中国工場の実状を知る、部品・材料について 中国工場の品質改善(その29)

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生産マネジメント

【第2章 中国工場の実状を知る】

【日本工場と中国工場の違い】

 前回のその28に続いて解説します。

(2)謝罪のない文化

 中国の謝罪のない文化は日本との大きな違いですので、日本人としては意識の転換が必要です。では、日本との違いを見ていきましょう。

 日本は、誰かが何かミスをしたという場合、「いいから先ず謝ろう、それからどうしようかを考えよう」と周りの人が言います。そうすることで、ミスを水に流してくれたり、それ以上の追求をされたりしないなど、謝罪した人に対して寛容なところがあります。

 一方、中国では敗者は徹底的に叩き潰されます。これは中国人が自然と身に付けている感覚です。謝罪する=自分の非を認めるというのは、自分が敗者になることであり、そうなると徹底的に潰されてしまうと直感的に考えるので、容易に自分の非は認めません。つまり、謝罪はしないということです。

 筆者セミナーの参加者の中に「中国人はどうして謝らないんだ」と中国人スタッフが失敗しても謝らないことに対して、すごくストレスを感じている人がいました。こうした背景を理解していれば、中国人が謝罪しないことにこだわる必要はないと思いませんか。

 大事なことは、何か間違い・ミスを犯した中国人を謝らせることではなくて、謝らせたいと思った行為や過程をきちんと指摘して同じ間違いを繰り返させないことではありませんか。

【不可抗力だから仕方ない】

 前述した背景の他に「自分の責任ではないので謝る必要がないと考えるところがあります。例えば、会社が顧客との約束を守れなかったとき、その理由が自社ではなく外的要因にあった場合、日本人は「迷惑をかけた」「申し訳ない」と思い、それを言葉や態度で示します。片や中国人は、「不可抗力だから仕方がない」と考え、「申し訳ない」というような思いにはならず、当然そうした意を表す「申し訳ありません」の言葉は言いません。

 また、納期が守れなかったとき、その原因が自社工程ではなく、取引先の部品が約束通り納入されなかったことだった場合、やはり使用する部品が入らなかったのだから仕方がないと考えます。そして悪いのは取引先であリ自分ではないとして、担当者は謝リません。

 もし日本で同じことがあれば、取引先管理が不十分として厳しく指摘されます。このあたりが日本と中国の大きな違いの一つです。

(3)個人的なつながりを大事にする

 日本のビジネスマンが仕事をするときは、「会社対会社」というように誰もが背中に会社の看板を背負っています。ところが、中国人は会社の仕事であっても個人として、「イ固人対個人」という形でやっている意識を強<持っています。人のつながりや関係がビジネスの基本と考えていますので、個人的なつながりをとても大事にします。

 日本では会社を辞めれば、取引先担当者との関係もそれで終わるのが普通ですが、中国では例え会社を辞めたとしても、取引先担当者とのつながりを大事にします。そうして、個人としてのネットワークを構築していくのです。

 個人として仕事をしているという意識を強く持っているので、取引先の中国人担当者が勝手に言っているだけで、実は取引先の方針と合っていないことも考えられます。この点は、注意が必要です。

 

(4)会社への帰属意識は薄い

 中国人は、会社への帰属意識は薄いと言われますが、これは事実と言っでよいでしょう。その理由を日本人と比較することで見ていきます。

 読者のみなさんがどの程度感じているかはわかりませんが、日本人は会社という組織体にいる安心感を持っています。会社が一つのコミュニティであり、会社が自分を守ってくれていると考えている訳です。最近は崩れつつありますが終身雇用などは、その一例です。日本の経営者は、社員とその家族の生活を守るという意識を持...

