第3回 2025年ものづくり白書から~これからの機械設計者に求められる役割と能力

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第3回 2025年ものづくり白書から~これからの機械設計者に求められる役割と能力

【目次】

    2025年版 ものづくり白書(令和6年度 ものづくり基盤技術の振興施策)令和7年5月  経済産業省 厚生労働省 文部科学省 概 要

    関連解説:【2025年ものづくり白書から】2026年 日本の製造業・機械産業の注目動向と展望~機械部門技術士が読み解く次の一手~

    関連解説:第2回 2025年ものづくり白書から~なぜ日本の製造業は「設計」で再び競争力を取り戻せるのか、現場起点の強みを構造から読み解く

     

    1. 白書が示す設計の再定義

     2025年版ものづくり白書は、日本の製造業が直面する構造課題として、

    • 付加価値創出力の強化
    • DX(デジタルトランスフォーメーション)の加速
    • 人材不足と技能継承


    を明確に示している。特に注目すべきは、「設計・開発段階での価値創出」が競争力の源泉であると繰り返し言及されている点である。白書 第1部第2章(製造業の競争力強化)では、製品の差別化は上流工程でほぼ決まるという趣旨の記述があり、設計段階での構想力・統合力の重要性が強調されている。これは、設計者の役割が単なる作図担当ではなく、価値構造を決定する存在へと進化していることを意味する。

     

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    2. DX推進と設計の高度化...

    第3回 2025年ものづくり白書から~これからの機械設計者に求められる役割と能力

    【目次】

      2025年版 ものづくり白書(令和6年度 ものづくり基盤技術の振興施策)令和7年5月  経済産業省 厚生労働省 文部科学省 概 要

      関連解説:【2025年ものづくり白書から】2026年 日本の製造業・機械産業の注目動向と展望~機械部門技術士が読み解く次の一手~

      関連解説:第2回 2025年ものづくり白書から~なぜ日本の製造業は「設計」で再び競争力を取り戻せるのか、現場起点の強みを構造から読み解く

       

      1. 白書が示す設計の再定義

       2025年版ものづくり白書は、日本の製造業が直面する構造課題として、

      • 付加価値創出力の強化
      • DX(デジタルトランスフォーメーション)の加速
      • 人材不足と技能継承


      を明確に示している。特に注目すべきは、「設計・開発段階での価値創出」が競争力の源泉であると繰り返し言及されている点である。白書 第1部第2章(製造業の競争力強化)では、製品の差別化は上流工程でほぼ決まるという趣旨の記述があり、設計段階での構想力・統合力の重要性が強調されている。これは、設計者の役割が単なる作図担当ではなく、価値構造を決定する存在へと進化していることを意味する。

       

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      2. DX推進と設計の高度化

      (該当箇所:第2部第1章「DXの推進状況」)白書では、製造業におけるDXの進展状況と課題が整理されている。特に以下の内容が重要である。

      • 3Dデータの活用拡大
      • デジタルツイン技術の導入
      • AI活用による設計・生産最適化


      設計部門においても、

      • CAE解析の高度化
      • モデルベース開発(MBD)
      • データ連携によるフロントローディング


      といった動きが加速している。ここで設計者に求められるのは、図面を描く技能ではなく、構造を定義し、性能とコストの因果を理解する力である。

       

      白書はDXを単なるIT導入ではなく、業務プロセスそのものの変革として位置付けている。つまり、設計者は「データを扱う人」ではなく、「意味を定義する人」へと変わる必要がある。

       

      3. 人材不足と設計者の高度化

      (該当箇所:第2部第3章「ものづくり人材の現状」)白書では、技能人材の高齢化と若手不足が深刻であることが示されている。この状況下で重要なのは、属人化した技能を構造化し、再現可能にすることである。

       

      設計の世界では、次の能力が求められる。

      • 因果関係を説明できる力
      • 暗黙知を形式知へ変換する力
      • 品質リスクを設計段階で予測する力


      これは、単なるCADオペレーション能力ではない。白書は、人材戦略の中で「高度専門人材の育成」を明示している。機械設計者は、まさにその中核に位置付けられる存在なのである。

       

      4. AI活用と設計者の本質的価値

      (該当箇所:第2部第1章 DX関連記述)白書では、AIやデータ分析の活用事例が多数紹介されている。しかし同時に、AIを使いこなす人材の不足
      も課題として挙げられている。ここで重要なのは、AIは設計判断を代替するものではなく、判断の質を高める補助ツールであるという点である。

      設計の本質は、

      • 目的の定義
      • 制約条件の整理
      • 因果構造の理解


      トレードオフの意思決定にある。これらは、人間の責任領域である。AIは計算を高速化できるが、価値の定義はできない。したがって、これからの設計者は、AIを恐れるのではなく、AIを活用できる構造理解者になる必要がある。

       

      5. 設計者は「描く人」から「構造を定義する人」へ

      2025年版ものづくり白書は明確に示している。競争力の源泉は、上流工程、データ活用、高度人材である。つまり設計者は、

      • × 図面を描く人
      • ○ 価値構造を設計する人

       

      へと進化しなければならない。

       

      6. まとめ ― 白書が示す設計者の未来像

      白書の該当箇所を踏まえると、これからの機械設計者に求められる能力は以下に集約される。

      • 因果理解力
      • 構造化能力
      • データ活用力
      • AI協働力
      • 社会的責任意識


      設計は単なる技術活動ではない。それは、品質・コスト・環境・安全・社会価値を決定する意思決定活動である。2025年版ものづくり白書は、
      その中心に「設計」を置いている。下図のように、機械設計者は、もはや“描く人”ではない。未来を定義する人である。

       

      第3回 2025年ものづくり白書から~これからの機械設計者に求められる役割と能力

      図. 設計者の役割進化の概念図

       

      機械設計者は、もはや“描く人”ではない。未来を定義する人である。

       
       

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      この記事の著者

      森内 眞

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