下請け発想の未来 儲かるメーカー改善の急所101項(その85)

更新日

投稿日

IE

 

7、これからのモノづくり経営

◆ 独自の製品つくり出し、自ら売る覚悟を

 私が社会人になったのは約50年前ですが、そのころのモノづくりの「当り前」が今の時代では「ちょっと違う」に変わってきていることが多いと感じます。例えば「良いモノを安く作れば売れる」と「値段はお客様が決める」の2つです。

 当時の日本は高度成長期にあり、まだモノが普及していませんでした。例えば「3C」。若い方には何のことだか分からないかもしれませんね。「Car、Cooler、Color TV」のことで「三種の神器」といわれていました。たくさんの会社がこぞって自社の商品を作って売りましたが、商品自体にはそんなに大きな違いがないので、安くすることで販売量を増やすことができた時代です。その結果、値段はお客様の気に入るレベルで決まるので、どのメーカーの値段も似たようなものになり、利益はコストダウンで出すという時代でありました。

 この高度成長期という時代に、現場の改善力をフルに発揮してコストダウンを行い利益を出すという戦略の成功で、日本の製造業は大きな発展を遂げたことは間違いない事実です。しかしその後、日本は豊かになり、モノは行きわたり、お客様は自分が本当に欲しいモノを選ぶようになりました。加えて時代がアナログからデジタルに変わり、グローバル化が進み世の中は大きく変わりました。これからはコストダウン競争ではなく、お客様が喜んでくださる付加価値の高い商品やサービスを生み出して、自分で値段を決められるようにすることが求められる時代になりつつあります。

 しかし下請け発想が染みついている会社の場合、何とか売れている製品の仕事を受注しようとしたり、マネた製品と作ろうとしてしまいます。当然ですが、買いたたかれます。

 それでも市場全体が大きくなっている間は、安くても量で稼げました。しかしこれからの成熟社会では市場は縮み量も減ります。しかも格安で作る新興国勢がたくさん参入してくるとなると、よほど価格競争に自信がない限り、まず経営が立ち行かなくなってしまいます。

 経営トップを先頭にして、営業や生産、開発、購買、技術、管理…すべての社員が「売れるモノをつくる」という強い意志を持って、会社を挙げて自ら作ったモノを自ら売る覚悟が求められます。「独自の...

IE

 

7、これからのモノづくり経営

◆ 独自の製品つくり出し、自ら売る覚悟を

 私が社会人になったのは約50年前ですが、そのころのモノづくりの「当り前」が今の時代では「ちょっと違う」に変わってきていることが多いと感じます。例えば「良いモノを安く作れば売れる」と「値段はお客様が決める」の2つです。

 当時の日本は高度成長期にあり、まだモノが普及していませんでした。例えば「3C」。若い方には何のことだか分からないかもしれませんね。「Car、Cooler、Color TV」のことで「三種の神器」といわれていました。たくさんの会社がこぞって自社の商品を作って売りましたが、商品自体にはそんなに大きな違いがないので、安くすることで販売量を増やすことができた時代です。その結果、値段はお客様の気に入るレベルで決まるので、どのメーカーの値段も似たようなものになり、利益はコストダウンで出すという時代でありました。

 この高度成長期という時代に、現場の改善力をフルに発揮してコストダウンを行い利益を出すという戦略の成功で、日本の製造業は大きな発展を遂げたことは間違いない事実です。しかしその後、日本は豊かになり、モノは行きわたり、お客様は自分が本当に欲しいモノを選ぶようになりました。加えて時代がアナログからデジタルに変わり、グローバル化が進み世の中は大きく変わりました。これからはコストダウン競争ではなく、お客様が喜んでくださる付加価値の高い商品やサービスを生み出して、自分で値段を決められるようにすることが求められる時代になりつつあります。

 しかし下請け発想が染みついている会社の場合、何とか売れている製品の仕事を受注しようとしたり、マネた製品と作ろうとしてしまいます。当然ですが、買いたたかれます。

 それでも市場全体が大きくなっている間は、安くても量で稼げました。しかしこれからの成熟社会では市場は縮み量も減ります。しかも格安で作る新興国勢がたくさん参入してくるとなると、よほど価格競争に自信がない限り、まず経営が立ち行かなくなってしまいます。

 経営トップを先頭にして、営業や生産、開発、購買、技術、管理…すべての社員が「売れるモノをつくる」という強い意志を持って、会社を挙げて自ら作ったモノを自ら売る覚悟が求められます。「独自の製品を作るメーカー」を目指すことで、小さくても儲(もう)かる強い企業になれるからです。

今回の言葉   

***********************************
 売れているモノを受注しようとするな。全社を挙げて、売れるモノをつくれ。
***********************************

「儲かるメーカー改善の急所<101項> 」

 日本経営合理化協会出版局 柿内 幸夫 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

柿内 幸夫

現場で全員で『知のすり合わせ』を実行して経営改革

現場で全員で『知のすり合わせ』を実行して経営改革


「生産マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
OEM先の生産改善とは

        今回は、OEM先の生産改善の進め方について、OEM先へのアプローチ、何をまず、提案すればよいかなどを解説します。   1. OE...

        今回は、OEM先の生産改善の進め方について、OEM先へのアプローチ、何をまず、提案すればよいかなどを解説します。   1. OE...


後継者問題の解決策 【快年童子の豆鉄砲】(その89)

      1.後継者の事業継承に対する不安 今回は、表2-1にある「喫緊の課題」の7番目「後継者がいない」の発生要...

      1.後継者の事業継承に対する不安 今回は、表2-1にある「喫緊の課題」の7番目「後継者がいない」の発生要...


製造業における現場改善の定石とは

      1. 現場改善が必要な理由    生産年齢人口の減少や働き方改革の流れもあり、製造業に限らず...

      1. 現場改善が必要な理由    生産年齢人口の減少や働き方改革の流れもあり、製造業に限らず...


「生産マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
経営者には、現場は謎のベールで包まれている

  ◆ 現場は謎のベールで包まれている  今回は経営者、加工現場の部下を持つ管理者の方に読んでいただきたい内容でタイトルを「現場は謎のベ...

  ◆ 現場は謎のベールで包まれている  今回は経営者、加工現場の部下を持つ管理者の方に読んでいただきたい内容でタイトルを「現場は謎のベ...


柔軟なものづくり技術 伸びる金型メーカーの秘訣 (その23)

 今回、紹介する加工メーカーは、A鉄工所です。同社は、永年培った職人技術と、最新のレーザー切断やレーザー溶接などを駆使し、二百を超える多くの顧客の要望に応...

 今回、紹介する加工メーカーは、A鉄工所です。同社は、永年培った職人技術と、最新のレーザー切断やレーザー溶接などを駆使し、二百を超える多くの顧客の要望に応...


汎用機械とNC機械(後編) 伸びる金型メーカーの秘訣 (その9)

   前回に引き続き、K工業の事例を紹介します。同社は、従来の個人事業体制から、チームによる組織体制へと変革を図っており、今年新たに従業員を4...

   前回に引き続き、K工業の事例を紹介します。同社は、従来の個人事業体制から、チームによる組織体制へと変革を図っており、今年新たに従業員を4...