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【第2章 中国工場の実状を知る】

【日本工場と中国工場の違い】

 前回のその28に続いて解説します。

(2)謝罪のない文化

 中国の謝罪のない文化は日本との大きな違いですので、日本人としては意識の転換が必要です。では、日本との違いを見ていきましょう。

 日本は、誰かが何かミスをしたという場合、「いいから先ず謝ろう、それからどうしようかを考えよう」と周りの人が言います。そうすることで、ミスを水に流してくれたり、それ以上の追求をされたりしないなど、謝罪した人に対して寛容なところがあります。

 一方、中国では敗者は徹底的に叩き潰されます。これは中国人が自然と身に付けている感覚です。謝罪する=自分の非を認めるというのは、自分が敗者になることであり、そうなると徹底的に潰されてしまうと直感的に考えるので、容易に自分の非は認めません。つまり、謝罪はしないということです。

 筆者セミナーの参加者の中に「中国人はどうして謝らないんだ」と中国人スタッフが失敗しても謝らないことに対して、すごくストレスを感じている人がいました。こうした背景を理解していれば、中国人が謝罪しないことにこだわる必要はないと思いませんか。

 大事なことは、何か間違い・ミスを犯した中国人を謝らせることではなくて、謝らせたいと思った行為や過程をきちんと指摘して同じ間違いを繰り返させないことではありませんか。

【不可抗力だから仕方ない】

 前述した背景の他に「自分の責任ではないので謝る必要がないと考えるところがあります。例えば、会社が顧客との約束を守れなかったとき、その理由が自社ではなく外的要因にあった場合、日本人は「迷惑をかけた」「申し訳ない」と思い、それを言葉や態度で示します。片や中国人は、「不可抗力だから仕方がない」と考え、「申し訳ない」というような思いにはならず、当然そうした意を表す「申し訳ありません」の言葉は言いません。

 また、納期が守れなかったとき、その原因が自社工程ではなく、取引先の部品が約束通り納入されなかったことだった場合、やはり使用する部品が入らなかったのだから仕方がないと考えます。そして悪いのは取引先であリ自分ではないとして、担当者は謝リません。

 もし日本で同じことがあれば、取引先管理が不十分として厳しく指摘されます。このあたりが日本と中国の大きな違いの一つです。

(3)個人的なつながりを大事にする

 日本のビジネスマンが仕事をするときは、「会社対会社」というように誰もが背中に会社の看板を背負っています。ところが、中国人は会社の仕事であっても個人として、「イ固人対個人」という形でやっている意識を強<持っています。人のつながりや関係がビジネスの基本と考えていますので、個人的なつながりをとても大事にします。

 日本では会社を辞めれば、取引先担当者との関係もそれで終わるのが普通ですが、中国では例え会社を辞めたとしても、取引先担当者とのつながりを大事にします。そうして、個人としてのネットワークを構築していくのです。

 個人として仕事をしているという意識を強く持っているので、取引先の中国人担当者が勝手に言っているだけで、実は取引先の方針と合っていないことも考えられます。この点は、注意が必要です。

 

(4)会社への帰属意識は薄い

 中国人は、会社への帰属意識は薄いと言われますが、これは事実と言っでよいでしょう。その理由を日本人と比較することで見ていきます。

 読者のみなさんがどの程度感じているかはわかりませんが、日本人は会社という組織体にいる安心感を持っています。会社が一つのコミュニティであり、会社が自分を守ってくれていると考えている訳です。最近は崩れつつありますが終身雇用などは、その一例です。日本の経営者は、社員とその家族の生活を守るという意識を持っています。従って、日本では会社は社員を守る、社員は会社のために頑張るという構図が出来上がっているのです。

 中国人は会社を頼りにしてはいません。会社という組織体が、自分や家族の生活を守ってくれるとは考えていません。実際中国の買い会社はそうでしょう。社員の生活を守るという考えを持っている中国人経営者は、少数ではないでしょうか。中国では、自分の身を守るのは自分という考えが一般的です。

 ただし、会社のために頑張らない中国人でも、上司個人のために頑張るということがあります。これは、個人的なつながりを大事にすることの延長線上であり、上司と個人的関係を築いた中でそのような行動となります。

 次回は、(5)お礼の言葉は一回のみ、から続けます。

 【出典】根本隆吉 著 「中国工場の品質改善」 日刊工業新聞社発行 筆者のご承諾により、抜粋を連載

 

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この記事の著者

根本 隆吉

中国工場の改善・指導に強みを持っている専門家です。 社名の「KPI」は「Key Process Improvement」のことで、工場の最も重要な工程の改善・再構築を第一の使命と考え皆様を支援します。

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