工場の立地 儲かるメーカー改善の急所101項(その91)

更新日

投稿日

工場の立地

 

7、これからのモノづくり経営

 前回の儲かるメーカー改善の急所101項(その90)作業着の役割に続いて、解説します。

◆ 工場の立地

 私が社会人になったのは1974年、23歳の時です。そして現在70歳ですから今から約50年前、約半世紀前ということになります(この文章を書いていて、自分でも驚いています。半世紀とは!)1970年代は激動の10年間であったと思います。ドルショック(1971年)とオイルショック(1973年)の二つが起きたからです。

 ドルショック前の為替レートは固定相場制で1ドル=360円でした。このレートで日本は輸出を伸ばしていましたが、変動相場制に変わり円高が進めば、日本の輸出産業は壊滅するかもしれないという恐れが生まれたそうです。

 そしてその次に石油ショックが来て、原油価格が大幅に上がり、紙が不足するという憶測からトイレットペーパーが買い占められるという社会現象が起きました(確かに大変でしたが、実はすっかり忘れていました)。しかし日本はカイゼンでコストを下げ、省エネにかじを切り、このピンチを乗り切り、さらに力を付けました。モノづくりでは、トヨタ生産システムの活用などで世界的な競争力を付け規模を拡大して利益を上げました。ピンチはチャンスとなったのです。

 その流れで、これまで工場立地は広くて安い土地を求めて地方へ地方へと移っていきました。良い製品を安く速く作るには、大きな生産施設が置ける広さやコストの安さは非常に重要であったからです。この延長で、さらに安い土地、安い人件費を求めて大企業を中心に、こぞって海外に工場が移されました。

◆ 工場が都会に立地するメリットとは

 しかし世の中はドンドン変わります。当時と比べるとモノは行きわたり、使い捨ても許されない時代です。そこで、もしこれから中小企業で多品種変量生産をするのなら、考え方は別になるように思います。地方にいるとお客様が望むもの、これから何が売れるようになるかといった感覚的なことも含めて、マーケットの情報は入りにくいでしょう。これらは人がたくさんいる都会でないと情報オンチになってしまいます。

 お客様が望むモノを、多能工化した最小の人と設備でゆっくりとジャストインタイムで作るなら、敷地面積は小さくて済むはずです。都会に立地す...

工場の立地

 

7、これからのモノづくり経営

 前回の儲かるメーカー改善の急所101項(その90)作業着の役割に続いて、解説します。

◆ 工場の立地

 私が社会人になったのは1974年、23歳の時です。そして現在70歳ですから今から約50年前、約半世紀前ということになります(この文章を書いていて、自分でも驚いています。半世紀とは!)1970年代は激動の10年間であったと思います。ドルショック(1971年)とオイルショック(1973年)の二つが起きたからです。

 ドルショック前の為替レートは固定相場制で1ドル=360円でした。このレートで日本は輸出を伸ばしていましたが、変動相場制に変わり円高が進めば、日本の輸出産業は壊滅するかもしれないという恐れが生まれたそうです。

 そしてその次に石油ショックが来て、原油価格が大幅に上がり、紙が不足するという憶測からトイレットペーパーが買い占められるという社会現象が起きました(確かに大変でしたが、実はすっかり忘れていました)。しかし日本はカイゼンでコストを下げ、省エネにかじを切り、このピンチを乗り切り、さらに力を付けました。モノづくりでは、トヨタ生産システムの活用などで世界的な競争力を付け規模を拡大して利益を上げました。ピンチはチャンスとなったのです。

 その流れで、これまで工場立地は広くて安い土地を求めて地方へ地方へと移っていきました。良い製品を安く速く作るには、大きな生産施設が置ける広さやコストの安さは非常に重要であったからです。この延長で、さらに安い土地、安い人件費を求めて大企業を中心に、こぞって海外に工場が移されました。

◆ 工場が都会に立地するメリットとは

 しかし世の中はドンドン変わります。当時と比べるとモノは行きわたり、使い捨ても許されない時代です。そこで、もしこれから中小企業で多品種変量生産をするのなら、考え方は別になるように思います。地方にいるとお客様が望むもの、これから何が売れるようになるかといった感覚的なことも含めて、マーケットの情報は入りにくいでしょう。これらは人がたくさんいる都会でないと情報オンチになってしまいます。

 お客様が望むモノを、多能工化した最小の人と設備でゆっくりとジャストインタイムで作るなら、敷地面積は小さくて済むはずです。都会に立地するメリットに気付いて活(い)かせるように自社のモノづくりを変える時代になっているようです。

 コロナも大きなショックです。1970年代と同様にこのピンチをチャンスに変えましょう!

今回の言葉   

*******************

中小メーカーは、都会に工場を造れ。

*******************

「儲かるメーカー改善の急所<101項> 」 

日本経営合理化協会出版局 柿内 幸夫 

 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

柿内 幸夫

現場で全員で『知のすり合わせ』を実行して経営改革

現場で全員で『知のすり合わせ』を実行して経営改革


「生産マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
中国企業改善指導のポイント 中国工場の品質改善(その83)

【第5章】中国企業改善指導のポイント 7、問題点を把握し対象する  前回のその82に続いて解説します。 【問題点事例】 (1)変化点を調査させ...

【第5章】中国企業改善指導のポイント 7、問題点を把握し対象する  前回のその82に続いて解説します。 【問題点事例】 (1)変化点を調査させ...


段取り替えの改善ポイント 儲かるメーカー改善の急所101項(その69)

  6、強いモノづくり ◆ 段取り替えの改善ポイント  一度締めたら緩まないのがボルトの利点です。  物を固定するときや製品の組み上...

  6、強いモノづくり ◆ 段取り替えの改善ポイント  一度締めたら緩まないのがボルトの利点です。  物を固定するときや製品の組み上...


モノづくりのレベル 儲かるメーカー改善の急所101項(その64)

  6、強いモノづくり ◆ モノづくりのレベル  自社のモノづくりの実力を把握することはとても大切だと思います。しかし何をもって実力と...

  6、強いモノづくり ◆ モノづくりのレベル  自社のモノづくりの実力を把握することはとても大切だと思います。しかし何をもって実力と...


「生産マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
金型加工用NCデータ作成における省力化のポイントと実例 (その1)

   今回は金型製作における機械加工用NCデータ作成の省力化をテーマに執筆させていただいた。NCデータとは主に、NCフライス、マシニングセンタ...

   今回は金型製作における機械加工用NCデータ作成の省力化をテーマに執筆させていただいた。NCデータとは主に、NCフライス、マシニングセンタ...


中国式金型のショット数管理 中国企業の壁(その24)

        一般的に金型の寿命管理は、ショット数管理と出来栄え管理の両面で行います。    ショット数管理は、あらかじめ生産数量(ショット数...

        一般的に金型の寿命管理は、ショット数管理と出来栄え管理の両面で行います。    ショット数管理は、あらかじめ生産数量(ショット数...


作業者任せの作業速度 物流業としての原価低減の取り組み(その3)

  ◆ 倉庫内労務費コストを削減する  前回のドライバーの人件費改善では、輸送行為の内のロス時間削減として、現場での「待ち時間」を考えま...

  ◆ 倉庫内労務費コストを削減する  前回のドライバーの人件費改善では、輸送行為の内のロス時間削減として、現場での「待ち時間」を考えま...