在宅勤務のリスク共有 新規事業・新商品を生み出す技術戦略(その71)

更新日

投稿日

技術マネジメント

1、1on1:対面による進捗報告や雑談の場が激減

 2020年、新型コロナウィルス感染が拡大する中、否応無しに通勤を伴う対面業務からテレワークによるオンライン業務へとシフトすることになりました。

 このような状況において、とある企業の開発部長からこんな声を耳にしました。「最近、うちの組織の研究開発が思うように進まないんだよ、全部が全部ではないのだけれど、どうも挑戦的なテーマに限って全く進んでいないようなんだ。思うように自由にやっていいと裁量を与えているはずなんだけれど、担当者に聞いても、”問題ありません”と答えるし…どうしたものかな」。

 こちらの研究開発組織は、既存事業に貢献するテーマと新規事業に向けた挑戦的なテーマを上手に配分して、結果を残している優秀な方々です。お手本として紹介するような優秀な組織で順調に開発に取り組んでいた担当者Aさんに何が起こったのでしょうか?

 進捗が思わしくなくなった前後でどんなことが起きたのかヒアリングを重ねていくと、どうも対面による進捗報告や雑談の場が激減したことが分かりました。

 テレワークによる自宅勤務が進むことで、日常行われてきた対話そのものが減ってしまったのです。

 さらに優秀であるがゆえにでしょうか。ヒアリングを重ねていくと、担当者Aさんは進捗報告の会議がなくなり、上司である開発部長に相談することができず、どうしたものか悶々(もんもん)としていたことが分かりました。

2、1on1:リーダーの傾聴姿勢が鍵

 このように、今まで進捗会議や日常のちょっとした雑談の場において、問題や課題、考えられるリスクを共有していた組織は今後、同じようなことが起きるやもしれません。研究開発の進捗報告の機会、または雑談する機会が減っているなと感じたリーダーは、ぜひ 1on1 を取り入れることをおすすめします。

 1on1(ワンオンワン)は、Googleやインテルなどが採用している上司と部下が1対1で行う定例コミュニケーションです。

 1on1では、主に以下に示す4項目についてリーダーが傾聴・支援します。

  • 目標に対する現状を確認する
  • 現状の課題を整理する
  • 課題に対する解決プランを作る
  • 日常の気づきや悩みを共有する

 そして、目標に対する現状、課題の設定、解決プランは部下自らが答えを出すよう、傾聴することに終始してください。

 今のように業務環境に制限があり、部下一人ひとりと対話する時間そのものが減少することで、リーダーが部下の思考を遮り、先走って答えを教えてしまう場合が多くなります。当たり前ですが、成長する組織・人材は自ら考え行動する自立が必要です。

 優秀なリーダーこそ、我慢して傾聴してください。

 リーダーの仕事は、部下の話を傾聴し、部下の研究開発...

技術マネジメント

1、1on1:対面による進捗報告や雑談の場が激減

 2020年、新型コロナウィルス感染が拡大する中、否応無しに通勤を伴う対面業務からテレワークによるオンライン業務へとシフトすることになりました。

 このような状況において、とある企業の開発部長からこんな声を耳にしました。「最近、うちの組織の研究開発が思うように進まないんだよ、全部が全部ではないのだけれど、どうも挑戦的なテーマに限って全く進んでいないようなんだ。思うように自由にやっていいと裁量を与えているはずなんだけれど、担当者に聞いても、”問題ありません”と答えるし…どうしたものかな」。

 こちらの研究開発組織は、既存事業に貢献するテーマと新規事業に向けた挑戦的なテーマを上手に配分して、結果を残している優秀な方々です。お手本として紹介するような優秀な組織で順調に開発に取り組んでいた担当者Aさんに何が起こったのでしょうか?

 進捗が思わしくなくなった前後でどんなことが起きたのかヒアリングを重ねていくと、どうも対面による進捗報告や雑談の場が激減したことが分かりました。

 テレワークによる自宅勤務が進むことで、日常行われてきた対話そのものが減ってしまったのです。

 さらに優秀であるがゆえにでしょうか。ヒアリングを重ねていくと、担当者Aさんは進捗報告の会議がなくなり、上司である開発部長に相談することができず、どうしたものか悶々(もんもん)としていたことが分かりました。

