QCDの意義と限界 儲かるメーカー改善の急所101項(その86)

更新日

投稿日

IE

 

7、これからのモノづくり経営

◆ 顧客 >QCD : 要求に沿った開発を

 時代の変化がとても速いので、私にとってはほんの少し前の話であっても、それを若い方の前で話をすると、とても驚かれることが増えています。

 例えば、私が子どものころ、自動車の宣伝では「最高速度が120㎞/時になりました!」といったスピード性能が売り物であった時があります。電気では、それは便利だ!ということで、わが家がいち早く買った扇風機は、自動で止まるタイマーという今では当たり前の機能が追加されたというモノでした。あるいはもっと最近ですが、携帯電話の宣伝で「ビルの陰でもよく聞こえる」と受信性能を前面に押し出していた機種があったことを覚えています。当時はアナログ電波でした。どれも機能の高さや新しさをアピールしています。その時はまだまだ基本的な性能の改善余地がたくさんあったのです。

 そして日本の製造業がモノづくりで世界をリードしていた時は、まさにこの基本的な性能である機能品質のすごさや納期の短さや価格の安さによってマーケットからの支持を得ていたと思います。

 QCD(品質・コスト・納期)はモノづくりのキーワードとして掲げられて、日本の製造業の実力向上に大きく貢献してきました。しかし改めて考えてみると、これらは基本的に製造ありきの視点であり、大量生産を前提としたプロダクトアウトの時代の考え方であるといえないでしょうか。

 いつの時代であっても品質、コスト、納期は重要な要素です。しかし欲しいと思われていないモノや必要のないモノにお客様は品質など求めないでしょう。そもそも売れなければ納期も関係がありません。今の時代、自分でモノを買う時は、QCDはあって当たり前の前提となっていて、それとは全く違う視点や感情で購入を考えていると思います。

 現在のマーケットイン時代、そしてこれからのユーザーイン時代のモノづくりを行うには、むしろQC...

IE

 

7、これからのモノづくり経営

◆ 顧客 >QCD : 要求に沿った開発を

 時代の変化がとても速いので、私にとってはほんの少し前の話であっても、それを若い方の前で話をすると、とても驚かれることが増えています。

 例えば、私が子どものころ、自動車の宣伝では「最高速度が120㎞/時になりました!」といったスピード性能が売り物であった時があります。電気では、それは便利だ!ということで、わが家がいち早く買った扇風機は、自動で止まるタイマーという今では当たり前の機能が追加されたというモノでした。あるいはもっと最近ですが、携帯電話の宣伝で「ビルの陰でもよく聞こえる」と受信性能を前面に押し出していた機種があったことを覚えています。当時はアナログ電波でした。どれも機能の高さや新しさをアピールしています。その時はまだまだ基本的な性能の改善余地がたくさんあったのです。

 そして日本の製造業がモノづくりで世界をリードしていた時は、まさにこの基本的な性能である機能品質のすごさや納期の短さや価格の安さによってマーケットからの支持を得ていたと思います。

 QCD(品質・コスト・納期)はモノづくりのキーワードとして掲げられて、日本の製造業の実力向上に大きく貢献してきました。しかし改めて考えてみると、これらは基本的に製造ありきの視点であり、大量生産を前提としたプロダクトアウトの時代の考え方であるといえないでしょうか。

 いつの時代であっても品質、コスト、納期は重要な要素です。しかし欲しいと思われていないモノや必要のないモノにお客様は品質など求めないでしょう。そもそも売れなければ納期も関係がありません。今の時代、自分でモノを買う時は、QCDはあって当たり前の前提となっていて、それとは全く違う視点や感情で購入を考えていると思います。

 現在のマーケットイン時代、そしてこれからのユーザーイン時代のモノづくりを行うには、むしろQCDを忘れるくらいに、お客様のことばかりをやってみるのもいいのではないでしょうか。

今回の言葉   

***********************
 QCDを越えて、お客様のことばかりやってみよ。
***********************

「儲かるメーカー改善の急所<101項> 」 

日本経営合理化協会出版局 柿内 幸夫 

 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

柿内 幸夫

現場で全員で『知のすり合わせ』を実行して経営改革

現場で全員で『知のすり合わせ』を実行して経営改革


「生産マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
不良原因解析2段階法の解説(その1)

1、不良原因解析2段階法とは  不良原因解析2段階法は、製造工程や市場で発生した不具合の原因を特定して対策する際に、2段階で根本原因究明と対策を行う方法...

1、不良原因解析2段階法とは  不良原因解析2段階法は、製造工程や市場で発生した不具合の原因を特定して対策する際に、2段階で根本原因究明と対策を行う方法...


工程管理とは、目的とそのメリット

  大量・高速の継続生産の製造業の必須条件として、安定している工程で生産することは必然のことです。ここで注意が必要なのは、一度安定な工程に...

  大量・高速の継続生産の製造業の必須条件として、安定している工程で生産することは必然のことです。ここで注意が必要なのは、一度安定な工程に...


副資材(MRO)とは?管理の方法や目的・課題について解説

  細かくて単価が安い副資材(MRO)は、どうしても管理が疎かになりがちです。工場メンテナンス品として保全要員が管理をするケースも多々見受けら...

  細かくて単価が安い副資材(MRO)は、どうしても管理が疎かになりがちです。工場メンテナンス品として保全要員が管理をするケースも多々見受けら...


「生産マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
ゼロ・ベース経営のすすめ、7ゼロ生産実現マニュアル(その5)

       『7ゼロ生産』実現マニュアル~生産性7つの阻害要因とゼロベース思想~ 第1章7ゼロ生産意識改...

       『7ゼロ生産』実現マニュアル~生産性7つの阻害要因とゼロベース思想~ 第1章7ゼロ生産意識改...


外観検査-検査員が判断しない検査方法とは 中国企業の壁(その31)

        弊社では定期的に外観目視検査セミナーを開催していますが、今回はそのセミナーの中で話をする内容のひとつを参加者からの質問という形で紹介...

        弊社では定期的に外観目視検査セミナーを開催していますが、今回はそのセミナーの中で話をする内容のひとつを参加者からの質問という形で紹介...


マシニング加工の人的ミスのあるあると対策の考え方

        今回は、マシニング加工の人的ミスと、その対策の考え方について解説します。まずマシニング加工の人的ミスですが、ざっと挙げてみると次のよ...

        今回は、マシニング加工の人的ミスと、その対策の考え方について解説します。まずマシニング加工の人的ミスですが、ざっと挙げてみると次のよ...