる...

 「最後の砦、技術力がアブナイ」では、技術者は自律性、創意工夫、挑戦意欲、変化対応力などを期待されているにもかかわらず、開発現場はそのような技術者に育てる...


開発生産性とは プロジェクト管理の仕組み (その17)

 前回のその16に続いて解説します。作業成果物メトリクスは、作業成果物を測定することにより作業量から見た進捗を把握するためのものですが、その活用方法につい...

 前回のその16に続いて解説します。作業成果物メトリクスは、作業成果物を測定することにより作業量から見た進捗を把握するためのものですが、その活用方法につい...