シンプルなモノづくり 儲かるメーカー改善の急所101項(その77)

更新日

投稿日

生産マネジメント

 

6、強いモノづくり

◆ 元をたどれば、注文情報はただ一つ

 工場内には日々、たくさんの情報が流れています。生産計画や仕事の割り振り、段取り替え予定、配送計画、入荷計画など実に様々な情報です。しかし、これらいろいろな情報も元をたどると「注文情報」ただ一つです。

 

 注文情報以外のすべての情報は、注文から派生した情報であることが分かります。作業の都合上から情報を細分化していますが、たくさんの人で作業を手分けしてしまうと、あらゆることが複雑になり遅くなります。逆に注文情報を中心に可能な限りシンプルに情報が流れるようにすると、スピードも上がりミスも減るのではないでしょうか。

 例えば、精密鍛造で自動車部品を作っているE社では、生産管理の人たちが翌日の生産計画を作るため、前日の夜遅くまで仕事をしていました。しかし現場でその計画がどのように使われているかをみてみると、生産管理の計画通りには進んでいません。理由を聞くと「予定通り材料が入ってこなかったり、突発の注文が入ったり、担当者がお休みしたりといったことに対応する必要があるから」ということでした。あるいは段取り替えを減らすため、順番を変えるということも行っていました。

 すなわち、生産管理の計画の中で確実に使われているのは生産数と納期だけで、後の情報は必ずしも使われていなかったのです。そして生産管理では到底分かりえない現場の経験からくるノウハウが生かされた製造をしているということです。

 そこで生産管理は、求められる製品情報として数量と締め切り時間のみを示し、作るのに必要な材料を用意するということにして、後は生産現場の判断に任せるやり方に変えました。極端にいうと、営業からの注文情報をそのまま現場に渡してみたという感じです。

 その結果ですが、全く問題は起きませんでした。むしろ現場判断の自由度を高めたことで生産効率は上がったと聞きました。何よりよかったのは生産計画を作っていたスタッフが、定時で仕事を終えられるようになったのです。

 営業からの注文情報を生産現場にも購買にも配送にも、直接に伝わるようにすると実にシンプルになります。生産計画の立案を...

生産マネジメント

 

6、強いモノづくり

◆ 元をたどれば、注文情報はただ一つ

 工場内には日々、たくさんの情報が流れています。生産計画や仕事の割り振り、段取り替え予定、配送計画、入荷計画など実に様々な情報です。しかし、これらいろいろな情報も元をたどると「注文情報」ただ一つです。

 

 注文情報以外のすべての情報は、注文から派生した情報であることが分かります。作業の都合上から情報を細分化していますが、たくさんの人で作業を手分けしてしまうと、あらゆることが複雑になり遅くなります。逆に注文情報を中心に可能な限りシンプルに情報が流れるようにすると、スピードも上がりミスも減るのではないでしょうか。

 例えば、精密鍛造で自動車部品を作っているE社では、生産管理の人たちが翌日の生産計画を作るため、前日の夜遅くまで仕事をしていました。しかし現場でその計画がどのように使われているかをみてみると、生産管理の計画通りには進んでいません。理由を聞くと「予定通り材料が入ってこなかったり、突発の注文が入ったり、担当者がお休みしたりといったことに対応する必要があるから」ということでした。あるいは段取り替えを減らすため、順番を変えるということも行っていました。

 すなわち、生産管理の計画の中で確実に使われているのは生産数と納期だけで、後の情報は必ずしも使われていなかったのです。そして生産管理では到底分かりえない現場の経験からくるノウハウが生かされた製造をしているということです。

 そこで生産管理は、求められる製品情報として数量と締め切り時間のみを示し、作るのに必要な材料を用意するということにして、後は生産現場の判断に任せるやり方に変えました。極端にいうと、営業からの注文情報をそのまま現場に渡してみたという感じです。

 その結果ですが、全く問題は起きませんでした。むしろ現場判断の自由度を高めたことで生産効率は上がったと聞きました。何よりよかったのは生産計画を作っていたスタッフが、定時で仕事を終えられるようになったのです。

 営業からの注文情報を生産現場にも購買にも配送にも、直接に伝わるようにすると実にシンプルになります。生産計画の立案をやめて、注文情報をそのまま現場に流しても商品が作れるということはあるのです。

 

今回の言葉   

****************************
 いろいろな情報も、元をたどれば注文情報ただ一つである。
****************************

「儲かるメーカー改善の急所<101項> 」

 日本経営合理化協会出版局 柿内 幸夫 

 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

柿内 幸夫

現場で全員で『知のすり合わせ』を実行して経営改革

現場で全員で『知のすり合わせ』を実行して経営改革


「生産マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
P/L再生(収益性向上)の具体的手法 (その1) スループットバランス分析とは

 金融関係者や会計士が主体で行われる企業再生では、B/S面でのデューデリジェンスをベースにした資産や債務の処理が優先されることが多いようです。B/S面での...

 金融関係者や会計士が主体で行われる企業再生では、B/S面でのデューデリジェンスをベースにした資産や債務の処理が優先されることが多いようです。B/S面での...


現場改善で空間を空ける意味 儲かるメーカー改善の急所101項(その81)

  6、強いモノづくり ◆ 改善で生み出された空間は新事業へのポテンシャル  2021年、新型コロナウィルス感染拡大により、私たちを取...

  6、強いモノづくり ◆ 改善で生み出された空間は新事業へのポテンシャル  2021年、新型コロナウィルス感染拡大により、私たちを取...


改善の優先順位 儲かるメーカー改善の急所101項(その22)

2.モノづくり〈現場改善の基本〉   ◆ 改善の優先順位  以前に「安全第一」を掲げている工場で、安全帯を装着しないで高所作業をしてい...

2.モノづくり〈現場改善の基本〉   ◆ 改善の優先順位  以前に「安全第一」を掲げている工場で、安全帯を装着しないで高所作業をしてい...


「生産マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
金型改修の後にとるべき処置とは

        今回は、すでに量産体制に入った金型において、例えば故障や製品不良が起こった際に行う金型改修の...

        今回は、すでに量産体制に入った金型において、例えば故障や製品不良が起こった際に行う金型改修の...


金型メーカー特有の多能工化のメリットとは 伸びる金型メーカーの秘訣 (その43)

   今回、取り上げる金型部品加工メーカーはT鉄工株式会社です。同社は自動車部品で使用されるダイカスト金型の部品加工を主力事業としている。主な...

   今回、取り上げる金型部品加工メーカーはT鉄工株式会社です。同社は自動車部品で使用されるダイカスト金型の部品加工を主力事業としている。主な...


ゼロ・ベース経営のすすめ、7ゼロ生産実現マニュアル(その9)

前回のゼロ・ベース経営のすすめ、7ゼロ生産実現マニュアル(その8)に続けて解説します。   ◆【特集】 連載記事紹介:連載記事のタイトル...

前回のゼロ・ベース経営のすすめ、7ゼロ生産実現マニュアル(その8)に続けて解説します。   ◆【特集】 連載記事紹介:連載記事のタイトル...