【目次】
◆ 2025年版 ものづくり白書(令和6年度 ものづくり基盤技術の振興施策)令和7年5月 経済産業省 厚生労働省 文部科学省 概 要
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関連解説:第2回 2025年ものづくり白書から~なぜ日本の製造業は「設計」で再び競争力を取り戻せるのか、現場起点の強みを構造から読み解く
1. 白書が示す設計の再定義
2025年版ものづくり白書は、日本の製造業が直面する構造課題として、
- 付加価値創出力の強化
- DX(デジタルトランスフォーメーション)の加速
- 人材不足と技能継承
を明確に示している。特に注目すべきは、「設計・開発段階での価値創出」が競争力の源泉であると繰り返し言及されている点である。白書 第1部第2章(製造業の競争力強化)では、製品の差別化は上流工程でほぼ決まるという趣旨の記述があり、設計段階での構想力・統合力の重要性が強調されている。これは、設計者の役割が単なる作図担当ではなく、価値構造を決定する存在へと進化していることを意味する。
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2. DX推進と設計の高度化
(該当箇所:第2部第1章「DXの推進状況」)白書では、製造業におけるDXの進展状況と課題が整理されている。特に以下の内容が重要である。
- 3Dデータの活用拡大
- デジタルツイン技術の導入
- AI活用による設計・生産最適化
設計部門においても、
- CAE解析の高度化
- モデルベース開発(MBD)
- データ連携によるフロントローディング
といった動きが加速している。ここで設計者に求められるのは、図面を描く技能ではなく、構造を定義し、性能とコストの因果を理解する力である。
白書はDXを単なるIT導入ではなく、業務プロセスそのものの変革として位置付けている。つまり、設計者は「データを扱う人」ではなく、「意味を定義する人」へと変わる必要がある。
3. 人材不足と設計者の高度化
(該当箇所:第2部第3章「ものづくり人材の現状」)白書では、技能人材の高齢化と若手不足が深刻であることが示されている。この状況下で重要なのは、属人化した技能を構造化し、再現可能にすることである。
設計の世界では、次の能力が求められる。
- 因果関係を説明できる力
- 暗黙知を形式知へ変換する力
- 品質リスクを設計段階で予測する力
これは、単なるCADオペレーション能力ではない。白書は、人材戦略の中で「高度専門人材の育成」を明示している。機械設計者は、まさにその中核に位置付けられる存在なのである。
4. AI活用と設計者の本質的価値
(該当箇所:第2部第1章 DX関連記述)白書では、AIやデータ分析の活用事例が多数紹介されている。しかし同時に、AIを使いこなす人材の不足
も課題として挙げられている。ここで重要なのは、AIは設計判断を代替するものではなく、判断の質を高める補助ツールであるという点である。
設計の本質は、
トレードオフの意思決定にある。これらは、人間の責任領域である。AIは計算を高速化できるが、価値の定義はできない。したがって、これからの設計者は、AIを恐れるのではなく、AIを活用できる構造理解者になる必要がある。
5. 設計者は「描く人」から「構造を定義する人」へ
2025年版ものづくり白書は明確に示している。競争力の源泉は、上流工程、データ活用、高度人材である。つまり設計者は、
へと進化しなければならない。
6. まとめ ― 白書が示す設計者の未来像
白書の該当箇所を踏まえると、これからの機械設計者に求められる能力は以下に集約される。
- 因果理解力
- 構造化能力
- データ活用力
- AI協働力
- 社会的責任意識
設計は単なる技術活動ではない。それは、品質・コスト・環境・安全・社会価値を決定する意思決定活動である。2025年版ものづくり白書は、
その中心に「設計」を置いている。下図のように、機械設計者は、もはや“描く人”ではない。未来を定義する人である。

図. 設計者の役割進化の概念図
機械設計者は、もはや“描く人”ではない。未来を定義する人である。