製造リードタイムモデルの作り方

投稿日

 生産管理生産管理の教科書には「基準日程表を作る」ことが当たり前のように書かれています。しかしながら、なかなか簡単には作れません。実際には品種毎に長短がありますし、その時々の生産量が多ければ納期は長くなってしまいます。
 

1.製造リードタイムのモデル設定

 基準日程に拘泥せずに、次のように製造リードタイムのモデルを設定すると現実に使えるものとなります。
 
  (1)品種は幾つかの群に分ける。
  (2)一度に流す量も通常、少ない時、多い時と幾つかのケースを作る。
 
 このモデルに一番近い時の実態を調査して改善前とします。調べ方のポイントは加工や組み立ての速度だけでなく「ものの置き場」をすべてリストアップして実態を把握することに尽きます。
 
 置き場にはストアという立派なタイプのものや、レーンという順次押し出されて行くところなどがあります。これらは自分たちの都合というよりはお客様のためにあるといても良いでしょう。
 
 一方、バッファとしての置き場は、明らかにものづくりの実力のなさにより必要となる自己都合の置き場です。設備トラブルの多い職場ではその設備の後ろにトラブル対応用のバッファが必要になりますし、欠品の多い組み立て職場では組み立て前に部材の集結バッファが必要になります。
 
 そしてそのバッファの大きさが実力をあらわしますので工程改善や技術的な課題や欠品防止の管理面の課題に取り組むことになります。置き場にある量がそのままリードタイムとなるからです。中には「仮置き場」などという怪しげな置き場もあります。
 

2.全体の製造リードタイムを短縮するには

 粉末原料を成形して焼き固め、加工と表面処理を施して完成品を作る工場で置き場を調べたところ200箇所を超える置き場が抽出され驚いたことがあります。その中での仮置き場について、班長さんと次のような会話をしました。
 
 「なぜここに一旦置かなければならないのか、理由を教えてください」「ここに一旦置いておいて(1日分の量がまとまるので)、明日朝一番に次の工程に運ぶからです」「それですとここで1日進むのでリードタイムが1日長くなります」「同じではないですか?ここで1日進むのと次工程に持って行ってもそこで置かれて1日進むだけ、どっちにおいてあるかの違いだけでしょう」
 
 「しかし今日のうちに次工程に持っていけば、次の職場では次の作業を進めれるかもしれません」「数量がまとまるには夕方まで定時終了間際にな...
 生産管理生産管理の教科書には「基準日程表を作る」ことが当たり前のように書かれています。しかしながら、なかなか簡単には作れません。実際には品種毎に長短がありますし、その時々の生産量が多ければ納期は長くなってしまいます。
 

1.製造リードタイムのモデル設定

 基準日程に拘泥せずに、次のように製造リードタイムのモデルを設定すると現実に使えるものとなります。
 
  (1)品種は幾つかの群に分ける。
  (2)一度に流す量も通常、少ない時、多い時と幾つかのケースを作る。
 
 このモデルに一番近い時の実態を調査して改善前とします。調べ方のポイントは加工や組み立ての速度だけでなく「ものの置き場」をすべてリストアップして実態を把握することに尽きます。
 
 置き場にはストアという立派なタイプのものや、レーンという順次押し出されて行くところなどがあります。これらは自分たちの都合というよりはお客様のためにあるといても良いでしょう。
 
 一方、バッファとしての置き場は、明らかにものづくりの実力のなさにより必要となる自己都合の置き場です。設備トラブルの多い職場ではその設備の後ろにトラブル対応用のバッファが必要になりますし、欠品の多い組み立て職場では組み立て前に部材の集結バッファが必要になります。
 
 そしてそのバッファの大きさが実力をあらわしますので工程改善や技術的な課題や欠品防止の管理面の課題に取り組むことになります。置き場にある量がそのままリードタイムとなるからです。中には「仮置き場」などという怪しげな置き場もあります。
 

