リーンスタートアップとは 新規事業・新商品を生み出す技術戦略(その86)

更新日

投稿日

技術マネジメント

 

 今回は、研究開発においてリーンスタートアップを適用する際は、徹底的に仮説検証サイクルを短く設定することがポイントであることについて解説します。

 新規事業開発に携わる担当者であれば、リーンスタートアップという開発手法を耳にしたことがあるはずです。エリック・リースの著書『リーン・スタートアップ』はあまりにも有名な書籍です。

 昨今は「VUCA(ブーカ)」の時代と称され「Volatility(激動)」、「Uncertainty(不確実性)」、「Complexity(複雑性)」、「Ambiguity(不透明性)」という予測困難な状況下、先行きが不安定で未来が予測しづらい現代において「顧客を獲得し、これを維持・拡大すること」は一筋縄ではいきません。

 製品ライフサイクルが一層短くなっていることから、新商品の投入サイクルは年々、短期化の傾向にあります。短期間、かつ少ない投資で新商品を市場に投入し続けるために活用される開発手法がリーンスタートアップです。

 リーンは「無駄なく」、「そぎ落とした」を意味します。トヨタの生産方式を元に提唱されたリーンスタートアップは平たくいえば「無駄ゼロ開発」です。リーンスタートアップは顧客を獲得する、拡大するためにMVP(Minimum Viable Product:実用最小限の製品)を作り、市場の反応をみる、開発方針を軌道修正するといった一連のサイクルを繰り返す開発手法です。

 

1. 仮説検証サイクルの3要素

 仮説検証サイクルと呼ばれる構築、計測、学習のステップを説明します。

 ①構築

 顧客の潜在ニーズを仮説し、仮説検証を行うためにMVPを制作するステップです。

 未来の社会を予測し、その社会における人の生活を予測しながら、具体的な困りごとを仮説します。困りごとを解決するための手段としてMVPを制作します。MVPは完成品レベルである必要がなく、困りごとを解決するための最重要の機能1~2つを選定してください。

 ②計測

 MVPを見込み客に使ってもらい、反応を確かめます。

 反応とは単に「いいね」や「いまいち」といったYes/Noだけではなく、インタビューを用いることを推奨します。インタビューはあらかじめ設計しておくことが望ましいですが、開発者が得たい回答へ誘導しない配慮が必要です。またノンバーバル情報として行動を観察するため、動画を撮影させてもらうなどもおすすめします。

 ③学習

 見込み客からの感想やインタビュー結果、行動情報を元に商品の開発方針を見直します。

 特に行動情報は言語化されない・できない情報を得るために有効ですので、複数人で何度も動画を見直すことがよいでしょう。この結果、場合によってはターゲットを変える、開発テーマを変えることも十分あり得ます。またこのステップで計測方法、例えばインタビュー内容の振り返りや見直しを行い、次サイクルを効率よく進めることが重要です。

 

2. リーン・...

技術マネジメント

 

 今回は、研究開発においてリーンスタートアップを適用する際は、徹底的に仮説検証サイクルを短く設定することがポイントであることについて解説します。

 新規事業開発に携わる担当者であれば、リーンスタートアップという開発手法を耳にしたことがあるはずです。エリック・リースの著書『リーン・スタートアップ』はあまりにも有名な書籍です。

 昨今は「VUCA(ブーカ)」の時代と称され「Volatility(激動)」、「Uncertainty(不確実性)」、「Complexity(複雑性)」、「Ambiguity(不透明性)」という予測困難な状況下、先行きが不安定で未来が予測しづらい現代において「顧客を獲得し、これを維持・拡大すること」は一筋縄ではいきません。

 製品ライフサイクルが一層短くなっていることから、新商品の投入サイクルは年々、短期化の傾向にあります。短期間、かつ少ない投資で新商品を市場に投入し続けるために活用される開発手法がリーンスタートアップです。

 リーンは「無駄なく」、「そぎ落とした」を意味します。トヨタの生産方式を元に提唱されたリーンスタートアップは平たくいえば「無駄ゼロ開発」です。リーンスタートアップは顧客を獲得する、拡大するためにMVP(Minimum Viable Product:実用最小限の製品)を作り、市場の反応をみる、開発方針を軌道修正するといった一連のサイクルを繰り返す開発手法です。

 

