商品アイデアの切り口 新規事業・新商品を生み出す技術戦略(その72)

更新日

投稿日

商品企画

 2020年夏、新型コロナウイルス (COVID-19)による経済への影響が懸念され、日々のニュースとして「〇〇社 売上対前年比〇〇%ダウン」と取り上げられることが多くなりました。

 2019年から2020年の始めまでを思い出していただくと、東京オリンピックに向け企業におけるデジタル化推進事業がにぎわっていました。結果からすると今回のCOVID-19により、東京オリンピックを凌駕する勢いでオンラインによる働き方改革が求められています。

 COVID-19以前では、取り組んでおいた方が良いとは理解しながらも後回しにしていた項目が、今では必須項目として優先度上位へと変わったのです。

 このように好む好まざる関係なく、環境の変化に伴い、自社商品の売れ行きや市場ニーズが急激に変化する様を実感することになりました。日々、環境が変化している今、自社商品の売上が悪化している・悪化しそうな気配があれば、新商品アイディアを考える上で覚えておきたい切り口を紹介します。

  • 今できること(技術・商品など)で考える
  • 既存事業を否定するアイディアを考える

1、今できること(技術・商品など)で考える 

 1つ目の「今できること(技術・商品)で考える」とは、最短で実現できる商品アイディアを生み出すことです。

 長期的な研究開発テーマとは別に、市場が求めている商品サービスを今、持っている技術や実用化技術などを使って開発します。

 例えば、震災の年に被災地で使用できるよう充電型プリンター(AC電源コード不要)を開発したことがあります。この時は、商品としてすでに販売しているプリンターに大容量バッテリーを組み合わせることで垂直立ち上げを実現し、現地の捜索活動で活躍し、大変喜ばれたことを記憶しています。

 この例からいえることは、社会の変化期において新規性が高い技術よりも、今目の前で困っている人を助けるために何をしたら良いのかというアイデアの切り口です。

2、既存事業を否定するアイデアを考える

 2つ目の「既存事業を否定するアイデアを考える」は、そのままストレートに表現すると社内で嫌われるので注意してください。これは、結果的に既存事業を否定するかもしれないが、顧客が望んで商品を考えようということです。

 先日、ある航空会社がバーチャルツアー商品を販売したというニュースがありました。旅行がしにくい今、お客様が旅行した気分を満喫できるよう、航空券を売らず観光地や飛行中の映像、観光地のグルメをセットで販売したのです。普通に考えれば、航空会社は飛行機を運行する(航空券を売る)ことが当たり前であり、バーチャルツアーで満足させる世界となってしまうことは、既存事業を潰すアイデアです。

 しかし自社都合ではなく「お客様が今、何を不満に感じているのだろう?」ということを追求した結果が、旅する気分を味わう体験を提供するアイデアだったのでしょう。こうした体験を通して、新型コロナが収束した後にはこ...

商品企画

 2020年夏、新型コロナウイルス (COVID-19)による経済への影響が懸念され、日々のニュースとして「〇〇社 売上対前年比〇〇%ダウン」と取り上げられることが多くなりました。

 2019年から2020年の始めまでを思い出していただくと、東京オリンピックに向け企業におけるデジタル化推進事業がにぎわっていました。結果からすると今回のCOVID-19により、東京オリンピックを凌駕する勢いでオンラインによる働き方改革が求められています。

 COVID-19以前では、取り組んでおいた方が良いとは理解しながらも後回しにしていた項目が、今では必須項目として優先度上位へと変わったのです。

 このように好む好まざる関係なく、環境の変化に伴い、自社商品の売れ行きや市場ニーズが急激に変化する様を実感することになりました。日々、環境が変化している今、自社商品の売上が悪化している・悪化しそうな気配があれば、新商品アイディアを考える上で覚えておきたい切り口を紹介します。

  • 今できること(技術・商品など)で考える
  • 既存事業を否定するアイディアを考える

1、今できること(技術・商品など)で考える 

 1つ目の「今できること(技術・商品)で考える」とは、最短で実現できる商品アイディアを生み出すことです。

 長期的な研究開発テーマとは別に、市場が求めている商品サービスを今、持っている技術や実用化技術などを使って開発します。

 例えば、震災の年に被災地で使用できるよう充電型プリンター(AC電源コード不要)を開発したことがあります。この時は、商品としてすでに販売しているプリンターに大容量バッテリーを組み合わせることで垂直立ち上げを実現し、現地の捜索活動で活躍し、大変喜ばれたことを記憶しています。

