中国工場の実状を知る、部品・材料について 中国工場の品質改善(その25)

更新日

投稿日

中国製造

【第2章 中国工場の実状を知る】

【部品・材料】

 前回のその24に続いて解説します。

◆ 対応策(2) 育成する気概を持つ

 中国メーカーの品質をよくするときに改善要求を出して出来なければ「はい、さようなら」ではなく、出来るように指導する、育成するという気概を持つことも場合により必要です。

 購入部材のコストを下げるには常に新しいメーカーを開拓することが必要です。しかし、購入先の開拓は簡単な仕事ではありません。工数もかかりますしメーカーを見極めるスキルも必要です。

 新しい中国メーカーを見つけたとき、多くの場合、品質レベルはこちらが求めるレベルになっていないでしょう。そのような場合、品質管理のやり方を指導するなどしてそのメーカーを育てる必要がでてきます。そうしたまだまだな中国メーカーであるほど、大きなコストメリットを得られる可能性があるとも言えます。

 ただし、日系企業ならどこでも育てることが出来るかと言えばそうとは限りません。育てるには、ある程度の規模・体力、そして指導できる能力が必要であり、出来る企業と出来ない企業があるのも事実です。また、育つのを待つ時間的な余裕がないケースもあります。育てることが出来ない企業は、最初からある程度の品質になっている中国メーカーを開拓することになります。

◆ 対応策(3) 自社の能力を高める

  • 不良品を入れない
  • 不良品を作らない
  • 不良品を外に出さない(不良品を顧客に渡さない)

 この三つができれば不良問題など起きない訳です。特に中国工場では、不良を外に出さない、ということが出来ていないのが実状です。これは中国メーカーだけの問題ではなく日系中国工場でも同じく出来ていません。ですから中国工場の品質は悪いと言われるのです。先ずは作ってしまった不良品を確実に検出して止める、お客さんには渡さないようにすることをしっかりやることが大事です。

◆ 社内の意識を変える

 中国企業の部品・材料を使いこなすために必要なのは、社内の意識を変えることです。

 中国メーカーの部材を使う目的はコスト以外の何ものでもありません。日本製のそれと比べて品質が同等で価格だけが安いのであれば問題はないのですが、実際にはそのようなケースは稀で、価格が安い分品質レベルの落ちたものとなっています。

 中国メーカーの部材の使用を進めるときに、それを見つけてきた購買部門だけが「使っていこう」と頑張ってもダメです。一番必要なのは、社内の意識を変えることです。今までとは品質レベルや技術レベルの落ちた部材を買う、使うという認識を会社全体で持たないと使いこなすことは難しいと言えますO特に部材を評価して使用可否の判断をする技術部門、設計部門にこの意識がないと前に進みません。それら部門の人たちは、既存の部材と比べ品質は同等レベルで価格だけが安いものを見つけてきたという前提で中国メーカー部材の評価をしているので、簡単に使用OKが出る訳がありません。日系企業は本当に慎重で、石橋を叩いても尚渡らないところがあります。それに比べて、香港、台湾、韓国系企業は、使えるものは使うという姿勢でいる...

中国製造

【第2章 中国工場の実状を知る】

【部品・材料】

 前回のその24に続いて解説します。

◆ 対応策(2) 育成する気概を持つ

 中国メーカーの品質をよくするときに改善要求を出して出来なければ「はい、さようなら」ではなく、出来るように指導する、育成するという気概を持つことも場合により必要です。

 購入部材のコストを下げるには常に新しいメーカーを開拓することが必要です。しかし、購入先の開拓は簡単な仕事ではありません。工数もかかりますしメーカーを見極めるスキルも必要です。

 新しい中国メーカーを見つけたとき、多くの場合、品質レベルはこちらが求めるレベルになっていないでしょう。そのような場合、品質管理のやり方を指導するなどしてそのメーカーを育てる必要がでてきます。そうしたまだまだな中国メーカーであるほど、大きなコストメリットを得られる可能性があるとも言えます。

 ただし、日系企業ならどこでも育てることが出来るかと言えばそうとは限りません。育てるには、ある程度の規模・体力、そして指導できる能力が必要であり、出来る企業と出来ない企業があるのも事実です。また、育つのを待つ時間的な余裕がないケースもあります。育てることが出来ない企業は、最初からある程度の品質になっている中国メーカーを開拓することになります。

◆ 対応策(3) 自社の能力を高める

  • 不良品を入れない
  • 不良品を作らない
  • 不良品を外に出さない(不良品を顧客に渡さない)

 この三つができれば不良問題など起きない訳です。特に中国工場では、不良を外に出さない、ということが出来ていないのが実状です。これは中国メーカーだけの問題ではなく日系中国工場でも同じく出来ていません。ですから中国工場の品質は悪いと言われるのです。先ずは作ってしまった不良品を確実に検出して止める、お客さんには渡さないようにすることをしっかりやることが大事です。

