中国工場の実状を知る、日本人駐在員について 中国工場の品質改善(その19)

更新日

投稿日

 

生産マネジメント

【第2章 中国工場の実状を知る】

【機械・設備について】

 前回のその18に続いて解説します。

◆ メンテナンス管理

 ここで言うメンテナンスとは、日常点検や定期点検などの比較的簡単で自社でできることと、メーカーを呼んでの手入れやオーバーホールのことを指しています。中国工場ではこれらメンテナンスが十分に行われていないために機械の調子が悪くなったり故障したりすることが少なくありません。

 特に最近では、日系の中国工場でもコストの関係で中国製の機械を使う企業が増えてきました。しかし、中国製機械の信頼性は、日本製のそれに比べると明らかに落ちます。中国製の機械の場合、このメンテナンスがより重要になるということです。多くの中国工場では、そこまでの認識がないのが実状です。

【設備ノウハウの落し込み】

(1)短期間で可能か

 カンとコツが入り込んだ機械の微調整などのオペレーションに関わるノウハウは、どこの企業でも日本で生産していたときには10年20年かけて培ったものではないでしょうか。また、手順書などには書かれていない暗黙知の部分、職人技も多く、容易に伝えられるものではありません。

 こうしたノウハウをどのようにして中国工場・中国人スタッフに落し込むのか、ここに会社の技術力・生産技術力が問われていると言えます。

(2)ノウハウを落し込めていなかった事例

  福建省に工場進出した日系企業の事例を紹介します。

 この会社の製品は、加工後の寸法精度が売りでした。比較的早くから中国に出たのですが、当初はこの会社の中でも比較的寸法精度の緩い製品の生産から始めました。生産設備もそれ用のものでした。これに関しては問題なく中国で生産を行うことが出来ました。

 次に生産移管したのは、日系顧客が求めている寸法精度の厳しい製品です。生産設備も、要求される寸法精度に対応したものを中国に送り込みました。この製品の生産を開始すると、製品の端部に傷不良が散発しました。多発はしていないものの顧客が組込んだときに、この傷によって自社製品の不具合につながる可能性があり、この傷の原因究明と対策を強く求められることになりました。実はこの傷不良、日本生産では発生していなかったのです。

 原因を調...

 

生産マネジメント

【第2章 中国工場の実状を知る】

【機械・設備について】

 前回のその18に続いて解説します。

◆ メンテナンス管理

 ここで言うメンテナンスとは、日常点検や定期点検などの比較的簡単で自社でできることと、メーカーを呼んでの手入れやオーバーホールのことを指しています。中国工場ではこれらメンテナンスが十分に行われていないために機械の調子が悪くなったり故障したりすることが少なくありません。

 特に最近では、日系の中国工場でもコストの関係で中国製の機械を使う企業が増えてきました。しかし、中国製機械の信頼性は、日本製のそれに比べると明らかに落ちます。中国製の機械の場合、このメンテナンスがより重要になるということです。多くの中国工場では、そこまでの認識がないのが実状です。

【設備ノウハウの落し込み】

(1)短期間で可能か

 カンとコツが入り込んだ機械の微調整などのオペレーションに関わるノウハウは、どこの企業でも日本で生産していたときには10年20年かけて培ったものではないでしょうか。また、手順書などには書かれていない暗黙知の部分、職人技も多く、容易に伝えられるものではありません。

 こうしたノウハウをどのようにして中国工場・中国人スタッフに落し込むのか、ここに会社の技術力・生産技術力が問われていると言えます。

(2)ノウハウを落し込めていなかった事例

  福建省に工場進出した日系企業の事例を紹介します。

 この会社の製品は、加工後の寸法精度が売りでした。比較的早くから中国に出たのですが、当初はこの会社の中でも比較的寸法精度の緩い製品の生産から始めました。生産設備もそれ用のものでした。これに関しては問題なく中国で生産を行うことが出来ました。

 次に生産移管したのは、日系顧客が求めている寸法精度の厳しい製品です。生産設備も、要求される寸法精度に対応したものを中国に送り込みました。この製品の生産を開始すると、製品の端部に傷不良が散発しました。多発はしていないものの顧客が組込んだときに、この傷によって自社製品の不具合につながる可能性があり、この傷の原因究明と対策を強く求められることになりました。実はこの傷不良、日本生産では発生していなかったのです。

 原因を調査していくと設備の微調整の仕方で発生することがわかりました。微調整のノウハウを現地に十分に落し込めていなかったのです。ところがこの微調整は難しいらしく、それが原因とわかってもすぐに解決しませんでした。このノウハウを中国工場に定着させるまでには随分時間がかかったのです。

 次回は、(3)中国人にどこまで求めるのか、から解説を続けます。

 【出典】根本隆吉 著 「中国工場の品質改善」 日刊工業新聞社発行 筆者のご承諾により、抜粋を連載

   続きを読むには・・・


この記事の著者

根本 隆吉

中国工場の改善・指導に強みを持っている専門家です。 社名の「KPI」は「Key Process Improvement」のことで、工場の最も重要な工程の改善・再構築を第一の使命と考え皆様を支援します。

中国工場の改善・指導に強みを持っている専門家です。 社名の「KPI」は「Key Process Improvement」のことで、工場の最も重要な工程の改...


「生産マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
「C型PDPC」とは(5) 【快年童子の豆鉄砲】(その87)

  3.「C型PDPC」の使い方 3)各ステップの進め方:【快年童子の豆鉄砲】(その86)からのつづき   【この連載の前...

  3.「C型PDPC」の使い方 3)各ステップの進め方:【快年童子の豆鉄砲】(その86)からのつづき   【この連載の前...


モノの数え方 儲かるメーカー改善の急所101項(その18)

2.モノづくり〈現場改善の基本〉 ◆ モノの数え方  材料を投入する、生産したモノを容器に移す、完成品を検査する、といった作業を観察していると、「...

2.モノづくり〈現場改善の基本〉 ◆ モノの数え方  材料を投入する、生産したモノを容器に移す、完成品を検査する、といった作業を観察していると、「...


発想の転換を現場改善に生かすには 【連載記事紹介】 

発想の転換を現場改善に生かす、連載記事が無料でお読みいただけます! 【特集】連載記事紹介の一覧へ戻る ◆発想の転換を現場改善に生かすとは 工場の...

発想の転換を現場改善に生かす、連載記事が無料でお読みいただけます! 【特集】連載記事紹介の一覧へ戻る ◆発想の転換を現場改善に生かすとは 工場の...


「生産マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
管理の見える化 伸びる金型メーカーの秘訣 (その10)

 単工程としての機械加工業の中でも、比較的大きなロットサイズの旋盤加工を事業の中心とするメーカーが今回の事例企業です。こういった旋盤加工事業は、一見同じよ...

 単工程としての機械加工業の中でも、比較的大きなロットサイズの旋盤加工を事業の中心とするメーカーが今回の事例企業です。こういった旋盤加工事業は、一見同じよ...


精密部品、加工企業の経営課題とは

        今回は、国内の精密加工業に焦点を絞って、加工業の置かれた現状、海外とのコスト競争、受注と価格...

        今回は、国内の精密加工業に焦点を絞って、加工業の置かれた現状、海外とのコスト競争、受注と価格...


赴任者のために 中国工場管理の基本事例(その9)

  1、赴任者のための現地・中国人社員のマネジメント(その7)  前回の赴任者のための現地・中国人社員のマネジメント(その6)に続いて解...

  1、赴任者のための現地・中国人社員のマネジメント(その7)  前回の赴任者のための現地・中国人社員のマネジメント(その6)に続いて解...