2、1on1:リーダーの傾聴姿勢が鍵

 このように、今まで進捗会議や日常のちょっとした雑談の場において、問題や課題、考えられるリスクを共有していた組織は今後、同じようなことが起きるやもしれません。研究開発の進捗報告の機会、または雑談する機会が減っているなと感じたリーダーは、ぜひ 1on1 を取り入れることをおすすめします。

 1on1(ワンオンワン)は、Googleやインテルなどが採用している上司と部下が1対1で行う定例コミュニケーションです。

 1on1では、主に以下に示す4項目についてリーダーが傾聴・支援します。

  • 目標に対する現状を確認する
  • 現状の課題を整理する
  • 課題に対する解決プランを作る
  • 日常の気づきや悩みを共有する

 そして、目標に対する現状、課題の設定、解決プランは部下自らが答えを出すよう、傾聴することに終始してください。

 今のように業務環境に制限があり、部下一人ひとりと対話する時間そのものが減少することで、リーダーが部下の思考を遮り、先走って答えを教えてしまう場合が多くなります。当たり前ですが、成長する組織・人材は自ら考え行動する自立が必要です。

 優秀なリーダーこそ、我慢して傾聴してください。

 リーダーの仕事は、部下の話を傾聴し、部下の研究開発活動を支援することです。1on1の時間はケチらず、余裕を持って確保することをおすすめします。また、研究開発テーマ以外に日常の気づきや悩みを共有することで、ご自身の組織育成のポイントも発見できるでしょう。

3、まとめ:テレワーク中の1on1

 対面でのコミュニケーションが不足している、以前と比べて業務進捗が思わしくない場合には、部下一人ひとりと1on1による傾聴・支援に取り組みましょう。オンラインによる業務が、今後より一層進むであろう業務環境に早く順応しすることで、結果を残す組織を育成していくことができるでしょう。

   続きを読むには・・・


この記事の著者

川崎 響子

革新的なテクノロジー事業を最速&確実に量産まで立ち上げます。 世界No.1商品を創る企業を世の中に送り出し続けることが私の使命です。

革新的なテクノロジー事業を最速&確実に量産まで立ち上げます。 世界No.1商品を創る企業を世の中に送り出し続けることが私の使命です。


「技術マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
自社の存在価値 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その118)

  前回は、「整理するフレームワークで整理・構造化した知識の中で焦点を当てる。重要部分を切り取る。」という議論の中で、果物の変色に目を付け...

  前回は、「整理するフレームワークで整理・構造化した知識の中で焦点を当てる。重要部分を切り取る。」という議論の中で、果物の変色に目を付け...


初めての開発プロジェクトの日程見積り法 新規事業・新商品を生み出す技術戦略(その26)

        今回は、会社や組織で今まで取り組んだことがない初めて実施する業務をどのように見積もればよいか...

        今回は、会社や組織で今まで取り組んだことがない初めて実施する業務をどのように見積もればよいか...


思い付くには何が必要か 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その60)

   前回は思考の構成要素として、「その1:思い付く」と「その2:思い付いたことの発展」があるという話をしました。今回からは「その1:思い...

   前回は思考の構成要素として、「その1:思い付く」と「その2:思い付いたことの発展」があるという話をしました。今回からは「その1:思い...


「技術マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
ソフトウェア開発の成果物による進捗管理 プロジェクト管理の仕組み (その16)

 前回は、計画時の見積もり精度を上げるための基準モデルと、進捗を見える化するための基本ツールである基本メトリクスセットのひとつ、作業成果物メトリクスについ...

 前回は、計画時の見積もり精度を上げるための基準モデルと、進捗を見える化するための基本ツールである基本メトリクスセットのひとつ、作業成果物メトリクスについ...


マトリクス体制での品質保証1 プロジェクト管理の仕組み (その30)

 適切な品質管理を実施できるような仕組みを構築し、運用することが品質保証であることを前回説明しました。品質管理を正しく実施するポイントは、製品(ここではサ...

 適切な品質管理を実施できるような仕組みを構築し、運用することが品質保証であることを前回説明しました。品質管理を正しく実施するポイントは、製品(ここではサ...


‐企業内に発生している問題点を徹底的に追求 ‐  製品・技術開発力強化策の事例(その3)

 前回の事例その2に続いて解説します。企業内では解決が容易でない様々な問題が生じています。しかし、これらの問題解決に取り組まない限り、競争に勝つことが出来...

 前回の事例その2に続いて解説します。企業内では解決が容易でない様々な問題が生じています。しかし、これらの問題解決に取り組まない限り、競争に勝つことが出来...