2.全体の製造リードタイムを短縮するには

 粉末原料を成形して焼き固め、加工と表面処理を施して完成品を作る工場で置き場を調べたところ200箇所を超える置き場が抽出され驚いたことがあります。その中での仮置き場について、班長さんと次のような会話をしました。
 
 「なぜここに一旦置かなければならないのか、理由を教えてください」「ここに一旦置いておいて(1日分の量がまとまるので)、明日朝一番に次の工程に運ぶからです」「それですとここで1日進むのでリードタイムが1日長くなります」「同じではないですか?ここで1日進むのと次工程に持って行ってもそこで置かれて1日進むだけ、どっちにおいてあるかの違いだけでしょう」
 
 「しかし今日のうちに次工程に持っていけば、次の職場では次の作業を進めれるかもしれません」「数量がまとまるには夕方まで定時終了間際になってしまいますので次の作業はできないでしょう」「それに運ぶ回数も1日1回まとめて運んだ方が無駄が少ないです」
 
 その後も問答を続けましたが、この方だけでなく同様な考え方をする監督者が多くいました。ものの流れを作ることをしてこなかった結果です。1つ1つの職場ごとにものの流れを作っても全体の製造リードタイムはちっとも短くなりません。しかしそのステップを経なければ職場間を連結する意味がありません。職場間を連結して置き場を1つ無くす、これらを1つずつ積み上げて息の長い活動を進めた結果、製造リードタイムが短くなっていくのです。
 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

石塚 健志

330件の指導実績/工場管理全般、中でも省エネルギー、歩留り・品質改善を得意とします

330件の指導実績/工場管理全般、中でも省エネルギー、歩留り・品質改善を得意とします


「生産マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
中国と日本企業の違いとは 中国工場の品質改善(その56)

【中国工場の品質改善 連載全84回から各章の冒頭ページ 】 【第1章】中国進出での失敗事例 【第2章】中国工場の実状を知る 【第3章】中国工...

【中国工場の品質改善 連載全84回から各章の冒頭ページ 】 【第1章】中国進出での失敗事例 【第2章】中国工場の実状を知る 【第3章】中国工...


自動化設備の生産性向上策

 自動化設備の生産性向上は、やみくもに対策をしてもなかなか効果は上がらないものです。異品種の部品組み立てに複数台のロボットが稼働している設備を例にして、自...

 自動化設備の生産性向上は、やみくもに対策をしてもなかなか効果は上がらないものです。異品種の部品組み立てに複数台のロボットが稼働している設備を例にして、自...


情報の取り扱いで競争力をつける 見える化(その1)

  「伝えたいことが、きちんと伝わっていますか」 現在のものづくりの現場では、情報の取り扱いがより重要となっています。この記事では、より...

  「伝えたいことが、きちんと伝わっていますか」 現在のものづくりの現場では、情報の取り扱いがより重要となっています。この記事では、より...


「生産マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
品質管理 中国工場管理の基本事例(その19)

  ◆ 品質管理-中国工場の品質がよくないのはなぜか(その9) 1. 中国工場、品質の問題点を生産の3要素で捉える  中国工場で生産す...

  ◆ 品質管理-中国工場の品質がよくないのはなぜか(その9) 1. 中国工場、品質の問題点を生産の3要素で捉える  中国工場で生産す...


安定生産と特注品が混在の多品種少量生産工場、改革案とは

        今回は、次のような課題を抱えた多品種少量生産の工場について、改革案を解説します。    多品種少量生産での (1) 管理工数大 ...

        今回は、次のような課題を抱えた多品種少量生産の工場について、改革案を解説します。    多品種少量生産での (1) 管理工数大 ...


ものづくり補助金 伸びる金型メーカーの秘訣 (その26)

 今回、紹介する加工メーカーは、NC旋盤加工を主力事業にしている株式会社 O鉄工所です。同社は、鍛造や板成形加工されたプレス品の2次加工を主に行っており、...

 今回、紹介する加工メーカーは、NC旋盤加工を主力事業にしている株式会社 O鉄工所です。同社は、鍛造や板成形加工されたプレス品の2次加工を主に行っており、...