◆ 社内の意識を変える

 中国企業の部品・材料を使いこなすために必要なのは、社内の意識を変えることです。

 中国メーカーの部材を使う目的はコスト以外の何ものでもありません。日本製のそれと比べて品質が同等で価格だけが安いのであれば問題はないのですが、実際にはそのようなケースは稀で、価格が安い分品質レベルの落ちたものとなっています。

 中国メーカーの部材の使用を進めるときに、それを見つけてきた購買部門だけが「使っていこう」と頑張ってもダメです。一番必要なのは、社内の意識を変えることです。今までとは品質レベルや技術レベルの落ちた部材を買う、使うという認識を会社全体で持たないと使いこなすことは難しいと言えますO特に部材を評価して使用可否の判断をする技術部門、設計部門にこの意識がないと前に進みません。それら部門の人たちは、既存の部材と比べ品質は同等レベルで価格だけが安いものを見つけてきたという前提で中国メーカー部材の評価をしているので、簡単に使用OKが出る訳がありません。日系企業は本当に慎重で、石橋を叩いても尚渡らないところがあります。それに比べて、香港、台湾、韓国系企業は、使えるものは使うという姿勢でいるのでドラスチックに対応しています。

 もう一つ生産現場の人たちにもこの認識を持ってもらう必要があります。現場の人たちは被害者意識というものを持っているので、事前に今までとは品質レベルの違う部材を投入するとアナウンスしておくことが大事です。それをせずに投入すると今までと同じレベルの部材が来ると思っている訳ですから、品質レベルの落ちた部材が来たら文句を言いたくなるのは当然です。

 中国メーカーの部材を使うことでコストメリットを得るには、それなりの苦労と覚悟が必要です。

 次回は、2.5 まとめ、日本工場と中国工場の違いです。

【出典】根本隆吉 著 「中国工場の品質改善」 日刊工業新聞社発行 筆者のご承諾により、抜粋を連載

   続きを読むには・・・


この記事の著者

根本 隆吉

中国工場の改善・指導に強みを持っている専門家です。 社名の「KPI」は「Key Process Improvement」のことで、工場の最も重要な工程の改善・再構築を第一の使命と考え皆様を支援します。

中国工場の改善・指導に強みを持っている専門家です。 社名の「KPI」は「Key Process Improvement」のことで、工場の最も重要な工程の改...


「生産マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
特注品・受注生産に適した生産方式とは

        今回は、次のような、家具工場を想定して、特注品・受注生産に適した生産方式について解説します。   1. 想定する特注品・受注生産...

        今回は、次のような、家具工場を想定して、特注品・受注生産に適した生産方式について解説します。   1. 想定する特注品・受注生産...


新規開拓のどこを見ればよいか 中国工場の品質改善(その70)

 前回のその69に続いて解説します。 【第4章】中国新規取引先選定のポイント ◆ 契約書取り交わしのポイント  ここでは取引先と取り交わす仕様書...

 前回のその69に続いて解説します。 【第4章】中国新規取引先選定のポイント ◆ 契約書取り交わしのポイント  ここでは取引先と取り交わす仕様書...


モノの流し方と生産性 儲かるメーカー改善の急所101項(その76)

  6、強いモノづくり ◆ 生産性を劇的に上げるヒント  生産性の向上やいろいろな効率アップを考える時、私たちは「設備は現状のまま」と...

  6、強いモノづくり ◆ 生産性を劇的に上げるヒント  生産性の向上やいろいろな効率アップを考える時、私たちは「設備は現状のまま」と...


「生産マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
4M管理を知らなかった中国企業 中国企業の壁(その34)

        プレス加工でワークの位置決め方法を変更したにも関わらず、問題点の有無を検証していなかった事例を前回紹介しました。なぜ変更後による問題...

        プレス加工でワークの位置決め方法を変更したにも関わらず、問題点の有無を検証していなかった事例を前回紹介しました。なぜ変更後による問題...


汎用フライスとマシニングセンターのあるべき使い分け 伸びる金型メーカーの秘訣 (その40)

 今回紹介する機械加工メーカーは株式会社O精密です。同社はマシニングセンターや汎用フライスなどを使って、中部地方の機械設備メーカーなどで使用される機械...

 今回紹介する機械加工メーカーは株式会社O精密です。同社はマシニングセンターや汎用フライスなどを使って、中部地方の機械設備メーカーなどで使用される機械...


中国企業・工法変更の結末 中国企業の壁(その33)

        ある中国企業では、鉄材の曲げ加工とプレス加工を主にやっています。曲げ加工は特殊なローラーを多数通すことで加工しており簡単な加工ではな...

        ある中国企業では、鉄材の曲げ加工とプレス加工を主にやっています。曲げ加工は特殊なローラーを多数通すことで加工しており簡単な加工ではな...