 この例からいえることは、社会の変化期において新規性が高い技術よりも、今目の前で困っている人を助けるために何をしたら良いのかというアイデアの切り口です。

2、既存事業を否定するアイデアを考える

 2つ目の「既存事業を否定するアイデアを考える」は、そのままストレートに表現すると社内で嫌われるので注意してください。これは、結果的に既存事業を否定するかもしれないが、顧客が望んで商品を考えようということです。

 先日、ある航空会社がバーチャルツアー商品を販売したというニュースがありました。旅行がしにくい今、お客様が旅行した気分を満喫できるよう、航空券を売らず観光地や飛行中の映像、観光地のグルメをセットで販売したのです。普通に考えれば、航空会社は飛行機を運行する(航空券を売る)ことが当たり前であり、バーチャルツアーで満足させる世界となってしまうことは、既存事業を潰すアイデアです。

 しかし自社都合ではなく「お客様が今、何を不満に感じているのだろう?」ということを追求した結果が、旅する気分を味わう体験を提供するアイデアだったのでしょう。こうした体験を通して、新型コロナが収束した後にはこの航空会社のツアーに申し込みたいという顧客が増えれば既存事業も生きてきます。

 一時的には既存事業を否定するかもしれないが、自社都合ではなく顧客が求める商品として、継続的・包括的な商品群を考えるという切り口でした。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 今回は、環境変化が進む今まさに取り組みたい2つの商品アイデアの切り口を紹介しました。先が見えない不安な世の中において前向きに行動しようとは、酷なことかもしれません。しかし環境やタイミングが悪いと嘆いて立ち止まるよりも、今あるリソース(技術や商品、サービスなど)と知恵を使い、目の前にいる顧客が喜ぶ新しい商品アイデアを考えてみましょう。

   続きを読むには・・・


この記事の著者

川崎 響子

革新的なテクノロジー事業を最速&確実に量産まで立ち上げます。 世界No.1商品を創る企業を世の中に送り出し続けることが私の使命です。

革新的なテクノロジー事業を最速&確実に量産まで立ち上げます。 世界No.1商品を創る企業を世の中に送り出し続けることが私の使命です。


「事業戦略」の他のキーワード解説記事

もっと見る
事業戦略の立案と戦略の効果的、効率的な展開:事業戦略の技法とは

 優れた事業戦略の立案と戦略の効果的、効率的な展開を目的として、多くの技法が提唱され、様々な業界で活用されてきました。ここでは、事業戦略の立案から展開に至...

 優れた事業戦略の立案と戦略の効果的、効率的な展開を目的として、多くの技法が提唱され、様々な業界で活用されてきました。ここでは、事業戦略の立案から展開に至...


新時代を拓くイノベーション

1.イノベーションとは  イノベーションは「新しくする」を意味するラテン語のInnovareを語源とし、約100年前に経済学者のシュンペーターが「創造的...

1.イノベーションとは  イノベーションは「新しくする」を意味するラテン語のInnovareを語源とし、約100年前に経済学者のシュンペーターが「創造的...


ものづくりにイノベーションは必要か?

1. イノベーションってなんだ?  私の会社「産業革新研究所」は英文表記がIndustrial Innovation Institute Inc.で...

1. イノベーションってなんだ?  私の会社「産業革新研究所」は英文表記がIndustrial Innovation Institute Inc.で...


「事業戦略」の活用事例

もっと見る
市場を俯瞰してみる:半導体産業の失敗事例

 「失敗の本質」(野中郁次郎他著・中公文庫)という戦略論の本があり、その中で太平洋戦争における日本軍のガダルカナルでの敗北の分析が著されています。同書によ...

 「失敗の本質」(野中郁次郎他著・中公文庫)という戦略論の本があり、その中で太平洋戦争における日本軍のガダルカナルでの敗北の分析が著されています。同書によ...


スループット改善で収益力を高める

 コスト改善の効果的アプローチとしてサービス提供のスループット向上があります。スループットとは単位時間あたりの処理量や出来高を意味します。    例え...

 コスト改善の効果的アプローチとしてサービス提供のスループット向上があります。スループットとは単位時間あたりの処理量や出来高を意味します。    例え...


経営と現場をつなぐ視点とは

 経営と現場をつなぐ視点と言う観点から、技術経営の要件「長期的視点にたって企業が経営されていること」について解説します。   1.長期視点に...

 経営と現場をつなぐ視点と言う観点から、技術経営の要件「長期的視点にたって企業が経営されていること」について解説します。   1.長期視点に...