MVP(minimum viable product:実用最小限の製品)とは 新規事業・新商品を生み出す技術戦略(その57)

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技術マネジメント

1. 新規事業や新商品の立ち上げは、なぜスピードが問われるのか

 新規事業や新商品の立ち上げをミッションに活動する際に必ずといっていいほどトップからスピードを重視することを問われると思います。理由は、初期アイディアは仮説検証によるブラッシュアップが必要であるためです。

 特に既存商品の改善・改良レベルではなく、新しい価値を追求する商品の創出は必ず初期アイディアの軌道修正が必要となるでしょう。また「新しい価値」には、ハードウェア・ソフトウェアといった従来からの狭義の技術分野や機能で捉えるのではなく、「アズ・ア・サービス」など直接顧客へ価値を届けることまで意味するようになりました。

 このような時代の変化において、顧客が価値を感じるレベルまで引き上げるためには幾たびかの実験・検証・改善が入ります。そして、このサイクルを早く回すことが新しい価値を提供する商品が市場タイミングを逃すことなくリリースするために必要となるのです。

2. 新規事業や新商品の立ち上げ、スピードはどの程度加速させるのか

 コンサルティング現場において質問を受けるのが、「どの程度スピードを上げれば良いか」「仮説検証:仮説・実験・検証・改善サイクルはどのくらいで行えばいいのか」です。

 この質問は一概にお答えすることは難しく、例えば企業の特性・文化はもとより、狙う業界や技術分野、現状のレベルに大きく起因します。しかし経験上、一般的には、最低でも既存事業の1/2以下となるようにお答えしています。

 これは先に述べたように、市場タイミングを逃すことなく、利益を創出するに確度の高い商品として仕上げるためです。

 しかしながら開発現場では「非常にハードルが高い」「そんなの無理だ」というお声をいただきます。私どもでは出来る・出来ないをすぐに判断するのではなく、「出来る」を前提に共にスピードアッププラン検討をサポートしています。

3. MVP(minimum viable product:実用最小限の製品)の概念を取り入れる

 スピード重視で既存商品の1/2以下の開発期間で仮説検証を繰り返すために効果的な概念にはMVP(minimum viable product:実用最小限の製品)があります。

 ご存知の方が多いかと思いますが、リーン・スタートアップという有名な書籍で紹介されている考え方です。

 MVPの概要は、顧客にとって価値を感じる(利益を創出する)機能を仮説し、最小レベルの機能を試作して市場に問う方法です。昨今はMVPではなく、MLP(minimum Lovable Product)という概念も登場していますが、今回の主題から外れるので割愛します。

 私のコンサルティングにおいてもMVPの考え方を取り入れています。特に既存商品のシリーズ商品、関連商品ではなく、新しい価値を創出する・今までにないものを考えてくれというミッションを持つ組織には必ず活動に入れるようにしています。

 簡単に説明すると顧客が価値を感じる=購入したいと考える機能を①仮説、②試作、③市場ニーズ調査、④ニーズ分析という流れです。この①〜④を少なくとも既存商品の1/2の開発期間で行うことで、同じ期間で2回の仮説検証が可能です...

技術マネジメント

1. 新規事業や新商品の立ち上げは、なぜスピードが問われるのか

 新規事業や新商品の立ち上げをミッションに活動する際に必ずといっていいほどトップからスピードを重視することを問われると思います。理由は、初期アイディアは仮説検証によるブラッシュアップが必要であるためです。

 特に既存商品の改善・改良レベルではなく、新しい価値を追求する商品の創出は必ず初期アイディアの軌道修正が必要となるでしょう。また「新しい価値」には、ハードウェア・ソフトウェアといった従来からの狭義の技術分野や機能で捉えるのではなく、「アズ・ア・サービス」など直接顧客へ価値を届けることまで意味するようになりました。

 このような時代の変化において、顧客が価値を感じるレベルまで引き上げるためには幾たびかの実験・検証・改善が入ります。そして、このサイクルを早く回すことが新しい価値を提供する商品が市場タイミングを逃すことなくリリースするために必要となるのです。

2. 新規事業や新商品の立ち上げ、スピードはどの程度加速させるのか

 コンサルティング現場において質問を受けるのが、「どの程度スピードを上げれば良いか」「仮説検証:仮説・実験・検証・改善サイクルはどのくらいで行えばいいのか」です。

 この質問は一概にお答えすることは難しく、例えば企業の特性・文化はもとより、狙う業界や技術分野、現状のレベルに大きく起因します。しかし経験上、一般的には、最低でも既存事業の1/2以下となるようにお答えしています。

 これは先に述べたように、市場タイミングを逃すことなく、利益を創出するに確度の高い商品として仕上げるためです。

 しかしながら開発現場では「非常にハードルが高い」「そんなの無理だ」というお声をいただきます。私どもでは出来る・出来ないをすぐに判断するのではなく、「出来る」を前提に共にスピードアッププラン検討をサポートしています。

3. MVP(minimum viable product:実用最小限の製品)の概念を取り入れる

 スピード重視で既存商品の1/2以下の開発期間で仮説検証を繰り返すために効果的な概念にはMVP(minimum viable product:実用最小限の製品)があります。

 ご存知の方が多いかと思いますが、リーン・スタートアップという有名な書籍で紹介されている考え方です。

 MVPの概要は、顧客にとって価値を感じる(利益を創出する)機能を仮説し、最小レベルの機能を試作して市場に問う方法です。昨今はMVPではなく、MLP(minimum Lovable Product)という概念も登場していますが、今回の主題から外れるので割愛します。

 私のコンサルティングにおいてもMVPの考え方を取り入れています。特に既存商品のシリーズ商品、関連商品ではなく、新しい価値を創出する・今までにないものを考えてくれというミッションを持つ組織には必ず活動に入れるようにしています。

 簡単に説明すると顧客が価値を感じる=購入したいと考える機能を①仮説、②試作、③市場ニーズ調査、④ニーズ分析という流れです。この①〜④を少なくとも既存商品の1/2の開発期間で行うことで、同じ期間で2回の仮説検証が可能です。

 よくある話ですが、どんなに机上で価値を仮説しても全くの見当違いという結果に陥ることがあります。私も会社員時代、また独立してからも「この仮説は完璧だ」というアイディアがことごとく見当違いであった散々な結果を経験しました。また、コンサルティング現場においても従来の既存商品では考えられない数の仮説検証の失敗事例を多く目にします。

 一度、数回の失敗をそのまま失敗で終わらせることなく、成功へと導くためにはMVPを活用し、市場の声を反映しながら商品アイディアをブラッシュアップすることが必要です。すなわち、今までにない新しい価値を提供するための事業・商品を創出するためには従来を圧倒的に超えるスピードでアイディアの仮説検証を繰り返すことが必要です。

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この記事の著者

川崎 響子

革新的なテクノロジー事業を最速&確実に量産まで立ち上げます。 世界No.1商品を創る企業を世の中に送り出し続けることが私の使命です。

革新的なテクノロジー事業を最速&確実に量産まで立ち上げます。 世界No.1商品を創る企業を世の中に送り出し続けることが私の使命です。


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