1. 仮説検証サイクルの3要素

 仮説検証サイクルと呼ばれる構築、計測、学習のステップを説明します。

 ①構築

 顧客の潜在ニーズを仮説し、仮説検証を行うためにMVPを制作するステップです。

 未来の社会を予測し、その社会における人の生活を予測しながら、具体的な困りごとを仮説します。困りごとを解決するための手段としてMVPを制作します。MVPは完成品レベルである必要がなく、困りごとを解決するための最重要の機能1~2つを選定してください。

 ②計測

 MVPを見込み客に使ってもらい、反応を確かめます。

 反応とは単に「いいね」や「いまいち」といったYes/Noだけではなく、インタビューを用いることを推奨します。インタビューはあらかじめ設計しておくことが望ましいですが、開発者が得たい回答へ誘導しない配慮が必要です。またノンバーバル情報として行動を観察するため、動画を撮影させてもらうなどもおすすめします。

 ③学習

 見込み客からの感想やインタビュー結果、行動情報を元に商品の開発方針を見直します。

 特に行動情報は言語化されない・できない情報を得るために有効ですので、複数人で何度も動画を見直すことがよいでしょう。この結果、場合によってはターゲットを変える、開発テーマを変えることも十分あり得ます。またこのステップで計測方法、例えばインタビュー内容の振り返りや見直しを行い、次サイクルを効率よく進めることが重要です。

 

2. リーン・スタートアップで重要な考え方

 仮説検証サイクルをいかに短期間&少ない投資で何度も回すかが、顧客を味方につけた商品開発のポイントです。さらにリーン・スタートアップで重要な考え方として「失敗は成長・学びの機会としてとらえる」があります。

 企業に属する研究開発組織においては、次の3点が必要です。

  1. 仮説検証における失敗を技術獲得、プロセス獲得へと紐づける仕組み
  2. 仮説検証サイクルを最低でも2~3回繰り返す権限を開発リーダーに委譲するなどによる中断リスクを取り除く工夫
  3. MVPは最重要項目1~2個に選定し、最短・ほぼゼロ投資で仕上げる方針

 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

川崎 響子

革新的なテクノロジー事業を最速&確実に量産まで立ち上げます。 世界No.1商品を創る企業を世の中に送り出し続けることが私の使命です。

革新的なテクノロジー事業を最速&確実に量産まで立ち上げます。 世界No.1商品を創る企業を世の中に送り出し続けることが私の使命です。


「技術マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
開発にベンチマーキングを 新規事業・新商品を生み出す技術戦略(その77)

  ◆ 開発にベンチマーキングを活用する  研究開発テーマの選定を行うにあたり、どのように選定したらよいのか、数あるテーマの中からどのよ...

  ◆ 開発にベンチマーキングを活用する  研究開発テーマの選定を行うにあたり、どのように選定したらよいのか、数あるテーマの中からどのよ...


AI(人工知能)が加速させるモノづくりの進化

 1980年代、世界のIT業界で人工知能(AI)ブームが起きました。日本の通産省が人工知能を実現する次世代コンピューターの開発を目指して、第五世代コンピュ...

 1980年代、世界のIT業界で人工知能(AI)ブームが起きました。日本の通産省が人工知能を実現する次世代コンピューターの開発を目指して、第五世代コンピュ...


製品設計:ミス防止対策(その6)

【製品設計:ミス防止対策 連載目次】 1.  お客様目線で行う製品設計、「未然防止の品質管理」 2.  過去のトラブル、フィー...

【製品設計:ミス防止対策 連載目次】 1.  お客様目線で行う製品設計、「未然防止の品質管理」 2.  過去のトラブル、フィー...


「技術マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
国際財務報告基準への技術部門の対応とは

1. 国際財務報告基準とは    国際財務報告基準(International Financial Reporting Standards)...

1. 国際財務報告基準とは    国際財務報告基準(International Financial Reporting Standards)...


CS-T法を起点とした技術開発プロセスとは、乗用車用エンジンの技術開発事例

▼さらに深く学ぶなら!「品質工学」に関するセミナーはこちら! 機能を起点に形を考案するというプロセスの成功例として,品質工学会でも多くの方々に大きな...

▼さらに深く学ぶなら!「品質工学」に関するセミナーはこちら! 機能を起点に形を考案するというプロセスの成功例として,品質工学会でも多くの方々に大きな...


開発部門の管理職が学ぶべきこととは

  今回は、新任の開発課長が学ぶべきこと、課長就任前に3週間で準備をすべきこと、さらには課長就任後に取り組むべきことについて解説します。 &...

  今回は、新任の開発課長が学ぶべきこと、課長就任前に3週間で準備をすべきこと、さらには課長就任後に取り組むべきことについて解説します。 &...